俳句王国道場

お題 思い出したい/忘れたい
2019年5月26日~6月10日募集

町一つ消えた日道が灼けている(ひでやん)

「町一つ消えた日」は原爆の落ちた日ではないかと読みました。
季語「灼け」が暑いあの日を想像させるのかもしれません。
「町」というものが一瞬にして消えてしまうとは、なんという信じ難い出来事か。
その思いを噛みしめながら歩く「道」は熱く熱く「灼けている」のです。
忘れたいが忘れてはいけない日です。

すずらんや先生二年目の板書(一斤染乃)

私は中学校の教員でした。
「板書」が大嫌いで、黒板に一文字も書かずに授業はできないものかと本気で考えたこともありました(苦笑@そんなことは無理)。
この句の「先生」とはご自身でしょうか、第三者の視線でしょうか。
季語「すずらん」は「先生」の人柄や佇まい、明るくて優しいまなざしなどを感じさせます。

風鈴や人形に伝わる噂(あみま)

涼しげな音が聞こえてくる上五「風鈴や」から一転。
「人形に伝わる噂」という展開に驚きます。
涼しさを通り越してホラーっぽくなるのは、作者の狙ったところ。
あの「人形」はね、誰もいなくなると動くんだよ、なんて噂でしょうか。
「風鈴」が鳴る度に、子どもの頃の恐怖を思い出してしまうのかもしれません。

秀逸「銀の夏井」賞
秀逸「銀の夏井」賞
秀逸「銀の夏井」賞
秀逸「銀の夏井」賞

佳作

朝練の創作ダンス蝉の声    彩風
給食のお皿を落とし青嵐    大津美
オルゴールもう鳴らずして梅雨兆す    大野美波
嫁してなほ母の娘や鹿尾菜炊く    井久
忘れたいことを忘れて牛蒡引く    花紋
忘れたき事はもう無し朧月    洒落神戸
持つてけと西瓜提灯くれし父    椋本望生
釜山港出るや嘔吐の引揚船    大村真仙
かくまいし嫁が君の増えに増え    ペトロア
柿くらゐ堅く臭はぬひとでした    抹茶金魚
夏の果消したい過去の雨模様    天野呑水
秋の昼固定電話に果報あり    風独楽
短夜や繋ぐ手ひやりネオン街    相沢 雨
青鈍の手紙を君へ夏の月    飯村祐知子
日焼け止めクリーム匂ふ水平線    かさご
薄れゐし香水の香よきみの香よ    紅さやか
投票に自分の名書く新学期    小市
吾が影の友だちなりし夏の果    紗千子
火の酒てふ牝馬高きへあのダービー    しいたん
緑陰や首輪抜き逃げ笑う犬    枝垂パセリ
夏の夜別れた人に誤送信    シュリ
同窓会に初恋のひと浮いてこい    酔芙蓉
「ちゃーちゃん」と伸ばす小さき手走馬灯    真珠星倫世
リヤカーに乗りしステレオ花吹雪    すみ
紫陽花や証見つけし夫の恋    空遊雲
ピラミッド崩れ最下位空高く    玉井瑞月
急ぎ入り水風呂に出づ冴え返る    衷子
体当たり玻璃戸透け過ぎ夏合宿    斗三木童
訳もなくひと遠ざけし花潜    直木葉子
余命告ぐ白衣のひとや白き黙    棗椰子
階段をくるくる転げ寒昴    根本葉音
月を見て吾は貴女を想い出す    野中泰風
落雷や寿司喰わん今夢と知る    ばあば
去りし夏祖父の唱えし祝詞の音    八月
駄菓子屋と夏潮かの日の通学路    はなあかり
陣取って仕掛け花火の見えぬおち    林田りこ
鐘鳴りて鞦韆だけが揺れる庭    ひかる丸
哀別の文面練るや罌粟の花    BOMOYANG
「おい」と呼び「あなた」と呼ばれ星祭    ポンタロウ
シャツのタグ慌てて千切る新社員    まいも
「ありがとう」と母のひと声冬夕焼    昌子
太鼓谷稲成神社手に手に鳥居夏の日や    松山のとまと
実習校違へて初夏を駆け出しぬ    みかりん
初蝉や「サヨナラ負け」の切り抜き記事    南風の記憶
君の横シュラフに眠る夏の山    もぐ
梅雨晴れ間囲碁を手習う媼かな    遊仙
校長室茶托転がり落つ晩夏    ゆすらご
熱帯夜あれこれ試すパスワード    ヨシケン
夏祭り解けぬように結ぶ指    律儀者の子沢山

俳句王国の単刀直入

●正しい表記とは
雷に会ひ 息出来ずして 溝に落つ    山本 裕美
前方へ 転ぶ二輪の 夏の朝    Q&A
亡き犬の リードにいつか 蜘蛛の糸    清水ケンシロウ
亡き犬の リードに張りし 蜘蛛の糸    清水トキ
台所で 青梅のジャム 作る母    田沢由紀子
ポケットに 君の手繋ぎ 雪の街    まりりん

