9月20日(水)

「総合診療医 ドクターG」選 患者の訴え「熱が出ておなかが痛い」

患者は、母親と妹、祖父の4人で暮らす5歳の男の子。去年、両親が離婚し、父親代わりの祖父と毎日空手の練習をしている。いつもは手がかからないお兄ちゃんなのだが、ある朝、なかなか起きてこないので母親が見に行くと、激しい腹痛で苦しんでいる。熱もある。母親が会社に「休む」と連絡を入れようとしたところ、吐いてしまった。急いでかかりつけの病院へ。すると、総合病院に行ったほうが良いといわれドクターGを紹介された。

【ドクターG】 新潟大学医歯学総合病院 小児科・医師・齋藤昭彦
【ゲスト】 関根勤、安めぐみ

~肺炎球菌性肺炎による胸膜炎(はいえんきゅうきんせいはいえん による きょうまくえん)~

肺炎は、さまざまな菌やウイルスによって引き起こされますが、中でも肺炎球菌と呼ばれる細菌が原因となることが最も多いとされています。肺炎球菌は、主に鼻咽頭(鼻とのどの奥)に住み着いていて、咳やくしゃみで菌が周囲に飛び散り、それを吸い込むことによって感染します。この菌に感染して肺炎を発症すると、激しい咳、痰、発熱、胸の痛みなどの症状が出ます。重篤化して、菌が髄膜炎や血液の中に入り込み、「敗血症」を引き起こすことがあります。0歳から5歳までの小児や、65歳以上の高齢者などの免疫力が弱い人がかかりやすく、予防接種が推奨されています。
今回の症例の5歳男児の患者は、肺炎球菌が気道から肺の内部に感染するルートではなく、何らかの原因で菌が血液中に入り、血流に乗って肺の外側に達するルート(「浸潤(しんじゅん)性肺炎球菌感染症」)で感染したため、咳などの風邪の症状がありませんでした。肺を包む胸膜にまで炎症が及んで「胸膜炎」を引き起こし、その痛みが神経を伝わり、腹痛を引き起こしていました。
抗生物質の効果で来院翌日に解熱。腹痛も治り、1週間後に無事に退院しました。


9月13日(水)

第18回 患者の訴え「立ちくらみでふらつく」

患者の男性は食品メーカーに勤めていたが、父親がガンとわかり、会社を退職して、父のやっていた農業のあとを継いだ。仕事にも慣れ、軌道に乗ってきた矢先・・・。ここ数ヶ月、食欲はあるのに体重が減り、だるさもある。ハウスでの作業中に立ちくらみでふらついてしまった。心配する妻にすすめられドクターGの元へやってきた男性。ドクターGは問診によって、一つの症状の裏に隠れた別の症状に注目。病気の正体を突き止めていく。

【ドクターG】 岡山大学病院 医師・片岡仁美
【ゲスト】 松尾 貴史、光浦 靖子

~IgG4関連疾患(アイジージーフォーかんれんしっかん)~

IgG4関連疾患(アイジージーフォーかんれんしっかん)は、さまざまな組織や臓器が、リンパ球やIgG4を分泌する形質細胞が集まることによって腫れたり硬くなったりして、機能が低下する病気です。涙腺や唾液腺、すい臓が侵されやすく、すい臓に病変が起きると、糖尿病を引き起こすことがあります。原因は不明で、治療はステロイド薬を投与します。
症例の患者はIgG4関連疾患により、目が乾く、まぶたが腫れる、口が乾く、糖尿病、背中の痛みの症状が出ていました。ステロイド薬の投与によって目や口の症状は2週間で治まり、インスリンの分泌も徐々に回復中で糖尿病は完治する見込みです。


9月6日(水)

第17回 患者の訴え「熱があってだるい」

患者は、会社員の夫と2人暮らしの62歳の女性。「駄菓子屋のおばちゃん」として子どもたちに人気だ。ひざの持病もあるが、駄菓子屋を放課後の居場所にしている子どももいて、少々のことでは店を休まないようにしている。ところが1週間ほど前から熱が出て、だるい。吐き気もする。熱が上がってどうにも動けなくなりドクターGの病院へ。検査をすると尿から細菌が!感染症?ところがドクターGは、別の病気の可能性を追求する。

【ドクターG】 総合病院国保旭中央病院 医師・塩尻俊明
【ゲスト】 辺見えみり、ロバート・キャンベル

~ACTH単独欠損症による続発性副腎不全(エーシーティーエイチたんどくけっそんしょうによるぞくはつせいふくじんふぜん)~

ACTH単独欠損症による続発性副腎不全は、脳の下垂体から出る6種類のホルモンのうち、副腎にコルチゾール(副腎皮質ホルモン)の分泌を促すACTHだけが欠乏することによって、体内のコルチゾールが不足する病気です。
ACTHが欠乏する原因は、下垂体の炎症、腫瘍、出血、壊死などが考えられていますが、発症のメカニズムは解明されていません。発熱、だるさ、食欲低下、吐き気、おう吐、低血圧、低血糖、関節痛などを引き起こします。治療は副腎皮質ホルモンのコルチゾールを投与します。

