メロウな徒然草

第405回 2020年9月28日放送分

いつもご清聴ありがとうございます。
第405回となる今夜の放送は、自宅スタジオ収録23回目、秋のリクエスト特集の後編でした。お楽しみいただけましたか。

以下、余話として。

マイケル・ジャクソン“Carousel”。東京都在住の女性リスナー「日本海の夕陽」さん(43歳)のリクエスト。
史上最多セールスを誇る1982年のアルバム『スリラー』に収録が予定され、マイケルのボーカル録音まで完了しながらも、TOTOのスティーヴ・ポーカロが作編曲した別曲の登場によりアルバムからはじき出されてしまったという、曰く付きの悲劇をもつ楽曲です。
スティーヴ・ポーカロの曲(作詞はカーペンターズ“Yesterday Once More”等で有名なジョン・ベティス)は、現在“Human Nature”というタイトルで知られています。83年の夏にはアルバムから5枚目のシングルとしてカットされました。マイルス・デイヴィスのカバーも忘れがたいものでしたし、SWVが同曲をマッシュアップ素材として巧みに調理して原曲以上に大ヒットさせた“Right Here / Human Nature”(全米2位)も、メロ夜リスナーにはたいへん親しまれていることでしょう。
つまり“Carousel”は巨大な『スリラー』の影であり、失われた歴史でもあります。
この曲の作者は、売れっ子セッション・ギタリストのマイケル・センベロ。スティーヴィー・ワンダーをはじめとするモータウンの諸作品や、サックスの巨人デイヴィッド・サンボーンとの共同作業でも知られる白人ミュージシャンです。とはいえ一般的な知名度は低く、『スリラー』は飛躍的なキャリアアップの絶好の機会となるはずでした……。
ところが、マイケル・センベロの運はここで尽きたわけではなかったのです。『スリラー』と同じ1982年の世界的ヒット映画『フラッシュダンス』に収められた本人名義の曲“Maniac”が、因縁深いマイケル・ジャクソンの“Human Nature”と同じ83年の夏にシングルとしてリリースされ、9月にはなんと全米ナンバーワンに輝きます。これは7位止まりの“Human Nature”を凌ぐ商業的成果、快挙と呼べる出来事でした。
今夜の番組でご紹介したのは、2001年の『スリラー』スペシャル・エディションに収められた2分足らずの初出バージョン。現在は3分台のバージョンも配信リリースされています。さらには某動画共有サービスに4分強のバージョンも出回っており、作者のマイケル・センベロによるデモ・バージョンさえも聴くことができます。何という時代でしょう!
「ふたりのマイケル」が織りなすストーリーは、まだ続くのかもしれませんね。

“Carousel”に続いてご紹介した“In The Game Of Love”を歌っていた女性ボーカルトリオ、ブラウンストーン。リクエストをくださったのは岐阜県の男性、堅田英一さん(53歳)。
話が煩雑になるのを避けて番組のなかでは言及しませんでしたが、ブラウンストーンは、マイケル・ジャクソンが運営していたMJJ Musicという音楽レーベルからデビューしました。ゆえにこの曲順となったのですが、気づいた方はいらっしゃいます?
MJJ Musicもまた「失われた歴史」になりつつあるようです。同レーベルの看板は何といっても3T(マイケルの兄ティト・ジャクソンの息子たち)でしたが、メロ夜リスナーにとっては、男性ボーカル・グループ、メン・オブ・ヴィジョン(マイケルの『デンジャラス』に貢献したテディ・ライリーのバックアップ)や、このブラウンストーンのほうがなじみ深いのではないでしょうか。

最後になりますが、フィリップ・ウィン1984年の佳品“Let Me Go Love”をリクエストしてくださった東京都の男性リスナー「こころ」さん(33歳)は、この曲を1990年リリースのコンピレーション・アルバム『Slow Motion』で知ってリクエストされたそうです。
何を隠そう、『Slow Motion』は、私が初めて選曲を手がけたアルバム。学生ライター時代の作品ですね。選曲、アルバムタイトル考案、CDの帯コピー、もちろんライナーノーツも書いて、たしかギャラ3万円でした。
仕上げるのに膨大な時間を要したせいで、時給換算だと5百円にも満たなくなってしまい、半泣きだったのをよく憶えています。ひとえに、経験とスキルは欠けているくせに仕上がりには完璧を求めてしまう私の厄介な性格によるものでしたが。
でも今回、そのころ3歳であっただろう「こころ」さんから「ライナーの文字から松尾さんの声が聴こえてくるよう」というメッセージを頂戴し、当時の苦労も報われた気分です。ありがとうございます!

