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~3月号~「イノベーションの源をつかめ!」

AIを搭載したロボットの活用やウエアラブル端末、キャッシュレスの普及など次々に新たな価値が生まれています。目まぐるしい変化の中で経営者たちはどんな苦悩に向き合いながらイノベーションを決断したのでしょうか。
番組では3年間に取材した会社を<強みを生かす><市場を見つめる><未来を考える>の3つのキーワードで再分析。そこから見えてくる成功の壺を探ります。

【放送】2020年3月22日(日) 総合テレビ 午前 7時45分〜 8時25分


イノベーションの源①<強みを生かす>

自社の強みを生かして新たな事業を展開する会社。1社目は、凍結機などの開発・製造を行う菱豊フリーズシステム(奈良・大宮町)です。食材のうまみや鮮度を保つという独自の冷凍技術を持つこの会社は、漁協からの声を受けて、食品加工業に乗り出しました。取引のあった全国150の産地で食材を冷凍し、沖縄の自社工場で調理加工。完成した冷凍食品は百貨店などで販売し、売り上げを伸ばしています。独自の冷凍技術と培ってきたネットワークを生かした事業展開です。

2社目は、京都で織物をつくってきたミツフジ(京都・精華町)。抗菌・防臭効果を持つ〝銀メッキ繊維〟で靴下を売り出すものの、抗菌剤の登場で売り上げが激減。倒産の危機にまで陥ります。会社を継いだ三代目の社長は、銀メッキ繊維の電気を通しやすい「導電性」に注目し、下着として着るウエアラブル端末を独自に開発。心拍数などを解析することで、体調やストレスがわかるため、過酷な建設現場では体調管理に役立てるなど、様々な業界から注目を集めるようになりました。

3社目は、人手不足が深刻化する建設業界で、子会社を設立し、人材育成に乗り出した塗装会社、KMユナイテッド(京都・左京区)のイノベーション。親会社には、高い技術を持つベテラン職人が多くいることを強みとし、子会社でその職人たちの技術を直に新入社員へ教え込んでいます。こうした取り組みで、業界とは縁のなかった未経験者や女性が多数入社。若手の成長とともに売り上げも伸ばしています。

イノベーションの源②<市場を見つめる>

独自の戦略で市場を切り開く会社。1社目は、京都・西陣で織物を手掛ける細尾(京都・中京区)です。着物離れで売り上げが低迷する中、海外市場に打って出ようと売り込みをかけますが、オーダーはゼロ。惨敗の理由は生地の幅と、日本の伝統的な柄にありました。西洋のインテリアとしては使いにくいものだったのです。社長は2年をかけて織機の改良を続け、デザインも一新。今、有名ブランド店の内装に採用されるなど、売れる商品として生まれ変わりました。

2社目は、チフスなどの感染症が問題となっているウガンダで、消毒液で市場を切り開く会社、サラヤ(大阪・東住吉区)です。手を清潔にする習慣が根付いていないウガンダで、「売る」ではなく、「習慣をつくる」ことに専念。効果を実感してもらうため、病院や学校で消毒液を無料で提供しました。消毒の大切さが広まり、消毒液は大ヒット。急速に普及が進んでいます。

3社目は、衣料品の製造・加工を行うヴァレイ(奈良・上牧町)。多くの縫製工場では、効率が悪く採算が合わないと言われる少量生産ですが、そこに目をつけ、新たな仕組みでビジネスにしています。引退や結婚、出産で縫製の仕事から離れた職人をネットワーク化し、自宅などそれぞれの場所で仕事をしてもらうというものです。生地の裁断や仕上げなどは会社が行うため、職人は縫製作業に専念でき、デザイナーなどのこだわりにも柔軟に対応することができます。海外からの依頼も増え、売り上げは伸びています。

