9月16日(土)

忘れていた登記(海原はるか・かなた)

<相談内容>
3年前に鶴田さん兄弟は父の遺産を相続しました。相続人は兄弟2人だけだったので、話し合いの末、鶴田さんが土地家屋、弟が預貯金を相続しました。しかし、鶴田さんは相続した後に名義変更を忘れていたので、登記の名義は父のままになっていました。最近、その土地家屋を高く買いたいという人が現れたのですが、弟は「名義が父のままなら、僕にもまだ権利はあるので、売ったら代金の一部を払ってほしい」と言います。払わないといけないのでしょうか?

【弁護士の見解】本来は支払う必要はありません
今回のケースでは、鶴田さんと弟さんとの間では、3年前に土地家屋は鶴田さんが取得するという遺産分割が成立している。遺産分割が一旦成立すれば、勘違いとか、騙されたといった何か特別の事情がない限り、相続人は、遺産分割のやり直しを求めることはできない。
したがって、土地家屋はもうすでに鶴田さんのものになっているので、弟さんには何の権利もないということになり、鶴田さんは売った土地家屋の代金を弟さんに払う必要はない。
これが本来の結論となるが、今回のケースのように、土地家屋の登記名義を鶴田さんに移していない場合、実務上は弟さんの同意をもらわないと、鶴田さんは土地家屋を売ることすらできない。仮に、鶴田さんが、すでに遺産分割が成立していると裁判所に訴えたとしても、裁判所は、鶴田さんの主張を認めないと思われる。というのは、通常作成されるはずの遺産分割協議書が作られていないということに着目して、裁判所からすれば、正式な遺産分割ができていなかったのであろうと評価されてしまうからである。
したがって、本来は、弟さんにお金を払う必要はないが、現実的な問題としては、弟さんに一定のお金を払って解決をしないといけないと思われる。

伊藤弁護士の“納得の一言”『遺産分割は協議書まで作らないと危険』
本来は口約束だけの遺産分割も有効ですが、預金や不動産といった、登記や登録の名義を変える必要がある場合には、遺産分割の結果を記した書面がないと、何もできません。協議がまとまれば、必ず遺産分割協議書を作るようにしてください。

 

離婚したら返して!(オール阪神・巨人)

<相談内容>
2年前に結婚した時に、夫婦の共有名義で一軒家を建てた佐藤さんは、その時に妻の父から700万円を援助してもらいましたが「もし離婚したら700万円は返してもらう」と言われました。その時は佐藤さんは了承しましたが、結局、性格の不一致で離婚。財産分与するには家を売るしかないのですが、妻の父からは改めて「約束通り700万円を返してほしい」と言われました。返さないといけないのでしょうか?

【弁護士の見解】返さないといけない
まず、今回の700万円が借りたものなのか、あげたもの、贈与なのかという点では、お父さんの気持ちを察するに、基本的には返してもらわなくてもいい援助、すなわち贈与だったと考えられる。問題は、義理のお父さんが言っていた「離婚したら返してもらう」この言葉が、法律的にどういう意味があるか、という点である。
これについては、贈与契約に「解除条件」というものがつけられていたと考えるべきである。解除条件というのは、条件として定めた一定の事実が発生すれば契約はなかったことにするというものである。逆のパターンとして「停止条件」というのもある。例えば「もし結婚したら700万円をあげる」というもので、予め定めた一定の事実が発生して、初めて契約の効力が生じるというものである。
今回の場合は「離婚したら」という条件を満たしたわけなので、贈与はなかったことになり、佐藤さん夫婦は700万円を返さないといけないということになる。

伊藤弁護士の“納得の一言”『あげてしまっても解除条件付きなら返してもらえる』
一旦財産を現実にあげてしまえば、もう撤回できないのが贈与契約の特徴ですが、今回のような解除条件というのを事前に決めておけば、そもそも贈与契約をなかったことにできますので、あげたものを返してもらうことができます。

