2018年10月8日~11月9日の予定

永井荷風「ふらんす物語」

明治・大正・昭和にかけて活躍した我が国を代表する作家の一人、永井荷風の作品の中から「ふらんす物語」を取り上げ朗読する。


【新作】「ふらんす物語」全25回
朗読 : 井上倫宏(俳優)
テキスト :「ふらんす物語」岩波文庫(2002年改版)

「ふらんす物語」 (全25回)
1907年(明治40年)7月、27歳の永井荷風は4年間滞在したアメリカから、あこがれの地フランスに渡った。彼が生涯愛したフランスでの、恋、夢、そして近代日本への絶望などを描く自らの青春時代の結晶を、1908年(明治41年)帰国後雑誌に発表した。翌1909年(明治42年)雑誌掲載の数編の小説に新作を加えて「ふらんす物語」として出版を企てたが、この初版本は、風俗を乱すものと判定され、発表頒布禁止となり世に出ることはなかった。同書は、その後、荷風による削除や改定を経て何度か、新版「ふらんす物語」として流布してきた。発表になった初版本が一般に読めるようになったのは1992年(平成4年)の岩波書店版「荷風全集第5巻」から。
今回の放送では、荷風が、不本意ながら流布させた「ふらんす物語」ではなく、本来の姿としてのこの作品の初版本を紹介したい。

内容:「ふらんす物語」より
「放蕩」パリ滞在の若き外交官小山貞吉とフランス女生徒とのデカダンの交情を描く。
「除夜」リヨンの街で過ごす除夜の旅情。
「祭りの夜がたり」友人の語る南仏プロヴァンスでのアヴァンチュール。
「蛇つかい」リヨンの祭日で出会った蛇つかいのジプシー(ロマ)女の話。
「再会」友人の画家と語らう文明と芸術談義。
「羅典街の一夜」カルチェラタンに集う若い人々との交友。
「パリのわかれ」パリを去る前夜のフランスに対する愛情を綴る。
「悪感」帰路シンガポールの船中で見るアジアの文明と日本人俗物批判。

<永井荷風>
1879年(明治12年)~1959年(昭和34年)。東京生まれ。1903年(明治36年)~1908年(明治41年)アメリカ、フランス外遊。帰国後「あめりか物語」「ふらんす物語」(発禁)を発表し文名を高める。以後「腕くらべ」「つゆのあとさき」「濹東綺譚」などを著す。1952年(昭和27年)文化勲章を受章。


2018年8月27日~10月5日の予定

夏目漱石「草枕」

2017年、生誕150年にあたり放送した文豪・夏目漱石の「草枕」を再放送する。


【アンコール】「草枕」全30回
朗読 : 押切英希(俳優)
テキスト :「草枕」岩波文庫(1990年)

「草枕」(全30回)
「智(ち)に働けば角(かど)が立つ。情に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」との書き出しで知られる。三十歳の画家の主人公が文明を嫌って東京から山中の温泉宿(熊本小天温泉)を訪れ、その宿の謎めいた女性、那美と出会う。那美の画を描くことをめぐって展開するストーリーに沿って、俗塵を離れた心持ちになれる詩こそ真の芸術だという文学観と「非人情」の美学が展開される。


<夏目漱石>1867年(慶應3年1月)江戸(東京)生まれ。1916年(大正5年12月19日没)。東京帝国大学英文科(現東京大学)卒業後、松山で中学の教師、熊本五高で教授を経てイギリスに留学、帰国して東京帝国大学で英文学を講じた。その後、朝日新聞に入社。反自然主義の作品「吾輩は猫である」「坊ちゃん」「草枕」、三部作時代の「虞美人草」「三四郎」「それから」「門」、大病以後の「行人」「こころ」「道草」「明暗」など多くの名作を世に出した文豪。