症例の患者は、脳下垂体のなんらかの異常によって、ACTH単独欠損症による続発性副腎不全を発症し、熱、だるさ、吐き気、おう吐、膝の痛み、膝の関節が固くなる などの症状が出ていました。診断が確定して、すぐに治療するためにコルチゾールを点滴投与しました。コルチゾールが補充されたことにより、わずか数時間後には、すべての症状は治りました。退院後も、不足するコルチゾールを補充するために内服治療を続ける必要があります。内服薬を飲めば、健常な人と変わらない日常生活を送ることができます。


8月30日(水)

第16回 患者の訴え「腹が痛くて動けねえ」

庭の剪定作業中に腹痛に見舞われた男性は、弟子同伴で、救急外来でドクターGに診てもらうことになった。心電図、エコー検査、腹部造影CT、血液検査…どれも異常は見られない。身体診察でも特異的な症状はない。さらに困ったことに、問診をするが、職人気質の男性の答えは、言葉数が少なく要領を得ない。腹痛の原因は何なのか?ドクターGは、口の重い患者を巧みに安心させ、病歴を聞き出して正しい病名にたどりついていく。

【ドクターG】 福井大学医学部附属病院 救急総合診療科 医師・林寛之
【ゲスト】 高橋英樹、中川翔子

~腹部アンギーナ(ふくぶアンギーナ)~
上腸間膜動脈など腸に酸素や栄養を送る動脈の血流が少なくなり、腸の働きが悪くなる病気です。原因は動脈硬化。症状は食事によって誘発される腹痛。体重減少です。下痢やおう吐を伴うこともあります。治療方法は腸の消化を助ける薬の内服、食事療法などです。重篤化して腸管が閉塞すると、バイパス手術を行うこともあります。

症例の患者は、動脈硬化が原因の腹部アンギーナの症状が7年前からあらわれていました。動脈硬化は一度なると治りませんが、消化酵素剤や腸の動きをよくする漢方薬(大建中湯)を飲むことで、腹痛の症状がおさまりました。


8月23日(水)

第15回 患者の訴え「ろれつが回らない」

中学生の娘と暮らす男性が、妻をがんで亡くしたのは去年。以来ずっと寂しそうにしていた娘が、母のような病気で苦しむ人を救う医者になりたいと言い出した。男性は、娘の夢を応援したいと、会社員の仕事の他に土日にコンビニでアルバイトを始めた。その矢先・・・。突然、半身が動かず、ろれつが回らなくなった男性。一刻を争う状況に。男性の命を救うため、心臓外科医のドクターGが下した判断とは?

【ドクターG】 昭和大学横浜市北部病院 心臓血管外科 医師・南淵明宏
【ゲスト】 片岡鶴太郎、篠原ともえ

~感染性心内膜炎(かんせんせいしんないまくえん)~

心臓の内側にある膜や弁に疣贅(ゆうぜい)と呼ばれる細菌などの塊が感染し、炎症が起きる病気です。心臓から送り出された細菌や血栓が血管内で詰まると、様々な臓器に機能障害が起きます。発熱やだるさ、関節の痛み、悪寒戦慄、頭痛、腹痛、記憶障害など全身に様々な症状が現れます。心臓弁膜症、先天性心疾患の患者にかかりやすく、また歯科衛生状態のよくない場合、長年の透析患者、注射歴のある患者にもかかる機会があると言われています。原則は抗生物質で細菌を死滅させます。しかし、内科的治療で効果が無い場合、つまり熱が下がらない、心不全がよくならない場合は弁を人工弁に取り替える弁置換手術を行います。

患者は何らかの原因で菌が感染し、脳梗塞を発症する1か月前から発熱が続いていました。壊れた弁を人工弁に取り替える弁置換手術を行い、生体弁に取り替えました。軽い麻痺が残ったものの、リハビリを経て、日常生活には大きな支障はなく暮らしています。


8月2日(水)

第14回 患者の訴え「ふらついて転んだ」

患者は1年前にがんで愛妻を亡くした79歳の独居老人。3か月ほど前から家に引きこもるようになり、近所の人たちも心配している。酒を飲んでいるのか、足腰が弱ったのか、おぼつかない足取りで歩く姿が時おり目撃されている。その男性がふらついて転んでしまった現場を、ドクターGが偶然見かけた。話を聞いてみると、うつや認知症のような症状もあるようだ。単なる老化のようにも見えるが、何らかの病気が隠れているのか?

