平成30年度 短歌選者紹介

東直子

東 直子(ひがし なおこ)

1963年、広島県生まれ。歌人、作家。96年に第7回歌壇賞、2016年に『いとの森の家』で第31回坪田譲治文学賞を受賞。歌集『春原さんのリコーダー』『青卵』『十階』、小説『とりつくしま』『甘い水』『薬屋のタバサ』、エッセイ集『千年ごはん』『七つ空、二つ水』『短歌の不思議』、共著に『短歌タイムカプセル』等、著書多数。

2009年〜2011年にかけて「NHK短歌」の選者を勤めさせていただきました。この度、再び携わることが出来、たいへん光栄です。2011年3月の最後の収録を終えた2日後に東日本大震災が起こり、図らずも記憶に深く刻まれることとなりました。あれから七年経ち、国も、町も、人も、様々に模索しつつ、いろいろな変化があったかと思います。刻々と変わりゆくこの時代。その中で生きる私たちの心を凝縮し、後世に伝えてゆけるような短歌作品を共に詠み、そして読み解いていければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

真中朋久

真中 朋久(まなか ともひさ)

1964年、茨城県生まれ。気象予報士の資格を持ち、気象・防災・環境関連の仕事に従事。歌集に『雨裂』(第46回現代歌人協会賞)、『重力』(第15回寺山修司短歌賞)、『火光』など。1991年に「塔」入会、現在は選者。

何かもやもやとしているとき、そこから脱出するのは、「はっとする言葉」に出会う時ではないかと思うのです。それはたいてい、誰かから与えられた言葉ですが、できることなら自分で掴みとりたいもの。借り物の言葉でも、よく咀嚼して自分のものにして踏みだしてゆきたいものです。言葉は魔法です。毒にも薬にもなります。言葉の回路を鍛えることは、よりよく生きることにつながります。自分専用の、ちいさな言葉の実験室を持って、いろいろ試してみましょう。選ばれるかどうか、批評で何を言われるのかは重要なことですが一喜一憂せずに……というのは、私自身が心がけていることです。

松村由利子

松村 由利子(まつむら ゆりこ)

1960年、福岡市生まれ。「かりん」同人。馬場あき子に師事。歌集に『大女伝説』(第7回葛原妙子賞)『耳ふたひら』など。著書に『与謝野晶子』(第5回平塚らいてう賞)『31文字のなかの科学』(科学ジャーナリスト賞2010)『短歌を詠む科学者たち』など。全国紙の記者として働いた後フリーに。

【晶子の多才ぶりを伝えます】
与謝野晶子は、実に多才な歌人でした。女性が経済的に自立する大切さを説くなど、さまざまな社会評論をものし、子どもたちのために数々の童話も書きました。でも、デビュー作である『みだれ髪』の情熱的な恋の歌しか知らない人も多いのではないでしょうか。ワーキングマザーの先駆けだった晶子の生き生きとしたまなざしを、彼女の歌と文章から紹介してゆこうと考えています。
私自身、折々に彼女の言葉に勇気づけられ、隣にいる大先輩「晶子さん」のような親しみを感じてきました。皆さんにもその魅力が伝わりますように。

栗木京子

栗木 京子(くりき きょうこ)

短歌de胸キュン
1954年、愛知県生まれ。京都大学理学部卒業。大学生時代に短歌と出合う。現在「塔」短歌会選者。読売新聞、西日本新聞などの歌壇選者。歌集に『夏のうしろ』(読売文学賞)、『けむり水晶』(迢空賞)、『水仙の章』(斎藤茂吉短歌文学賞)など。歌書に『うたあわせの悦び』『現代女性秀歌』など。

短歌は五七五七七という定型をもつ表現形式です。この定型に沿って言葉を紡ぎ出すとき、作品は独特のしらべを生みます。五と七の組み合わせによって、味わい深い言葉の流れが作り出されるのです。
こうした短歌ならではのしらべについて、もっと意識的でありたいと考えています。単に意味だけを伝えるのならば、短歌でなくても詩やエッセイなどの表現方法を用いればよいわけですが、私たちが短歌を選んだのはきっとしらべの魅力に引き寄せられたからなのです。意味としらべの両面から作歌上達のコツを探ってみましょう。

平成29年度 短歌選者紹介

永田和宏

永田 和宏(ながた かずひろ)

1947年、滋賀県生まれ。京都大学物理学科卒。京都大学名誉教授、京都産業大学タンパク質動態研究所所長。「塔」選者(前主宰)。宮中歌会始詠進歌選者。歌集に『夏・二〇一〇』など、エッセイ集に『あの午後の椅子』『歌に私は泣くだらう』など、歌書に『新版 作歌のヒント』『人生の節目で読んでほしい短歌』などがある。