“さらに納得の一言”
今回は、田中明子税理士に贈与税に関する「住宅取得等資金の特例」についてご説明いただきましたが、改めて詳しくご紹介します。
主に年間110万円を超える金銭や不動産の贈与をすれば贈与税がかかります(番組の中で一部、110万円以上と文字が表示されましたが、正しくは番組での田中税理士の説明通り「110万円を超える」となります。表示が誤っていたことをお詫びいたします)。今回、番組で取り上げたのは親子間で住宅取得資金を贈与しているケースでしたが、このように贈与を受ける人が、贈与する人の直系卑属で20歳以上であれば、住宅取得のための資金の受け渡しがあった場合には、一定の金額以内であれば贈与税が非課税になるケースがあります。
契約締結日が平成32年3月31日までならば、「省エネ等住宅」などの優良住宅の場合は住宅購入資金の1200万円まで、それ以外の住宅はすべて700万円が上限で非課税となります。但し、自分の「土地」や「建物などの物件」自体を贈与したような場合などは特例が受けられない。その他、様々な受贈者の要件を満たす必要があります。
また、特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に、戸籍の謄本など一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。


【ゲスト】芦屋小雁
【出演者】桂南光、辻本茂雄、山田花子、オール阪神・巨人、海原はるか・かなた、伊藤芳晃(弁護士)


9月9日(土)放送分

無断で通ったら3万円!?(なすなかにし)

<相談内容>
佐々木さんの家は細い路地に面していますが、長年、庭を横切って大通りに抜ける近道にしている人がいました。おじいさんの代には黙認していたのですが、佐々木さんは庭を通行禁止にして「庭を通ったら通行料3万円!」の貼り紙をしました。ある日、庭を通った武藤さんに注意すると「今までから通っていたので、3万円払うので許してほしい」と言って、実際に3万円を払ってくれましたが、後日、「友人に貼り紙通りに払わなくてもいいと聞いた。迷惑料1万円を引いた2万円を返金してほしい」と言ってきました。返さなくてはいけないのでしょうか?

【弁護士の見解】返さなくてもいい
払った3万円を返してもらえるというのは、これが「不当利得」にあたる場合、すなわち法律上理由のない支払いにあたる場合に限られる。
確かに、通行料3万円という貼り紙があったからといって、必ずしも、法律上3万円を支払う義務が発生するわけではない。しかし、武藤さんは、毎日のようにここを通行してきた謝罪の意味もこめて、示談のために3万円を払っている。示談というのは、当事者の話し合いなどによって互いの紛争をない状態にしようというものである。このときの示談金の金額は、当事者が自由に決めることができるので、相場より多い少ないがあっても、原則として有効である。
もちろん、公序良俗に反するほど著しく不当に高い場合は、無効となるが、今回の場合、一回きりではなく何度も通っていた、これの謝罪の意味もこめていると考えられるので、無効になるほど著しく高いものではない。
また、もしかしたら武藤さんは、払うべき金額の錯誤があったと主張するかもしれませんが、謝罪の意味が込められた示談ということからすれば、払うべき金額に勘違いがあったということはできず、これは錯誤無効にもならないと考えられる。
したがって、今回の3万円は、法律上理由のある支払いと言えるので、不当利得ではなく、返す必要はない。

伊藤弁護士の“納得の一言”『示談金の金額は原則として自由』
示談金の金額は、公序良俗に反するほど著しく不当な物であれば別ですが、原則として当事者が自由に決めることができ、一旦示談すれば、後日、返還してもらうことはできません。

 

価値が違いすぎる!(オール阪神・巨人)

<相談内容>
池田さん兄弟のお父さんは美術品好きで「自分に何かあったら長男に絵皿を、次男に日本画を譲る」と一筆書いていました。池田さんが亡くなった後で、美術品の価値を調べると、兄が譲ってもらうことになっている絵皿は100万円だったのに対して、弟が譲ってもらう日本画は、わずか1万円の価値しかありませんでした。「価値が違いすぎるので、絵皿も含めた上で遺産分割してほしい」と弟は言いますが、兄は「書面で譲ると約束しているし、どうしても絵皿をもらいたい」ともめています。他の財産はほとんどなく、遺言書もありませんが、兄は約束通り絵皿をもらえるのでしょうか?