【ドクターG】 諏訪中央病院 総合診療 医師・山中 克郎
【ゲスト】 山田五郎、中井美穂

~ビタミンB12欠乏症(ビタミンビーじゅうにけつぼうしょう)~
ビタミンB12は主に肉、魚、貝類などに含まれるビタミンで、神経伝達に必要な髄鞘(ずいしょう)と呼ばれる組織や、赤血球などを作るのに必要不可欠とされています。ビタミンB12の摂取が不足したり、体内での吸収が正常に行われなくなったりするとビタミンB12欠乏症を発症します。貧血、易疲労感、動悸、息切れ、ふらつき、歩行障害、深部感覚障害、手足のしびれ、うつ、認知障害、舌炎などの症状が出る事があります。
血液検査で血中のビタミンB12の濃度を計りますが、検査結果が基準値の範囲内であっても、下限値に近い場合はビタミンB12欠乏症の可能性があります。胃の摘出手術を受けた人が発症しやすいとされていますが、特に高齢者の場合は、ピロリ菌などによって胃の粘膜が破壊され、胃酸の分泌が低下する「萎縮性胃炎」が原因でこの病気にかかることがあり、注意が必要です。
症例の患者は、幼少期に感染したピロリ菌によって萎縮性胃炎になったことが原因でビタミンB12の吸収ができなくなり、発症しました。その後、ビタミンB12の内服薬を毎食後1錠、継続的に服用し、1年後に回復しました。


7月26日(水)

第13回 患者の訴え「話がかみ合わない」

自宅から2時間程の山へ孫とハイキングに行く約束をした男性。当日の朝、弁当を手作りし、妻や孫と出発したが、なんだか話がかみあわない。返事も生返事。妻は夫の異変に気が付き、ハイキングをやめ、病院へ連れてきた。男性はドクターGの前でも時々話がかみ合わなくなる。「今日は何月何日?」「…」「ここはどこかわかりますか?」「…」男性の身体に何が起きたのか・・・妻の証言から浮かび上がった思いがけない病気とは?

【ドクターG】 獨協医科大学附属病院 医師・志水太郎
【ゲスト】 辰巳琢郎、かたせ梨乃

~大動脈解離(だいどうみゃくかいり)~
大動脈壁の中膜に壊死が起こり、外膜と内膜の間に血液が流入することで動脈の壁がさける病気です。(原因)高血圧による動脈壁の劣化など。(症状)胸部や背部の激痛。解離の場所によっては、様々な臓器の合併症を引き起こすこともあります。(治療)血圧を下げる薬の投与。血管が破損した場合は、必要な範囲を人工血管に置き換える手術を行います。
今回の番組の症例の63歳の男性患者は、大動脈解離によって脳に血液がいったり、いかなかったりすることでおかしなことを言って話がかみ合わなかったり、ぼーとしたりする症状が現れたものでした。ドクターGは、患者が発症したと思われる瞬間の様子を患者の妻から、詳細に聞き出したことでいち早く、病名が明らかになりました。
心臓のすぐ近くから、腹まで解離をおこしていたため、患者は大動脈の一部を人工血管に置き換える緊急手術を行い、一命を取り留めました。


7月19日(水)

第12回 患者の訴え「ずっと肩が痛い」

女性は夫と娘、母親の4人暮らし。80歳を超える母親が骨折して引き取ることになり、仕事をやめて介護をしている。部屋の整理で家具をもって筋肉痛になり、その後、肩甲骨の辺りが痛みだし、だんだん悪化してきた。近所の病院でレントゲン、心電図を撮ったが異常はみつからなかった。しかし痛みはひどくなるばかり。母親は自分が迷惑をかけて申し訳ない、家を出て行くと言い出す始末・・ドクターGが突き止めた意外な病名とは!?

【ドクターG】 市立福知山市民病院 医師・川島 篤志
【ゲスト】 ハイヒール・リンゴ、松田 丈志

~褐色細胞腫(かっしょくさいぼうしゅ)~
主に副腎髄質(副腎の中心部)に発生する腫瘍。多くは良性ですが、悪性も1割程度あります。副腎外に発生したものは悪性腫瘍であるケースが多いです。血圧・心拍・呼吸などに作用するホルモンを過剰に産出します。
【原因】不明。
【症状】頭痛、動悸、冷や汗、ふらつきなどさまざま。
【治療】良性なら手術で腫瘍を摘出すれば治ります。

今回の患者の陽子さんは、副腎細胞腫が通常よりも大きくなり、肝臓を包む膜を刺激して起きた痛みを、脳が肩甲骨付近の痛みと取り違えた関連痛でした。


7月12日(水)

第11回 患者の訴え「突然ショック状態に」

2009年8月放送のパイロット版から、全ての「総合診療医ドクターG」の医療監修を行ってきた松村理司医師(洛和会ヘルスケアシステム)が、過去の番組を見ながら、ドクターGの本当のすごさを素人にもわかるように解説する特別版。今回取り上げるのは、去年放送の「突然ショック状態に」(ドクターGは藤田保健衛生大学病院の植西憲達医師)。命の危険が迫る集中治療室の中で、ドクターGの頭の中はどうなっているのか?

