6月25日(土)
 
ネコのつくった財産は?(テンダラー)

ネコのつくった財産は?

長野さん夫婦は5年前に結婚しました。夫の一郎さんが飼っていたネコを専業主婦の花さんが世話をするようになりました。花さんが写真や動画をネットに投稿しているうちに「かわいい」と評判になり、広告に使われたり、イベントに呼ばれたりして、かなりの収入につながりました。ところが二人は離婚することになりました。慰謝料はなしにしましたが、花さんは、「ネコが稼いでくれた財産は私のもの。私がブログなどにアップしたからよ」と言い、一郎さんは「もともと自分が飼っていたんだから半分ずつに分けるべきだ」と言って二人とも譲りません。ネコが稼いだ財産は、半分ずつに分けるのでしょうか?

ネコのつくった財産は?

【弁護士の見解】 2人で分ける
結婚期間中に夫婦が築いた財産は夫婦の共有財産であり、財産分与と言うのは、夫婦関係の解消とともに、財産面でも2人の関係を解消しようとするものである。
そうすると今回の相談の結論を分けるのは、ネコで稼いだお金が夫婦の共有財産となるかという点だが、これに関しては、ネコで稼いだお金も夫婦共有と考えるべきである。確かに、ネコの世話とか、ブログにあげたということについては、奥さんの花さんの手間ひまがかかっているが、それだからといって、そのネコの稼ぎがすべて、花さんのものになるわけではありません。この点は、例えば、夫の給料とか妻が働いたパート代が、夫婦共有財産となることと同様である。
また、ネコ自体はもともと夫が結婚前から飼っていたものなので、それがたまたま世話をしているからといって、妻の所有になるわけではなく、夫の所有物から生まれた利益について夫の権利がないというのはおかしいと考える。
したがって、ネコが稼いだお金は、夫婦共有財産となり財産分与すべきであり、その割合は基本的には2分の1と考える。

伊藤弁護士の“納得の一言” 『夫婦が稼いだ稼ぎは夫婦共有』

夫の給料が夫婦共有になるということですから、当然妻が働いて得たものも夫婦共有です 。

空き地を使ったおしゃれなカフェ(中田カウス・ボタン)

空き地を使ったおしゃれなカフェ

梅津さんは10年前に隣の松下さんから「管理料を払うので、うちの空き地に雑草を生えないようにしてくれないか」と頼まれました。梅津さんは「お金はいらないから趣味の草花を植えさせてほしい」と言い、松下さんも了解しました。梅津さんはイングリッシュガーデンを造り、土日にカフェも始めて、近所でも有名なスポットになりました。ところが松下さんが「うちの空き地でお金をもうけるなら、今後使用料を払ってください。嫌なら元の空き地に戻してください」と言います。今後、使用料を払わなければならないのでしょうか?

空き地を使ったおしゃれなカフェ

【弁護士の見解】 今後は使用料を払う必要がある
梅津さんと地主の松下さんの2人は、土地を無償で使用できる「使用貸借契約」の関係にある。厳密には、梅津さんは土地の管理をしないといけないという点で、一種の負担付の使用貸借といえる。使用貸借の場合は、借主は目的物を使用して、そこから収益を得ることができる「使用収益権」があるが、この「使用収益権」は、事前に使用方法とか目的を定めていれば、それに従わないといけない。
今回の場合、あくまで、草花を植えるために土地を使ってもいいよ、ということだったので、土地の使用方法とか目的は、あくまで草花を育てるという範囲に限られる。そうすると、例え土日だけであっても、カフェの営業というのは、使用方法・目的に関する契約違反になってしまう。したがって、地主の松下さんは、契約違反を理由に、梅津さんとの使用貸借契約を解除できるので、今後も梅津さんがカフェとかで使用したいのであれば、地主さんのおっしゃる使用料を払う契約、すなわち賃貸借契約を結ばないといけないということになる。もし、それが無理なら、植えた草花は撤去して明け渡すということになってしまう。

伊藤弁護士の“納得の一声” 『“使用貸借”の使用方法・目的には限界あり』

使用貸借契約では借主に、目的物を使用して収益する権利があるんですが、その使用方法や目的というのは、契約で定められていたり、目的物の性質に応じて限界がありますので、注意してください。
 

【ゲスト】相田翔子
【出演者】笑福亭仁鶴、桂南光、桂吉弥、三倉茉奈、中田カウス・ボタン、テンダラー、伊藤芳晃(弁護士)


6月18日(土)
 
配達を間違った弁当(海原はるか・かなた)

配達を間違った弁当

同窓会の幹事を引き受けた佐藤さんは、地元で有名な弁当屋さんに「特上」の弁当を注文しました。ところが、出席者から「これ、特上じゃないわ。弁当代ごまかしてるでしょ」と言われました。間違って「上」の弁当を届けた弁当屋さんは「差額をお返しします」と言いますが、同窓会で恥をかかされた佐藤さんは納得できません。代金を全額返してもらえるでしょうか?

配達を間違った弁当

【弁護士の見解】 全額を返してもらうことはできない
本件では、出前の注文をお店が承諾した時点で売買契約が成立する。お店は指定されたお弁当を作って、引き渡す義務を負う。これに対して注文した佐藤さんは、代金を支払う義務を負うということになる。
しかし、お店は「特上」ではなく、「上」のお弁当を配達してしまった。ただ、すでに食べてしまっているので、このような場合でも、債務不履行を理由に契約を解除して全額を返済してもらえるかというのが問題となる。
本来、契約を解除できる人が過失によって目的物を返還することができなくなったときは、解除はできないとされている。本件でも、気づかずに食べてしまった後ですので、もはや契約の解除は難しく、全額を返してもらうことはできない。但し、少なくとも「特上」の代金との差額は返してもらえると考える。

小島弁護士の“一刀両断”ポイント 『内容確認をしっかりと!』

頼んだ中身が分からないと、間違いを指摘することもできません。つまり、頼む方としても、正しい内容、あるべき姿をしっかりと把握しておくことが必要ということですね 。

成年後見人をかえたい!(オール阪神・巨人)

成年後見人をかえたい!

