旅日記

「佐原 祭りに集う」

リポーター:サスキア・トゥーレン

この旅で初めて佐原の町を訪れました。江戸時代の風情を想像させる素敵な街並みが、東京のこんな近くにあるとは思ってもみませんでした。現在の佐原は小さな町に見えますが、江戸時代には、舟運の町として栄え、当時は江戸より裕福だったとか。そのため“江戸まさり”と言われていたそうで、今も当時の雰囲気を守り続けている家や店が何軒も残っています。

さらに佐原で300年もの間、こんなに熱気あふれる祭りが行われてきたということにも驚きでした。
佐原には年に2回、夏祭りと秋祭りが行われています。巨大な人形や動物が乗っている24台の「山車」が二つの祭りの中心となります。各町内の人々が力を合わせて自分たちの誇りであるこれらの山車を曳き、町を練り歩くことで、厄除けになり、人々を疫病や災害から守ると言われています。その山車を作ったり動かしたり、時には山車の周りで歌ったり踊ったりして祭を盛り上げるのも、町の人々です。地域の協力なしでは、祭りは成功しません。子供から経験豊富なお年寄りまで、皆が一つになってお互い助け合うのです。今回、その事を身をもって知ることができました。

また、町の人々は、何があってもこの祭りを実行し続けています。今年も例外ではありませんでした。今年の夏祭りは準備から雨続きでしたが、佐原の人々は堂々と祭りをやり遂げました。雨の中で互いに声を掛け合い、時に苦労したり笑ったりしていた彼らの姿を見て、私はとても感動しました。皆の祭りに対する熱い思いが伝わってきたのです。だから私も人々と山車を一緒に曳いたり、踊ったりすることが許された時はとても嬉しかったです。皆と一緒に頑張って、苦労して、楽しんで、辛い気持ちと幸せな気持ちを重ねることで佐原の人々との絆が生まれてきたことは、とても素敵な経験でした!

私が佐原で過ごした時間は言葉通りに雨の中の時間でした。でも、そのおかげで佐原の人々の祭りに対する熱い思いに共感することができました。また佐原に行きたいです。そしてもう一度友達になってくれた佐原の人々の熱意を応援したいです。


「白山 聖なる山」

リポーター:ピーター・スコーヴ

白山は、石川県と福井県の県境にそびえる山です。日本百名山のひとつであるこの山に、私はずっと興味を持っていました。しかし今回の旅で、この名山には思っていた以上の魅力があることを知りました。白山比咩(しらやまひめ)神社と林西寺の双方を訪れた私は、特に、この山をめぐる仏教と神道の信仰、そして古いしきたりや寓話に心をひかれました。

白山へ行く際に白峰(しらみね)集落を訪れようと考える人はあまりいないでしょう。しかし、なんと興味深い歴史的な町であることか!養蚕業と住宅の造り、土地の利用法についてガイドの方から説明を受け、ただ昔ながらの趣のある山村を見たというだけではない知見を得ました。

白峰の「雪だるまカフェ」では、地元の食材を使った特別なランチを楽しみました。馴染みのある食材が、山ふかい里ならではの調理法で供されました。どれもとてもおいしかった!

今回、この山に登ったタイミングは最高だったと思います。高山植物がちょうど咲き始めた頃で、山にはまだ雪が残っていました。しかし本当に恵まれたのは、息をのむほど美しい日の出です。全国的に天気が非常に不安定で各地が暴風雨に見舞われていたなか、あのように見事な日の出を見ることができた自分は、とても幸運だと思います。

信仰、豊かな歴史、そして素晴らしい自然だけではまだ不足とでも言わんばかりに、白山の地質環境もまた興味深いものでした。登山の最中、私たちは、ジュラ紀にまでさかのぼる堆積岩のそばを通りすぎました。事実、福井と石川は化石のホットスポットです。日本列島が存在する前の海にアジア大陸の石が堆積した礫岩層も、見ることができました!

この旅は貴重な体験であったと、心から言えます。多くの知識を得、いろいろなことを考え、同時に素晴らしい時を楽しみました。あと、念のための情報ですが、白山室堂ビジターセンターの食事はおいしかったですよ!

