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※過去1ヶ月分を掲載しています。

8月6日放送の「お題」

◇BGM選手権 :
日中の暑さに、酒は浴びたり、血は煮える。
御神輿(おみこし)かつぎは、人の気(き)競(おい)がもの凄い。
五十人、八十人、百何人、ひとかたまりの若い衆の顔は、目が据(すわ)り、
色は血走り、唇は青くなって、前向き、横向き、うしろ向き。
一つにでっちて、葡萄の房に一粒ずつ目口鼻を描(か)いたようで、手足の筋(すじ)は凌霄花(のうぜん)の緋(ひ)を欺(あざむ)く。
御神輿の柱の、飾りの珊瑚(さんご)がぱっと咲き、銀の鈴が鳴据(なりすわ)って、鳳凰の翼、
鶏(にわとり)のとさかが、さっと汗ばむと、彼方(あっち)此方(こっち)に揉むさまは、団扇(うちわ)の風、
手の波に、ゆらゆらと乗って揺れ、すらりと大地を斜めに流るるかとすれば、
千本の腕の帆柱に、つと軒(のき)の上へまつすぐに舞上がる。……
わつしよ、わつしよ、わつしよ、わつしよ。
もうこの時は、人が御神輿をかつぐのでない。
御神輿の方が、います霊とともに、人の波を思うまま釣るのである。
御神輿は行きたい方へ行き、めぐりたい方へめぐる。殆ど人間業ではない。


泉鏡太郎(泉鏡花) 作 「祭のこと」から

7月30日放送の「お題」

◇勝手に名付け親 :

ロッシーニ作曲「弦楽ソナタ 第1番 ト長調 第1楽章 (木管四重奏版)」
※曲を聴いて受けた印象をもとに、新たな曲名を考えて送ってください。


7月23日放送の「お題」

◇BGM選手権 :
そうだ、唯これだけは解る―蟬ははかない、そうして人間の雄弁な代議士の
一生が蟬ではないと、誰が言おうぞ。
蟬の羽は見ているうちに、目に見えて、そのちぢくれが引延ばされた。
同時にそれの半透明な乳白色は、刻々に少しずつしかし確実に無色で透明な
ものに変化して来るのであった。
そうしてあの芽生のように爽快ではあるけれどもひ弱げな緑も、それに応じて
段段と黒ずんで、あたかも若草の緑が常磐木のそれになるような、或る現実的
な強さが、瞭かに其処にも現れつつあるのであった。
彼はこれ等のものを二十分あまりも眺めつくしている間に―それは寧ろある
病的な綿密さを以てであった―自ずと息が迫るような厳粛を感じて来た。
突然、彼は自分の心にむかって言った。
「見よ、生れる者の悩みを。この小さなものが生れるためにでも、
此処にこれだけの忍耐がある!」
それから重ねて言った。
「この小さな虫は俺だ!蟬よ、どうぞ早く飛立て!」


佐藤春夫 作 『田園の憂鬱』から

7月16日放送の「お題」

◇勝手に名付け親 :

マレー作曲「聖ジュヌヴィエーヴ・デュ・モン教会の鐘」
※曲を聴いて受けた印象をもとに、新たな曲名を考えて送ってください。


7月9日放送の「お題」

◇BGM選手権 :
だが魚は落ち着いていた。あいつなりに行く先を考えてるんだろう。
といって何を考えてるのか。だったら、おれは何を考える。
でかいやつが相手なら臨機応変でいくしかない。
やつが跳ねたら仕留めることもできる。
ずっと潜っていられたんじゃ、こっちも坐り込んでるだけだ。
引きつった手をズボンにこすりつけて、うまいこと指をほぐそうとした。
だが手は開かない。太陽にあたっていれば開くかもしれない。
いま食ったマグロが腹でこなれて栄養になれば手も開くかもしれない。
いざとなったら、どんな無理をしてでも開いてやる。
いまはまだ無理をしたくない。おのずと開いてくるにまかせよう。
なにせ夜中にあっちのロープこっちのロープと作業にかまけて、
さんざん苦労させていたのだから仕方ない。
遠くに目をやると、この海に一人きりだとつくづく思った。
だが暗い深みにプリズムのような色が見える。
前方にはロープが張りつめ、静かな海にも不思議なうねりがある。
貿易風から生じる雲がむくむくと立ち上がる。
はるか前方にカモの一群が飛んで、海面の上空に鳥影を刻み、
ぼやけたと思うとまた刻む。なるほど海に孤独というものはないらしい。


ヘミングウェイ 作、小川高義 訳 『老人と海』から

7月2日放送の「お題」

◇勝手に名付け親 :

プロコフィエフ作曲「トッカータ 作品11」
※曲を聴いて受けた印象をもとに、新たな曲名を考えて送ってください。

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