田辺さんは認知症である母親の成年後見人を申し立てることにしました。母親の妹で小さな会社を経営している夏美さんが引き受けてくれることになり、家庭裁判所も夏美さんを成年後見人として選任しました。1年ほどして夏美さんの会社の業績が悪化し、「うちの経営がたいへんなのに姉さんのことにかまっていられない」と言い出しました。この先も任せるのが不安なので、田辺さんが「後見人をやめてほしい」とお願いすると、「できるならやめたいけど裁判所が決めたことだし、一度引き受けた以上、無理なんじゃない?」と言います。やめてもらうことができるのでしょうか?

成年後見人をかえたい!

【弁護士の見解】 やめてもらうことも考えられる
「成年後見人」は、本人の財産管理能力が不十分な場合に、家庭裁判所によって選任される人を言い、本人の財産を適切に管理して、契約などを代理したりして、本人の利益を守る役割を担う。一度成年後見人になると、病気や高齢、あるいは、遠い場所への転居など、後見の仕事を行うことが現実的に困難になった時などに、裁判所が正当と認めた場合にしかやめることはできない。ただ、不正行為があったり、著しく品行が悪い場合などには、裁判所がその職権で解任をすることもある。
本件では、叔母の夏美さんに不正行為があるわけではない。しかし、後見人の仕事について面倒に思っていることは事実のようである。また、選ばれた当時と経済的な状況も違っている。田辺さんが、それらの様子をみて、もう円滑な後見人の業務が期待できそうにないなと思うのであれば、夏美さんを解任してほしいということで裁判所に申し立てをして、裁判所に判断をしてもらうことができると考える。
また、夏美さん自身が後見人をやめることについて納得するのであれば、辞任ということが認められる可能性が高いようにも思う。つまり、本件では、夏美さん自らが辞任するための手続きをとるか、あるいは田辺さんが夏美さんの解任を申し立てるということが考えられる。

小島弁護士の“一刀両断”ポイント 『引き受けたら責任を持って』

成年後見人には本人のために財産を管理する重要な任務があります。引き受けるとなれば、それなりの覚悟を持つ必要がありますね。
 

【ゲスト】秋野暢子
【出演者】笑福亭仁鶴、桂南光、辻本茂雄、三倉茉奈、オール阪神・巨人、海原はるか・かなた、小島幸保(弁護士)


6月11日(土)
 
2か月滞納すれば退去?(大木こだま・ひびき)

2か月滞納すれば退去?

田中さんは学生向けの賃貸マンションを経営しています。家賃は6万円ですが、内装もきれいで駅にも近く人気があります。ところが、毎年夏くらいになると家賃を滞納する学生が出てきた困っています。いっそのこと「家賃を2か月滞納すれば、すぐに退去してもらいます」と言う契約にしようかと考えていますが、奥さんは「そんなの法律的に無効じゃないの」と言います。このような条項を契約に入れれば、すぐに退去してもらうことができるのでしょうか?

2か月滞納すれば退去?

【弁護士の見解】 2か月の滞納だけで退去させることはできない
本来、当事者が決めたことは契約自由の原則から、有効になるはずだが、賃貸借契約においては、「信頼関係の法理」というのがあり、家主から一方的に簡単には契約を終了させられないような仕組みになっている。
この「信頼関係の法理」というのは、ちょっとしたことで契約が終了してしまうと、賃借人の生活基盤が脅かされてしまうので、家主との信頼関係、これが破壊された場合に限って、家主は契約を解除できるという法理である。すなわち、賃料不払いなどの契約違反があっても、それが、家主との信頼関係を破壊しない程度の些細なものであれば、家主は契約解除できないということになる。したがって、今回のケースでも、仮に「2か月滞納すると退去してもらいます」という契約条項があっても、家主が契約を解除するには、賃料2か月の滞納だけでなく、プラスアルファとして何か信頼関係を破壊するような事情がないといけないということになる。従って、今回のような条項をつくっても、賃借人が2か月滞納しただけでは、退去してもらえるわけではない。
 
<関連質問>
信頼関係を破壊するプラスアルファの事情には、どんなものがあげられますか?

例えば、賃借人が騒音を出して、周りの人に隣人に迷惑をかけているというのも一つの事情であり、賃料不払いについても、単に2か月ではなくて、もっと長い期間、半年とかそれぐらいの期間滞納しているのであれば、信頼関係が破壊されているといえる。
 
伊藤弁護士の“納得の一言” 『賃貸借は家主との信頼関係が大事』
契約解除を制限する根拠として「信頼関係の法理」を説明しましたが、逆に、信頼関係の破壊がひどい場合には、それだけで、契約違反がなくても、契約解除ができる場合があります。家の貸し借りにおいては、信頼関係だけは大切にしてほしいですね 。

サプライズの結末!(中田カウス・ボタン)

サプライズの結末!

ジュンさんは29歳で、会社の同僚の健太さんと付き合って3年になります。「将来、結婚したい」と思っていますが、お互いの両親に紹介もなく、同居もしていません。それを聞いた友達のあけみさんが内緒でサプライズパーティーを企画しました。宴もたけなわとなった時、突然くす玉が割れ、「健太君、ジュンさんおめでとう」という垂れ幕が。健太さんは「僕たちはいつかきっと結婚します」と宣言。みんなで記念撮影もしました。ところが3か月後、健太さんのちょっとした浮気がきっかけで別れることに。ジュンさんは「慰謝料を払って」と言うと、健太さんは「あれは正式な婚約ではない」と言います。ジュンさんは慰謝料をもらえるのでしょうか?
 

サプライズの結末!
【弁護士の見解】 慰謝料はもらえない
 今回問題となっている婚約については、民法に規定があるわけではないが、2人が結婚する約束さえすれば成立するものである。問題は、どれだけ結婚する意思が明確になっているかという点である。例えば、婚約指輪の交換とか結納、こういう儀式的なことは決して婚約に必須ではないが、そういうことがあれば、結婚の意思が明確に外形的に表示されているので、婚約が認められやすく、また、婚約者として親とか親せきに紹介するということも、婚約が認められやすい事情である。
ところが、今回の場合、健太君の「いつかきっと結婚します」という言い方自体は、結婚する意思というより、結婚したいなという希望的なニュアンスがあり、何よりも健太君は、パーティーのその場の勢いで、気持ちが高ぶって宣言してしまったという感じが強いので、どこまで真意だったのか疑問である。他方のジュンさんの方も、そのような事情をわかっていたのだから、ふたりの約束としては、不十分と考える。
従って、今回は、そもそも婚約は成立していないので、ジュンさんは慰謝料を請求できないと考える。
 
伊藤弁護士の“納得の一声” 『婚約は結婚意思がどれだけはっきりしているか』

婚約が認められるための必要な結婚の意思というのは、総合的な事情で判断せざるを得ないのですが、場合によっては、儀式的なこととか、結婚式へ向けた準備行為、それから交際の仕方、そのような外形的な事情も含めて判断されます。
 

【ゲスト】天童よしみ
【出演者】桂南光、桂吉弥、三倉茉奈、中田カウス・ボタン、大木こだま・ひびき、伊藤芳晃(弁護士)

6月4日(土)
 
便利な実家に住めないの?(Wヤング)

便利な実家に住めないの?

