メロウな徒然草

第309回 2018年9月17日放送分

いつもご清聴ありがとうございます。
今夜はレギュラー・プログラム「メロウな風まかせ」をお届けしました。
ここ数週間のなかではオトナ度屈指の選曲だったかもしれませんね。
秋の風を意識しました。お楽しみいただけましたか。

さて、先週の追悼特集「メロウなアレサ・フランクリン」に、予想を上回る大きな反響をいただいております!
この気持ち、うまく言い表せないのですが……感激しました。ありがとうございます。
以下、いただいたメールからほんの一部をご紹介します。正直かなり面映い内容のものもありますが、原文のまま引用しますね。

まずは茨城県にお住まいの54歳の男性、Mellowsさん。放送終了後1時間も立たぬうちにかなり長文のメールをNHKにお寄せいただきました。

もう...とにかく素晴らしい内容でした。まずはすぐにでもお礼を伝えたくて、メールをいたしました。
今回の放送内容は、誰あろう松尾さんでしか成しえない選曲の数々、そしてもっとも大切な「視点」、つまりは偏ったあるいは表面だけの報道に対するアンチテーゼとも言える内容で、もう絶賛するしかありません。
(中略)
「徒然草」でも触れてらっしゃいましたが、敢えて「追悼特集」でなくても構いませんし、どうぞもう一回「メロウなアレサ・フランクリン」やってください。特に後期の、「ナラダ」や「ベビー・フェイス」らのプロデュース作品や「マイケル・マクドナルド」とのデュエットなど、ほとんど取り上げられないそういった作品も、松尾さんのフィルターを通して聴いてみたいものです。
(中略)
松尾さんがまだ20代の頃、(中略)、真昼間から「美メロ」をかけまくる番組を自由奔放にやっていらした頃から、一方的とはいえなんだかんだで25年以上のお付き合いですが、もう今日の放送が「一番」でした!


続いては、同じ54歳の男性、福島県にお住まいのご存じBuck$pinさん。

Atlantic時代、グラミー常連時代のヒットを並べりゃ、追悼番組として成立はします。
ただ、歩んできた長い道程(Arista以降)や、徒然草(感服しました)にあった松尾さんのお考えを加味すると、1、2回ではとても。続編に期待はしますが、それがご無理なら、折に触れ。
今回の15曲は、ほかの番組では、まず耳にしないだろう、そんな女王の功績が詰まってました。


そのお次は兵庫県にお住まいの51歳の男性、Kawatenさん。

「僕が聴きたいアリーサ追悼特集がここにありました!」
フィルペリーのcallmeも良かった!(LJレイノルズのカバーも好きです)
ベストアルバムを二枚ほどしか所有してない僕にもアリーサのシンガーとしての素晴らしさが伝わる選曲に思わずイイネ!
それとアリーサを語る松尾さんの声がとてもカッコ良かったなぁ。アリーサ追悼第二弾もリクエストします!


もちろん女性リスナーからもお便りをいただいております。
まずは富山県の46歳、青島Beeさん。行間からこぼれ落ちるメロウなフレイバー……。

心地の良い追悼特集でした。でも松尾さんは一方で、日本のメディアの一連の報道に居心地の悪い思いをされていたとは。その静かな怒りに火を付けないために、おしゃべりを控え、長尺ノンストップミックスという形態をとったと考えるのは深読みしすぎでしょうか。
言い古された言い方ですが、女王である前にひとりの女として見られるということ。エロティックな目線、ちょっと羨ましい(読み飛ばして下さい)なぁと思いました。


もうひとり女性リスナーをご紹介しましょう。東京にお住まいの、青い羽さん。36歳。

今週のAretha特集。本当に専門チャンネルかのような、耳が虜になりました。
松尾さんが初めてアルバムを買われたという1981年、私は生まれました。(すみません、それは置いておきます笑) 私が生まれた時には、その前からずっとArethaは歌っていて、曲を世に出し続けていた。本当に凄いと思いました。
私は未だArethaのような深いBlackMusicには手が回らず、皆さんからの発信で有難く受信している状態です。今回改めてこんなにArethaを聴いて、Arethaの声に深く感銘を受けました。
特に高音に伸びる声ですが全然低音から行った時のバンプがない。というのでしょうか、声圧の差が無い。切替のポイントが見当たらないのですよね。(ちょっと昔歌をかじっておりまして生意気にすみません。)これは本当に素晴らしいなと思いました。
是非!また特集お願い致します!全然足りないです!(笑)楽しみにしております。