【ドクターG】洛和会ヘルスケアシステム 松村理司医師
【ゲスト】山田五郎、SHELLY

~脾臓摘出後の重症肺炎球菌感染症(ひぞうてきしゅつごのじゅうしょうはいえんきゅうきんかんせんしょう)~
肺炎球菌感染症は、肺炎球菌という細菌に感染、増殖することで起きる感染症。そのうち特に重症化したものが、重症肺炎球菌感染症で、数時間から数日で死に至る場合があります。
手術や外傷などで脾臓を摘出した人が肺炎球菌に感染すると、肺炎球菌に対する免疫システムが働かないため、細菌が体内で増殖し敗血症と呼ばれる重篤な状態に進展することがあります。本来、肺炎球菌に対する免疫システムには、脾臓が重要な役割(肺炎球菌のほか、髄膜炎菌、インフルエンザ桿菌等の抗体を作る働き)を果たしているためです。
体温の上昇や低下、震えを伴う悪寒などが現れ、心拍や呼吸が速くなり、血圧の低下や錯乱をきたします。ショック状態になり、命に関わります。
治療は容態によってさまざまですが、敗血症性ショックを引き起こした重篤な場合は、集中治療室で、輸液や抗生物質の投与などを慎重に行う必要があります。
また、脾臓を摘出した患者は、定期的に肺炎球菌などのワクチンの接種を行って、細菌感染によって重篤化するリスクを軽減する必要があります。
症例の患者は、20年ほど前に血小板が減少する病気にかかり、内視鏡手術で脾臓を摘出していました。肺炎球菌ワクチンを接種していなかったため、肺炎球菌による感染が重篤化し、ショック状態を引き起こしました。

6月28日(水)

第10回 患者の訴え「おなかがすごく痛くなる」

3か月前に憧れの店の店長になったのだが、売り上げがふるわない。社長には「店長交代」をにおわされる始末。ペットのうさぎが死んだショックも重なって、体重が6キロ減った。2か月ほど前から、右側の腹に痛みが出るようになった。なぜか暇な日の、それも決まって夕方になってから痛くなり、家に帰って一晩寝るとすっかり良くなる。近所の医者に行ったが、どこにも異常は見つからない…。
【ドクターG】 大阪医科大学附属病院 医師・鈴木 富雄
【ゲスト】 ダイアモンド☆ユカイ、アンミカ

~遊走腎(ゆうそうじん)~
腎臓が、何らかの理由で通常の位置より下がることによって、痛みなどの症状が出る病気です。約5㎝以上、あるいは2椎体以上下垂すると、この病気と診断されます。痩せて、腎臓を支えていた脂肪組織がなくなることで、この病気を発症することがあり、女性に多く見られます。筋肉が弱く腹圧が保てないことや、手術によって腎臓の下の組織が弱くなったことなどが原因となる場合もあります。左側より右側の腎臓が下がる頻度が高いとされています。
腎臓が下垂すると、腎臓につながる神経が引き伸ばされるため、長時間立ち続けたり、上下動が加わったりすると、腹痛、あるいは背部痛が出ます。ひどい場合は、下垂した腎臓が骨盤の中に入り込むこともあります。尿管が折れ曲がって尿を送り出すことができなくなると、差し込むような痛みが繰り返す、疝痛(せんつう)が出るほか、血尿、排尿困難・頻尿などの症状を来たします。頭痛や耳鳴り、倦怠感、胃腸障害などを伴うこともあります。
太る、腹筋を鍛える、ソフトコルセットの使用などで症状が改善します。重症の場合は、まれに手術することもあります。
今回の症例は、客が少なく、長時間立ち続けている暇な日に、右下腹部痛が出ていました。接客するときには座って前かがみの姿勢をとるため、腹圧が上がり、腎臓の下垂が起きません。そのため、忙しい日には症状が出ていませんでした。

6月21日(水)

