年間テーマ

「歌と歴史でたどる『万葉集』」

解説 : 鉄野昌弘(東京大学教授)/ 朗読:加賀美幸子

『万葉集』は、飛鳥時代から奈良時代半ばに至るまでの約130年間の歌を集めた、日本最古の歌集です。しばしば「歌風は素朴で雄大」などと言われますが、その130年間の歌がみな素朴で雄大なわけではありません。130年のうちの最後の方は、むしろきわめて洗練され、微細な対象に目をとめた歌が多いのです。
『万葉集』の特徴は、平安時代以降の勅撰和歌集などと違って、歌が、現実の事象や風土との関連が密接であることです。『万葉集』は、整然とした配列原理こそありませんが、作者名を記す巻ではいずれも作歌された時点の古い順に配列されていて、巻一・二がおおよそ飛鳥時代の歌で占められるのに対して、巻十七から二十が奈良時代半ばの天平時代の歌を日付順に並べる、というように、二十巻全体が130年をたどるように並べられているのです。その歌々は、古代国家が経験した、対外戦争や内乱、クーデターや遷都などの大きな出来事と深く関連しながら、その質を変えてゆきます。その意味で、『万葉集』は、「歌の歴史書」であるとともに、「歌による歴史書」でもあるのです。
今回の「古典講読」では、『日本書紀』や『続日本紀』といった史書と見合わせながら、『万葉集』の歌と共にその詠まれた時代背景をみていきます。

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