山本さんの父親が半年前に亡くなりました。相続人は山本さんと姉です。遺産は父親が住んでいた大阪の土地家屋と少しの預貯金ですが、山本さんは東京の会社に勤めていて忙しく、遺産分割の話が済んでいません。そんなとき、大阪へ転勤することになりました。そこで山本さんは姉に相談せずに父の住んでいた実家に住み始めました。すると姉から連絡があり「遺産分割が終わっていないのに勝手に住まないで」と言われました。山本さんはこのまま実家に住むことはできないのでしょうか?

便利な実家に住めないの?

【弁護士の見解】 住むことができる
遺産分割前の不動産は、共同相続人の『共有』であると考えられる。したがって各相続人は、相続財産全部について使用する権利があるということになる。したがって、山本さんも相続人の1人として、この家を利用する権利があるということになり、お姉さんは山本さんに、この家から出て行ってくれと言うことはできない。ただし、使用状況によっては、お姉さんは相応の家賃を請求できる可能性はある。

澤弁護士の“澤の一声” 『遺産分割前の不動産は共同相続人の共有です』

相続人の誰もが使うことができますが、利用については共同相続人間で争いが生じないように仲良く話し合ってください 。

ウソの経歴がバレたら…(オール阪神・巨人)

ウソの経歴がバレたら・・・
武史さんは大学の3年生です。「外国語大学に通っていて海外へも留学していたと聞いたので高校生の娘の家庭教師をお願いしたい」と言われました。武史さんはそのときの雰囲気もあって「違います」と言えずに家庭教師を引き受けました。半年が過ぎ、女の子の成績は見る見るうちに上がり、母親から「ぜひ、もう1年お願いしたい」と言われました。武史さんは他のアルバイトが決まっていましたが、熱心に言われたので引き受けました。ところが2週間後、母親から「外国語大学でもないし、留学もしていないんですって。経歴詐称よ!契約は解除します!」と言われました。武史さんはつい言い出せなかっただけなのですが、契約を解除されてしまうのでしょうか?
ウソの経歴がバレたら・・・

【弁護士の見解】 契約を解除される
英語を教えるということに関して、外国語大学の学生なのかどうか、海外に留学をしていたかどうかというのは、適格性を判断する重要な要素になる。今回の場合、外国語大学ではなく一般の大学の学生であることや、2週間ほどの短期のホームステイしかしていないということが分かっていれば、お母さんは家庭教師を頼まなかったであろうと考えられる。これらはいずれも重要な経歴にあたり、それについてウソをつくことは労働契約の解除事由にあたる。今回のケースでは、武史さんは積極的にウソをついたわけではないが、お母さんが勘違いをしていることが分かっていたのだから、きちんと真実を述べる義務がある。重要な経歴にウソをつくこと自体、両者の信頼関係を損なうものであり、やはり労働契約を解除できると考えられる。

澤弁護士の“澤の一声” 『経歴は正直に』

つい出来心であったり、言いそびれたからと言っても、学歴や経歴でウソをつくことは相手に不信感を与えたり、結果的には自分にとっても不利なことになります。気をつけてください 。
 

【ゲスト】彦摩呂
【出演者】笑福亭仁鶴、桂南光、海原やすよ、タージン、オール阪神・巨人、Wヤング、林一弘(弁護士)


5月28日(土)
 
セットで借りたドレス(三吾・美ユル)

セットで借りたドレス
サツキさんは友達の結婚披露宴に出席するために太田さんにセットになったワンピースとボレロを借りました。ところが帰り道でボレロを釘にひっかけて破いてしまいました。破れ方がひどかったので、サツキさんは「ごめんなさい。新しいボレロを買って返すわ」と言いましたが、大田さんは「セットでデザインされたものだから、セットの全額を弁償して!」と言います。全額を弁償しなければならないのでしょうか?
セットで借りたドレス

【弁護士の見解】 全額を弁償しなければならない
サツキさんは借りたワンピースとボレロを返さなければいけないのに、ボレロをクギに引っ掛けて破ってしまったので、債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。ボレロを修理して前と同じ状態になるのであれば、ボレロの修理代金だけを弁償すれば良いということになるが、今回の場合、修理しても元通りにならないということなので、買い換えなければならないということになる。
借りたワンピースとボレロはセットでデザインされており、寸法や生地もワンピースに合わせたものなので、別のボレロを買ったとしてもイメージがまったく異なると考えられる。このように二つが一体のものであり、一体であるからこそ価値のあるものなら、片方をダメにすればセット全部について弁償しなければならないということになる。


澤弁護士の“澤の一声” 『弁償額は価値によって決まります』
今回のワンピースとボレロは一体でないと価値がありません。片方がダメになると価値が無くなりますので、全部を弁償しなければならないという事になります。気をつけてください 。

養子縁組はしていないけれど…(オール阪神・巨人)

養子縁組はしていないけれど・・・
本間さんの母親は15年前に松倉さんと再婚しました。しかし2年前、母親が亡くなりました。そのときは松倉さんが年金生活だったので、本間さんは相続放棄し、松倉さんが母の遺産の預貯金全額を相続しました。本間さんは松倉さんとは養子縁組をしていませんが、その後も松倉さんの世話を続けました。
半年前に松倉さんが亡くなりました。「本間さんに全財産を譲る」という遺言書が見つかりましたが、松倉さんには音信不通の息子が一人います。遺言書の通り、遺産をもらうには息子をさがして了解をもらう必要があるのでしょうか?
養子縁組はしていないけれど・・・

【弁護士の見解】 息子さんや他の相続人をさがして了解をもらう必要はない
本間さんと義理のお父さんの松倉さんは血縁関係はなく、養子縁組もしていない。したがって法律上の親子関係はない。しかし、松倉さんが生前、作成した遺言書が法律に定めた要件を満たしていればその遺言書どおりの効力が生じる。
したがって、本間さんは松倉さんの遺産をもらうということができるということになる。ただし、松倉さんの息子さんは相続人なので「遺留分」がある。後から遺留分の減殺の請求を行った場合には、本間さんは今回のケースなら、松倉さんの遺産の2分の1を、松倉さんの息子さんに渡さなければならないということになる。


<関連質問>
相続人が20年後に見つかった場合でもその相続人は遺留分を請求できるのでしょうか?

遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年、もしくは相続開始の時から10年を経過した時点で消滅する。ですから20年後であれば遺留分の請求はできないことになる。

澤弁護士の“澤の一声” 『遺言書に従う場合には、相続人の有無は関係ありません』
遺言書の効力が生じる場合には、他に相続人がいるかどうかをさがさなくても、遺産をもらうことができます。覚えておいてください 。
 

【ゲスト】宮崎美子
【出演者】笑福亭仁鶴、海原やすよ、タージン、オール阪神・巨人、三吾・美ユル、林 一弘(弁護士)


5月21日(土)
 
空き家の町内会費を払うの?(女と男)

空き家の町内会費を払うの?

2年前に父を亡くした中村さんは、お母さんと中村さんの家に一緒に住んでいます。両親が住んでいた実家は、電気やガスなども使えるようにしてあり、念に数回は実家に帰って使っていますが、普段は空き家です。その実家がある町内会から、たまっている町内会費2年分を払ってほしいと言われました。払わなくてはならないのでしょうか?

 

空き家の町内会費を払うの?

【弁護士の見解】 払わなければならない
町内会は、会員相互の親睦を図ったり、生活環境の維持・管理、それから会員相互の福祉・助け合いを行うこと等を目的として設立された団体で、判例も同じように考えている。ただし、町内会の加入というのは強制はされていない。 そこで、町内会費というのは、町内会の目的を実行するための合理的な金額であれば、町内会の会員になっている以上、町内会の規約に特別な定めがない限り、そこに定住していなくても、また町内会の催しに参加していなくても、やはり支払う義務があることになる。
町内会からの退会については、判例は退会を制限するような町内会の規定がなければ、いつでも一方的にやめることができると考えている。今回の場合、中村さんは、町内会から退会していない以上、町内会費は支払わなければならないと考える。

林弁護士の“ちょっと一言” 『町内会に加入するメリットも考えて』

最近、町内会への催しに、参加する人が減ってきているような現象がみられます。高齢者の見守りとか、防犯対策とか、あるいはゴミ集積所の管理等の担い手が減ってきていることにもつながってきているのではないかというふうに思います。近隣のつながりをどのように保っていくのか、町内会をどのように運営していくかについては、まさに今日的な課題と言えますね 。

おばあちゃんとぶつかった!(宮川大助・花子)

おばあちゃんとぶつかった!

花子さんは買い物の帰り道、前を歩くおばあちゃんを見て、注意してゆっくりと後ろを歩いていました。すると、おばあちゃんは歩道の段差でよろめき、転倒して手を骨折。転んだときに花子さんの荷物に当たりました。「荷物にあたって転倒したと言っている。治療費や将来の介護に必要な費用を払ってほしい」と後日、家族から言われました。目撃した人は、おばあちゃんが段差で転倒したと言ってくれています。花子さんは張飛や慰謝料などを払わなければならないのでしょうか?

 

おばあちゃんとぶつかった!

【弁護士の見解】 払わなくても良い可能性が高い
今回は、花子さんの行動がおばあさんの転倒を引き起こした加害行為といえるかどうかが問題となる。不法行為による損害賠償責任が発生するには、故意または過失によって他人の権利などを侵害し、その結果、他人に損害が発生したということが必要である。
もし、花子さんの荷物がおばあさんにあたって、それによっておばあさんが転倒して負傷したというのであれば、花子さんは人に荷物が当たらないように距離を保って歩く等の注意を怠った過失によって、おばあさんが被った治療費とか慰謝料とか、もしくは後遺障害が残った場合の介護費とか、そのような損害を賠償しなければならない可能性がでてくる。しかし、今回、花子さんも、また目撃した人も、おばあさんが段差によろけて倒れる際に花子さんの荷物にぶつかったと言うのであれば、花子さんには過失がなくて、荷物にあたらなくてもおばあさんは倒れていたかもしれないということで、荷物にあたったことと、おばあさんの転倒との間には法的な因果関係もないと考えられる。
花子さんの過失や因果関係については、おばあさんの方で証明しなければならないが、裁判例を見ても、このような事実の認定には微妙な部分があって断定はできないが、今回のケースでは損害賠償金を支払わなくてもよい可能性が高いのではないかというふうに考える。


<関連質問>
歩行者同士のぶつかり合いの場合、損害賠償責任は発生しないのが普通ではないのですか?

そうではない。当事者の年齢や、身体能力や、歩いていた速度。或いは、よそ見していたかどうかなど、様々な事情を考慮して一方に落ち度があって、その結果、誰かにぶつかって負傷させたというような場合には、損害賠償責任は発生する。

林弁護士の“ちょっと一言” 『歩行者同士の接触でも思わぬ責任が』
近年ですね、歩行者同士の接触事故から、損害賠償請求訴訟にまで発展している事案が出ています。特にスマホなどを見ながら歩くというのは、非常に危険なんですね。不注意な接触によって高齢の方が負傷した場合には、将来の介護費用も含めて、多額の損害賠償責任を負うこともありえます。くれぐれも注意しましょう 。
 

【ゲスト】中村美律子
【出演者】笑福亭仁鶴、桂南光、桂吉弥、山田花子、宮川大助・花子、女と男、林一弘(弁護士)


5月14日(土)
 
廊下のフラミンゴ(アメリカザリガニ)

廊下のフラミンゴ

春香さんは賃貸マンションの廊下に置物を置きました。しかし、清掃していた家主の奥さんが誤って倒して、壊してしまいました。翌日、家主に言うと「共用部分の廊下に置くのが悪い。弁償はしない」と言われました。弁償してもらえるのでしょうか?

