2月27日(土)

本物だった置物(ザ・ぼんち)

本物だった置物

雄一郎さんは後輩の山田さんから「取引先の部長から『預けていた虎の置物を休みの日に届けてくれ』と言われたが、壊すとたいへんなので代わりに行ってほしい」と相談されました。雄一郎さんは気の小さい山田さんを元気づけるために「あの置物は模造品だから1万円ぐらいの価値しかないものだ。緊張することはない」とウソをつきました。翌日、山田さんが「置物を壊してしまったら30万円もすると言われた。ウソをついた先輩にも責任があるので弁償金の半分を払ってほしい」と言います。払わなければいけないのでしょうか?

本物だった置物

【弁護士の見解】払わなくてもよい
今回の場合、置物を届けてくれと言った取引先の部長と、それを引き受けた山田さんとの間には「準委任契約」が成立している。したがって山田さんは無事に虎の置物を取引先の部長に届ける義務があるにもかかわらず、その置物を壊してしまったのだから、山田さんには債務不履行を理由に損害賠償責任があるということになる。
一方、雄一郎さんは取引先の部長とは契約関係がなく、また、あくまでも山田さんのことを思って嘘の金額を言っただけなので、故意や過失もなく、虎の置物が壊れたこととの間に直接の因果関係もないので、不法行為にもあたらない。したがって、雄一郎さんは弁償金を支払う必要はないということになる。

澤弁護士の“澤の一声” 『人から仕事を頼まれたら、責任を持ってやり遂げましょう』

頼まれたことに対する責任は、まずは頼まれた人にあります。やり遂げないと法的に責任を問われることにもなりかねません。注意しましょう。

外国籍でも相続人?(宮川大助・花子)

外国籍でも相続人?

よし子さんの夫が亡くなりました。相続人はよし子さんと娘二人です。長女はよし子さんと暮らしていますが、次女は20年前、父親の反対を押し切って国際結婚してカナダに住んでいます。父親は激怒し「親子の縁を切る」と言ったので、それ以来、次女は一度も帰国していません。よし子さんは次女にも相続させようと探しだし、連絡を取ろうとしましたが、長女は「お父さんから絶縁されて外国籍を取ったし、日本に住民票もない。妹には相続権はない」と言います。次女は父親の遺産を相続できるのでしょうか?

外国籍でも相続人?

【弁護士の見解】相続できる
今回の相談では、外国に帰化した場合や日本に住民票がない場合でも相続権があるのかが問題となる。
今回のケースでは、亡くなったお父さんが日本国籍を持った日本人なので、相続に関しては日本の民法が適用される。民法は、被相続人の子どもは相続人になると規定しており、子どもに日本の国籍があることや日本に住民票があることを相続の条件とはしていない。
したがって相続人が外国籍であっても、また日本に住民票がなくても、遺産を相続できるということになる。今回の場合、父親から縁を切ると言われたようだが、実の親子の関係の場合は、親子関係は切ることができない。また、それだけでは被相続人の意思によって相続人の相続資格を奪う「廃除(はいじょ)」にもあたらない。したがって、妹さんは相続できるということになる。

澤弁護士の“澤の一声” 『相続人は外国籍であっても相続できます』

相続人が廃除されない限りは相続は可能です。また、勘当だといっても法的に親子関係を切ることはできません。親子関係は大切にしましょう 。
 

【ゲスト】ふじいあきら
【出演者】笑福亭仁鶴、辻本茂雄、山田花子、宮川大助・花子、ザ・ぼんち、澤登(弁護士)


2月20日(土)

骨とう品をあげる!(若井りき・ゆうき)

骨とう品をあげる!
新さんは骨とう品を集めるのが趣味で、週末には友人たちと骨とう品の自慢をしています。せっかく集めた骨とう品を自分が死んだ後、捨てられたりすると悲しいと思い、「私が死んだら所有するすべての骨とう品を田中さんに譲る。もし田中さんが要らないと言えば山本さんに譲る」と言う内容の遺言書を書きました。そのことを家族に言うと「そんな遺言書はおかしい」と言います。この遺言書は有効なのでしょうか?
骨とう品をあげる!

【弁護士の見解】 有効だと考える
遺言書で財産を無償、つまりタダであげるということを「遺贈(いぞう)」と言う。
今回のように遺産のうち骨董品だけをあげるというような、遺言者が遺産の中から特定の財産を譲るということを「特定遺贈(とくていいぞう)」と言う。この特定遺贈の場合、遺贈を受ける人がそれをほしくない場合、遺言者の死亡後はいつでもその遺贈を放棄することができると民法に定められている。これは遺贈による利益であっても、もらう人の意思を無視してまで強制することはできないからである。そして、今回のように最初に遺贈を受ける田中さんが欲しくないと放棄をすれば、次の山本さんにあげるという遺言を「補充遺言(ほじゅうゆいごん)」と言う。この補充遺言は、最初の田中さんへの遺贈と、次の山本さんへの遺贈の2つが結合したもので、最初の田中さんが放棄をすることを条件とするものである。遺言にはこのような条件をつけることもできるので、この遺言書は有効であると考える。

澤弁護士の“澤の一声” 『補充遺言も有効』

今回のように、最初の田中さんが欲しくなければ、次の山本さんにあげるという条件のついた遺言も有効です。覚えておいてください 。

領収書があれば弁償?(宮川大助・花子)

領収書があれば弁償?

松本さんはカフェを経営しています。ある日、常連客の竹下さんが友人の梅沢さんを連れてやってきました。ところが店員がフォークを落とし、梅沢さんの白いスカートを汚してしまいました。松本さんが「弁償します。おいくらですか?」と尋ねると、3万円したと言うので、「領収書を持ってきていただければ弁償します」と言いました。後日、梅沢さんが5万円の金額が書かれた領収書を持ってきました。「3万円と言ったのに5万円は高すぎる!」と言うと、「領収書があれば弁償すると言ったじゃない」と言われました。5万円全額を弁償しなければならないのでしょうか?

領収書があれば弁償?
【弁護士の見解】5万円全額を払わなくてもよい
今回の場合、店員さんの不注意で梅沢さんのスカートを汚したのだから、店員さんの行為は不法行為にあたる。したがって、店長は梅沢さんに損害賠償をしなければならない。
通常、クリーニング代を弁償すれば足りるところ、店長は、常連の竹下さんの顔をたてて「領収書があれば弁償する」と梅沢さんとの間で示談の契約をした。今回のケースでは、店長は領収書があれば3万円を上限に弁償しようと思っていたところ、梅沢さんは同じようなスカートなら領収書があれば3万円を超えて弁償してもらえると思っていた。このように双方の思っていることに食い違いがある場合、一般的かつ合理的に考え、どのような内容の契約となるかが決まる。
今回の場合、領収書があればいくらでも弁償するという内容であるとは常識的には考えられず、弁償の上限は3万円であると考えるのが一般的かつ合理的である。従って5万円全額を弁償する必要はないということになる。


<関連質問>
もしこの女性が1万円のスカートを買ってきて差額の2万円を現金で欲しいと言った場合、差額の2万円を払うのですか?