旅の最後、白峰に戻ると、最高の温泉が私を待っていました。これ以上の旅は、到底望めません!

※白山比咩(しらやまひめ)神社の「咩」は、機種依存文字である為、異なる文字や記号が表示される場合があります。ご了承ください。


「八幡平 癒やしの天地」

リポーター:静香アンダーソン

この旅で私は、静かで風光明媚な岩手県を初めて訪れることになりました。事前には「八幡平を歩いて登る」ということがわかっていただけで、たぶん自然豊かで静かな場所なんだろうというぐらいにしか、正直なところ思っていませんでした。私は知らなかったのです。驚くべき秘密が、岩手には待ち受けていたということを。

にぎわっている盛岡駅で新幹線を降り、バスで八幡平へ向かいました。頭上には暗い雲がたちこめていました。しかし山へ到着すると太陽がわずかに微笑みはじめ、私は八幡平の魅力を存分に探索することができました。あっという間に頂上に着き、少し歩いただけでしたが、高山でしか見られない植物や、見渡すかぎりに広がる森と湿地帯に感嘆しました。それは、不思議な感覚でした…山の頂上に立っているのに、まるで大地にしっかりと足を踏んばり、平地の公園にでもいるかのような。

八幡平頂上の山小屋滞在で少し冷えたものの、ふもとの温泉で、疲れた体をすぐに温めることができました。そこで私は、大地の素晴らしい癒やしの力を知ることとなりました。大量のラジウムと地熱活動で、人の体のさまざまな不調が治ると言われているのです。

温まり休めたのは体だけではありませんでした。湯治宿の大部屋に滞在している皆さんの親しみやすさと周囲を巻き込むエネルギーのおかげで、心まで温かくなりました。郷土料理の作り方を教えて下さり、食べ物や飲み物を分けて下さった皆さんのご親切を、私は忘れないでしょう。皆さんの温かさで、旅がさらに特別なものになりました。ここは冒険好きの一人旅には、おすすめの場所です!


「静岡 茶の王国」

リポーター:アナンダ・ジェイコブス

静岡の茶についてまず印象的だったのは、農家の人たちが、茶を、生活の糧であるいち作物として淡々と扱いつつも、それを育てる全行程を心から楽しんでいるように見えたことでした。

彼らにとって茶とは何かをより深く探るため、いろいろな人から話を聞いていく中で、知らなかったような茶の飲み方や茶葉の食べ方まで体験でき、哲学的なレベルにおけることがらもいくつか発見しました。

茶は、何よりもまず、朝、午後、そして夕べに、日常的に飲まれるごく一般的な飲み物です。日本では、のどが渇いたらまず出されるのが緑茶です。抹茶と茶道にまつわる禅的なアプローチは例外として、茶を飲むことは日々のカジュアルな行動です。茶のいれ方や楽しみ方の決まりやマナーは、それを守らなければ「正しい」味が左右されるというような厳しいものではなく、人との交流や、自分と向き合う時間を導くためのものです。茶の味が出てくる時間が30秒から60秒とされるのは、苦みやうまみの綿密な計算に基づくというより、それが、例えば、仲間とちょっとした会話を交わすのにちょうどいい時間だからなのです。
確かに、同じ茶葉を使って、四煎目まで、味や香りの変化を楽しめます。しかし、恐らくそれはむしろ、穏やかな心が戻ってくるのを感じるまでの時間ということなのでしょう。元気づけのため、あるいは忙しい一日の息抜きとして、茶を飲みながら、心の変化を感じる時間です。茶は、気分を整えるものと言われます。必要なものをもたらしてくれるのです。

静岡において茶はまさにプライドの源であり、そして私は、各農家が自らの茶畑と収穫方法に注ぐ知識や情熱を大いに感じることができました。そのようなプライドとこだわりとのバランスが、これからもずっと、日本茶の品質を保っていくことなるのでしょう。


「西伊豆 究めるこころ」

リポーター:レイナ・バンビーノ

西伊豆で、険しい山を越え、入り組んだ海岸線を行った先に現れたのは、私の期待をはるかに越える美しい自然と、とてもフレンドリーな地元の人々でした。最初に訪れたのは、ユネスコの世界ジオパークに認定された伊豆半島の中でも最も古い地層でできている堂ヶ島です。海に点在する小島を船で巡るツアーでは、天候などの条件が良い時にしか見られない国の天然記念物 “天窓洞”に入り、10 メートルにも及ぶ波の浸食でできた大きな穴とそこに差し込む光が作り出す神秘的な光景を見ることができました。