第9回 患者の訴え「熱が出て おなかが痛い」

患者は、母親と妹、祖父の4人で暮らす5歳の男の子。去年、両親が離婚し、父親代わりの祖父と毎日空手の練習をしている。いつもは手がかからないお兄ちゃんなのだが、ある朝、なかなか起きてこないので母親が見に行くと、激しい腹痛で苦しんでいる。熱もある。母親が会社に「休む」と連絡を入れようとしたところ、吐いてしまった。急いでかかりつけの病院へ。すると、総合病院に行ったほうが良いといわれドクターGを紹介された。
【ドクターG】 新潟大学医歯学総合病院 小児科・医師・齋藤昭彦
【ゲスト】 関根勤、安めぐみ

~肺炎球菌性肺炎による胸膜炎(はいえんきゅうきんせいはいえん による きょうまくえん)~
肺炎は、さまざまな菌やウイルスによって引き起こされますが、中でも肺炎球菌と呼ばれる細菌が原因となることが最も多いとされています。肺炎球菌は、主に鼻咽頭(鼻とのどの奥)に住み着いていて、咳やくしゃみで菌が周囲に飛び散り、それを吸い込むことによって感染します。この菌に感染して肺炎を発症すると、激しい咳、痰、発熱、胸の痛みなどの症状が出ます。重篤化して、菌が髄膜炎や血液の中に入り込み、「敗血症」を引き起こすことがあります。0歳から5歳までの小児や、65歳以上の高齢者などの免疫力が弱い人がかかりやすく、予防接種が推奨されています。
今回の症例の5歳男児の患者は、肺炎球菌が気道から肺の内部に感染するルートではなく、何らかの原因で菌が血液中に入り、血流に乗って肺の外側に達するルート(「浸潤(しんじゅん)性肺炎球菌感染症」)で感染したため、咳などの風邪の症状がありませんでした。肺を包む胸膜にまで炎症が及んで「胸膜炎」を引き起こし、その痛みが神経を伝わり、腹痛を引き起こしていました。
抗生物質の効果で来院翌日に解熱。腹痛も治り、1週間後に無事に退院しました。

6月14日(水)

第8回 患者の訴え「おなかが張って苦しい」

絵本を中心に扱う書店を経営する58歳の女性。読み聞かせや、被災地に本を送る活動にも力を入れている。最近おなかが張って苦しいと、大学病院の消化器内科を受診。腹水がたまっていることがわかり、検査したところ、腹水からがん細胞が見つかった。「余命3ヶ月」と言われてホスピスを勧められたものの、セカンドオピニオンを受けたいとドクターGの元に・・・。「先生、私、諦めたくないんです!」患者を救うことはできるのか?
【ドクターG】 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科 医師・勝俣範之
【ゲスト】 湯山玲子、勝村政信

~原発性腹膜がん(げんぱつせいふくまくがん)~
がんは、最初に発生した場所(原発巣)によって、「肺がん」「胃がん」のように診断されますが、まれに転移したがん(転移巣)はあるものの、どのような検査をしても原発巣が見つからないことがあります。「原発不明がん」です。
「原発不明がん」には、さまざまな種類がありますが、そのうち、女性で腹膜に転移が認められ、腫瘍マーカーCA125が高値を示し、消化器や卵巣などの臓器にがんがないものには、特に「原発性腹膜がん」という病名がつけられています。これまでの臨床データから、卵巣がんと同じ治療が有効なことがわかっています。
症例の患者は、消化器内科・婦人科・泌尿器科などの専門科で診察を受けたものの、原発巣がみつからないために、治療できないと言われていました。臓器別ではなく、がんを総合的に診ることができる腫瘍内科のドクターGによって診断がつき、卵巣がんと同じ抗がん剤治療と、大網(腹膜の一部)、子宮、卵巣の摘出手術を行いました。5年後の現在、がんの再発はなく、元気に仕事をしています。

6月7日(水)

「総合診療医 ドクターG」選 患者の訴え「背中が痛む」

患者は、姑の介護で、心身ともにストレスフルな生活を送っている50歳の女性。1年ほど前から、ときおり背中に刺すような痛みを感じていた。介護疲れか、更年期障害か、それとも何かもっと恐ろしい病気かも…と不安に思っていたところ、ある夜、娘と電話しているときに、突然激しい痛みに襲われた。肩やあご、胸も痛む。驚いて実家に駆け付けた娘とともにドクターGの病院へ。問診を続けていくと…
【ドクターG】 岡山大学病院 医師・片岡仁美
【ゲスト】 早見優、六角精児

~微小血管狭心症(びしょうけっかんきょうしんしょう)~
心臓の微小血管が狭まって、血流が悪くなる病気です。閉経前後の女性でおきることがあります。原因は、動脈硬化を防ぐ作用のある女性ホルモン(エストロゲン)の分泌がへることによるといわれています。症状は、胸や背中の痛みなどで、比較的、安静時に起きることが多いとされています。更年期障害の女性のうち、10人に1人がかかるという調査もあり、心筋梗塞に至ることもあります。
治療は狭心症薬のうち、カルシウム拮抗薬やニコランジルを服用します。