渡さなくても良い。3万円の限度で実際に払った金額を領収書があれば払うという内容の示談なので、実際に1万円しか払っていないのであれば1万円しか弁償してもらえないと考える。

澤弁護士の“澤の一声” 『契約の内容は一般的かつ合理的に考えましょう』
今回の場合、契約の内容は3万円を限度に領収書があれば弁償する内容であると考えるのが一般的かつ合理的です。利己的な考えにならないように気をつけましょう 。
 

【ゲスト】野々すみ花
【出演者】笑福亭仁鶴、辻本茂雄、山田花子、宮川大助・花子、若井りき・ゆうき、澤登(弁護士)

2月13日(土)

ピアノ代は誰が払うの?(酒井くにお・とおる)

ピアノ代は誰が払うの?

ピアノ演奏が得意な青木さんは、赤井さんから結婚パーティーでの演奏を頼まれました。青木さんは、快く無料で引き受け、高いピアノを借りて会場に設置してもらうようお願いしました。しかし、青木さんはパーティーの前日に、急な仕事が入り欠席することになりました。赤井さんから「ピアノのレンタル代金は払ってほしい」と言われましたが、代金を払わなければいけないのでしょうか?

ピアノ代は誰が払うの?

【弁護士の見解】払う
まず、赤井さんの依頼で、青木さんがピアノの演奏を引き受けた、これで2人の間にはピアノの演奏に関する契約が成立している。今回の相談では、赤井さんが、このレンタルピアノ代を請求する根拠として考えられるものには、債務不履行責任というものがある。
債務不履行責任が成立するためには、1つは、「債務不履行」といって約束した人が約束を守らなかったこと。2つ目に、約束を守らなかったことに関して、「帰責事由」といって責められるべき事由がある場合。3つ目として、約束を守らなかったことで相手に損害を与えた、この3つが必要である。まず今回の青木さんには、約束を守らなかったという債務不履行は認められる。そして、その理由は、急遽、仕事が入ったというものだが、赤井さんとすれば、それは青木さん側の事情であって、これは青木さんに責められるべき事由がある、帰責事由があると言わざるをえない。また、赤井さんとすれば、青木さんがピアノを演奏する約束をしたからこそピアノを用意したわけで、ピアノのレンタル代が無駄になり、これは赤井さんにとってみれば損害と思われる。よって、青木さんは債務不履行に基づいて損害賠償責任が成立しているので、ピアノのレンタル代は払わないといけない。

伊藤弁護士の“納得の一言” 『無料でも約束を守らなければ賠償責任』

今回の場合、無料でピアノの約束をしていますが、無料か有料か、それは結論を分けるものではありません。無料であっても、単なる行為に基づくものであればともかく、約束をした以上、その約束を守らなければ、賠償責任が発生します。

2人でつくった子ども服(中田カウス・ボタン)

2人でつくった子ども服

雪乃さんは、デザイン学校の同級生だった松崎さんと同居しています。同居を始めて7年後に、2人で子ども服の販売を始めました。デザインは主に雪乃さんが、販売の事務や管理は松崎さんが行い、子ども服で得た収入は松崎さんの口座に入れて生活していました。
2人はお互いの両親にも紹介して、子どもができれば入籍すると伝えていましたが、作る服の方向性の違いから5年で別れてしまいました。雪乃さんが「今の売り上げがあるのは私のおかげ。財産の半分を分けてほしい」と言うと、「通信販売は僕が続けるし、まだ結婚していないので渡せない」と言われました。雪乃さんは財産の半分を分けてもらえるのでしょうか?

2人でつくった子ども服

【弁護士の見解】財産分与してもらえる
夫婦が、離婚する時には財産分与という制度がある。これは夫婦で築いた財産は夫婦2人の共有財産だからという考えに基づく。しかし、籍を入れていない「内縁」でも実質的には法律上の夫婦と変わらないわけで、内縁でも正式な法律上の夫婦と同じような制度や権利が認められている場合がある。今回の財産分与についても内縁関係が不当に破棄された場合、離婚慰謝料のような慰謝料も認められる場合がある。
ただ、内縁と言っても、法律上の「内縁」には制限があり、双方が結婚の意思があって、共同生活を営んでいて、社会的にも夫婦として認めているが、ただ、婚姻届だけ出していないために法律上の夫婦とならないという、そんな場合に限られる。本件の2人の場合は、共同生活を営んでいて、ご両親とか近所の人も夫婦として認めていたということだが、少し気になるのは「子供ができたら籍を入れる」というところである。ただ、この点についても、子供ができるまでは結婚しないという否定的な意味ではなく、単に結婚するタイミングを後ろにずらしたというだけで、2人には結婚の意思があり、したがって「内縁」は認められるというふうに考えられる。したがって、今回雪乃さんは財産分与として子ども服の財産を分けてもらえるということになる。ただ、財産分与の対象となるのは内縁関係が認められる時期以降に築いた財産に限られ、分ける割合も今回は半分でいいと考えられるが、事案によっては半分とは限らないということには注意が必要である。

伊藤弁護士の“納得の一言” 『内縁にも夫婦同様の権利』

内縁の場合、相続権までは認められてはいませんが、今回のような財産分与であったり、不当に内縁を破棄されれば、慰謝料というふうに、夫婦同然の、正式な夫婦同然の権利が認められています 。
 

【ゲスト】紫吹淳
【出演者】笑福亭仁鶴、桂吉弥、三倉茉奈、中田カウス・ボタン、酒井くにお・とおる、伊藤芳晃(弁護士)


2月6日(土)

ファンをやめたらあげる!(ミヤ蝶美・蝶子)

ファンをやめたらあげる!
サトシさんは、あかねさんと付き合っていました。あかねさんは、以前から大衆演劇の熱烈なファンで、度が過ぎるのでサトシさんはやめてほしいと思っていました。そこで「追っかけをやめたらカメラをあげる」と約束し、やめたあかねさんに高級カメラをプレゼントしました。しかし、1年後、座長のブログを見ると、あかねさんがカメラを持って最前列で映っている写真がアップされています。サトシさんは「カメラを返してほしい」と言いましたが、「半年はやめていたので返さない」と聞き入れてもらえません。サトシさんはカメラを返してもらえるでしょうか?
ファンをやめたらあげる!