【弁護士の見解】原則としてもらえるが、遺留分が問題となります。
今回のケースでは、遺言がなかったということだが、池田さんが書き遺した手書きの書面は、あと、日付と印鑑があれば、自筆証書遺言となりえた。しかし、肝心の日付・印鑑がないので、今回は遺言としての効力は認められない。
その代わり、今回、池田さんが、長男らに対し、絵皿と日本画をそれぞれあげるという話をしていたことからすれば、死因贈与契約が認められると考えられる。この死因贈与契約というのは贈与契約の一種で、財産をあげる人が死亡することで効力が生じる。死因贈与と遺言とは非常によく似た制度で、譲ることを決めるのが生前で、実際に譲ってもらえるのが死亡後という点で共通である。しかし、遺言が、財産をあげる人が1人で一方的にできる単独行為であるのに対して、死因贈与は、あげる人ともらう人との2人の契約で成立するという点が違っている。そのため、死因贈与が成立するには、財産をもらう人が、財産をもらう内容を伝えられていて、かつ、その内容を了承していることが必要となる。
今回の場合、贈与の話は生前に長男らに伝えられており、兄弟も了承していたと認められる。このことは、池田さんが書きのこした書面を長男が保管していたことからもうかがわれる。したがって、今回は、死因贈与契約により、絵皿は長男のものとなり、たとえ価値が違っていたとしても、長男はこの絵皿をもらうことができる。ただ、弟の考え方しだいとなるが、遺留分という問題が出てくるので、遺留分を侵害しないかどうかの注意は必要である。


【ゲスト】安蘭けい
【出演者】桂南光、辻本茂雄、山田花子、オール阪神・巨人、なすなかにし、伊藤芳晃(弁護士)


9月2日(土)放送分

バッテリーがなかったカメラ(女と男)

<相談内容>
女と男の和田さんのお兄さんは、子どもの合唱コンクールをビデオカメラで撮影するつもりでしたが、前日にカメラが故障しました。そこで、同じカメラを持っている市川さんにタダで借りましたが、いざ撮影しようとすると、バッテリーが充電されていなくて撮影できませんでした。仕方なく業者が販売するDVDを買ったのですが、代金を市川さんに払ってもらえるのでしょうか?

【弁護士の見解】払ってもらえない
市川さんは、和田さんのお兄さんに無償でビデオカメラを貸して引き渡しているので、二人の間にはビデオカメラの使用貸借契約が成立している(民法593条)。
使用貸借契約の場合、貸主の義務については、これは無償であるがゆえに、賃貸借契約のように目的物を使用に適した状態におくという積極的な義務までは認められない。借主が使用するのを邪魔せずに許容するという消極的なものとしか考えられていない。ですから、貸したものに欠陥があったとしても、貸主が欠陥の存在を知りながら、あえて告げなかったような場合を除いては、借主が損害を被っても責任を負わない。
そのように考えると、今回、市川さんはビデオカメラをきちんと使用できるようにして貸す義務まではなく、バッテリーの充電がされてないことを知りながら告げなかっという事情がない限りは、責任を負わない。したがって、和田さんのお兄さんの出費については、支払ってもらえないという結論になる。

 

外貨で支払い?(テンダラー)

<相談内容>
浜本さんは、ベトナムで旅費が足りなくなり、友人に5万円を貸してと頼んで、現地通貨で借りました。日本に帰国後にお金を現地通貨で返そうとすると、「ここは日本だし、日本円で返してほしい」と言われました。現地通貨で返すことはできないのでしょうか?