症例の患者は、いろいろな医療機関をまわって、心電図やエコー、CTなどのほか、専門医のもとで心臓カテーテル検査までしましたが、異常がみつかりませんでした。
「微小血管狭心症」を疑ったドクターGが、専門の医師に特別の検査を依頼したことで、確定診断することができました。カルシウム拮抗薬を長期間服用することで、痛みがでることもなく、元気に過ごしています。

5月31日(水)

第7回 患者の訴え「吐き気がとまらない」

2009年8月放送のパイロット版から、全ての「総合診療医ドクターG」の医療監修を行ってきた洛和会ヘルスケアシステムの松村理司(まつむらただし)医師。医療の素人には、ドクターGの本当の凄さが十分に伝わっていないのではと常々考えていたという。そこで、満を持してスタジオに登場し、過去の番組を徹底解説する。今回取り上げる番組は、去年放送の「吐き気が止まらない」(ドクターGは洛和会丸太町病院の上田剛士医師)。
【ドクターG】 洛和会ヘルスケアシステム 松村理司医師
【ゲスト】 ハイヒール・リンゴ、平 岳大

~糖尿病性ケトアシドーシス(とうにょうびょうせいけとあしどーしす)~
糖尿病の患者が、糖をエネルギーとして細胞に取り込む働きをするインスリンが不足することによって起こる、急性の代謝性合併症。悪心や嘔吐、腹痛、尿量増加、脱水などの症状が現れる。深くて速い「クスマウル大呼吸」や、果物のような甘い香りの吐息「ケトン臭」などが、特徴的な症状として挙げられる。
多くは、糖尿病患者のインスリン注射の減量や中止、感染症などの身体的ストレスなどがきっかけとなり発症する。清涼飲料水を過剰摂取することでも、発症することがある。
治療は、大量の生理食塩水とインスリンの投与。 症例の患者は、胃腸炎の発症で身体的なストレスがかかっていた。食欲も低下していたので、カロリー不足にならないようにと大量の清涼飲料水を飲んだことが原因で、糖尿病性ケトアシドーシスを発症した。

5月24日(水)

第6回 患者の訴え「右胸が痛い」

出版社で子育て雑誌の編集をしている38歳の女性。「右胸が痛い」と、片道2時間もかけてドクターGを訪ねてきた。詳しく問診すると、2年ほど前から、体のあちこちが痛み出したという。最初は右足のすね。そのあと両腕や背中も。その上、最近は目がかすんでモノが二重に見えるという。しかし、いろんな病院を回ったが、どこも悪くないと言われ、検査をしても異常なし…。ドクターGいわく、史上最大の難問!
【ドクターG】 洛和会音羽病院 医師 神谷亨
【ゲスト】 ドリアン助川、壇蜜

~身体症状症(しんたいしょうじょうしょう)~
精神の不安定さが身体の症状として現れる病気です。痛みなどの苦痛を伴う症状や、健康に対する不安にとらわれていることなどが特徴で、物事を悲観的に考え、不安を膨らませるタイプの人に多くみられます。以前は身体表現性障害と呼ばれていました。症状を説明できるような身体的疾患がないにもかかわらず、さまざまな場所の痛みや痺れ、吐き気、喉の違和感などが6か月以上続きます。
身体症状症は、比較的よくある病気で、日本人の成人の5パーセントから7パーセントがこの病気だと考えられています。
治療法は、心理療法、薬物療法、職場や家庭の環境調整などです。しかし、実際に痛みなどの身体的な苦痛があるために、精神的な疾患だということが受け入れられず、ドクターショッピングを繰り返し、なかなか治療に向き合えない人が多くいます。
今回の症例の患者は、2年前の右足のすねにはじまり、右胸、両腕、背中にビリビリとした痛みを感じるようになりました。さらに、半年前、インターネットで調べたことがきっかけで、自分は「多発性硬化症」だと思い込み、「物が二重に見える」「飲み込みにくい」といった多発性硬化症の症状も出るようになりました。自分がある病気だと深く思い込むと、実際にその病気の症状が現れることも、身体症状症の特徴の一つです。ドクターGの診察を受け、患者は自分の病気を正しく理解し、病気は快方に向かっています。

5月17日(水)