廊下のフラミンゴ

【弁護士の見解】 弁償してもらえるが減額される
廊下を清掃していた人は、清掃中に春香さんが所有しているフラミンゴの置物をうっかりミス、つまり過失によって壊してしまったので、不法行為責任に基づいて、フラミンゴの置物の修理費用、もし修理できない場合は、壊してしまった時点での置物の時価額を賠償しなければならない。
ところで、フラミンゴの置物が飾られていたのは、マンションの廊下、つまり、共用部分である。共用部分とは、建物のうち自分が使っている、借りている居住部分のような、いわゆる専有部分に属さない施設を言って、例えば建物の玄関ホール、廊下や階段等が該当する。これらは住人全員が共通に使用する場所、空間なので個人が勝手に独占使用することはできない。
春香さんがフラミンゴの置物を置いたのは、まさにその廊下、つまり本来は置いてはいけない共用部分に置いていたわけなので、春香さんにも責められるべき点があったといえる。したがって春香さんはフラミンゴの置物を壊されたことによる損害賠償請求はできるが、過失相殺されて減額されると考える。

林弁護士の“ちょっと一言” 『共用部分の勝手な独占使用は許されません』

マンションの共用部分はその用途に応じて、居住者全員が使えるものです。ですから、他の居住者の迷惑にならないよう心がけたいものですね 。

新婚旅行で別れた2人(宮川大助・花子)

新婚旅行で別れた2人

鈴木さんと陽子さんは、2年間同棲して結婚式を挙げましたが、婚姻届は新婚旅行から帰ってから出す予定でした。同棲中の生活費は折半でしたが、陽子さんが家事をする代わりに、旅行費用は鈴木さんが1人で貯めて、余ったら新居の費用に充てるという約束でした。しかし、旅行先で2人は大ゲンカ。結局別れることになり、婚姻届は出しませんでした。陽子さんは「家事は自分がやっていたので、新居のためのお金の半分を財産分与してほしい」と言います。鈴木さんは、もともとは自分が稼いだお金だし、婚姻届も出していないので、財産分与する必要はないと思っていますが、財産分与するのでしょうか?
 

新婚旅行で別れた2人

【弁護士の見解】 財産分与をしなければならない
社会的に夫婦として生活している実態はあるが、婚姻届を出していない事実上の夫婦関係のことを内縁という。今回は、2人は婚姻届の提出はまだでも挙式も済ませて夫婦としての実体があるので内縁と評価してもいいのではないかと考える。内縁については可能な限り法律上の婚姻に準じて扱うというのが実務であり、したがって、内縁の解消においても離婚と同様に財産分与の請求が認められる。財産分与とは、原則として婚姻してから離婚までの間に夫婦が共同して作り上げた財産というのは、どちらの名義になっても夫婦の共有だと推定されるので、離婚の際にその清算を求める制度である。内縁の場合も同様に内縁開始から内縁解消までの間に作り上げられた財産というのが財産分与の対象となる。
鈴木さんが生活費とは別に、自分の収入を節約して貯めていた資金というのは、陽子さんとの共有財産でないようにも思われるが、その目的は2人の新婚旅行の資金で、そして余れば2人の新居の費用に充てる予定だった。2人の間で、陽子さんは家事を担当しましょう、そして鈴木さんの方は夫婦生活のためにこの貯めたお金を2人で使用しましょうということが、予め合意されていたと考えれば、実質的には、これは2人の共有財産と評価して差し支えないと考える。したがって、今回の場合、2人の共有財産の清算として財産分与しなければならないという結論になる。

林弁護士の“ちょっと一言” 『内縁も基本的には夫婦と同じ』

相続のような婚姻届出を前提とする民法の適用は受けないんですけれども、夫婦間の協力義務とか、貞操義務とか、あるいは内縁関係の不当に破棄された場合の損害賠償請求、あるいは今回のように、財産分与の請求というのは認められていますので知っておいて下さい 。
 

【ゲスト】キダ・タロー
【出演者】笑福亭仁鶴、桂南光、桂吉弥、桂吉弥、山田花子、宮川大助・花子、アメリカザリガニ、林一弘(弁護士)


5月7日(土)
 
ひっくり返ったすし桶(学天即)

ひっくり返ったすし桶

米田さんは、村井さんから注文されたウニのおすしの配達に行きました。「おいしそう!お財布を取ってくるから玄関に置いておいて」。しかし、その時、玄関から野良猫が! あっという間にすし桶をひっくり返して逃げていきました。「すぐに作り直して。まだお勘定の前だし、そちらの責任でしょ」と村井さんは言いますが、米田さんは作り直して2回分の代金をもらうことができるでしょうか?

ひっくり返ったすし桶

【弁護士の見解】 2回分の代金をもらえる
今回は勝手に入ってきたネコが悪いということにはなるが、法律上はネコに責任追及することもできず、どこのネコかも分からないので、飼い主に責任を取ってもらうということもできない。本件ではトラブルが起きた時点で、おすし屋さんの義務が完了していたかどうかというのがポイントになるかと考える。まず、出前の注文を受けた時点で売買契約が成立する。これに基づいて、おすし屋さんはお寿司をつくって引き渡し、村井さんはこれに代金を支払う義務を負う。村井さんは、米田さんが持ってきたすし桶の中身をちゃんと確認した上で、玄関に置くように指定をしている。この時点で、おすしは村井さんの管理下に入ったと言え、おすしの引き渡しも完了したと捉えるのが自然ではないかと考える。その後、ネコがすし桶をひっくり返すという、予想外の事態によっておすしが無駄になってしまったが、おすし屋さんとしては、債務を履行した後なので代金を請求することができる。つまり、おすし屋さんは代わりのおすしを提供する義務もないので、もし村井さんが新たに注文するのであれば追加の代金を請求できると考える。

小島弁護士の“一刀両断”ポイント 『損失負担は公平を原則に』

今回のようにどちらの立場でも、損失を負担することに納得しづらい場合、最後は何が公平かという観点から決定せざるを得ません。今回も、モノを支配下に収めたら、そのリスクも負担するのが公平と考えられます 。

1か月だけ貸して!(中田カウス・ボタン)

1か月だけ貸して!