2018年7月9日~8月24日の予定

壺井栄「二十四の瞳」

過去、たびたび映画化、テレビドラマ化もされて、大人から子供まで感動を呼んだ昨年没後50年を経た作家・壺井栄の代表作「二十四の瞳」を朗読する。「二十四の瞳」は、壺井栄の故郷でもある瀬戸内海の島村(小豆島)を舞台に、島の分教場に赴任した新任の師範学校出身の女先生と、小学校分教場の児童12人との触れ合いを半生にわたり描いた心温まる師弟愛の物語。だが、物語は単なる教師と子供たちと触れ合いを描くだけではない。戦前の出会いに始まり、次第に日本が戦禍に巻き込まれ、教え子を戦地に失い、貧困に翻弄されて家族や学ぶ場、校友をも失う子供たちと主人公・女先生との半生を瀬戸内ののどかな島を舞台に、戦争の悲劇を真正面から見据えた反戦文学になっている。(昭和27年(1952年)に雑誌に連載され、のちに1954年、1987年に映画化された。テレビドラマ化もたびたびされており、NHKでは1974年に少年ドラマシリーズで放送化されている)


【新作】「二十四の瞳」全35回
朗読 : 藤澤恵麻(俳優)
テキスト :「二十四の瞳」新潮文庫(1956年、S32年版)

「二十四の瞳」の背景
反戦児童文学の名作とされるが、文体は常に子供たちに目線を注いできた壺井栄の優しい視線が強く感じられる。栄は、裕福でもない小豆島の醤油樽職人の五女として育ち、家には兄妹10人、引き取った身寄りのない子を含めて12人の子供たちがいた。一家20人近くの大所帯の中、子供たちに分け隔てなく愛情を注ぐ祖母、両親の姿が「二十四の瞳」にだぶってゆく。そして人間を非人間の如く扱い、戦場に向かわせた日本軍国主義を生涯憎み、“反戦”を貫いた彼女の作家人生のベースになってゆく。


<壺井栄>
1899年(明治32年)香川県小豆郡(小豆島)の生まれ。少女時代から病弱だったが文学には好んで接した。高等小学校卒業後地元で働いていたが、隣村出身の詩人・壺井繁治と知り合い、上京して1925年(大正14年)結婚。林芙美子や平林たい子ら多くの作家たちと親交を持ち、見様見真似で作品執筆をするようになり、夫や周囲の計らいで同人誌や機関誌に載るようになる。1928年(昭和3年)以降、雑誌などへの掲載が続くが、佐多稲子から児童文学の執筆を勧められて、1938年(昭和13年)「大根の葉」を発表して評価され、その後多くの作品を執筆するようになる。そして、1952年(昭和27年)に「二十四の瞳」を発表して“小豆島”の名を全国に知らしめた。1961年以降、喘息に苦しめられ、入退院を繰り返しながら1967年(昭和42年)6月、喘息発作で亡くなった、享年67歳。


2018年6月11日~7月6日の予定

「谷崎潤一郎作品集」

近代日本文学を代表する作家として「文豪」、「大谷崎」とも称された谷崎は、大正5年~9年頃に数々の怪奇文学を発表、それは江戸川乱歩や横溝正史に大きな影響を与えたと言われる。そして谷崎は怪奇文学を経て、より怪異な幻想世界を銀幕に求めた。今回は100年ほど前に頂上を極めた谷崎怪奇文学の中から耽美の極みとも評される代表作「人魚の嘆き」と「魔術師」、続いて谷崎の映画哲学が織り込まれた『潤一郎ラビリンスXI銀幕の彼方』より「青塚氏の話」を紹介し谷崎の怪奇幻想の世界を紹介する。


【新作】「谷崎潤一郎作品集」全20回
朗読 : 藤田三保子(俳優)
テキスト :「人魚の嘆き・魔術師」(1978年)、「潤一郎ラビリンスXI 銀幕の彼方」(1999年/千葉俊二・編集)ともに中公文庫

【人魚の嘆き・魔術師】
(1)「人魚の嘆き」(全6回) 大正6年(1917年)
財力・知力・美貌、すべてに恵まれた中国の貴公子が、人魚と出会い、その魔性に溺れて行く。幻想的な世界観の中に生々しい人間の欲情や怠惰、そして西洋人への憧れなどが織り込まれたファンタジー。