第5回 患者の訴え「あちこちの関節が痛い」

食品輸入会社に勤める31歳の男性。社長の娘と結婚し、順風満帆のサラリーマン人生を歩み始めた矢先のこと…。2週間前、PCを操作してメールを読もうとしたとき、手首の関節痛に気付いた。じっとしていても痛いが、社長に褒められて握手をされたらもっと痛い。最近は、両方の膝や腕、肩まで痛くなってきた。ドクターGは、3か月前の新婚旅行の話を聞き、思いもかけない病気を疑う。その病名は?
【ドクターG】 本輪西ファミリークリニック 医師・草場鉄周
【ゲスト】 SELLY(シェリー)、ガレッジセール ゴリ

~B型肝炎(びーがたかんえん)~
B型肝炎ウイルスが肝臓に住みつくことで炎症が起きる病気で、ウイルス性肝炎のひとつです。ウイルス性肝炎には他に、A型、C型など、ウイルスの違いによっていくつかの種類があります。B型肝炎ウイルスに感染すると、初期には関節痛や発熱、発疹、倦怠感など、一般的なウイルス感染と同じような前駆症状が出ます。体の免疫システムによってウイルスが撃退できれば、それ以上の症状は出ません。しかし、ウイルスが肝臓に住み着いて増殖すると、肝臓の細胞に入り込んだウイルスを免疫システムが攻撃するために、肝細胞が破壊され、黄疸などの肝炎の症状が出ます。慢性化すると、肝硬変や肝臓がんの原因になります。
B型肝炎は、かつて予防接種などの際に注射器の使い回しが行われたことによって、40万人以上の感染被害者を出しました。注射器の連続使用が行われなくなった現在は、性交渉での感染が多くなっています。
B型肝炎の感染ルートには、B型肝炎ウイルスを持つ母親から生まれた赤ちゃんが、出産の際に感染する母子感染と、性交渉やタトゥーなど母子感染以外でうつる水平感染があります。母子感染の場合、多くは本人には症状が現れませんが、ウイルスを感染させてしまいます。
番組で紹介したケースでは、患者の妻が生まれるときに、B型肝炎に母子感染していました。患者は妻との性交渉によって感染し、前駆症状で関節痛や発熱、発疹を来たしました。その後、患者は、急性肝炎を発症して黄疸などの症状が出ましたが、5日後に無事退院しました。

5月10日(水)

第4回 患者の訴え「意識がない」

30歳の会社員の女性が、意識不明で病院に救急搬送されてきた。自宅を訪ねた友人が発見したという。友人によると、3日前に電話したときに会話のつじつまが合わず喧嘩になり、その後電話にも出なくなったという。心配になって家を訪ねたら、部屋の中は足の踏み場もないほど散乱していた。事件か?と思ったら、ベッドの横でいびきをかいて寝ている。起こしても起きない。いったい女性の身に何が?
【ドクターG】 藤田保健大学病院 医師・植西憲達
【ゲスト】 松尾貴史、篠原ともえ

~全身性エリテマトーデス(ぜんしんせいえりとまとーです)~
本来は、体内に入った細菌やウイルスなどを撃退する免疫システムが、誤って、自分自身の正常な細胞や組織を攻撃する自己免疫疾患の一つです。腎臓、腸、関節、皮膚、脳、心臓など、全身のさまざまなところに炎症が起きることがこの病気の特徴です。発熱、全身けん怠感、鼻の周りの赤い発疹、関節痛、全身のむくみ、抑うつなど、さまざまな症状が現れます。中枢神経に炎症が出る場合は重症で、妄想などの精神症状や、痙攣や脳血管障害がみられます。
症例の患者は、脳に炎症が起きていたため、意識障害や異常行動がみられました。
来院3日目に、ステロイド(副腎皮質ホルモン)を大量に点滴投与するステロイドパルスという治療を行い、徐々に炎症が治まりました。脚に若干の麻痺は残りましたが、会話も普通に行えるようになり、今は元気に暮らしています。

4月19日(水)

第3回 患者の訴え「ボーっとして反応しない」

去年定年を迎えた66歳の男性。50代で糖尿病を発症し、週3回の透析に通いながら、今は転籍して子会社で働いている。3日前、耳が痛くなり熱が出た。翌日透析の病院で診てもらったが熱が下がらない。今日は、取引先の都合で急な会議が入り、透析を受けたあと夜に会社に戻った。大事な会議の最中に意識がもうろうとし始め、部下に抱えられて病院へ。その後さらに意識レベルが低下していく…緊急事態だ!
【ドクターG】 国立国際医療研究センター 医師・忽那賢志
【ゲスト】 山村紅葉、いとうせいこう