三宅さんの姉の幸子さんは物忘れがひどく、2年前から介護施設に入居しています。その際、幸子さんの息子の一郎さんが家庭裁判所に申し出て、母親の成年後見人になりました。最近、一郎さんは急な取り引きでお金が必要になり、「母の貯金から300万円借りたい。1か月後には返済できるから」と三宅さんに相談してきました。「母さんの承諾も取れている」と言いますが、成年後見人が財産に手をつけるのはまずいと思います。一郎さんは1か月だけ財産を借りることができるのでしょうか?

1か月だけ貸して!

【弁護士の見解】 借りることはできない
「成年後見人」というのは、本人の判断能力が不十分な場合に、家庭裁判所から選任される人のことである。本人の財産を適切に管理し、契約の代理をしたりして、本人を保護し、サポートする役割を担う。幸子さんのために成年後見人が選ばれているということは、幸子さんが財産を管理する能力が十分でないと判断されたはずなので、幸子さんに「貸してくれる?」と聞いて、「ええよ」と言ってもらっても、それが法的に有効なものとはいえない。他方で、成年後見人である一郎さんは、法律上の代理権も持っているため、幸子さんを代理して、自分に対してお金を貸し付けることができるようにも思われる。しかし、成年後見人と本人の利益が相反する場合には,公正な代理権の行使は期待できない。つまり成年後見人と本人との間の貸し借りは原則として認められないということになる。成年後見人は、あくまで本人の財産を適切に管理し、本人の利益を保護する義務を負っているという点に注意が必要である。本件のような場合、親子の関係にあるからといっても一時的にでも借りることはできないと考える。

小島弁護士の“一刀両断”ポイント『親族だからこそ区別して!』

成年後見人には幅広い権限が認められますが、あくまで財産管理を任されているに過ぎません。親族であっても、自分の財産ときっちり区別するよう心がける必要があります 。
 

【ゲスト】島谷ひとみ
【出演者】笑福亭仁鶴、桂南光、桂吉弥、三倉茉奈、中田カウス・ボタン、学天即、小島幸保(弁護士)


4月30日(土)

離婚はしたいけど…(ミヤ蝶美・蝶子)

離婚はしたいけど・・・

あけみさん夫婦は喧嘩が絶えず、3年前から家庭内別居状態が続いています。お互いに離婚の意思はあるものの、話が進まないので、家庭裁判所に離婚の調停を申し立てようと思っています。知人から「あなたが離婚のきっかけを作ったことになる。慰謝料を取られるよ」と言われましたが、自分から申し立てたら本当に慰謝料を払わなければいけないのでしょうか?

離婚はしたいけど・・・

【弁護士の見解】 必ずしも慰謝料を払う必要はない。
離婚に限らず、調停というのは、当事者の意見が対立して話し合いができないときなどに、裁判所に間に入ってもらって解決をめざす制度である。離婚に際しては、そもそも離婚するかどうかということから始まって、子どもの親権、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料など、話し合うテーマはいろいろある。これらについて、男女2名の調停委員が夫婦それぞれの言い分を聞きながら、双方が合意できる内容を探っていくということになる。もちろん、慰謝料について話し合われることもあるが、慰謝料は、本来、離婚の原因を作った人が支払うものである。つまり、あけみさんに明らかな離婚原因があれば別だが、そうでなければ先に調停の申し立てをしたからといって、それ自体が慰謝料の支払いに結びつくわけではない。

小島弁護士の“一刀両断”ポイント 『調停はあくまで話し合いの場』

裁判は、証拠によって証明できるかどうかで勝訴、敗訴が決定します。これに対して調停は、調停委員を介して双方が意見を述べ、合意できる条件を探っていくものです。このような違いも知っておいてください 。

生前の寄付の約束(中田カウス・ボタン)

生前の寄付の約束

田中さん兄弟の父親が亡くなりました。父親と同居していた長男が、父親名義の家を売って、弟と分けることにしました。半年後、長男のところに、将棋クラブの会長が訪ねてきました。「あなたのお父さんが、私が死んだら将棋盤と駒一式を寄付すると言ってくれました。その将棋盤で追悼大会を開きます」と言います。価値があるなら売って兄弟で分けたいと思っていますが、父親は将棋大会で寄付のことを発表し、参加者全員が聞いていたと言います。一式寄付しなければならないのでしょうか?

生前の寄付の約束

【弁護士の見解】 寄付する必要はない
本件では、「死因贈与」の効力が問題となる。死因贈与というのは、贈与をする人が生前に贈与契約を締結し、その効力の発生時期を自分の死亡の時とするものをいう。「死因贈与」も贈与契約の一種であり、あげる人ともらう人の合意があれば口約束でも成立する。もっとも、口約束の場合は、贈与契約があったことを証明するのが難しいということはある。
ただ、本件では、父が「将棋盤と駒一式を譲る」と将棋大会の場で発言し、会長さんだけではなくて、複数のメンバーが聞いていた。そのため、契約書がなくても、複数の証人がいることになり、証明できる可能性が比較的高いのではないかと思われる。したがって、クラブ側は死因贈与契約を主張することができると考えられる。

しかし、本件は口約束であり書面によっていない。書面によらない贈与は、履行が終わっていない部分を撤回することができるという規定がある。これには、口約束で軽率に贈与契約を締結したあとに後悔するということも考えられるため、それを防止する意味あいがある。つまり、お父さんは贈与を撤回できたと言うことになり、本件の場合「あげる」と意思表示をしたお父さんの地位を相続人が引き継ぐことになる。相続人がこういったことを撤回できるか争われた裁判もあるが、撤回できると判断をされている。つまり、死因贈与であっても、書面によらない贈与を撤回できるという規定は適用され、相続人は、父による死因贈与を撤回することによって、寄付する義務を免れることができる。

小島弁護士の“一刀両断”ポイント 『贈与は書面で確実に』

いくら当事者間で合意をしていたとしても、書面にしていなければ法律の規定によって撤回できる余地が残されます。トラブルを避けるためには書面での契約が必要ということですね 。
 

【ゲスト】松村邦洋
【出演者】笑福亭仁鶴、桂南光、桂吉弥、三倉茉奈、中田カウス・ボタン、ミヤ蝶美・蝶子、小島幸保(弁護士)


4月23日(土)

古いバスの時刻表(和牛)

古いバスの時刻表

バス停の前にある喫茶店に入った桜さんと葵さんは、店に貼っていた時刻表で温泉行きのバスの時間を確認しました。時間になってもバスは来ず、店主に確認すると古い時刻表であったことが発覚しました。店主に温泉までのタクシー代を払ってもらえるでしょうか?