スペースの都合上、以上5通のみのご紹介となってしまいますことをご了承ください。
番組に届いたメール以外に、ツイッター上でも今回の追悼特集への言及は多かったです。
そうそう、この番組の第1回ゲスト・山下達郎さんのお名前を引き合いに出してアレサ論を展開するリスナーの方がたが複数いらっしゃったのも印象的でした。

というわけで、みなさんの熱いご要望にお応えしまして、来週9月24日はアレサ追悼特集第2弾をお送りします! 急遽いま決めました!
どうかお楽しみに。

以上、先日林剛さんと観に行ったシカゴ・ソウルの名門インプレッションズ初来日公演の開演前BGMはアレサ一色でしたよ、松尾潔でした。


第308回 2018年9月10日放送分

いつもご清聴ありがとうございます。
今夜は、先月16日に惜しくも亡くなったソウルの女王アレサ・フランクリンの追悼特集をお届けしました。
お楽しみいただけましたか。

早いもので、アレサが逝ってから4週間近くが経ちました。
日本でも、私が想像していたよりも大きく彼女の死が報道された印象があります。
あらためてソウルの女王の残した功績の大きさを痛感しました。
とはいえ、ひとつ残念に思ってしまったことがあるのですよ。
それは、アレサを公民権運動や女性解放運動のアイコンとして伝えることに特化した(あるいは偏重した)報道や番組が圧倒的に多かったこと。

それらをくぐり抜けて、いま私は2つのことを危惧しています。
ひとつは、(私が心酔してきたような)彼女のメロウな、あるいはグルーヴィーな音楽性を伝える作業が後回しにされてしまうこと。
もうひとつは、彼女が歌い手として円熟期を迎えた80年代以降の作品紹介がおざなりになってしまうこと。つまり最晩年まで現役シンガーとして音楽シーンに爪痕を残してきた事実が、なかったことにされてしまうこと。

もちろん “Respect”も、“(You Make Me Feel Like) A Natural Woman”も、“Think”も、とてもとても重要な曲です。それらが生まれていなければR&Bの歴史は今とは違うものになっていたのですから。
ただ、前2曲は1967年、“Think”だって68年の曲です。その時代の曲だけ紹介して終わってしまうと、そこに何か特別な意図はなくとも、そのあと50年ほども続く充実した音楽活動を軽視することにつながってしまうのではないでしょうか。
それでは女王への配慮が欠けていると言わざるを得ません。
例えば、美空ひばりさんを語るときに天才少女歌手時代の話から始めるのは悪いアイディアではありませんが、それだけに終始してしまうのはアーティスト論として十分ではないでしょう。それと同じ理屈です。
今回の選曲はアレサ逝去における日本のメディアの一連の報道に対しての異議申し立てという側面がありました。

大の飛行機嫌いといわれ、ついぞ来日を果たすことのなかったアレサですが、幸いにも私はアメリカで何度か彼女のコンサートを観る機会に恵まれました。
これは以前にも言ったことがあるのですが、彼女のライブは録音作品ほどにはエンターテイメントとしての完成度が高いものではありませんでした。
ですがそれで十分というものでもありました。何しろあの歌声とオーラがあるのですから。
私にとってのアレサは、まず何よりもセクシーな女性シンガーでした。
声高に女性の権利をうたうアレサは輝いていますが、シーツにくるまって愛をささやくアレサにもたまらない魅力があります。
今夜の放送のために、ここ半月ほど彼女やその周辺の作品を聴き込んできました。その数ざっと500曲ほど。
私はその間、アレサとふたりだけの親密な旅行を続けた気分でした。
道中痛感したのは、若いアレサも素敵ですが、熟したアレサも最高だということ。
第一義として「アメリカ黒人社会の流行り歌の人気者」なのですから、彼女の歌を必要以上に聖典化して神棚にあげるのはむしろ野暮な行為だと私は思いますよ。
今回の長尺ノンストップミックスは、さしずめ私からの弔辞でした。