【弁護士の見解】返してもらえる
何か物をあげるというのは贈与契約となり、今回の2人の場合は「負担付贈与契約」になると考える。「負担付贈与契約」というのは、何か物をもらう人が、物をもらう代わりの約束として何か一定の負担をするというものである。本件では、追っかけを止めるというのが、あかねさんが約束している負担の内容ということになる。負担付贈与では、物をもらった人が約束した負担をきちんと守らない場合は、ものをあげた人は、その契約を解除して、契約をなかったことにできる。今回のあかねさんは、追っかけを一旦止めた後、また再開しているので、これをどう考えるかということになるが、サトシさんは、あかねさんが給料のほとんどをつぎ込んでしまう、そんな生活を見かねてこういう約束をしたわけなので、この場合は、追っかけを止めれば再開してもいいというものではなく、もう今後、追っかけをしないという約束だったと解釈すべきだと考える。そうだとすれば、あかねさんは、追っかけを今後もしないという約束を守らなかったので、サトシさんは、この負担付贈与契約を解除してカメラを返してもらえる、そういう結論になる。

伊藤弁護士の“納得の一言” 『負担付贈与は解除も可能』

今回のような負担付贈与契約では、ある負担をすることが契約の内容になっていますので、その負担を約束通り守らなければ、あとで契約を解除することもできます。

未来のために整備して!(中田カウス・ボタン)

未来のために整備して!
田中さんは、山本さんから「費用を払うので、自分所有の土地を野球ができるグラウンドに整備してほしい」と頼まれ、整備を引き受けました。山本さんからは「自分に何かあっても、田中さんの気力と体力が続く限り整備は続けて」と言われました。
その後、山本さんが亡くなりましたが、約束を守って田中さんは6か月整備を続けました。しかし、ある時、山本さんの相続人から「整備はもういいい」と連絡があり、田中さんは「亡くなった後も整備を続ける約束をしていたので、整備費用を払ってほしい」と言いましたが、「山本さんが亡くなった時点で、その契約は終わり」と取り合ってもらえません。整備費用を払ってもらえるのでしょうか?
未来のために整備して!

【弁護士の見解】払ってもらえる
今回、生前の山本さんが田中さんに球場整備を頼んだことは、委任契約の一種であり、頼んだ山本さんが委任者、頼まれた田中さんは受任者というふうに言われる。実は、民法には委任契約では委任者が死亡すればその時点で委任契約が終了するという条文があり、そのため、今回のように自分の死後のことを委任しても、自分が死んでしまえば委任契約が終了するから、そんな死後の事務の委任は無効ではないか、ということが問題となる。しかし、多くの学者は、この民法の条文よりも、当事者の取り決めのほうを優先していて、当事者が取り決めをしたのであれば、死後の事務の委任も有効であり、従ってそういう委任契約は委任者が死亡しても続くと言われている。今回の山本さんは、田中さんとの取り決めで自分の死後も運動場の整備を委任していた、ということなので、山本さんが亡くなってもこの委任契約は終了しないということになる。もちろん、山本さんの相続人は、今度は自分が契約の当事者として、田中さんに対して契約の終了を告げることもできるが、契約の終了を告げるまでは、契約が存続していた以上、今回のケースでは半年間は契約があったことになるので、田中さんに半年間の整備代は払わないといけない。
このような死後の委任については、身寄りのない方が、自分の葬儀を誰かに手配してもらうとか、自分が住んでいた借家の処理を誰かに委任する、というケースがよくあり、それは有効である。ただ、何でも死後の事務委任が有効となるわけではなくて、例えば、死後に財産の処分を誰かに委任するというのは、本来は遺言ですべきと言われており、そういう意味では、そのような委任は無効となることも考えられ、注意が必要である。

伊藤弁護士の“納得の一言” 『死後の事務委任は書面で』

死後のことを委任したというのは、本当にそのような取り決めがあったのか、相続人との間でトラブルになりがちです。そういうことがないように、きちんと公正証書などの書面で取り決めを書いておくとか、また委任する内容も注意が必要です 。
 

【ゲスト】水森かおり
【出演者】笑福亭仁鶴、桂吉弥、三倉茉奈、中田カウス・ボタン、ミヤ蝶美・蝶子、伊藤芳晃(弁護士)


1月30日(土)

2年後も婚約中?(女と男)

2年後も婚約中?

北村さんは2年前に幼なじみの尚美さんと婚約しましたが、度重なる浮気が見つかり「婚約を解消する!」と言われました。そんなときに2年間の海外勤務が決まり、「海の向こうで心を入れ換えてくる。帰国したら結婚してほしい」と言うと、尚美さんは、「わかった。2年間だけ待つわ」と了承しました。
それから2年、会うことはおろか、連絡も途絶えがちでしたが、帰国後、結婚指輪を持って北村さんが会いに行くと、尚美さんの指には既に光り輝く指輪が!。聞くと、2か月前に婚約したのだと言います。「2年間待つと言ったのに。これは婚約破棄だ!」と北村さんは言いますが、慰謝料をもらえるのでしょうか?

2年後も婚約中?

【弁護士の見解】 慰謝料をもらえない
民法には婚約に関する規定はないが、婚約について、裁判例は将来結婚しようという合意があれば成立するとしている。今回の場合、北村さんは、「2年後に帰国したら結婚して欲しい。それまで待っててくれ!」と申し入れて、尚美さんも「わかった」というふうに言っている。
このやりとりだけ捉えると、婚約が継続しているのではないかとも思われる。しかし、尚美さんは、北村さんの浮気によって明確に婚約の解消を申し入れ、その後の2人というのは、具体的に結婚式の準備を進めるわけでもなく、会うわけでもなく、最終的には連絡も途絶えている。このような状況を全体的にみると、婚約が継続しているはいえないと考える。
つまり、二人は、交際を続けたものの、その先へ進めなかったというべきであって、尚美さんに婚約破棄の法的な責任を課すことはできないのではないかと考える。したがって、尚美さんが別の人と婚約をしたとしても、尚美さんに違法と評価されるまでの行為はなく、北村さんの慰謝料の請求は認められないと考える。

小島弁護士の“一刀両断”ポイント 『婚約後は 将来に向け誠意をもって』

婚約は将来結婚しようという合意があれば成立し、結婚に向けて誠実に交際する義務を負うことになります。軽率な行動で互いに相手を傷つけないよう気をつけたいですね。

思い出の父の自動車(オール阪神・巨人)

思い出の父の自動車

佐々木さんの父親が亡くなりました。相続人は一人息子の佐々木さんですが、父親には多額の借金があり、相続放棄するつもりでした。しかし、父親の思い出がつまったオート三輪だけは形見としてもらいたいと思っています。まだエンジンはかかるものの、50年も前の古いものなので、処分しても価値はないと思っています。「その車をもらったら相続放棄できなくなるんじゃないの?」と妻に言われましたが、形見としてもらっても相続放棄できるのでしょうか?