【弁護士の見解】外貨での支払いはできない
浜本さんと友人は、5万円に相当する1000万ベトナムドンという通貨で貸付額の合意をしている。このような貸付の場合、日本円に換算すれば、為替相場によって金額が変動することがままある。民法は、外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、特別の合意がない限り日本の通貨で弁済することができる、しかもそれは、支払い地の為替相場によると定めている(403条)。
この民法の規定については、いずれの国の通貨で弁済するかというのは、債務者である浜本さんが選択でき、したがって現地通貨で返済することもできるという解釈がある。ところが、判例は、逆に、どちらの通貨で支払ってもらうかの選択権は債権者にあると考えている(最判S50.7.15)。今回の場合についても、友人が日本円で弁済を求めれば、浜本さんは日本円で返さなければならないということになり、先ほどの民法の規定については、例えば友人が、外国の通貨で返済してくださいと求めたとしても、浜本さんは日本円で弁済できるということを定めているに過ぎないと考えている。ただし、日本円で返済する場合は、返済する時点での為替相場に基づいて返済することができるという民法の規定があるので、日本で返済する場合には、為替相場に換算して弁済するということになる。

 

予想外にたいへん!(プリマ旦那)

<相談内容>
プリマ旦那の河野さんの弟は、近所の山田さんに庭の石垣の補修を頼まれました。「1日で直してくれたら1万円払う」と言われたので引き受けたのですが、石垣の崩れ方がひどく、作業は夜中までかかってしまいました。河野さんの弟は、予想外にたいへんだったので日当を増やしてほしいと言いましたが、応じてもらえません。結構たいへんだったのに、日当を増やしてもらえないのでしょうか?

【弁護士の見解】増額はしてもらえない
河野さんの弟さんと山田さんとの間では、石垣の修繕という仕事の完成を目的として、それに対して報酬の支払いを合意しているので、請負契約が成立している(民法632条)。請負の報酬については、当事者間の協議で自由に決めることができるが、今回は1万円という定まった額で報酬合意をしている。これは定額請負と言い、この場合、請負人である弟さんは、思っていたよりもたいへんな作業だったとしても、見込み違いを理由に、約束した金額以上の報酬を請求することはできない。逆に約束した金額以下で仕事が終わったとしても、差額を返還する必要もないというのが定額請負である。したがって、弟さんには気の毒だが、増額はしてもらえないという結論になる。

林弁護士の“ちょっと一言”『請負に関する改正民法に注目!』
現行民法は、請負は完成された仕事の「結果」に対して報酬を支払うという考え方に立っています。仕事が途中で終わった場合には、原則、全く報酬請求ができないというふうに解されています。
しかし、それでは請負人にとって気の毒なケースもありますので、改正民法は、一定の場合、仕事が途中でも終わっても、仕事の内容が分割可能であり、注文者がその分、利益を受けているときには、受けた利益の割合に応じて報酬請求ができるというふうに定められました(改正民法634条)。知っておいてください。


【ゲスト】増位山太志郎
【出演者】笑福亭仁鶴、桂南光、桂吉弥、三倉佳奈、女と男、テンダラー、プリマ旦那、林一弘(弁護士)


8月26日(土)

大声は騒音?(サンシャイン池崎)

<相談内容>
アパートの上の階に住む役者を目指している人が、昼夜を問わず大声で発声練習をするので、アパートの大家さんに止めてもらうようにお願いしましたが、「彼を応援しているし、あの声なら我慢できる範囲だ」と何もしてくれません。耐えられなくなったので引っ越ししたいのですが、大家さんに引っ越し代を払ってもらえるのでしょうか?