では以下、今夜のノンストップミックスのプレイリストを載せておきますね。
アーティスト表記のないものはすべてアレサの作品です。

01, Day Dreaming 
02, Here We Go Again 
03, Superstar / Until You Come Back To Me (That's What I'm Gonna Do) / Luther Vandross 
04, Love Me Right  
05, Until You Come Back To Me (That's What I'm Gonna Do) / Miki Howard 
06, Until You Come Back To Me (That's What I'm Gonna Do) / Stevie Wonder 
07, Jump To It 
08, Apoca Arrive / Melgroove
09, Love All The Hurt Away / Aretha Franklin & George Benson 
10, Angel 
11, Call Me / Phil Perry 
12, Selfish / Slum Village feat. Kanye West & John Legend 
13, When You Love Me Like That 
14, I'm In Love 
15, Wonderful

以下、ちょっとマニアックな話になりますが。
番組冒頭でBGMとして使ったブラックストリートの “Tonight's The Night / Brand New Remix (B3) feat. SWV & Craig Mack”(のイントロ部分)、そしてその次のBGMであるT.I.“Let's Get Away”はともにアレサの“Day Dreaming”を引用した作品です。
ノンストップミックスの後にBGMとして使ったアン・ヴォーグの“Giving Him Something He Can Feel”はアレサのカバー。カーティス・メイフィールドのペンによるヒットでした。

「メロウなアレサ・フランクリン」特集はもう一回くらいはやってもいいかもしれませんね。
ルーサーと並ぶ若き恩人ナラダ・マイケル・ウォルデンのプロデュース作品をはじめとして、今夜はあえてご紹介しなかった楽曲もたくさんありますから。
まずは今夜の番組へのご感想をお聞かせください。よろしくお願いします。

最後になりますが、前回の放送で新曲“What's The Use?”をオンエアしたばかりのマック・ミラーが、放送終了後の9月7日に亡くなりました。
メロ夜選出の『メロウ・オブ・2016』では、彼が当時の恋人アリアナ・グランデとデュエットした“My Favorite Part”が第6位に選ばれたこともありました。
享年26。才人の若すぎる死でした。
自分より若いミュージシャンが亡くなると、悲しみに加えてやりきれなさが残ります。

以上、日本語で表記するならアレサよりアリーサのほうが現地での発音に近いですけどね、松尾潔でした。


第307回 2018年9月3日放送分

いつもご清聴ありがとうございます。
9月第1回目のメロ夜は、レギュラー・プログラム「メロウな風まかせ」をお届けしました。
お楽しみいただけましたか。

まだまだ残暑は厳しいです。少なくとも東京は。
それでも夜から早朝にかけては、秋の気配がうっすら漂うようになってきましたね。
記憶するかぎり、今年ほど暑い夏はありませんでした。台風の数の夥しさにも泣かされました。

そして平成最後の夏でもありました。
終わりゆく平成。
次の元号は「西暦」なんて、シニカルなジョークを言う人もいるようです。
でも社会人生活がほぼすっぽり平成に収まっている私は、やはりこの時代が終わっていくことに大きな感慨があります。
さくらももこさんの逝去と安室奈美恵さんの引退も、どこかでこの気持ちを後押しします。

ところで、昭和歌謡という言葉がよく使われるようになったのは平成からです。
であれば、今後は平成歌謡という言葉が頻出するようになるのか、どうか。
まあ現状では「平成歌謡」と書いて「J-POP」と読むのかもしれませんが……なんて、平成歌謡の作り手の端くれである私は思います。

さて来週は先月76歳の生涯を終えたアレサ・フランクリンの追悼特集をお届けします。
題して「メロウなアレサ・フランクリン」。
メロ夜ならではの選曲をどうぞお楽しみに。

以上、そして九月はさよならの国、松尾潔でした。


※過去3回分を掲載しています。
Page Top