思い出の父の自動車

【弁護士の見解】 相続放棄できない可能性が高い
民法によると、相続人が、相続財産の全部または一部を処分した場合、その相続人は単純承認、つまり相続を受け入れたものとみなされて、その後は相続放棄ができなくなる。そこで、オート三輪を自分のものにすることが単純承認にあたる「処分」と評価されるかが問題となる。
裁判例によると、この場合の「処分」というのは、信義則上、相続人に限定承認あるいは放棄の意思がないと捉えられるような処分行為をいう、とされていて、いわゆる「形見分け」は、それが常識の範囲内に留まるものであれば、「処分」には該当しないとされている。常識の範囲内かどうかの区別については、もらった遺品の量とか範囲、そして、故人を偲ぶ品かどうかなどが注目される。本件の場合、衣類や小物などの身の回り品ではなくて、オート三輪をもらい受けようとしている。たとえ、50年以上前のオート三輪でも、まだエンジンはかかるようであり、アンティークとしての価値も否定できないと考えられる。したがって、これを自分のものにすることは、「形見分け」の範囲を超えて、「処分」に該当する可能性が高いのではないかと言うことで、オート三輪をもらってしまうと相続放棄ができない可能性が高いと考える。

小島弁護士の“一刀両断”ポイント 『形見分けも価値次第』

思い出の品を大切に扱い、故人を偲ぶのは大事なことです。しかし、特に本件のように相続放棄が関連する場合、形見分けとして財産をもらい受けたことを理由として、債権者が「相続放棄は無効だ」と主張して、借金の請求をしてくる恐れもあります。慎重に対応してください 。
 

【ゲスト】安田美沙子
【出演者】笑福亭仁鶴、桂吉弥、若井みどり、オール阪神・巨人、女と男、小島幸保(弁護士)


1月23日(土)

1円も相続していないのに…(幸助・福助)

1円も相続していないのに・・・(幸助・福助)

町工場をしていた太田さんが亡くなりました。相続人は奥さんと2人の息子で、財産は工場の土地建物とわずかな預貯金です。太田さんには1千万円の借金がありましたが、長男が工場を継いで全財産を相続する代わりに、借金も返すことになりました。何も相続しなかった奥さんと次男は相続放棄はしていません。
半年後、奥さんのもとに「太田さんに500万円を貸した」と言う人が現れました。長男に相談しましたが、「他の借金まで払うのは無理だ!」と言います。1円も相続していない奥さんと次男は今からでも相続放棄できるのでしょうか?

1円も相続していないのに・・・(幸助・福助)

【弁護士の見解】 相続放棄できない可能性が高い
借金のような債務は、相続開始と共に相続人全員にその法定相続分に応じて自動的に相続される。つまり太田さんの妻と次男は、債権者に請求されれば、法定相続分に応じて借金を返済する義務を負うことになる。したがって、この義務から逃れるためには、まず相続放棄の手続を考えることになる。
しかし、今回は、長男がその時点で判明している全てを相続するという内容の遺産分割協議を済ませている。一般に、遺産分割協議を行うことは相続を認めたものとされて、以後、原則として相続放棄はできない。もっとも、本件では、遺産分割協議の内容は、妻と次男が何も相続しないというものであり、このような場合に救われる余地がないのかというのが問題となる。
まず、相続放棄の手続きは、原則として、相続開始を知ったときから3か月以内に行うこととされているが、本件では半年が経過している。但し、このようなときでも、相続人が、債務がない、あるいは、あったとしても少額に過ぎないと信じてしまい、そのように信じたことにそれなりの理由があるときには、債務のほぼ全容を認識したときから起算して3か月以内であれば相続放棄を認める裁判例がある。つまり3か月の起算点を後ろへずらすということになる。
これを本件で見ると、妻と次男は、新たな500万円の借金については知らなかったものの、プラスの財産のことや1千万円の借金のことは把握していたので、やはり、相続放棄は認められない可能性が高いのではないかと考える。

小島弁護士の“一刀両断”ポイント 『1円も相続していないは 債権者には通用しない』

遺産分割協議で相続人の一人が借金の全部を引き継ぐと決めても、債権者には主張ができません。そのような不安があるときは、正式な相続放棄の検討しておく必要がありますね。

甲子園に出たエース?(オール阪神・巨人)

甲子園に出たエース?(オール阪神・巨人)

会社員の中村さんは高校時代、野球部で甲子園に出場しましたが、3番手の控え投手でした。先日、会社の上司に、「甲子園に出たんだってな。週末空いてないか?エースが急病なんだ」と草野球の試合に誘われました。「20年も前の話でブランクが…」と断りましたが、「奮発してバイト代2万円!」と言われ、ついつい引き受けてしまいました。試合は中村さんの乱調のせいで大敗。「2万円の話はなしだ。弁当代と交通費で2千円だけな!」と言われました。「甲子園に出たエース」と勝手に勘違いされていたようですが、約束の2万円を全額もらえるでしょうか?

甲子園に出たエース?(オール阪神・巨人)
【弁護士の見解】 全額もらえる
上司は中村さんに2万円を払うことを約束しているが、このような約束をしたのは、中村さんのことを「甲子園に出場したエースである」と信じていたためである。そこで、このような約束が、錯誤により無効とならないかが問題となる。
本件は2万円を払ってまで中村さんに依頼しようとした動機に錯誤があるケースである。このように意思表示の動機に錯誤がある場合、その動機自体が表示されて、意思表示の一部になったと評価できるときに限って、錯誤無効を主張することができるとされている。
本件では、上司は、中村さんに対して「甲子園に出たかどうか」ということは尋ねているものの「中村さんが甲子園に出場したエースだから頼む」とは話をしていない。つまり動機は表示されていないこととなる。したがって、動機に錯誤があったことを理由に、錯誤無効を主張することはできず、中村さんは、当初の約束どおり2万円をもらえると考える。

