6月21日(水)

第10回 患者の訴え「熱が出て おなかが痛い」

患者は、母親と妹、祖父の4人で暮らす5歳の男の子。去年、両親が離婚し、父親代わりの祖父と毎日空手の練習をしている。いつもは手がかからないお兄ちゃんなのだが、ある朝、なかなか起きてこないので母親が見に行くと、激しい腹痛で苦しんでいる。熱もある。母親が会社に「休む」と連絡を入れようとしたところ、吐いてしまった。急いでかかりつけの病院へ。すると、総合病院に行ったほうが良いといわれドクターGを紹介された。
【ドクターG】 新潟大学医歯学総合病院 小児科・医師・齋藤昭彦
【ゲスト】 関根勤、安めぐみ

~肺炎球菌性肺炎による胸膜炎(はいえんきゅうきんせいはいえん による きょうまくえん)~
肺炎は、さまざまな菌やウイルスによって引き起こされますが、中でも肺炎球菌と呼ばれる細菌が原因となることが最も多いとされています。肺炎球菌は、主に鼻咽頭(鼻とのどの奥)に住み着いていて、咳やくしゃみで菌が周囲に飛び散り、それを吸い込むことによって感染します。この菌に感染して肺炎を発症すると、激しい咳、痰、発熱、胸の痛みなどの症状が出ます。重篤化して、菌が髄膜炎や血液の中に入り込み、「敗血症」を引き起こすことがあります。0歳から5歳までの小児や、65歳以上の高齢者などの免疫力が弱い人がかかりやすく、予防接種が推奨されています。
今回の症例の5歳男児の患者は、肺炎球菌が気道から肺の内部に感染するルートではなく、何らかの原因で菌が血液中に入り、血流に乗って肺の外側に達するルート(「浸潤(しんじゅん)性肺炎球菌感染症」)で感染したため、咳などの風邪の症状がありませんでした。肺を包む胸膜にまで炎症が及んで「胸膜炎」を引き起こし、その痛みが神経を伝わり、腹痛を引き起こしていました。
抗生物質の効果で来院翌日に解熱。腹痛も治り、1週間後に無事に退院しました。

6月14日(水)

第9回 患者の訴え「おなかが張って苦しい」

絵本を中心に扱う書店を経営する58歳の女性。読み聞かせや、被災地に本を送る活動にも力を入れている。最近おなかが張って苦しいと、大学病院の消化器内科を受診。腹水がたまっていることがわかり、検査したところ、腹水からがん細胞が見つかった。「余命3ヶ月」と言われてホスピスを勧められたものの、セカンドオピニオンを受けたいとドクターGの元に・・・。「先生、私、諦めたくないんです!」患者を救うことはできるのか?
【ドクターG】 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科 医師・勝俣範之
【ゲスト】 湯山玲子、勝村政信

~原発性腹膜がん(げんぱつせいふくまくがん)~
がんは、最初に発生した場所(原発巣)によって、「肺がん」「胃がん」のように診断されますが、まれに転移したがん(転移巣)はあるものの、どのような検査をしても原発巣が見つからないことがあります。「原発不明がん」です。
「原発不明がん」には、さまざまな種類がありますが、そのうち、女性で腹膜に転移が認められ、腫瘍マーカーCA125が高値を示し、消化器や卵巣などの臓器にがんがないものには、特に「原発性腹膜がん」という病名がつけられています。これまでの臨床データから、卵巣がんと同じ治療が有効なことがわかっています。
症例の患者は、消化器内科・婦人科・泌尿器科などの専門科で診察を受けたものの、原発巣がみつからないために、治療できないと言われていました。臓器別ではなく、がんを総合的に診ることができる腫瘍内科のドクターGによって診断がつき、卵巣がんと同じ抗がん剤治療と、大網(腹膜の一部)、子宮、卵巣の摘出手術を行いました。5年後の現在、がんの再発はなく、元気に仕事をしています。

6月7日(水)

「総合診療医 ドクターG」選 患者の訴え「背中が痛む」

患者は、姑の介護で、心身ともにストレスフルな生活を送っている50歳の女性。1年ほど前から、ときおり背中に刺すような痛みを感じていた。介護疲れか、更年期障害か、それとも何かもっと恐ろしい病気かも…と不安に思っていたところ、ある夜、娘と電話しているときに、突然激しい痛みに襲われた。肩やあご、胸も痛む。驚いて実家に駆け付けた娘とともにドクターGの病院へ。問診を続けていくと…
【ドクターG】 岡山大学病院 医師・片岡仁美
【ゲスト】 早見優、六角精児