~セフェピム脳症(せふぇぴむのうしょう)~
セフェピムという抗菌薬が原因で引き起こされる薬剤性の脳症です。
セフェピムは、幅広い細菌に効果があるため、さまざまな感染症の治療に用いられます。緑膿菌に効果のある数少ない抗菌薬の一つで、経口薬(飲み薬)ではなく点滴で投与されます。
セフェピムの投与量が同じでも、セフェピム脳症の発症には個人差があります。特に、腎障害を持つ人には注意が必要で、決められた用量を守っていても、複数回投与すると血中の濃度が高くなり、発症リスクが高まります。意識障害のほか、けいれんなどの症状をきたすことがあります。投薬を中止することで回復するケースがほとんどですが、透析を行って薬物を体内から除去すると回復が早まります。

症例の患者は、緑膿菌が原因とみられる中耳炎にかかって発熱していたため、これを治療する目的で、透析の後にセフェピムが投与されました。決められた用量は守られており、また実際には、患者の腎機能低下を想定した投与量の調整も行われていて、医療ミスにはあたりません。しかし、2度目の透析後の投与で「セフェピム脳症」を発症。緊急透析によって血中のセフェピムの濃度が下がり、患者の容体は急速に回復しました。

4月12日(水)

第2回 患者の訴え「突然 けいれんが」

母親とともに和服と小物の店を営む25歳の女性。しっかりものと評判だった。ところが突然、叫び声を上げ、わけのわからないことを言い出し、けいれんを起こして倒れた。母親が救急車を呼び病院へ。けいれんは治まったが、意識がもうろうとして母親のことも認識できていない。母親によると、最近、様子がおかしかったという。いないはずの子どもと会話したり、その子の着物を探したり。熱を計ると38度を超えている。
【ドクターG】 群星沖縄研修プログラム 医師・徳田安春
【ゲスト】 荒俣宏、おのののか
 
~傍腫瘍性辺縁系脳炎(ぼうしゅようせいへんえんけいのうえん)~
何らかの腫瘍ができたときに作られる自己抗体(細胞やウイルスではなく、自分の細胞や組織を攻撃してしまう抗体で、免疫システムの異常によってできる)が、腫瘍と離れた場所にある脳の辺縁系(記憶や情動を司る)を攻撃してしまうことによって生じる病気です。幻覚や、記憶障害が現れ、重篤化すると、けいれんや意識障害を引き起こします。10年ほど前にアメリカのダルマウ教授によって提唱された新しい病気で、自己抗体が、脳内のNMDA受容体(興奮性の神経伝達物質に関わる)に機能障害を引き起こすことから「抗NMDA受容体脳炎」と言われています。卵巣腫瘍が引き金となることが多いとされていますが、研究が進むにつれ、子どもや男性にも発症することがわかっています。
この病気は医師にも正しく理解されていないことが多く、患者は精神科などを受診して、原因不明のまま重症化するケースも多くみられます。年間500~1500人程度が発症しているのではないか、と言われています。
 
症例の患者は、卵巣の腫瘍(奇形腫)が原因で、傍腫瘍性辺縁系脳炎を引き起こし、幻覚、奇声を発する、発熱などの症状をきたしていました。卵巣を摘出する手術を受けて回復し、1年後の職場復帰に向けてリハビリに励んでいます。

4月5日(水)

第1回 患者の訴え「吐き気が続いている」

夫と共に、写真店を営む66歳の女性。1か月ほど前から、食べては吐く、を繰り返すようになった。食欲がなくなり、食べる事も怖くなって最近はふらふらと倒れるようになった。写真修整の腕の良い優秀な社員がやめたため、急に忙しくなり、心労も重なっている。近くの病院で胃カメラの検査をしたが、大きな異常は見られない。紹介状を持ってドクターGのもとを訪ねると・・・
【ドクターG】 神戸市立医療センター中央市民病院 医師・金森真紀
【ゲスト】 前田 吟、紺野美沙子

~すい臓がん(すいぞうがん)~
すい臓は胃や十二指腸(じゅうにしちょう)、脾臓(ひぞう)などに囲まれている、長さ20cmほどの細長い臓器です。食物の消化を助けるすい液や、血糖値の調節に必要なインスリンというホルモンを作る役割を果たしています。すい臓にできた悪性腫瘍が、すい臓がんです。毎年3万人以上が、この病気で亡くなっています。すい臓は体の深部に位置し、がんができても見つけるのが非常に難しいとされています。また、早い段階では特徴的な症状がありません。このため、早期発見が難しく、多くは、がんとわかったときにはすでに進行しています。
症例の患者は、すい臓がんが、すい臓の周りにあるリンパ節や十二指腸へと広がって、十二指腸の食物が通る道が狭くなっていました。そのため食べ物が詰まり、嘔吐を繰り返すようになりました。十二指腸に広がったがんは、小腸に近い場所(水平脚)にできていたために、胃カメラではみることができませんでした。すい臓の一部と共に、十二指腸を塞いでいた癌やリンパ節などを取り除く手術を行い、患者は1か月後に退院。現在は通院で治療を続けています。
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