古いバスの時刻表

【弁護士の見解】 払ってもらえない
桜さんたちが店の時刻表を見たときには、最終バスの時刻を過ぎていたというのであれば「古いバスの時刻表」と「乗り遅れた」こと、この二つの間に因果関係がない以上お店のせいにすることは難しい。本当に古い時刻表のせいで乗り遅れた、因果関係があった場合を考えてみると、そんな場合でもお店が責任を負うというのは、時刻表を店としての「ウリ」とか「セールスポイント」。そんなふうにしていた場合に限られると考える。例えば、私の地元にあった駅前の喫茶店では、店内にモニターがあり、次に来る電車の発車時刻と行き先が映し出されるので電車が来るぎりぎりまでコーヒーを飲むことができた。そういう店なら、モニターというのは店としてのセールスポイントとなり、お客の方も映し出される時刻というのは当然正確だというふうに期待しているはずなので、もし、その時刻が間違っていて乗り遅れたのであれば法的な責任問題になり得ると思われる。しかし、今回の喫茶店の場合は、たまたま時刻表を貼っていただけで、何もその時刻表をウリにしていたわけではない。従って、仮に時刻表のせいで乗り遅れたとしても、やっぱり店に対しての責任追及は無理だと考える。

伊藤弁護士の“納得の一言” 『過度の期待は禁物』

相手の言動をあてにして、一方的に期待していたのが外れただけでは、相手の責任追及は難しいです。責任追及できるのは、その期待が合理的な期待といえるほど高まっている場合に限られます 。

離婚後の退職金(オール阪神・巨人)

離婚後の退職金
宮川さん夫婦は一人娘が20歳になる3か月後に離婚することになりました。一軒家は奥さんと娘が譲り受け、預貯金は半分ずつ分けることで話がすすんでいます。先日、知り合いから「ご主人、早期退職するんだってね」と言われましたが、そんな話は初耳です。「早期退職するなら退職金も分けてね」と言うと、「退職するのは半年後だ。もう他人なのに分ける必要はない」と言います。離婚後にもらう予定の退職金も財産として分けてもらえるのでしょうか?
離婚後の退職金

【弁護士の見解】 分けてもらえる
婚姻期間中に築いた財産は、夫婦の共有となる。財産分与というのは、夫婦関係の解消とともに財産面でも清算するため、この共有財産を分けようという制度である。退職金は、在職中の給料の後払い的なものと言われているので、夫婦双方の協力があってこそ、その退職金の金額になったはずである。したがって、退職金は決して夫だけのものではなく、共有財産として財産分与すべきものとなる。よって、今回の場合でも、退職金の支給時期が離婚後であっても、財産分与するのが離婚後になるだけであって、早期退職の退職金は財産分与の対象にすべきということになる。もっと言えば、法律的には早期退職ではなくて、定年退職の時の退職金も財産分与の対象になるものであり、裁判例では、将来の退職金であっても、定年がそれほど先ではなくて、近い将来受給できる可能性が高い場合は、その退職金は財産分与の対象にしてもよいとしている。従って、今回のように5年先程度であれば、十分、この定年時の退職金というのは、財産分与の対象になりうるものである。したがって、本当は奥さんとすれば、早期退職の話がなくても、財産分与の話として退職金も含めるべきであったと思われる。

伊藤弁護士の“納得の一言” 『退職金も夫婦二人で築いた財産』

夫の退職金は給料の後払いとして、妻の協力があってこそもらえるものですので、夫婦の共有財産です。ですので、離婚するときも、財産分与の対象にすることを忘れないでください 。
 

【ゲスト】押切もえ
【出演者】笑福亭仁鶴、辻本茂雄、山田花子、オール阪神・巨人、和牛、伊藤芳晃(弁護士)


4月9日(土)

玄関に貼った督促状(酒井くにお・とおる)

玄関に貼った督促状
賃貸マンションの家主の駒田さんは、2か月分の家賃を滞納している山本さんにあらゆる手段で催促をしましたが、連絡が取れません。「家賃を払ってもらえない場合は契約を解除して鍵を取り替えます」と書いた督促状を山本さんの玄関に貼りつけようと思っています。家主なら貼ることができるのでしょうか?
玄関に貼った督促状

【弁護士の見解】 貼ることができない
家主の駒田さんは、玄関ドアも自分の所有物だから貼り紙してもいいと考えたのかも知れませんが、今回の貼り紙の内容というのは、家賃の滞納に関することなので、これを見た他の住民に「山本さんは家賃の取立てを受けるぐらい経済的に苦しいんだ」という印象を与えるものになります。そういう情報を貼り紙して不特定多数の人が見られる状態にするというのは、プライバシー侵害、名誉侵害ということで違法と言わざるを得ないと考えられる。
裁判例でも、家主ではないが保証会社が同じようなことをした事案で、裁判所は慰謝料の支払いを命じたものがある。滞納している家賃をいったんは保証会社が立て替えて、その後、保証会社が賃借人に督促する一環で、今回と同じような貼り紙をした場合に、それは違法であり、やりすぎということで慰謝料の支払いを命じられている。したがって、家主であっても、今回のような督促状を貼りつけることはできないと考える。

伊藤弁護士の“納得の一言” 『家主でも許される範囲に注意して』

今回の督促状を貼り付ける行為もそうですが、その他でも家賃が滞納されている場合などに、家主が裁判等の手続きを踏まずして勝手に部屋の鍵を取り換える。こういうことも、原則として違法です。注意してください 。

減らされたパート時間(オール阪神・巨人)

減らされたパート時間
35歳の田中さんは、近所のパン屋さんで週4日、1日4時間のパート契約で働いています。来月のシフト表を見ると、勤務が週に1日だけしかありません。店長は、「最近、客足が落ちてきて社員だけで仕事を回せるから」と言いますが、田中さんより後に入ってきた若い、みどりさんの勤務は増えています。何の相談もなくシフトを減らされるのは納得できません。元に戻してもらえるでしょうか?
減らされたパート時間

【弁護士の見解】 減ったシフトは元に戻してもらえない。但し、減った分の賃金の支払いはある。
まず、シフトを決める権限というのは、お店ないし店長の方にあるので、減らされたシフトを元に戻してくれというのは無理である。ただし、今回の場合、経営不振のための、いわば操業調整としてシフトを減らしたかと思いきや、パート間で不公平にシフトを増減させているようですので、そうすると田中さんのシフトを減らしたことについては何ら正当な理由がないと考える余地があると思われる。正当な理由がないのであれば、シフトを減らしたことに関して店側に責められるべき事情があるということで、民法の規定を使って減らされたシフトの賃金全額を田中さんは払ってもらえます。


<関連質問>
本当にお店の経営が苦しくて、その時パートさん全員のシフトを減らさなくてはいけない。などという場合はどうしたらいいんですか?

