4月19日(水)

第3回 患者の訴え「ボーっとして反応しない」

去年定年を迎えた66歳の男性。50代で糖尿病を発症し、週3回の透析に通いながら、今は転籍して子会社で働いている。3日前、耳が痛くなり熱が出た。翌日透析の病院で診てもらったが熱が下がらない。今日は、取引先の都合で急な会議が入り、透析を受けたあと夜に会社に戻った。大事な会議の最中に意識がもうろうとし始め、部下に抱えられて病院へ。その後さらに意識レベルが低下していく…緊急事態だ!
【ドクターG】 国立国際医療研究センター 医師・忽那賢志
【ゲスト】 山村紅葉、いとうせいこう

~セフェピム脳症(せふぇぴむのうしょう)~
セフェピムという抗菌薬が原因で引き起こされる薬剤性の脳症です。
セフェピムは、幅広い細菌に効果があるため、さまざまな感染症の治療に用いられます。緑膿菌に効果のある数少ない抗菌薬の一つで、経口薬(飲み薬)ではなく点滴で投与されます。
セフェピムの投与量が同じでも、セフェピム脳症の発症には個人差があります。特に、腎障害を持つ人には注意が必要で、決められた用量を守っていても、複数回投与すると血中の濃度が高くなり、発症リスクが高まります。意識障害のほか、けいれんなどの症状をきたすことがあります。投薬を中止することで回復するケースがほとんどですが、透析を行って薬物を体内から除去すると回復が早まります。

症例の患者は、緑膿菌が原因とみられる中耳炎にかかって発熱していたため、これを治療する目的で、透析の後にセフェピムが投与されました。決められた用量は守られており、また実際には、患者の腎機能低下を想定した投与量の調整も行われていて、医療ミスにはあたりません。しかし、2度目の透析後の投与で「セフェピム脳症」を発症。緊急透析によって血中のセフェピムの濃度が下がり、患者の容体は急速に回復しました。

4月12日(水)

第2回 患者の訴え「突然 けいれんが」

母親とともに和服と小物の店を営む25歳の女性。しっかりものと評判だった。ところが突然、叫び声を上げ、わけのわからないことを言い出し、けいれんを起こして倒れた。母親が救急車を呼び病院へ。けいれんは治まったが、意識がもうろうとして母親のことも認識できていない。母親によると、最近、様子がおかしかったという。いないはずの子どもと会話したり、その子の着物を探したり。熱を計ると38度を超えている。
【ドクターG】 群星沖縄研修プログラム 医師・徳田安春
【ゲスト】 荒俣宏、おのののか
 
~傍腫瘍性辺縁系脳炎(ぼうしゅようせいへんえんけいのうえん)~
何らかの腫瘍ができたときに作られる自己抗体(細胞やウイルスではなく、自分の細胞や組織を攻撃してしまう抗体で、免疫システムの異常によってできる)が、腫瘍と離れた場所にある脳の辺縁系(記憶や情動を司る)を攻撃してしまうことによって生じる病気です。幻覚や、記憶障害が現れ、重篤化すると、けいれんや意識障害を引き起こします。10年ほど前にアメリカのダルマウ教授によって提唱された新しい病気で、自己抗体が、脳内のNMDA受容体(興奮性の神経伝達物質に関わる)に機能障害を引き起こすことから「抗NMDA受容体脳炎」と言われています。卵巣腫瘍が引き金となることが多いとされていますが、研究が進むにつれ、子どもや男性にも発症することがわかっています。
この病気は医師にも正しく理解されていないことが多く、患者は精神科などを受診して、原因不明のまま重症化するケースも多くみられます。年間500~1500人程度が発症しているのではないか、と言われています。
 
症例の患者は、卵巣の腫瘍(奇形腫)が原因で、傍腫瘍性辺縁系脳炎を引き起こし、幻覚、奇声を発する、発熱などの症状をきたしていました。卵巣を摘出する手術を受けて回復し、1年後の職場復帰に向けてリハビリに励んでいます。

4月5日(水)

第1回 患者の訴え「吐き気が続いている」

夫と共に、写真店を営む66歳の女性。1か月ほど前から、食べては吐く、を繰り返すようになった。食欲がなくなり、食べる事も怖くなって最近はふらふらと倒れるようになった。写真修整の腕の良い優秀な社員がやめたため、急に忙しくなり、心労も重なっている。近くの病院で胃カメラの検査をしたが、大きな異常は見られない。紹介状を持ってドクターGのもとを訪ねると・・・
【ドクターG】 神戸市立医療センター中央市民病院 医師・金森真紀
【ゲスト】 前田 吟、紺野美沙子

~すい臓がん(すいぞうがん)~
すい臓は胃や十二指腸(じゅうにしちょう)、脾臓(ひぞう)などに囲まれている、長さ20cmほどの細長い臓器です。食物の消化を助けるすい液や、血糖値の調節に必要なインスリンというホルモンを作る役割を果たしています。すい臓にできた悪性腫瘍が、すい臓がんです。毎年3万人以上が、この病気で亡くなっています。すい臓は体の深部に位置し、がんができても見つけるのが非常に難しいとされています。また、早い段階では特徴的な症状がありません。このため、早期発見が難しく、多くは、がんとわかったときにはすでに進行しています。
症例の患者は、すい臓がんが、すい臓の周りにあるリンパ節や十二指腸へと広がって、十二指腸の食物が通る道が狭くなっていました。そのため食べ物が詰まり、嘔吐を繰り返すようになりました。十二指腸に広がったがんは、小腸に近い場所(水平脚)にできていたために、胃カメラではみることができませんでした。すい臓の一部と共に、十二指腸を塞いでいた癌やリンパ節などを取り除く手術を行い、患者は1か月後に退院。現在は通院で治療を続けています。
Page Top