【弁護士の見解】請求できる可能性は高い
アパートの住人の大きな声やエアコンの室外機、あるいはペットの鳴き声などは生活騒音といわれているが、工場などの騒音と違って生活騒音を規制する法律はない。かつての環境庁、今の環境省の告示では具体的な騒音の基準値というものを定めて、住宅地では昼間は55デシベル以下、夜間は45デシベル以下とされている。
騒音というのは、人によってうるさく感じるか、そうでもないと感じるか個人差がある。そこで民事では、騒音基準値を参考に「受忍限度」というのがキーワードになる。受忍限度とは、一般人を基準にして社会通念上、がまんできる範囲のことをいう。
今回、声の大きさとか、発声の時間帯などを総合的に考えて、明らかに受忍限度を超えていて、例えば、池崎さんが、そのことが原因で健康被害を訴えるとか、引っ越しもやむを得ないと言えるほどの事情があれば、直接その人に不法行為を理由に損害賠償として引っ越し費用とか、慰謝料などを請求できる(民法709条)。
大家さんは、賃貸人として、池崎さんの居住目的が達成されるために、きちんと使用させる義務がある。ところが、何も動いてくれないとなれば、大家さんとしての義務違反があると認められる。したがって池崎さんは、大家さんの債務不履行を理由に、賃貸借契約を解除して、賠償として引っ越し費用等を請求できるということになるが、サンシャイン池崎さんが大声で困ってるというのなら余程のことではないかと思われるので、請求できる可能性は高いであろうと考える。

 

前回は払ったけど・・・(トット)

<相談内容>
8年前に、隣の家から自分の敷地に伸びた木の枝を、費用を半分出して切ってもらいました。その際に、「今後も土地の問題については、同じように解決する」と口約束を交わしました。8年経って、また伸びてきた枝を切ってほしいと頼むと、「約束だから・・・」と伐採費用の半額を請求されたけど、払わないといけないのでしょうか?

【弁護士の見解】費用の半分を払う可能性は高い
隣の土地の木の枝が境界線を越えてきた場合に、勝手に切ることはできず、隣の木の所有者に、枝の切り取りを請求することができるだけである(民233条1項)。
今回のケースでは、横田さんと佐藤さんは、過去に費用を折半して、木の所有者である佐藤さんに枝を切ってもらい、「今後も同じような問題が出てきたら同じように解決する」という約束をしている。ただ、この約束の内容で、どんの問題が出てきた時に解決するのか、どういうふうに解決するのか、については少し曖昧なので、このような曖昧な約束に法的拘束力を認めることはできない、と考えることもできる。
ただし「約束したときと同じような問題が発生した場合には、同様に解決する」という趣旨だと受けとめて、今回も枝の越境という、過去の例と全く同じ問題が発生したわけなので、過去に倣って費用を折半して、佐藤さんに枝を切ってもらうんだと解する余地は十分にある。このような場合は、佐藤さんが枝を切るに際して、法の定めと異なる口約束も有効なので、約束に従って横田さんが費用の半分を支払う可能性が高いと考える。

 

母が来るまで貸したマンション(チキチキジョニー)

<相談内容>
優子さんは、5年前に買った分譲マンションの部屋を鈴木さんに「母がいずれ住むことになったら、部屋を明け渡す」と条件を付けて、相場より安く部屋を貸すことにしました。友達なので口約束だけで契約書などは作っていません。ところが入居して1か月後に母が「3か月後に引っ越したい」と言い出しました。鈴木さんに明け渡しをお願いしましたが受け入れてもらえません。すぐには明け渡してもらえないのでしょうか?