(2)「魔術師」(全6回) 大正6年(1917年)
美貌の魔術師に魅せられて半羊神(ファウン)と化す男と、その無垢な恋人を描いた妖しく哀しいファンタジー。

【潤一郎ラビリンス XI 銀幕の彼方】
(3)「青塚氏の話」(全8回) 大正15年(1926年)
妻であり女優の由良子を主演にした映画を制作する監督の中田が、ある時から日常の妻(実体)と銀幕の中の妻(影)に心を乱されていく。中田が愛する本物の由良子は実体なのか、影なのか。谷崎が銀幕に求めた、より怪異な幻想世界とその芸術性にも触れた作品。

<谷崎潤一郎>
明治19年(1886年)、東京日本橋生まれ。第一高等学校を経て、東京帝国大学国文科に入学するも中退。明治43年には小山内薫などと第二次「新思潮」を創刊して、「刺青」、「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上では永井荷風に激賞され文壇的地位を確立する。また大正9年から一年半ほど大正活映(株)脚本部顧問に就任、「雛祭りの夜」や「蛇性の婬」などの映画制作にも携わった。「痴人の愛」、「卍(まんじ)」、「春琴抄」、「鍵」など豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩み続けた。昭和40年(1965年)79歳で死去。関東大震災後、長く移り住んだ兵庫県には、谷崎の行跡が偲ばれる「芦屋市谷崎潤一郎記念館」がある。


2018年5月14日~6月8日の予定

「国木田独歩 ~ 理想と現実の間で ~」

イギリスの詩人ワーズワースを愛読した独歩は、中でも自然と共存する名も無き人々を主人公とした抒情あふれる詩に心酔し、それらを創作の手本とする。こうして詩人として出発した独歩が、小説家へ転身した後、初めて刊行した作品集「武蔵野」(明治34年)から4つの作品を取り上げる。素朴な自然の情景や庶民の姿を通して、飾り気のない、ありのままの中に潜む美しさを描いた独歩の初期の世界観を味わっていただく。後半は、後に近代的短編小説の先駆けとされる後期の2作品を取り上げ、最後は「武蔵野」の原点となったといわれる自身の体験が織り込まれた小説「空知川の岸辺」をお聴きいただく。


【新作】「国木田独歩 ~ 理想と現実の間で ~」全20回
朗読 : 田中宏樹(俳優)
テキスト :「武蔵野」新潮文庫(1949年発行)、「牛肉と馬鈴薯・酒中日記」新潮文庫(1970年発行)

【独歩が20代の時に発表した初期作品】
(1)「武蔵野」最初の結婚に破れた傷心の独歩が、緑豊かな自然の中で自身の内面と向き合い、新しい自分を見つけていく。まるで鳥のさえずりや小川のせせらぎが聞こえてくるような詩情あふれる文章を耳で感じていただきたい。
(2)「郊外」東京郊外が舞台だが、こちらは無欲な小学校教師が主人公で、この教師を鏡として生きる庶民の悲喜劇が描かれる。
(3)「忘れえぬ人々」名も無き文学者が旅先で出会った男に、自身にとっての忘れえぬ人々を語る形式を通して、独歩にとっての読者とは何か、という問いを浮き彫りにする。
(4)「河霧」独歩が小学生時代を過ごした山口県岩国を舞台に帰郷した、傷心の男が改めて自分を見つめ直す。

【独歩が30代の時に発表した後期作品】
(5)「牛肉と馬鈴薯」ある酒席を舞台に、牛肉を現実、馬鈴薯を理想ととらえて、それぞれの主張を言い合い、話題は政治や恋愛などへ展開していく。会話を通して、さまざまな人間の問題や考え方を投げかけるユニークな作品。
(6)「空知川の岸辺」明治28年(24歳)、独歩が最初の結婚生活を夢見て、新居を求めて渡った北海道の地。その旅こそが後の作品「武蔵野」につながる。この「空知川の岸辺」は明治35年、31歳の時に、かつて原始の大自然に、その北の大地に理想を追い求めた自分を振り返りながら、当時の思いをたどった作品。