○「五七五の間を空けず、一行に書く」のが俳句の正しい表記です。まずは、そこから♪

●添削のポイント
老いてなを 「じじい!来たぞ!」と 莫迦息子    山田敬三

○「なを」の歴史的仮名遣いに問題があります。
漢字では「猶」あるいは「尚」と書きますが、平仮名で歴史的仮名遣いすると「なほ」となります。
投句する前に国語辞典を引いて確認する習慣を身につけましょう。

●季重なり
湿原にカッコウを聴き尾瀬に夏    おうちぇん
落雷の樹下昼寝して遅れけり    勢田清

○どれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみましょう。
コツコツ調べることが、俳句修行の筋肉作りのコツです。


俳句王国道場

お題 上がる↑下がる↓
2019年3月21日~ 5月6日募集

ほうかごの遅春をろうかながきこと(綱長井ハツオ)

「放課後」の一語で場所と時間が分かります。
「遅春」とは、春の訪れが待ち遠しいことをいう時候の季語。
「放課後」という時間に「遅春」という季節の気分を重ねつつ、
「廊下の長きこと」という措辞は映像と共に春の愁いめいた心情も表現しています。
大学生の青春の憂いか、小中学校の先生の放課後の光景か。

ぴかぴかのつりせんでて来星すずし(はむ)

「来」は「く」と読む文語で、口語の「来る」にあたります。
「ぴかぴかのつり銭」が出てきただけなんだけど、なんか得したような気持ち。
その小さな心の動きを、夏の季語「星涼し」に託しました。
中七「つり銭出て来」という描写によって自動販売機に違いないと想像もできます。
仕事帰りかな、今日もお疲れさまでした♪

花茣蓙へとぷりすわれしけしょうすい(せり坊)

「花茣蓙」は夏の季語。
染めた藺で花模様を織り出した茣蓙です。
涼しげに引かれた「花茣蓙」に座って、湯上がりの「化粧水」をはたいている場面でしょうか。
うっかりと、しかもたっぷり零してしまった「化粧水」。
あ!勿体ない!という瞬間を「とぷり吸われし」と表現する心の余裕が、いかにも俳人らしい一句です。

秀逸「銀の夏井」賞
秀逸「銀の夏井」賞

佳作

ケチャップはないと泣く子や花吹雪    根本葉音
食パンの耳やはらかき四月かな     紗千子
春の虹あなたの声は空のやう    城内幸江
春少し入れて沈むやしまい湯に     じゃすみん
髪色を夫にほめられ雲雀笛     空遊雲
龍天に登るヅカ沼の底にて  八月
「あれ」「それ」と友と弾けし春日傘     山本 裕美
レシートにゾロ目の数字春の昼     風独楽
春の宵蠢く「異動通知」の紙     南風の記憶
雛納め津波がすべて流しけり    座布団三枚
老眼鏡かけて桟拭く寒の入    遠山比々き
富士見える声に窓打つ富士額     ばあば
夜桜や注いで注がれて深酔いし     ポンタロウ
成績の下がる妙薬恋の夏     ひでやん
春日向猫のキッスで目覚めけり     かつたろー。
令和来て人の嬉々たる五月かな    野中 泰風
ドンと鳴る闇を彩る遠花火    大村 真仙
三分咲き打線開花や鯉のぼり     早映
旅先は今真盛り桃の花    春雷
風薫る土もかおるや三塁打    玉井 瑞月
春雷の止みてパソコン回復す    飛梅
雲往きて山滴るやロープウェー     棗椰子
百日草見よ還暦のマツエクを    原水仙
背の丸き母が背負うか花満開     もぐ
初鰹丁々発止の句会終え    零茶

俳句王国の単刀直入

●正しい表記とは
週末の ほろ酔い列島 桜かな    ann
風船飛来 人権の花運動    いばぁば
取材来る レシピ検索 洲蛤    すかたん
桜餅 塩漬けの葉 茶の香り    まおか サヌキ

○「五七五の間を空けず、一行に書く」のが俳句の正しい表記です。まずは、そこから♪

●添削のポイント
推しメンの指差し我ぞ夏ライブ    八月

○気持ちは、分かる! が、「指差し」たのは、「推しメン」? それとも「我」? 誰が誰を指さしたのか、分かるように書きましょう。

【添削例】    推しメンの指差すは我ライブ夏
「推しメンの指差すは我/ライブ夏」
/線のところに意味の切れ目があります。
「夏」という季語を少しでも強調するために「ライブ」の「夏」だよ!というニュアンスに。

●推敲のポイント
冬囲い外し枝伸び春日影    だっちゃん

○「冬囲い」「春日影」、季語っぽいものが二つ入っています。
勿論「外し」だからいいだろうという考え方もありますが、ならば「冬囲い外す」を生かし、「春」の一字を外しても季節の変化は読み取れます。
推敲してみましょう。

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