小島弁護士の“一刀両断”ポイント 『暗黙の了解はトラブルのもと』

トラブルの原因が思い込みにあることは少なくありません。何かを頼んだり、引き受けたりするときは、誤解のないよう、お互いに確認することが必要でしょう 。
 

【ゲスト】岩下尚史
【出演者】笑福亭仁鶴、桂吉弥、若井みどり、オール阪神・巨人、幸助・福助、小島幸保(弁護士)

1月16日(土)

夫婦でつくった遺言書(なすなかにし)

夫婦でつくった遺言書
山田さん夫婦は近所でも評判のおしどり夫婦で2人の子どもがいます。最近、将来のことを考え、夫婦2人で将来のことを考え、相談しながら遺言書を作りました。「それぞれ相手に全財産を相続させる」と言う内容を、自筆で書き、日付を入れて署名捺印した上で、仲の良い二人はホチキスで留めて、封をしました。この遺言書は果たして有効なのでしょうか?
夫婦でつくった遺言書

【弁護士の見解】 これは有効であると考える。
民法では、同一の遺言書に2人が遺言することを「共同遺言」と言って、禁止されている。このような共同遺言を許すと、法律関係が複雑になるということと、遺言の撤回が1人で自由にできなくなり遺言者の最終的な意思を確保することができないからである。
今回の場合、ホチキスで留められて一つの遺言となっているが、ホチキスは簡単に取り外すことができるので、判例も、このような2つがくっついた遺言でも簡単に分離できるようなものは共同遺言にならないとしている。
同一の封筒に入っているだけでは、共同遺言とはならず、2人がそれぞれ作成した遺言は自筆証書遺言として自筆で書かれ、日付、署名、押印もなされているということなので、それぞれが有効な遺言書と認められる。したがってご夫婦の遺言書は有効と考えられる。

澤弁護士の“澤の一声” 『遺言書は一人ひとりが単独で作成するもの』

同じ書面に2人が共同で遺言をすれば共同遺言として無効になります。いくら夫婦が仲良く作ったとしても無効となりますので気をつけてください。

マンション管理費の使いみち(宮川大助・花子)

マンション管理費の使いみち
花子さんの知り合いの山村さんが住む町内会で、地域活性化のためにイベントをすることになりました。そこで近くの分譲マンションで管理組合の役員をしている坂本さんに協力を依頼しました。坂本さんは「協力しましょう」と言って、協力費を管理費から出すことを、管理組合の理事会で決定ました。ところが、ある日、マンションの住人の寺田さんが「マンションにはイベントに参加していない人もたくさんいるので、協力費を管理費から出すのはおかしい」と言い出しました。坂本さんは「管理組合で決まったことだし、若者とコミュニケーションを図ることは大切だしメリットはある」と言いましたが、「イベントに参加した人が払うべきだ」と言って聞きません。イベントに使った管理費を返さなければならないのでしょうか?
マンション管理費の使いみち

【弁護士の見解】 マンションの管理組合の正式な手続きで決定されれば、返す必要はない。
マンションの所有者全員が納めた管理費を「地域のイベントの協力金」に使うことができるのかというのが今回の問題である。
マンションの「管理規約」に地域コミュニティの形成のために使えると書かれていれば地域のイベントの協力金に使うことが可能である。また、管理規約に記載がなくても、地域コミュニティの形成という点から協力金を管理費から支出することは正式な手続で決定しておれば有効であるというふうに考えられる。
今回も管理組合の理事会で決定しているようなので、後で総会の決算報告で承認されれば返す必要はないということになる。
ただ「地域コミュニティ」や「居住者間のコミュニティ」と言ってもその定義があいまいなので、国土交通省の「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」では、マンションの管理規約の地域のコミュニティ条項の見直しが行われているが、一方で防災や防犯の面からの地域の連携などのために地域コミュニティの維持・形成に管理組合が努めることも必要であるという考えも少なくない。
トラブルを避けるためには、役員の方はたいへんだが管理組合と町内会や自治会の活動を組織上も区別して位置づけ、住民相互の意見をきちんと反映していく日頃の活動が重要であると考える。

澤弁護士の“澤の一声” 『管理費の使いみちは厳格に!』

管理組合と自治会や町内会の活動は適切に区別されるべきです。地域コミュニティの維持・形成のための費用の負担については、住民同士で地域の特性をよく踏まえて話し合うことが大切です 。
 

【ゲスト】ささきいさお
【出演者】笑福亭仁鶴、辻本茂雄、山田花子、宮川大助・花子、なすなかにし、澤登(弁護士)


1月9日(土)

別れたのにプレゼント?(Wヤング)

別れたのにプレゼント?
石橋さんはレストランで、以前に付き合っていた美雪さんに偶然、出会いました。そのとき美雪さんから「私のプレゼントはどうなっているの?」と言われました。実は、石橋さんは学生時代に美雪さんと付き合っていて、その時、「誕生日には美雪が欲しいものを未来永劫プレゼントする」と署名捺印した誓約書を書いていました。美雪さんは「誓約書があるのだから、誕生日にネックレスをプレゼントして!」と言います。別れて2年も経っているのにプレゼントをしないといけないのでしょうか?
別れたのにプレゼント?

【弁護士の見解】 プレゼントをしなくてよい
石橋さんと美雪さんは、美雪さんの誕生日に美雪さんの欲しい物をプレゼントすると約束をして誓約書を交わした。これは一見「贈与契約」が成立していて石橋さんが美雪さんにプレゼントをしなければならないと思われるかもしれないが、この約束は2人が付き合っている時に、今後も付き合うことが前提で交わした契約である。したがって、2人の関係からして「別れたら無効」ということが契約の内容になっていたと考えることができる。
また一般的、常識的にも、別れた相手に未来永劫プレゼントするという契約の内容だったとは考えられない。もし、美雪さんが「別れてもプレゼントがほしい」と思って約束するなら、書面にしたときに、それを明確にしておくべきである。今回の相談では、そこまではしていないということなので、別れたことからプレゼントの契約は無効になると考えられる。したがって、石橋さんは美雪さんにプレゼントをしなくてもよいと考える。

澤弁護士の“澤の一声” 『安易な約束は禁物』

今回のように「未来永劫あげる」などの約束をその場の感情やその場の雰囲気ですれば、誤解を生じたり、また相手を傷つけることがありますので、お気をつけください。

娘は天才ピアニスト?(宮川大助・花子)

娘は天才ピアニスト?
坂口さん夫婦は共働きで3歳の娘がいます。月収は夫が30万円、妻が20万円で、それぞれ収入の半分を生活費にして、後の半分は夫婦それぞれが管理することにしています。先日、妻が「娘の教育のために70万円のピアノを買ったの。頭金の10万円は私が払ったので月々3万円のローンは、あなたが払って」と言います。夫は「何の相談もなかった。だいたいピアノなんてぜいたく品だ。君が勝手に買ったのだから、君が払え」と言いますが、ピアノのローンは夫が払わなければいけないのでしょうか?
娘は天才ピアニスト?