<国木田独歩>
明治4年(1871年)8月30日、千葉県銚子生まれ。
5歳から16歳の少年期は広島県や山口県で育つ。東京専門学校(現・早稲田大学)を中退後は新聞記者などを経て、明治30年(1897年)26歳の時に田山花袋や柳田国男などと「抒情詩」を合同で刊行し、詩人として出発。次いで明治34年(1901年)30歳の時に作品集「武蔵野」を刊行、自然の中に人事を見つめる小説家へと転身した。学生時代からイギリスの詩人ワーズワースに心酔した独歩はその自然賛美の詩を創作の手本にしたと言われ、「武蔵野」などに代表される自然描写力は後の自然主義文学に大きな影響を与えた。明治41年(1908年)6月23日、肺結核により36歳で死去。今年は没後110年に当たる。


2018年4月2日~5月11日の予定

「山本周五郎短編作品集」

人間の心のひだを巧みに描き、人情味あふれた作品を残した作家、山本周五郎の短編作品を30回にわたってお聴きいただきます。
山本周五郎は、「樅(もみ)の木は残った」、「赤ひげ診療譚(たん)」、「さぶ」などの大作でよく知られています。同時に短編の名手で、今回はその中から5編の短編をお聴きいただきます。


「山本周五郎短編作品集」全30回
朗読 : 第1回~第12回  小野文惠(NHKアナウンサー)  、第13回~ 第30回  亀田佳明(俳優)
テキスト :「藪(やぶ)の蔭(かげ)」、「松の花」~新潮文庫「小説日本婦道記」(昭和33年発行)、「つゆのひぬま」~新潮文庫「つゆのひぬま」(昭和47年発行)、「中央銀行三十万円紛失事件」~新潮文庫「寝ぼけ署長」(昭和56年発行)、「ちいさこべ」~新潮文庫「ちいさこべ」(昭和49年発行)

第1回~第4回  「藪(やぶ)の蔭(かげ)」(「小説日本婦道記」から)武家に嫁した女の覚悟 (発表年不明)

第5回~第12回  「つゆのひぬま」 社会の最底辺で生きる人たちに注がれた作家の温かい目 (昭和31年発表)

第13回~第17回 途中  「中央銀行三十万円紛失事件」(「寝ぼけ署長」から) 無能と思われている警察署長が、見事難事件を解決!その手法とは?(昭和21年発表)

第17回 途中から 第27回途中  「ちいさこべ」 江戸の大火で両親を失うなど絶望の淵に追い詰められながら、孤児を引き取り再建に向けて奮闘する大工の棟梁。映画やテレビドラマ化された。(昭和32年発表)

第27回 途中から~第30回  「松の花」(「小説日本婦道記」から)亡くなってはじめてわかった、妻の真心(昭和17年発表)

<山本周五郎>
1903年~1967年。東京生まれ。山梨県北都留郡初狩村(いまの大月市)の生まれ。
土砂崩れで生家ばかりか、祖父母など肉親4人を失い、上京していた父のもとに転居。横浜の小学校3年生のとき、担任に文才を認められ、「小説家になれ」といわれたことがきっかけで、小説家を志した。小学校卒業後、東京の質屋の徒弟になり、英語学校や簿記学校に通いながら、文学の勉強を続けた。1926年「須磨寺附近」で文壇デビュー。上記で紹介した大作に加え、今回の放送で紹介する「小説 日本婦道記」(直木賞に推されたが辞退)や「青べか物語」、「季節のない街」なども山本を代表する作品である。


2018年3月26日~3月30日の予定

「芥川龍之介短編作品集」

昨年度放送した芥川龍之介短編作品集を5回にわたり再放送します。(初回放送・2017年2月13日~2月17日)
お聴きいただく作品は龍之介の短編から芥川が作家としての地位を築いた『鼻』のほか『蜘蛛の糸』『孔雀』『蜜柑』『尾生の信』『沼地』です。


「芥川龍之介短編作品集」全5回
朗読 : 榊 寿之(元NHKアナウンサー)
テキスト :「鼻」1990年「蜘蛛の糸」「孔雀」は、1960年の岩波文庫版、「尾生の信」「沼地」「蜜柑」は、1968年の角川文庫 版

