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~11月号~「〝働き方改革〟にどう挑むのか」

今年4月「働き方改革関連法」が施行されました。多くの企業で取り組みが始まっていますが、中でも力を入れているのが「長時間労働の是正」。ポイントは「効率化」です。効率的に働ける環境を整えれば、生産性は向上し、何より社員にとっては、生まれた時間を有効に活用することができます。
11月号では、関西にある4社の取り組みを取材。番組開始から12年で初の公開収録を実施し、参加した50人のビジネスパーソンからも改革への素直な意見を聞きました。

壺ナビゲーター:桂吉弥(落語家)

【放送】2019年11月24日(日) 総合テレビ 午前 7時45分〜 8時25分

メインコーナー

株式会社 山田製作所 社長 山田雅之さん

効率化を目指し、従業員19人の町工場が取り組んだのは、小さな無駄を徹底的になくすことでした。山田さんの会社は産業用機械部品などの溶接・板金加工を行っていますが、これまでは、工具を使ったら使いっぱなしで、そこに金属板などの材料が積み重なり、工具を見つけるのに30分以上かかることもしばしばだったとのこと。そこで工具の場所や誰が使用しているのかがわかるようにするなど、小さな工夫を始めました。また、作業の進捗を顧客と共有するアプリを開発するなど、コツコツと効率化を進めることで、月平均の残業時間を徐々に減らすことができました。


滋賀近交運輸倉庫株式会社 会長 山田普さん

所定外労働時間が最も多い業種が運輸業と郵便業。中でも長距離を走る大型トラック運転手の場合、渋滞に巻き込まれたり、サービスエリアの駐車場が満車で休む場所を探すのに時間がかかったりなど、労働時間と休憩時間を加えた「拘束時間」が長いことが大きな問題になっています。建設資材や機械部品などを関東や九州、東北などに運んでいる山田さんの会社では、仕事の流れを大きく見直す〝中継輸送〟という仕組みを考えました。関西から関東に荷を運ぶトレーラーが、中間地点の静岡に設けた拠点で、関東から来たトレーラーの荷台と入れ替え、持ち帰ります。これまで関東に荷を持って行き、仮眠を取って関西に帰っていたため、2日間の拘束となっていましたが、この仕組みによって、出勤から9時間足らずで会社に戻ることができるようになりました。


富士運輸株式会社 社長 松岡弘晃さん

長時間労働の是正に挑む運輸業界ですが、トラック運転手が指定された時間に荷物を受け取りに行っても、まだ荷物の準備ができていなかったり、荷受けの順番待ちで長時間待たされるケースも多いと言います。そこで松岡さんの会社ではGPSを利用してトラックの位置や走行距離、停車時間を記録し、このデータを基に作業の実態を荷主に提示。効率よく作業が進むように荷主に改善を求めています。仕事の回転率が上がることで、生産性が上がり、社員の給料も上がると松岡さんは言います。


株式会社minitts 代表取締役 中村朱美さん

中村さんが営む飲食店は牛肉を使った定食など3種類のみ。午前11時の開店直後に満席になるほどの人気ですが、一日の売り上げが100食に達すると営業を終え、片付けや翌日の仕込みを済ませると勤務は終了。仕事量はほぼ一定で、残業がないため、親の介護をしている人や、子育て中の従業員も働きやすいと言います。中村さんのこだわりは「みんなが晩ごはんを家族と食べる」こと。利益はある程度あればよく、何よりも従業員が楽しく長く仕事が続けられるような働き方を実践したいと語ります。


イノベーションの芽

長時間労働の是正で生まれた余暇時間を、どう有効に使っているのか。
会場の皆さんに聞きました。

情報サービス業の石見さん
石見さんの会社には、副業でカウンセラーを始めた社員と、社外のネットワークに参加し、新規事業の立ち上げに携わっている社員がいるとのこと。スキルやネットワークは自分の力で広げていってもらいたいし、そのためにも時間外をフルに活用してもらいたいと話してくれました。

保険業の松尾さん
1枚目の名刺は保険業。働き方改革で生まれた余暇でキャリアコンサルタントの資格を取り、それを2枚目の名刺として活動しているそうです。

情報サービス業の宮脇さん
平日、仕事が終わってからお笑いライブに出演中。もともとお笑い芸人がやりたかったという夢を副業として叶えたそうです。上司の山根さんは宮脇さんについて、舞台に立つために仕事のスケジューリングをし、時間通りに帰ることが周りの社員のお手本にもなり、みんなが余暇をより充実して過ごすようになったと話しています。

製造業の西田さん
経理業務を一人で担当している西田さんは、休むと業務が止まってしまうので、他のメンバーと業務の共有をすすめ、去年、3か月の特別休暇でフランスに住むという人生の夢をかなえたそうです。自分の業務を他の人も出来るようにしてこそ、自分の価値もあると考え、自分のルール(請求書発行の手順)だったものをみんなのルールにしていったそうです。


コメンテーターの真山仁さんに、「真山の目」に込めた思いと、収録を終えた感想を語ってもらいました。

真山の目

“マイナス”ではなく“プラス”の改革を!!

今回は働き方改革がテーマで、労働時間について考えました。働き方改革イコール、労働時間の削除と捉えられがちです。

しかし、ただ減らすだけではなく、充実して仕事ができる労働時間にしなくてはなりません。つまり、より効率的に仕事ができるからこそ、残業することなく、「今日は十分働いたからあとは自分の時間を楽しもう」という気持ちが持てる。そのような、働き手にとってプラスになる時間の削り方が理想です。

現状は、多くの場合、残業時間を削ることだけを進めています。ある一定の残業時間を超えたらそれ以上は残業代を払わないとか、逆に納得できるまで働きたいのに働けない、といったことが起きるでしょう。これはマイナスにしか働きません。

本来“改革”であるならば、働く時間が短くなったからこそ給料も上がる、自分の成果が向上したのは労働時間を減らしたからだというように、働く時間を短くすることで、もれなくプラスに転じなければならないのです。
単に時間を減らすだけではなく、自分達の仕事に誇りを持ち、会社への帰属意識も高まるような改革が、求められています。

真山の目
ネガをポジにすることで 新たな価値と ビジネスが 生まれる!!

もっと真山の目

私はこれまで、実際に働き方改革の渦中にいる人々が、どのように労働時間を減らすかだけではなく、どうやって自分を変えるかを考えているのか、しっかり把握できていなかったのかもしれません。

今回の番組を通じて、働き方改革のメリットや課題をあまり狭い価値観で判断してはいけないということにも気付きました。

若い人の中には、働くことは、単に時間を切り売りしているのではなく、仕事を上達するための修行ととらえている人が多くいて、残業してでももっと働きたいと思っている。

意欲ある人にとって、労働時間を減らされるのはありがたくない。また、働く時間を短くして十分修行もさせないのに、成果をこれまで通り出せというのは矛盾しています。条件や環境が異なるのに、すべての人に一律に当てはめる働き方改革はやめたほうが良い。個々の状況に応じた改革方法を探る、柔軟な発想が求められています。

もっと真山の目
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