NHK短歌の選者を務めさせていただくのは、これで三度目ということになります。私は以前から、歌がうまくなるためには、他人の歌が読めるようにならなければ駄目だと言ってきました。この番組の視聴者は、そしてこのテキストの読者は、ほとんどが自分で歌を作り、できれば入選したいと思っておられると思いますが、自分の歌が採られたかどうかということより、番組やテキストで紹介された歌を、自分でじっくり読みこむという時間を大切にしてほしいと思います。そして選者がどのように歌を評価しているかにも注意深くあってほしい。自らの歌の上達は、そこからしか始まりません。
大松 達知

大松 達知(おおまつ たつはる)

1970年、東京都生まれ。1990年、歌誌「コスモス」入会(現在、選者・編集委員)。同人誌「COCOON(コクーン)」発行人。上智大学外国語学部卒。都内私立中学・高校に勤務。歌集に『フリカティブ』『アスタリスク』『ゆりかごのうた』(若山牧水賞)などがある。
 
短歌の特長はどこにあるのでしょうか? それはリズムに乗って言葉が躍動する心地よさにあるようです。同じくらいの長さの文と比べてみるとわかります。〈五・七・五・七・七〉の魔法のようなリズムに言葉を当てはめるとき、なにげない言葉が力を得て何倍にもふくらんでゆきます。そして、時空を超えて遠い人たちにも伝わり、やがて自分にも帰ってきます。
初心者の方もベテランの方も、新たな一首を作るときの心は同じです。自分の中に隠れている言葉を見つけ出して、その言葉が躍り出す感覚を一緒に楽しみましょう。

黒瀬 珂瀾

黒瀬 珂瀾(くろせ からん)

1977年、大阪府生まれ。「未来」選者。春日井建に師事。歌集に『黒耀宮』(ながらみ書房出版賞)『空庭』『蓮喰ひ人の日記』(前川佐美雄賞)などがある。浄土真宗本願寺派願念寺住職。
 
大きな声で発信された、無数の言葉や情報が飛び交う現代社会。騒がしい世界に生きていると、疲れ切ってしまうこともあります。そんな時こそ短歌に親しんで、私たちの言葉が本来持っている優しさや力を再発見してみるのはどうでしょう。これから皆さんと、様々な恋の歌を読んだり詠んだりすることになりました。豊饒な言葉とこころの生み出す時間をご一緒できれば、とてもうれしいです。
あと、書きにくい名前ですみません。パソコンなどで書くには「なか」と打って出てくる「那珂」の珂と、「はらん」と打って出てくる「波瀾」の瀾を組み合わせるのが一番楽かと。どうぞよろしく。

佐伯 裕子

佐伯 裕子(さえき ゆうこ)

短歌de胸キュン【「形容詞」をうたう】

1947年、東京都生まれ。「未来」選者。歌集に『未完の手紙』『みずうみ』『流れ』など、歌書に『齋藤史の歌』『家族の時間』『生のうた死のうた』などがある。日々ひたすら、紙の本を愛好している。
 
「短歌de胸キュン」を担当します。若い方々のなかに混ざって、気力を振り絞って(!)つとめていこうと思います。投稿される方々に年齢制限はありません。歳を重ねた作者の新鮮な歌に出会うと、私にも力が湧いてくるように思われます。若い投稿者の歌からは、新しい時代の空気を吹きこまれることでしょう。出演者の歌と投稿歌とが、柔らかく刺激しあっていけたらいいと願っています。毎回の題となる形容詞は、テーマとしても考えてください。さまざまな歌に出会えることを楽しみにしています。


平成29年度 番組司会者紹介

剣 幸

剣 幸(つるぎ みゆき)

富山県出身。1974年宝塚歌劇団入団。85年から5年間月組の男役トップスターとして数々の名作を残す。90年に退団後も演劇、ドラマ、ミュージカルと幅広く活躍。
菊田一夫演劇賞、読売演劇大賞女優賞ほか受賞多数。

【みなさんの最後方から短歌を学ばせていただきます】
「NHK短歌」に以前ゲスト出演をさせていただいてから、短歌に興味を持ち、舞台でも短歌を朗読するようになりました。実ははじめは、一つの言葉から想像を広げて役を作っていく演劇と、たくさんの言葉から選び出して作品を作り上げる短歌は正反対の世界ではないかと感じていたのですが、出演してみて「根本は同じかもしれない」と思ったのです。言葉で表現すること、解釈したり想像したりして表現を広げること・・・通じるところがたくさんあります。司会を担当させていただくのを機に短歌を作り始め、車窓の景色にも短歌を考えるようになりました。短歌を学べる本当にありがたい機会。番組をご覧の皆さんの、一番後ろからついていくような気持ちで参加させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

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