『鼻』
「鼻」は芥川初期の短編作品。1916年(大正5年)に発表された。「今昔物語」「宇治拾遺物語」の「鼻長き僧のこと」を題材に人間の心理欲を捉えた。この作品で夏目漱石から絶賛され、作家としての基盤を築いた。

『尾生の信』
「尾生の信」は1920年(大正9年)に雑誌「中央文学」に発表された短編作品。中国の春秋時代の故事に基づき、女を待ち続ける男を通じて、人が持つ一途な気持ち、頑なさ、愚をも描いている。

『沼地』
「沼地」は1919年(大正8年)に発表された短編で、展覧会で遭遇した絵に魅入られる「私」を通じて、鋭く対象をつかもうとする芸術家の姿、作品のありようをとらえた作品。

『蜘蛛の糸』
「蜘蛛の糸」は芥川初めての子供向け短編小説で、1918(大正7年)年に発表された。人間の利己欲を釈迦の哀れみの視点で描いている。

『孔雀』
9行(文庫)の小品で執筆時期がはっきりしない。思い込みで思慮を失い、判断を誤る愚を、鳥の世界で著した。

『蜜柑』
「蜜柑」は1919年(大正8年)、「新潮」に発表された短編作品。発表時は「私の出逢ったこと」がタイトルだった。列車車中で遭遇した少女の行為に接した体験による、ほのぼのとして温かさが伝わってくる作品。

<芥川龍之介>
1892(明治25)~1927(昭和2)年。東京生まれ。東京帝国大学英文科卒。在学中に菊池寛らと『新思潮』を創刊。大正5年25歳の時『新思潮』に発表した「鼻」が夏目漱石に激賞され、新進作家としてデビュー。『戯作三昧』『地獄変』『奉教人の死』『枯野抄』で我が国、大正文壇での代表作家の地位を確立した。1927年に自死した。


2018年2月26日~3月23日の予定

江戸川乱歩「パノラマ島奇談」

江戸川乱歩の作品「パノラマ島奇談」を20回にわたり再放送します。(初回放送・2016年12月12日~2017年1月13日)

1923年(大正12年)発表の短編「二銭銅貨」から1959年(昭和34年)の長編「ペテン師と空気男」まで、乱歩の作風はさまざまに変化していったが、昭和の初めに長篇・中篇の佳作が並ぶ。
「パノラマ島奇談」(昭和2年)、「陰獣」(昭和3年)、「孤島の鬼」(昭和4年)の3作は乱歩ミステリーの傑作として高い評価を受けているが、最も夢とロマンの香りに満ちた中篇「パノラマ島奇談」を紹介する。


江戸川乱歩「パノラマ島奇談」全20回
朗読 : 井上倫宏(俳優)
テキスト :「江戸川乱歩文庫 パノラマ島奇談」春陽文庫(2015年発行版)

「パノラマ島奇談」、1928年(昭和3年)に発表された乱歩の中篇小説。大仕掛けな犯罪を犯人の側から描いたミステリー作品で、謎解きよりも主人公の夢の実現と挫折を表現している。
三文文士・人見広介は、貧乏暮らしを続けながらも、彼自身の理想郷建設を熱望する夢想家。ある日、大学時代の同級生で今では地方の大富豪の菰田源三郎の死を知る。人見と菰田は見分けがつかないほど双子のように瓜二つであった。人見は、菰田の墓所を暴き、甦ったかのように源三郎に成りすまし、“奇跡の生還者”として菰田家に入り込み主人となる。やがて、広介は生涯の夢の理想郷を建設すべく所有する沖の小島に壮大なユートピア計画を実現しようとするが・・・。

初出 「新青年」1926年(大正15年10月)~1927年(昭和2年4月)の連載

<江戸川乱歩>
1894年(明治27年)三重県生まれ。早稲田大卒後、会社勤め、古本屋を営む傍ら探偵小説を執筆。1923年。「二銭銅貨」で雑誌「新青年」に登場。我が国、探偵小説草創期の牽引役となる。以後亡くなるまで、執筆活動に励み、日本のミステリー作品の指導者としてもその発展に尽くした。1965年(昭和40年)没。
著書に「盲獣」「妖虫」「人間豹」「怪人二十面相」「悪人志願」「幻影城」など。

Page Top