【弁護士の見解】すぐには明け渡してもらえない
口約束でも賃貸借契約は有効に成立する。今回のような期間の定めがない建物賃貸借契約の場合、当事者は契約違反がなくても、民法上、いつでも解約の申し入れをすることができる(617条1項前段)。また、借地借家法という法律では、賃貸人、つまり家主さんから解約を申し入れた場合、申し入れの時から6か月経過することによって賃貸借が終了すると定めている(同法27条1項)。
ただし、解約の申し入れが有効となるには、家主の方に正当事由が必要となる(同法28条)。正当事由というのは、家主の方が、この建物を必要とする事情が賃借人が必要とする事情を上回っていることである。この判断のためには、賃貸借の経過とか、建物の現況、あるいは、家主さんの方から明け渡し料を提供したとか、いろいろな事情が考慮される。
今回、鈴木さんは、優子さんから近い将来、母親がこのマンションに居住するんだ、そういうときには、すぐに明け渡してくれということで、そのために相場より安い賃料で貸すということを了解して、鈴木さんは借りている。その意味では、解約の正当事由として考慮される事情だと考えられる。そして、鈴木さんがマンションに居住する必要性がそれほど切実でなく、さらに、優子さんのほうから一定の明け渡し料等の提供があれば、正当事由が認められる可能性は高いと考える。
それでも、やはり借地借家法上、解約申し入れから6カ月経過するまでは、賃貸借契約は終了しない。この法律は、契約の終了などに関して、法の定めより賃借人にとって不利な約束というのは、効力が生じないと定めている。(同法30条)したがって、母親が来れば、すぐ明け渡すという約束をしていたとしても、それが正当事由として考慮されることはあっても、拘束力はないということになるので、すぐには明け渡してもらえないという結論になる。


【ゲスト】杉山優奈、内田愛
【出演者】笑福亭仁鶴、桂南光、桂吉弥、三倉佳奈、サンシャイン池崎、トット、チキチキジョニー、林一弘(弁護士)


8月19日(土)
 
期間限定で民泊?(酒井くにお・とおる)

<相談内容>
森井さんは夫婦で田舎暮らしをしたいと言う夢を実現しました。ところが大きな家なので夫婦二人が住むには広すぎて、2階にある5つの部屋は使っていません。そこで来年の7月から11月まで5か月間の期間限定で、アルバイトも雇って宿泊施設にできないかと思っています。期間限定で自宅を自由に宿泊施設にできるのでしょうか?

【弁護士の見解】一定の条件を満たせば宿泊施設にできる
今年の6月に『住宅宿泊事業法』という新しい法律ができ、来年の6月15日までに施行される予定になっている。この法律によると、一般の民家を宿泊施設にする、いわゆる「民泊」を営もうとする人は法律に定められた一定の条件を満たした上で、都道府県知事への届出をすれば、民泊サービスを提供することができると定められている。
また、期間についても、年間180日を超えない範囲内であれば可能であると定められている。今回の場合も、5か月間、つまり約150日間の期間限定で年間180日を超えないということなので、法律の手続きに則って都道府県知事への届出をすれば民泊をすることができるということになる。

 

価値がありすぎた写真集(オール阪神・巨人)

<相談内容>
「5万円を貸してほしい、利息として君の好きなアイドルの写真集をあげるから」と松井さんから頼まれて、竹田さんが5万円を貸しました。ところが、その写真集にはプレミアムがついて、値段が1万円になっていました。松井さんは「こんなに価値があるとは知らなかった。利息はお金で払うから写真集を返してほしい」と言いますが、写真集をくれると言うからお金を貸したので、返したくありません。写真集は返さなければいけないのでしょうか?

【弁護士の見解】返さなければならない
今回のケースは、お金を貸す、お金を借りるという「金銭消費貸借契約」と「贈与契約」の2つが混合した契約になっている。今回、たいした価値がないと思っていた写真集は、実はプレミアムがついて1万円もするということだった。価値の点に勘違いがあったのですから、いわゆる「動機の錯誤」と言え、今回の場合、「錯誤無効の主張」ができると考えられる。
また、錯誤については、契約上の重要な点に錯誤がないと錯誤無効の主張できないが、 松井さんは、もし最初から写真集が1万円もするとわかっていたなら、あげなかっただろうと言うのが一般的な考えだと言える。これは、契約するにおいて、重要な点に錯誤があったと言え、松井さんは錯誤無効を主張できると考える。したがって、竹田さんは写真集を返さなければならないということになる。