イノベーションの源③<未来を考える>

少子高齢化や環境問題など多くの課題を抱える中で、未来を考えビジネスにつなげている会社。1社目は、就職サイトを運営するアイプラグ(大阪・淀川区)です。採用しても3年で3割が離職するという今日、この会社では、企業が望む人材と適した学生をマッチングさせるシステムを作りました。企業の社員に行った適性検査と同様の検査を学生にも受けてもらい、その結果から入社後に活躍できる適性を持った学生を割り出し、企業に推薦するという仕組みです。学生にとってはどんな方向性を持って学生生活を送ればいいのかなど、アドバイスを受けることができると言います。

2社目は、制御機器や電子機器の製造・販売を行うオムロン(京都・下京区)です。ここは2年前、未来に求められる技術を研究する新たな会社を設立。例えば、後方から自転車が来て危ない状況を教えてくれるシステムの開発など、ジャンルを超えた研究者を集め、これまでにない視点で研究を続けています。

スタジオに出演していただいた二人のゲストからも未来を見据えた取り組みを伺いました。KMユナイテッドの竹延幸雄社長が取り組んでいるのは、「塗装ロボット」。熟練の職人の技術を数値化し、そのデータを生かしたロボットで、平面なら職人より8倍速く塗装が可能。今は人が装置を押しながら塗装をしますが、いずれは完全自動化をめざしたいとのことでした。ヴァレイの谷英希社長が取り組もうとしているのは、「〝小ロットビジネス〟で海外進出」。フランスが今年2月、売れ残った品の破棄を禁止する法律を施行したことから、谷さんは今後、少なくつくって売り切るという時代になるとみています。そこで日本に来る縫製の研修生が多いベトナムで、小ロットに特化した服づくりのネットワークを作りたいとのことです。


コメンテーターの真山仁さんに、「真山の目」に込めた思いと、収録を終えた感想を語ってもらいました。

※コメンテーターの真山仁さんの出演は今月号で最後となります。4月からは新しいコメンテーターの方が出演します。

真山の目

イノベーションは泥臭く!!

多くの日本人は、IT化したりAIを導入したりするなど、何か新しいことをやればイノベーションを実現できると思っています。イノベーションは格好いいというイメージでとらえている人も多いようですが、それは誤解です。

イノベーションは、まず自分たちの会社を見詰め直すことから始まります。強みと弱みを抽出した上で、大ナタをふるう決断力が必要です。過去と決別し、生まれ変わらなければならないという葛藤の中で、自分たちの強みを抽出していく作業は、泥臭くて、つらくて、たくさん汗をかかなければできません。

産みの苦しみとはそういうものです。本当に会社をイノベーションしたいのなら、幻想を全て捨ててください。大切なのは、自分たちのアイデンティティーをもう一度見つめなおし、どう磨くかを考えることです。そうしなければイノベーションは決して生まれないでしょう。

閉塞感が強く、変化を先取りする必要がある時には、「今のままでいいじゃないか」という考えが最大の敵になります。変化には不安も伴いますから、その考えを打ち消すのに多大なエネルギーが必要となります。

しかし、思い切って変えて良い方向に向かうことが多いのです。これからは経営者も従業員も、時には消費者も積極的に参加して、「もっと変えてみよう。変化は楽しい」と思えるように意識改革をできるかが企業の未来を左右すると思います。

真山の目
イノベーションは泥臭く!!

もっと真山の目

3年間を振り返って

関西の企業には独特の柔軟性やへこたれなさがあります。そして、しなやかさが強さを生むと知っているのは関西人の強みだと思います。

だから東京を意識しないで、自分達のやりたいことに自信を持って、どんどんやって欲しいですね。これまで歩んできた道に、もっと誇りを持っていただきたい。天下の台所と言われていた時代の大阪や、いまだに多くの人を魅了する京都・奈良が持つ個性に目を向けて、関西エリア全体もイノベーションしなければなりません。

簡単には実現しないでしょうが、関西にはそれが出来るポテンシャルがあります。だからとても期待していますし、3年間そういう思いを込めてお話してきたので、少しはお役に立てていればと思っています。

もっと真山の目
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