さらに海沿いの小さな港町「松崎町」を訪ねました。そこは静かな町にも関わらず、見どころが多いことに驚きました。かつて風待ち港として栄えた松崎には、防火壁の役割を果たした幾何学模様の“なまこ壁”をもつ商家や旅館などが立ち並び、美しい景観を作り上げています。それは、日本の伝統的な左官の技術で作られていました。町を散策すると、地元出身の左官職人“入江長八(いりえちょうはち)”が漆喰で描いた“鏝絵(こてえ)”が寺や旅館、美術館に残されていることを知りました。特に寺にある“雲龍”の天井画や欄間に描かれた“飛天”は、170 年という月日が経っているとは思えないほどの美しさでした。長八は、さまざまなことへの感謝や安寧への願いを作品に込めており、それが今に伝え続けられている事に感激しました。さらに長八の遺志を受け継ぐ左官職人の中村一夫さんにお会いしました。常に向上心を持ち、暮らしの中から新しいインスピレーションを得て、多くの作品を生み出していました。中村さんが鏝絵について、私に語る姿は、幸福に満ちていて、今でも鮮明に覚えています。

松崎では、もう一つの発見がありました。それは、私の大好物である“桜餅”に使われている桜の葉が、西伊豆の山で1枚1枚手作業で摘み取られ、塩漬けにされているということでした。そこで働く農家の高橋さんは、毎朝4時に起きて作業をするそうです。私が「やりがいはありますか」と聞くと「あるよ」と元気な声で返事をして下さいました。その時、私は、この大自然の中で田畑を耕し生きる高橋さんの前向きな姿にとても感銘を受けました。

松崎までたどり着くには少し時間がかかりますが、旅をする前には想像すらできなかった多様な文化と心豊かな人々で溢れていました。そんな地元の人々の温かさに触れ、ユニークな体験させていただいたことは、私にとって一生の宝物です。


「山口 景観の物語」

リポーター:チャールズ・グラバー

目の当たりにしたものをたちまち驚愕させるすべを、母なる自然は常に持っているようです。今回、山口県のユニークな場所を旅することができました。気候変動とそれにまつわる議論が渦巻く時代に、人が自然とともに暮らしつつ少しだけ手を加えることで素晴らしい結果を生んでいるさまは、新鮮に映ります。

秋吉台には、おびただしい量の石灰石があります。カルスト台地の地表の大部分が見えるのは、元々農業のために始まった「山焼き」で枯れ草を燃やしているためです。かつて古代の海の底だった驚くほど多様な岩々は今、季節ごとに姿を変える草と美しいコントラストを見せ、あたかも屋外のアートガーデンのようです。

この巨大な構造の下には数多の洞窟があり、そのうち最も規模が大きいものが日本最大の鍾乳洞・秋芳洞です。私自身アメリカの、洞窟で有名な場所の出身なので、きっと期待はずれだろうとたかをくくっていましたが、見当違いでした。まさに驚異でした。

祝島にも行きました。野性の自然と人が見事に共存している島です。季節が合えば、日本で最もおいしいビワを味わえます。独特な方法で栽培されています。曲がりくねった細い道を進んで訪れた平さんの棚田の石垣には、仰天しました。巨大な、芸術的かつ実用的な石垣を一家族で築き上げた、驚くべき実例です。

島唯一の村で細い路地を散策していると、絵のように美しい石垣に出あいました。石と石の隙間を石灰石(再び石灰石です)でつくった漆喰で分厚く固めた、これまで見たことのない非常に手の込んだ石垣です。強固で実用的な防壁に、白い石灰石が芸術性を醸しています。これも、人の手仕事と大自然の芸術的な融合です。

山口県には、自然と人間の技が素晴らしく調和している例がいくつも存在します。ぜひご覧ください。私もあちらで皆さんにお目にかかるかもしれません。一度の旅では足りませんから!


※過去6回放送分を掲載しています。
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