澤弁護士の“澤の一声”『重要な点に錯誤があれば契約は無効』
今回のように契約をするにあたって価値があるとわかっていたならあげなかったというように、契約する上で重要な点に錯誤があった場合には錯誤無効を主張することができます。契約に当たっては、重要な点に錯誤はないか、最初にしっかりと見極めるよう気をつけてください。


【ゲスト】高橋愛
【出演者】笑福亭仁鶴、桂南光、本茂雄、若井みどり、オール阪神・巨人、酒井くにお・とおる、澤登(弁護士)


8月12日(土)

6年間使うと言ったのに・・・(ミヤ蝶美・蝶子)

<相談内容>
「6年間大切に使わせてもらうから」。1年前にママ友の里美さんにせがまれたランドセルは、本革の手作りで、娘のために買ったときには10万円もした高価なものでした。娘の思い出が詰まっていて、捨てるに捨てられなかったのですが、タダで譲ることにしました。
ところが、先日、里美さんの息子が、別の新しいランドセルで登校している姿を目撃!「3か月ほど使ったけど、傷んだから処分させてもらったわ」と言います。捨てられるならタダではあげなかったし、せめてランドセルの代金の半分くらいは弁償してもらいたいのですが、払ってもらえるのでしょうか?

【弁護士の見解】いくらかは払ってもらえる
ゆかりさんは里美さんに、娘の思い出のランドセルを譲っており、これは贈与契約にあたる。ただし、今回は、不用品を処分したのではない。里美さんが「大切に使わせてもらうから」と言うからこそ、贈与することにしたという事情がある。すなわち、ランドセルを大切に使うことは、ランドセルの贈与契約に際して、契約内容になっていたと考えられる。
ところが、里美さんはあっさりとランドセルを処分し、この約束を守ることができなかった。したがって、ゆかりさんは、里美さんの債務不履行を理由に、ランドセルの贈与契約を解除することができると考える。
このような場合、ゆかりさんは、本来であればランドセルの返還を求めるということになるが、本件の場合、里美さんが既にランドセルを処分していることから、ランドセルを返してもらう代わりに、ランドセルの時価相当額の賠償を求めることができる。ただし、請求できる額は、ランドセルの購入額ではなく、相当期間使った後の時価額となるので、わずかな額となる可能性が高いと考える。

小島弁護士の“一刀両断”『安易な贈与は後悔のもと』
一般的な贈与契約では、もらった人には義務が発生せず、自由に使えるということになります。大事なものを贈与する際には慎重に考えたいですね。

 

3日前はドタキャン?(中田カウス・ボタン)

<相談内容>
オペラ好きの仲間20人が集まる女子会をひらいています。次回は1万5千円の席で観劇することになりました。何かとドタキャンすることが多いヨシ子さんに「前払いじゃないと参加は認められない」言うと、「予定を空けているし、必ず行くから」と言って払ってもらえません。
案の定、3日前になって「都合で行けない」と連絡があり、「ドタキャンは困る」と言うと、「まだ他の人に声をかけられるでしょ。だいたい3日前はドタキャンとは言わないわ」と言われました。代わりの人が見つからなかった場合、ヨシ子さんにチケット代を請求できるのでしょうか?