~微小血管狭心症(びしょうけっかんきょうしんしょう)~
心臓の微小血管が狭まって、血流が悪くなる病気です。閉経前後の女性でおきることがあります。原因は、動脈硬化を防ぐ作用のある女性ホルモン(エストロゲン)の分泌がへることによるといわれています。症状は、胸や背中の痛みなどで、比較的、安静時に起きることが多いとされています。更年期障害の女性のうち、10人に1人がかかるという調査もあり、心筋梗塞に至ることもあります。
治療は狭心症薬のうち、カルシウム拮抗薬やニコランジルを服用します。

症例の患者は、いろいろな医療機関をまわって、心電図やエコー、CTなどのほか、専門医のもとで心臓カテーテル検査までしましたが、異常がみつかりませんでした。
「微小血管狭心症」を疑ったドクターGが、専門の医師に特別の検査を依頼したことで、確定診断することができました。カルシウム拮抗薬を長期間服用することで、痛みがでることもなく、元気に過ごしています。

5月31日(水)

第7回 患者の訴え「吐き気がとまらない」

2009年8月放送のパイロット版から、全ての「総合診療医ドクターG」の医療監修を行ってきた洛和会ヘルスケアシステムの松村理司(まつむらただし)医師。医療の素人には、ドクターGの本当の凄さが十分に伝わっていないのではと常々考えていたという。そこで、満を持してスタジオに登場し、過去の番組を徹底解説する。今回取り上げる番組は、去年放送の「吐き気が止まらない」(ドクターGは洛和会丸太町病院の上田剛士医師)。
【ドクターG】 洛和会ヘルスケアシステム 松村理司医師
【ゲスト】 ハイヒール・リンゴ、平 岳大

~糖尿病性ケトアシドーシス(とうにょうびょうせいけとあしどーしす)~
糖尿病の患者が、糖をエネルギーとして細胞に取り込む働きをするインスリンが不足することによって起こる、急性の代謝性合併症。悪心や嘔吐、腹痛、尿量増加、脱水などの症状が現れる。深くて速い「クスマウル大呼吸」や、果物のような甘い香りの吐息「ケトン臭」などが、特徴的な症状として挙げられる。
多くは、糖尿病患者のインスリン注射の減量や中止、感染症などの身体的ストレスなどがきっかけとなり発症する。清涼飲料水を過剰摂取することでも、発症することがある。
治療は、大量の生理食塩水とインスリンの投与。 症例の患者は、胃腸炎の発症で身体的なストレスがかかっていた。食欲も低下していたので、カロリー不足にならないようにと大量の清涼飲料水を飲んだことが原因で、糖尿病性ケトアシドーシスを発症した。

5月24日(水)

第6回 患者の訴え「右胸が痛い」

出版社で子育て雑誌の編集をしている38歳の女性。「右胸が痛い」と、片道2時間もかけてドクターGを訪ねてきた。詳しく問診すると、2年ほど前から、体のあちこちが痛み出したという。最初は右足のすね。そのあと両腕や背中も。その上、最近は目がかすんでモノが二重に見えるという。しかし、いろんな病院を回ったが、どこも悪くないと言われ、検査をしても異常なし…。ドクターGいわく、史上最大の難問!
【ドクターG】 洛和会音羽病院 医師 神谷亨
【ゲスト】 ドリアン助川、壇蜜

~身体症状症(しんたいしょうじょうしょう)~
精神の不安定さが身体の症状として現れる病気です。痛みなどの苦痛を伴う症状や、健康に対する不安にとらわれていることなどが特徴で、物事を悲観的に考え、不安を膨らませるタイプの人に多くみられます。以前は身体表現性障害と呼ばれていました。症状を説明できるような身体的疾患がないにもかかわらず、さまざまな場所の痛みや痺れ、吐き気、喉の違和感などが6か月以上続きます。
身体症状症は、比較的よくある病気で、日本人の成人の5パーセントから7パーセントがこの病気だと考えられています。
治療法は、心理療法、薬物療法、職場や家庭の環境調整などです。しかし、実際に痛みなどの身体的な苦痛があるために、精神的な疾患だということが受け入れられず、ドクターショッピングを繰り返し、なかなか治療に向き合えない人が多くいます。
今回の症例の患者は、2年前の右足のすねにはじまり、右胸、両腕、背中にビリビリとした痛みを感じるようになりました。さらに、半年前、インターネットで調べたことがきっかけで、自分は「多発性硬化症」だと思い込み、「物が二重に見える」「飲み込みにくい」といった多発性硬化症の症状も出るようになりました。自分がある病気だと深く思い込むと、実際にその病気の症状が現れることも、身体症状症の特徴の一つです。ドクターGの診察を受け、患者は自分の病気を正しく理解し、病気は快方に向かっています。

5月17日(水)