【弁護士の見解】 ピアノのローンは払わなければならない
今回のピアノを買うことが、民法で言う「日常家事」の範囲内であれば、夫婦はともに責任を負う、つまり夫婦は連帯責任を負うということになる。
家事について取り引きをする相手方は、契約者が夫婦のいずれであっても、夫婦両方が責任を負うものだと思って取り引きするからである。日常家事の範囲内かどうかは、夫婦の社会的地位、職業、資産、収入などに加え、その行為の種類や性質など客観的事情などから判断する。
今回のピアノは、子どもの教育のために購入したものであるということ、それから金額は70万であるが、夫婦の収入の合計が50万ということから不相当に高額とは思われないこと、そして月々のローン返済も3万円であることから、いわゆる「日常家事債務」の範囲内であると考えることができる。したがって、夫も連帯責任を負いピアノのローン代を払わなければならないと考える。

澤弁護士の“澤の一声” 『日常家事の範囲内なら夫婦の連帯責任』

日常家事に関する法律行為は夫婦のどちらが行っても、夫婦は連帯責任を負います。
覚えておいてください 。
 

【ゲスト】テツandトモ
【出演者】笑福亭仁鶴、辻本茂雄、山田花子、宮川大助・花子、Wヤング、澤登(弁護士)


12月26日(土)

クリスマスにしかできない!(シンクタンク)

クリスマスにしかできない!

まりあさんは、お菓子作りが得意で、許可をとりイベントなどで販売していました。カフェの店主の有馬さんに「クリスマスの日にケーキ教室のイベントとカップケーキ50個をカフェで売りたい」と頼まれました。ところがクリスマス当日に、まりあさんは不注意で転倒。教室の材料も納品するケーキもダメになり、イベントも販売も中止になりました。有馬さんは「予約で完売だったので、入るはずだった利益分を払って!」と言います。まりあさんは「後日、教室も開くし改めてケーキも納品する」と言いましたが聞き入れてもらえません。有馬さんが得るはずだった利益分を全額払わなければいけないのでしょうか?

クリスマスにしかできない!

【弁護士の見解】有馬さんが取得すべき利益については全額払わなければならない
まりあさんと有馬さんのとの契約は、クリスマス当日に、まりあさんがカップケーキを作って有馬さんの店舗に納入するという、製造委託とか、あるいは当日店舗で材料を提供してケーキ作りを指導するという一種の委任。それから、当日の純利益を一定の割合でまりあさんと有馬さんが分けましょうという有償の合意など、複数の契約が混合した契約と考えられる。
しかし、まりあさんは自分の不注意で転んでしまい、ケーキも材料も台無しにしてしまったので、まりあさんは債務不履行を理由に有馬さんが被った損害を賠償しなければならないということになる。そこで、当日、ケーキの販売もできなかったし、ワークショップもできなかったということによって、有馬さんが被った損害について考えてみると、適正に予想できるケーキの売上額、それからワークショップ参加費、それらの中から必要な経費を控除して算出される利益のうち、合意によって一定割合が有馬さんが取得すべき利益であり、それが損害になると考える。したがって、まりあさんは有馬さんが取得すべき利益に相当する金額を損害賠償として支払わなければならないと考える。

林弁護士の“ちょっと一言”「頼まれごとは、大きな責任を伴うもの!」

今回のように多くの人に迷惑をかけてしまうということもありえます。関係者に満足してもらえるように十分注意を払って履行しましょう。

削除したいラブレター(オール阪神・巨人)

削除したいラブレター

金本さんは、自身の浮気が原因で、2年間付き合ったゆかりさんと別れました。金本さんは改めてゆかりさんにラブレターを書き復縁を望みましたが、ゆかりさんは、反省が見えなかった金本さんに怒り、自分のブログに金本さんからもらったラブレターを写真に撮って公開し、金本さんはブログを見た人からからかわれました。金本さんは「削除してほしい」とゆかりさんに言いましたが、「ラブレターは私がもらった私のものなので、削除はしない」と言われました。削除してもらえるのでしょうか?

削除したいラブレター

【弁護士の見解】削除してもらえる
今回のラブレターについて、まず、著作物に該当するか否かについて考えてみる。著作物というのは「思想又は、そういう感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」を言い、著作権法によって保護されているものである。
ラブレターは、手紙の相手に対して自分が好意を抱いているという感情を、いろいろな言葉で創作的に表現したものというふうにいえるので、裁判所も著作物性を認めている。ところで、手紙は受け取ったゆかりさんの所有であるとしても、その著作権はあくまで発信者である金本さんに帰属している。そうすると著作権者である金本さんの意思に反して、その手紙を公開してしまったということになると、著作権の侵害になってしまう。そこで、公開することを承諾していない金本さんとしては、著作権侵害を理由に、ゆかりさんに対してそういうブログの掲載をやめてください、それから削除してください、ということを請求することができ、損害が発生したのであれば、その損害賠償も請求できるということになる。
それから、このラブレターは一般に知られていない金本さんの私生活上の事実に関する内容なので、公開を望んでいなかった金本さんとすれば、公開されたことで精神的に痛手を受けているということになる。したがって、金本さんは、いわゆる「プライバシーの権利」の侵害という不法行為を理由、ゆかりさんに対して損害賠償を請求できるし、ブログの消去、削除を求めることもできると考える。

林弁護士の“ちょっと一言”「他人の手紙等の無断公開は要注意!」

インターネットで一旦公表されてしまいますと、完全な削除はほぼ不可能となってしまいます。そうなると、公表された方はもちろんのことですけれども、公表した方も不幸な結果となりますので、くれぐれも注意して下さい。
 

【ゲスト】今くるよ
【出演者】笑福亭仁鶴、桂吉弥、海原やすよ、オール阪神・巨人、シンクタンク、林一弘(弁護士)


12月19日(土)

オートロックの鍵まで弁償?(平和ラッパ・梅乃ハッパ)

オートロックの鍵まで弁償?
田中さんは、喫茶店でマンションの鍵が入ったバッグを置いたまま席を離れてしまい、その隙にバッグを盗まれました。田中さんが住む賃貸マンションは、オートロック式で家主の代わりである管理人さんにそのことを告げると「オートロックの鍵も全部交換する必要があるので数十万円の費用請求がある」と言われました。田中さんは「契約書には書いていなかった」と言いますが応じてもらえません。オートロックの鍵の交換費用を全額払わなければいけないのでしょうか。
オートロックの鍵まで弁償?