【弁護士の見解】請求できる
幹事さんはヨシ子さんから、チケットの購入をしてほしいと依頼を受けており、委任契約が成立していると考えられる。これは、ヨシ子さんが「必ず行く」と言ったからこそ成立した話ということになる。つまり、幹事さんはチケットを確保し、ヨシ子さんはそのチケット代を払うという合意が認められる。契約が成立している以上、ヨシ子さんは、一方的に合意を解除することはできない。
したがって、ヨシ子さんは、代わりの人が見つかるなど、幹事さんが解除に応じてくれない限り、代金を支払わなければならないと考える。


【ゲスト】吉田幸助
【出演者】笑福亭仁鶴、桂南光、桂吉弥、山田花子、中田カウス・ボタン、ミヤ蝶美・蝶子、小島幸保(弁護士)


8月5日(土)

弱すぎたヒーロー(ザ・ぼんち)

<相談内容>
「地元の商店街を盛り上げるためにヒーローショーをやるので、自分たちが作ったヒーローの着ぐるみで出演してほしい」と賢治さんは、高橋さんに頼まれました。「交通費は払うし、ショーがうまくいけば謝礼を3万円払う」と言われたので引き受けましたが、いざ、行ってみると、着ぐるみが大きく、重すぎて台本通りにカッコよく動けません。
しかし、その様子がおもしろかったのか、会場の子どもたちは大爆笑。また見たいと言われました。ところが、高橋さんは「台本通りの動きじゃなかった。謝礼は払えない」と言います。会場は盛り上がったのに、謝礼は払ってもらえないのでしょうか?

【弁護士の見解】払ってもらえる
今回のポイントは「成功したら払う」という成功報酬の場合、成功したかどうかの判断基準は何かということになる。
今回の高橋さんとの約束は、謝礼が出るかどうかは、ヒーローショーが成功したという条件、つまり特約が付いた契約です。謝礼が出るかどうかは、その条件が成就したかによることになる。そして条件が成就したかどうかは社会一般に通用している常識に従って判断する。
今回の場合、賢治さんは着ぐるみを着て台本どおり動くことはできなかったが、会場は大爆笑で、お客さんは満足していた。お客さんには台本は公表されていないので、台本通りかどうかはお客さんにはわからないし、状況を聞く限り大多数のお客さんにウケていたようなので、一般的にまた、常識的に考えて成功したと言うふうに考えることができる。
したがって、条件は成就したと言え、報酬は払ってもらえると考える。

澤弁護士の“澤の一声”『「社会通念」が判断の基準』
今回のように、条件が成就したどうかは、社会一般に通用している常識に従って判断します。ただし、成功報酬の場合は、判断基準があいまいになりがちなので、あらかじめ交渉時点でしっかり確認することが必要でしょう。

 

父が書いた借用書(オール阪神・巨人)

<相談内容>
中村さんの父親が1年前に亡くなりました。父親には多額の借金があったので相続放棄をしましたが「お父さんに100万円を貸した。返してほしい」と言う人があらわれました。中村さんが「相続放棄をしたので返す必要はない」と言うと、「1年後に返済できなければ息子が返済すると書かれた借用書がある。借用書通りお金を返してくれ」と言われました。中村さんは借用書のことは全く知りません。相続放棄をしたのに父親の借金を返さないといけなのでしょうか?

【弁護士の見解】返さなくてよい
今回の場合、亡くなったお父さんが作った借用書に、中村さんが借金の保証をすると書かれていたと言うことだが、このような場合は、保証契約が成立するかどうかが問題となる。保証契約は、債権者と保証人との間で結ばれる契約である。したがって、お金を借りたお父さんとお金を貸した高田さんとの間で、保証の合意があっても保証契約は成立しない。あくまでも保証契約は中村さんと高田さんとの間で結ばれなければならないからである。
したがって、今回の場合、中村さんの保証契約は成立しておらず、中村さんは保証人としての責任を負わなくてもよいと言うことになる。そして、亡くなったお父さんの借金の返済義務を、中村さんは相続により引き継ぐが、中村さんは相続放棄しているので、最初から相続人ではなかったということになり、返済義務を相続せず、返す必要はない。


【ゲスト】伊藤かずえ
【出演者】笑福亭仁鶴、桂南光、辻本茂雄、若井みどり、オール阪神・巨人、ザ・ぼんち、澤登(弁護士)


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