自分と同じように傷みを背負って生きる若者たちと映画を作りたい。俳優サヘル・ローズの呼びかけに応えて8人の素人の若者が参加して映画「花束」の撮影がスタートしたのは2020年のことだった。監督のサヘルも若者たちも児童養護施設出身。複雑な家庭の事情を抱えて生きてきた。撮影現場は、傷みを分かち合う「居場所」のようになり、「表現」は気持ちを吐き出す手段となっていった。映画完成までの日々を追った4年間の記録。
52歳でピアノを始めたのり漁師の徳永義昭さん。きっかけは難曲として知られるリストの「ラ・カンパネラ」を聞き、この曲を弾きたいと思ったことだった。猛練習の末、各地でコンクールに出るまでになった徳永さんにそっと付き添うのは、ピアノ講師でもある妻の千恵子さん。義昭さんをピアノに駆り立てたものは何だったのか。そして妻の千恵子さんの思いは。夫婦の「旅」の物語。
沖縄返還時の日米の密約に迫った新聞記者、西山太吉の逮捕から52年。起訴状に書かれた「情を通じ」が国家の密約の問題を男女のスキャンダルへと塗り替えていった。渦中にあった太吉の妻、啓子がつづった日記がある。国の圧力や社会の好奇の目の中でもがき苦しんだ夫婦の記録でもある。著書「密約」で知られる作家、澤地久枝が読み解く啓子の葛藤。残された家族が初めて知る両親の苦悩。事件に翻弄された記者と妻の思いに迫る。
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