そんな場合は、必ずしもシフトが減ったことに関してお店に責められるべき事情があるとはいいにくいと思われ、先ほどの民法の規定は使えないということになる。しかし、労働基準法の休業手当がもらえる可能性は高いと考える。労働基準法の休業手当というのは、労働者の生活保障の観点から設けられたもので、本当に経営上の理由からシフトを減らした場合でも休業手当が認められる場合が多いからである。
その代わり、休業手当の金額というのは、直近の給料締切日の、さかのぼって3か月間分、この平均賃金の6割以上と定められているので、必ずしも減ったシフトの賃金全額までは保障されないということになる。

伊藤弁護士の“納得の一言” 『パートであってもれっきとした労働者』
正社員であれパートであれ、労働基準法が適用される労働者には変わりはありません。ですからパートだからシフトを減らされても仕方がないと諦めるのではなく、一度労働基準監督署や弁護士に相談してみてください 。
 

【ゲスト】瀬川瑛子
【出演者】笑福亭仁鶴、辻本茂雄、山田花子、オール阪神・巨人、酒井くにお・とおる、伊藤芳晃(弁護士)


4月2日(土)

18歳の娘の判断(チキチキジョニー)

18歳の娘の判断

ノリ子さんには18歳の娘、麻子さんがいます。先日、ノリ子さんが麻子さんと一緒に、麻子さんの着付けとヘアメイクの打合せに美容院に行きました。着物一式を持ち込み、全部で3万円で予約しました。当日、麻子さんは1人で美容院に行ったので、後でノリ子さんが迎えに行くと「4万円です」と言われました。驚いて確認すると髪飾りが追加されていて、麻子さんは「断るのも悪かったので…」と言いますが、契約したのはノリ子さんです。追加料金を払わなければいけないのでしょういうか?

18歳の娘の判断

【弁護士の見解】 払わなくてもいい
麻子さんは18歳とはいえ、未成年者である。民法は未成年者が行った法律行為については親権者など法定代理人の同意が必要だと定めている。これに違反した場合にはその法律行為を取り消すことができると定めている。未成年者は、成人している人と同様の判断能力が未熟なため、単独で法律行為を行った場合には思いがけない不利益を被るおそれがあるので、親権者等のチェックを受けさせて、未成年者の保護を図ろうという趣旨によるものである。
本件での、髪飾りの追加について、麻子さんは適切に判断できず勧められるままに同意してしまったわけだが、そもそも着付けとヘアメイク一式一体のものとして3万円でしてもらうという契約はノリさんと美容室との間の契約であると言える。
そうすると、このような一式の契約内容を変更しようと思えば、実際に代金を払うノリさんと美容室との間で行わなければならないので、それがない以上は髪飾りは返さなければいけないが、代金の支払いも拒否できるということになる。

林弁護士の“ちょっと一言” 『未成年者の法律行為の同意、取り消しの判断は慎重に』

特に成人の年齢に近い未成年者の場合は、親権者はよく事情を把握して本当に未成年者の不利益になるかどうかということを見極めて判断すべきだと考えます。

割り込まれて売り切れ!(宮川大助・花子)

割り込まれて売り切れ!

小池さんは東京から大阪へわざわざラーメンを食べに来ました。行列ができていたので、おばちゃんの後ろに並んでいると、おばちゃんの友だち3人がやってきて、小池さんの前に割り込みました。「東京から来たので食べられなかったら困ります」と言うと「私が代表して並んでたからええやろ」と言われました。ところが、小池さんの前でラーメンが売り切れてしまいました。おばちゃんたちに「割り込まなければ食べられた」と言いましたが、相手にしてもらえません。東京からの交通費を払ってほしいと思うのですが、払ってもらえるのでしょうか?

割り込まれて売り切れ!

【弁護士の見解】 払ってもらえない
小池さんの前に割り込んできた人の行為については直ちに違法になるというものではないというふうに考える。例えば、威勢を示して公衆の列に割り込んだり、列を乱した場合には軽犯罪法に違反することがある。その観点からみれば順番に並んで席を乱されないということは、一般的には保護される利益だと考えられる。
しかし今回の場合、おばさんたち全員が割り込んできたわけではなく、ひとりのおばさんが元々小池さんの前に並んでおられて、友人たちの順番を確保をするために代表として並んでいたというケースであること。入って来た人も3人ということで多人数によって列の秩序が著しく乱されたこともないということ。それから、お店のほうも予めラーメンを食べることができる人数を決めていたわけではなくて、スープがなくなり次第終了ですよという告知をしていて、小池さんもそのことを了解したうえで並んでいたということ。また、おばさん達も、自分たちが並んだことによって小池さんが食べられなくなるということを予想することはちょっと困難だったこと。これらのことを総合して考えると、おばさん達の行為が小池さんの権利を侵害する違法な行為であるとするまでは、ちょっと難しいのではないかと考える。本来、割り込みと認められるような行為は社会生活上は好ましくない行為であり、小池さんには気の毒だが、今回の場合、交通費までは払ってもらえないと考える。 

林弁護士の“ちょっと一言” 『公衆マナーは社会の潤滑油』

相手を思いやる気持ちがあれば、無用な紛争は避けられます。法律以外でも、社会のルールやエチケットを守るということは大切ですね。
 

【ゲスト】小芝風花
【出演者】笑福亭仁鶴、辻本茂雄、若井みどり、宮川大助・花子、チキチキジョニー、林一弘(弁護士)


※過去12回分を掲載しています。
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