【弁護士の見解】 弁償しなければならないが全額ではない
田中さんが預っている鍵をバッグとともに盗まれたのは、椅子にバッグを置いたまま席を立ったということが原因だが、鍵の紛失は、田中さんのうかつなミス、つまり過失によるものと考えられる。そうすると田中さんは賃貸借契約上、注意を払って鍵を管理保管する義務、いわゆる(善良な管理者の注意義務)に違反したということになり、債務不履行責任に基づいて家主である賃貸人が被った損害を賠償しなければならないということになる。損害賠償の範囲は具体的には賃貸借契約においてどのような約束をしていたかということによるが、例えば、国土交通省による「賃貸住宅標準契約書の改訂版」によれば、鍵の紛失の場合、経過年数は考慮せず、鍵とシリンダーの交換費用は賃借人が負担してくださいと定めている。
問題は、全戸数分の交換費用まで支払う義務があるかということだが、今回の場合、契約書にそのような定めがないということや、マンションの規模によっては非常に高額になってしまうということを考えると、公平上、また信義則上、すべてを賃借人の負担にするということには合理性がないと考える。
したがって今回の場合、田中さんは田中さん宅の鍵とシリンダー費用は負担しなければならないが、マンション全戸の鍵の交換費用まで負担する必要がないと考える。

林弁護士の“ちょっと一言” 「賃借物件の鍵の取り扱いは慎重に!」

特にマンションの鍵の紛失はというのは、マンション全体の居住者の安全というものを危うくする可能性があるわけですね。鍵は大切な預りものであるということを自覚しておくことが大切です。

物忘れの多い父の遺言(オール阪神・巨人)

物忘れの多い父の遺言

山田さんは、一人暮らししている父の面倒を見ていました。父は会話は普通にできるのですが、物忘れが多くなり、不安になった山田さんは、自分は同席しなかったのですが、立会人二人の前で遺言書を書いてもらいました。1年後、父は亡くなりましたが、遺言書の内容に不満を持つ弟から「父は認知症の疑いがあったので、この遺言書は無効だ」言われました。この遺言書は有効でしょうか?

物忘れの多い父の遺言

【弁護士の見解】有効である可能性が高い
民法は、遺言者が遺言をするときには、そのための能力が必要であると定めている。これを「遺言能力」といい、遺言の内容を具体的に決定して、その法的な効果を理解することができる能力のことである。
従って、高齢になって物忘れをするようになったからといって直ちに遺言能力が失われたということにはならない。さらに、例えば認知症で、しかも成年後見に付されている人であっても、一時的に能力が回復する時があるので、そういう時に2人以上の医師の立会いがあれば有効に遺言をすることが可能である。今回の相談の場合は、山田さんの父は認知症の診断を受けていたという事実がなかったこと、自由な意思で遺言内容を決定して、それを第三者が見ていて作成過程に不自然な点がみられなかったということであれば、基本的には遺言能力に問題がなかったと考える。したがって、今回の遺言は、自筆の遺言で、自筆証書遺言としての形式を備えているのであれば、有効である可能性が高いと考える。


<関連質問>
もし、認知症が疑われる場合は、どうすればいいのでしょうか

遺言能力については、医師による診断や、入院中の場合には入院中の生活状況、看護記録、その人の言動や行動など、そのような諸事情を考慮して判定することになる。また、遺言書作成時点で、能力に問題がないと認められる場合は、その旨の医師の診断結果を意見書とか、あるいは診断書の形で取得して遺言書とともに保管することをお勧めする。

林弁護士の“ちょっと一言” 「遺言書作成時に能力が疑われる場合は、まず医師の診断を!」
遺言者の真意を確認するためにも、それから、後日の紛争を防止するためにも遺言能力の存在を明らかにする証拠を残しておくということが大切ですね。
 

【ゲスト】大和田伸也
【出演者】笑福亭仁鶴、桂吉弥、海原やすよ、オール阪神・巨人、平和ラッパ・梅乃ハッパ、林一弘(弁護士)


12月12日(土)

盗まれた時計の代金は・・・(テンダラー)

盗まれた時計の代金は・・・

山本さんは海外のビンテージの腕時計を集めるのが趣味で、10日前に同じ趣味の田中さんに1本売りました。代金の10万円はその場でもらいましたが、時計は5日後に引き取りに来ることになり、金庫に保管しておきました。ところが、その3日後に空き巣に入られ、田中さんに売った時計も盗まれました。家の鍵もちゃんとかけ、何も落ち度はなかったのですが、田中さんは「時計は受け取っていないので代金は返してもらうよ」と言います。山本さんは10万円を返さなければならないのでしょうか?

盗まれた時計の代金は・・・

【弁護士の見解】返さなくてもいい
まず、今回のビンテージの時計は非常に珍しい物ということで買った物で、法律の世界では「特定物」と言う。このような時計自体が盗まれてしまえば代わりのものは用意できないので、時計を引き渡すことは不可能となる。しかも、この盗難について山本さんに法的な落ち度はあるとは言えないので、結局、山本さんは時計を渡せなくても何の責任も負わないということになってしまう。そうすると、買主は商品はもらえないのに、代金は売主がもらったままということになる。このように商品が盗まれたことのリスクを、売主が負うのか、それとも買主が負うのか、ということが論点になるが、これについては、買った商品が、売主と買主のどちらの「支配下」にあるかで決めるべきだと考える。
すなわち、買った商品が、まだ売主の支配の状態にあるのであれば、その商品が盗まれたことのリスクも売主が負うべきであり、すなわち代金はもうもらえないとなる。逆に商品の支配が買主の方に既に移っているのであれば、そのリスクも買主が負うべきなので、代金を払わないといけないという結論になる。
今回の買主の田中さんは、代金も払って、いつでも商品を引き取れる状態なのに、田中さんの事情で後日引き取ることにしたわけなので、商品の支配は、既に買主の田中さんに移っているはずである。したがって、時計は山本さんの家にあっても時計が盗まれたことのリスクは買主の田中さんが負うべきなので、代金はもう返してもらえないと考える。
 
伊藤弁護士の“納得の一言”「リスク負担の分岐点は支配の有無」

商品が盗まれたり、滅失したことのリスクというのは、その売主と買主のどちらに支配があるかで決めるべきものです。
 
 

家賃は別でしょ!(中田カウス・ボタン)

家賃は別でしょ!