第5回 患者の訴え「あちこちの関節が痛い」

食品輸入会社に勤める31歳の男性。社長の娘と結婚し、順風満帆のサラリーマン人生を歩み始めた矢先のこと…。2週間前、PCを操作してメールを読もうとしたとき、手首の関節痛に気付いた。じっとしていても痛いが、社長に褒められて握手をされたらもっと痛い。最近は、両方の膝や腕、肩まで痛くなってきた。ドクターGは、3か月前の新婚旅行の話を聞き、思いもかけない病気を疑う。その病名は?
【ドクターG】 本輪西ファミリークリニック 医師・草場鉄周
【ゲスト】 SELLY(シェリー)、ガレッジセール ゴリ

~B型肝炎(びーがたかんえん)~
B型肝炎ウイルスが肝臓に住みつくことで炎症が起きる病気で、ウイルス性肝炎のひとつです。ウイルス性肝炎には他に、A型、C型など、ウイルスの違いによっていくつかの種類があります。B型肝炎ウイルスに感染すると、初期には関節痛や発熱、発疹、倦怠感など、一般的なウイルス感染と同じような前駆症状が出ます。体の免疫システムによってウイルスが撃退できれば、それ以上の症状は出ません。しかし、ウイルスが肝臓に住み着いて増殖すると、肝臓の細胞に入り込んだウイルスを免疫システムが攻撃するために、肝細胞が破壊され、黄疸などの肝炎の症状が出ます。慢性化すると、肝硬変や肝臓がんの原因になります。
B型肝炎は、かつて予防接種などの際に注射器の使い回しが行われたことによって、40万人以上の感染被害者を出しました。注射器の連続使用が行われなくなった現在は、性交渉での感染が多くなっています。
B型肝炎の感染ルートには、B型肝炎ウイルスを持つ母親から生まれた赤ちゃんが、出産の際に感染する母子感染と、性交渉やタトゥーなど母子感染以外でうつる水平感染があります。母子感染の場合、多くは本人には症状が現れませんが、ウイルスを感染させてしまいます。
番組で紹介したケースでは、患者の妻が生まれるときに、B型肝炎に母子感染していました。患者は妻との性交渉によって感染し、前駆症状で関節痛や発熱、発疹を来たしました。その後、患者は、急性肝炎を発症して黄疸などの症状が出ましたが、5日後に無事退院しました。

5月10日(水)

第4回 患者の訴え「意識がない」

30歳の会社員の女性が、意識不明で病院に救急搬送されてきた。自宅を訪ねた友人が発見したという。友人によると、3日前に電話したときに会話のつじつまが合わず喧嘩になり、その後電話にも出なくなったという。心配になって家を訪ねたら、部屋の中は足の踏み場もないほど散乱していた。事件か?と思ったら、ベッドの横でいびきをかいて寝ている。起こしても起きない。いったい女性の身に何が?
【ドクターG】 藤田保健大学病院 医師・植西憲達
【ゲスト】 松尾貴史、篠原ともえ

~全身性エリテマトーデス(ぜんしんせいえりとまとーです)~
本来は、体内に入った細菌やウイルスなどを撃退する免疫システムが、誤って、自分自身の正常な細胞や組織を攻撃する自己免疫疾患の一つです。腎臓、腸、関節、皮膚、脳、心臓など、全身のさまざまなところに炎症が起きることがこの病気の特徴です。発熱、全身けん怠感、鼻の周りの赤い発疹、関節痛、全身のむくみ、抑うつなど、さまざまな症状が現れます。中枢神経に炎症が出る場合は重症で、妄想などの精神症状や、痙攣や脳血管障害がみられます。
症例の患者は、脳に炎症が起きていたため、意識障害や異常行動がみられました。
来院3日目に、ステロイド(副腎皮質ホルモン)を大量に点滴投与するステロイドパルスという治療を行い、徐々に炎症が治まりました。脚に若干の麻痺は残りましたが、会話も普通に行えるようになり、今は元気に暮らしています。

4月19日(水)

第3回 患者の訴え「ボーっとして反応しない」

去年定年を迎えた66歳の男性。50代で糖尿病を発症し、週3回の透析に通いながら、今は転籍して子会社で働いている。3日前、耳が痛くなり熱が出た。翌日透析の病院で診てもらったが熱が下がらない。今日は、取引先の都合で急な会議が入り、透析を受けたあと夜に会社に戻った。大事な会議の最中に意識がもうろうとし始め、部下に抱えられて病院へ。その後さらに意識レベルが低下していく…緊急事態だ!
【ドクターG】 国立国際医療研究センター 医師・忽那賢志
【ゲスト】 山村紅葉、いとうせいこう

~セフェピム脳症(せふぇぴむのうしょう)~
セフェピムという抗菌薬が原因で引き起こされる薬剤性の脳症です。
セフェピムは、幅広い細菌に効果があるため、さまざまな感染症の治療に用いられます。緑膿菌に効果のある数少ない抗菌薬の一つで、経口薬(飲み薬)ではなく点滴で投与されます。
セフェピムの投与量が同じでも、セフェピム脳症の発症には個人差があります。特に、腎障害を持つ人には注意が必要で、決められた用量を守っていても、複数回投与すると血中の濃度が高くなり、発症リスクが高まります。意識障害のほか、けいれんなどの症状をきたすことがあります。投薬を中止することで回復するケースがほとんどですが、透析を行って薬物を体内から除去すると回復が早まります。

症例の患者は、緑膿菌が原因とみられる中耳炎にかかって発熱していたため、これを治療する目的で、透析の後にセフェピムが投与されました。決められた用量は守られており、また実際には、患者の腎機能低下を想定した投与量の調整も行われていて、医療ミスにはあたりません。しかし、2度目の透析後の投与で「セフェピム脳症」を発症。緊急透析によって血中のセフェピムの濃度が下がり、患者の容体は急速に回復しました。

4月12日(水)

第2回 患者の訴え「突然 けいれんが」

母親とともに和服と小物の店を営む25歳の女性。しっかりものと評判だった。ところが突然、叫び声を上げ、わけのわからないことを言い出し、けいれんを起こして倒れた。母親が救急車を呼び病院へ。けいれんは治まったが、意識がもうろうとして母親のことも認識できていない。母親によると、最近、様子がおかしかったという。いないはずの子どもと会話したり、その子の着物を探したり。熱を計ると38度を超えている。
【ドクターG】 群星沖縄研修プログラム 医師・徳田安春
【ゲスト】 荒俣宏、おのののか
 
~傍腫瘍性辺縁系脳炎(ぼうしゅようせいへんえんけいのうえん)~
何らかの腫瘍ができたときに作られる自己抗体(細胞やウイルスではなく、自分の細胞や組織を攻撃してしまう抗体で、免疫システムの異常によってできる)が、腫瘍と離れた場所にある脳の辺縁系(記憶や情動を司る)を攻撃してしまうことによって生じる病気です。幻覚や、記憶障害が現れ、重篤化すると、けいれんや意識障害を引き起こします。10年ほど前にアメリカのダルマウ教授によって提唱された新しい病気で、自己抗体が、脳内のNMDA受容体(興奮性の神経伝達物質に関わる)に機能障害を引き起こすことから「抗NMDA受容体脳炎」と言われています。卵巣腫瘍が引き金となることが多いとされていますが、研究が進むにつれ、子どもや男性にも発症することがわかっています。
この病気は医師にも正しく理解されていないことが多く、患者は精神科などを受診して、原因不明のまま重症化するケースも多くみられます。年間500~1500人程度が発症しているのではないか、と言われています。
 
症例の患者は、卵巣の腫瘍(奇形腫)が原因で、傍腫瘍性辺縁系脳炎を引き起こし、幻覚、奇声を発する、発熱などの症状をきたしていました。卵巣を摘出する手術を受けて回復し、1年後の職場復帰に向けてリハビリに励んでいます。

4月5日(水)

第1回 患者の訴え「吐き気が続いている」

夫と共に、写真店を営む66歳の女性。1か月ほど前から、食べては吐く、を繰り返すようになった。食欲がなくなり、食べる事も怖くなって最近はふらふらと倒れるようになった。写真修整の腕の良い優秀な社員がやめたため、急に忙しくなり、心労も重なっている。近くの病院で胃カメラの検査をしたが、大きな異常は見られない。紹介状を持ってドクターGのもとを訪ねると・・・
【ドクターG】 神戸市立医療センター中央市民病院 医師・金森真紀
【ゲスト】 前田 吟、紺野美沙子

~すい臓がん(すいぞうがん)~
すい臓は胃や十二指腸(じゅうにしちょう)、脾臓(ひぞう)などに囲まれている、長さ20cmほどの細長い臓器です。食物の消化を助けるすい液や、血糖値の調節に必要なインスリンというホルモンを作る役割を果たしています。すい臓にできた悪性腫瘍が、すい臓がんです。毎年3万人以上が、この病気で亡くなっています。すい臓は体の深部に位置し、がんができても見つけるのが非常に難しいとされています。また、早い段階では特徴的な症状がありません。このため、早期発見が難しく、多くは、がんとわかったときにはすでに進行しています。
症例の患者は、すい臓がんが、すい臓の周りにあるリンパ節や十二指腸へと広がって、十二指腸の食物が通る道が狭くなっていました。そのため食べ物が詰まり、嘔吐を繰り返すようになりました。十二指腸に広がったがんは、小腸に近い場所(水平脚)にできていたために、胃カメラではみることができませんでした。すい臓の一部と共に、十二指腸を塞いでいた癌やリンパ節などを取り除く手術を行い、患者は1か月後に退院。現在は通院で治療を続けています。
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