高橋さんは賃貸マンションを経営しています。家賃の管理などは奥さんに任せていましたが先日「藤長さんが亡くなられたんだけど、実は家賃が半年分たまっているの」と言われ、驚きました。保証人である息子さんに連絡をとると、「相続放棄をしたので父の家賃も払わなくていいはず」と言います。息子さんに父親が滞納している家賃を払ってもらえるのでしょうか?

家賃は別でしょ!

【弁護士の見解】払ってもらえる
この相談のポイントは、相続放棄の意味と、放棄できる責任は何かというところにある。まず、相続放棄というのは、相続人が自らの意思で相続しないことを選択するという制度である。
相続放棄をすれば、相続人は、はじめから相続人でなかったとみなされる。そのため、今回、息子さんは本来、賃借人のお父さんの地位も引き継いでいるはずだが、相続放棄をすることで、賃借人としての責任を一切負わなくて済むということになる。
これに対し、保証というのは、主たる債務者が支払いができないときに代わりに支払うことを約束することで生じる契約である。この保証契約の当事者は、保証人と債権者、今回でいえば大家さんになる。そうすると、保証人としての責任は保証人自身の責任なので、相続とは一切関係ない。したがって今回の賃貸借について保証人であった息子さんは、相続放棄をしたからと言って保証人としての責任までは免れないので、大家さんに家賃を払わないといけない。
 
伊藤弁護士の“納得の一言”「保証をするなら自分自身の責任で」

保証人としての責任は、あくまで保証人自身の責任に基づくものです、それは相続放棄しようがありません。そういう意味では、ずっとついてまわる責任ですので、非常に重いものだと思います。
 

【ゲスト】山内圭哉
【出演者】笑福亭仁鶴、辻本茂雄、三倉茉奈、中田カウス・ボタン、テンダラー、伊藤芳晃(弁護士)


12月5日(土)

作者は私なのに(なすなかにし)

作者は私なのに

岡崎さんは、ママ友の斉藤さんから「タウン誌のエッセイを頼まれたの。3000円のランチをおごるから、私の名前で書いてくれない?」と頼まれました。エッセイは評判になりましたが、岡崎さんは「実は私が書いたの!」と別のママ友に言ってしまいました。その後、斉藤さんが「1年間の連載の話があったのにダメになったわ!原稿料を損害賠償して!」と怒ってきました。岡崎さんは連載の話を知らなかったのですが、その分の原稿料を払わなければならないのでしょうか?

作者は私なのに

【弁護士の見解】 払わなくていい
今回、岡崎さんは、斉藤さんのゴーストライターとしてエッセイを書く、その対価として、ランチ代をおごってもらった。この二人の関係には、契約書はないが、暗黙の了解として本当の作者は言わない、そういう約束があったと考えられる。
そこで、岡崎さんが、本当の作者を言ってしまったことが、斉藤さんとの契約違反になるのではないかということが問題になる。この点、法律では公序良俗、すなわち社会の秩序や一般的な道徳観念に反する行為とか契約は無効と規定している。
作者を偽るということは、まさに世間を欺くことであり、場合によっては著作者名称詐称罪という、犯罪にあたり得ると考える。これらのことからすれば今回の岡崎さんがゴーストライターとなるという契約は公序良俗に反して無効と考える。
そうだとすれば、偽の作者である斉藤さんの「他人に本当の作者を言ってほしくない」そういう権利は法的な保護にあたいしないので、岡崎さんがそれを他人に言ったからといって、損害賠償責任を負わず原稿料は払わなくていいと考える。
 
伊藤弁護士の“納得の一言”「公序良俗に反するものは無効」

今回の契約は、公序良俗に反する契約である以上、法的保護は認められにくいものですので、真の作者を言ったとしても、責任追及は難しいです。
 
 

手紙で「借金返して!」(中田カウス・ボタン)

手紙で「借金返して!」

持田さんは13年ほど前、大学の先輩の辻さんに「3年後の大みそかに全額まとめて返済する」という借用書を交わして30万円を貸しました。しかし、返済がなく、電話にも出ないので、年賀状などに「お金の件もよろしくお願いします」と書いて送っていました。先日、辻さんの奥さんに偶然会い、「お金のことでご迷惑をおかけして申し訳ありません」と言われましたが、もうすぐ返済期限から10年になります。持田さんが貸した30万円はこのままだと時効になるのか?

手紙で「借金返して!」

【弁護士の見解】このまま期間を過ぎると、時効にかかってしまう。
消滅時効というのは、一定の期間が過ぎれば権利が消滅する制度だが、他方で、時効中断といい、今まで進行した時効期間を、一旦ゼロに戻す、そういう制度がある。
時効が中断する場合には「裁判上の請求」「差押」「債務者が債務があることを認める」これらの3つがある。これらのうち「裁判上の請求」というのは、具体的には裁判を起こすことなどであり、今回、持田さんが年賀状で催促していたことでは正式には時効は中断しない。
しかし、年賀状や手紙などでの催促には、暫定的ではあるが、一定期間、具体的には6カ月時効を猶予する効力がある。暫定的というのは、とりあえず6カ月間猶予して、その猶予の間に裁判とか債務承認とかをすればいいが、そういうことがなければ、さかのぼって時効中断としての効力が無効になるという意味である。
今回の時効満了日は12月末日なので、それまでに手紙が届けば、それから6カ月間は、時効が暫定的に猶予される。その間に裁判上の請求などが行われれば、正式に時効は中断するということになる。
ただ、この猶予は6カ月間だけなので、実際にそのような手紙などで意味が出てくるのは時効満了日から6カ月前までである。ところが持田さんが最後に送った手紙というのは年賀状なので、全然意味がないということになってしまう。
したがって、いくら持田さんが年賀状で請求していたとしても、何もしないまま12月末日を過ぎてしまえば、時効にかかってしまうということになる。

 
<関連質問>
例えば10月末に手紙が届いていれば、4月末まで時効が猶予されるということですか?

10月末までに催促の手紙が届いていたのであれば、4月末までに裁判などを行なえばいいということになる。
 
<関連質問>
先輩の奥さんが借金を認めていたのに、時効はとまらないということでしょうか?

確かに債務を認めるというのは、時効を中断する場合の一つだが、債務者本人がしないといけないので、家族であっても本人以外の債務承認は意味がない。
 
伊藤弁護士の“納得の一言”「手紙の中断効は暫定的」
手紙で催促しても、暫定的にしか時効は中断しません。
 

【ゲスト】やしろ優
【出演者】笑福亭仁鶴、辻本茂雄、三倉茉奈、中田カウス・ボタン、なすなかにし、伊藤芳晃(弁護士)


※過去12回分を掲載しています。
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