さて、先週の予告通り、次回は「今なら間に合うスタンダード」のコーナーをおよそ半年ぶりに復活させます。
数えてみるとこれで第41回でした。どんな曲を取りあげるのか、どうぞお楽しみに。もちろん同コーナーへのリクエストもお待ちしていますよ。

以上、お湯割で寝酒をいただく季節到来ですね、松尾潔でした。


第404回 2020年9月21日放送分

いつもご清聴ありがとうございます。
連休いかがお過ごしでしょうか。

第404回となる今夜の放送は、自宅スタジオ収録の22回目でした。
2週連続でお届けするリクエスト特集の前編。お楽しみいただけましたか。
曲のむこうに人生が垣間見えるようなリクエストもあれば、その曲自体がザ・メッセージ!というものもあったように思います。
音楽とは(あるいは、音楽に魅せられた人とは)面白いものだなあと、つくづく感じました。

今回は放送の中でリスナーのみなさんからのメッセージをたっぷり読み上げましたので、ここ徒然草でのメッセージご紹介は控えさせていただきますね。
来週はリクエスト特集の後編をお届けします。
私も長く愛聴してきたアーティストであるにもかかわらず、リクエストをいただいていなければまず選ばなかった隠れ名曲もピックアップする予定です。
どうぞお楽しみに。

以上、再来週は久しぶりにあのコーナーを復活させようかな、松尾潔でした。


第403回 2020年9月14日放送分

いつもご清聴ありがとうございます。
自宅スタジオからお届けしました。21回目。

今夜は「Songs in the Attic 〜屋根裏の名曲たち〜 第12回:屋根裏のふたりVol.2」でした。
先週予告した通り、みなさんに大人気の90年代楽曲を多めに選びましたが、いただいたリクエストに触発されて70年代モノも2曲あったりして、自分でも予想できなかった意外な並びとなりました。
さしずめ屋根裏の風まかせといった感じかな。お楽しみいただけましたか。

さて、来週・再来週のリクエスト特集を前にして、たくさんのメッセージが届いております。いつもありがとうございます。今回もいくつかご紹介させてください(以下、敬称略)。

29.1℃…しかし湿度59パーセント、貴兄のFM番組再放送、午前中、小生の部屋!…いつも拝聴してますが、湿度59パーセントはウ~です! 「松尾潔のメロウな夜」洒落ではありませんが本当に冷たいメロンが脳裏を席捲します。
(オッチャン本気よ!・東京・41歳・男性)
「メロウな夜」→「冷たいメロン」。この発想は私にはなかったなあ。この番組に寄せられるメッセージの中では異色と呼べるグルービーな文体を楽しませていただきました。

松尾さん、スタッフの皆さんこんばんは。あっという間に秋ですね。メロウな徒然草でのリスナーの方のお話、毎回とても楽しみにしています。学生時代、授業でテーマが与えられて、それに対して自分なりの意見を紙に記入して提出。次の授業の際に、先生が生徒の意見をそのまま抜粋し、1枚のレジュメにまとめて配布してくれた授業がありました。ひとつのテーマに対して様々な考え方があり、すごく好きな授業だったのですが、何だかそれを思い出しちゃいました。
(ゆか・茨城・31歳・女性)
コロナ禍以降、と言ってよいと思うのですが、みなさんからのメッセージに宿る日常の息遣いが濃さを増したような気がします。私が独り占めするのがもったいないと感じられるほどに。そんなみなさんの変化が、この徒然草のスタイルを新しく規定したということです。もちろん私もこの変化を大いに楽しんでいます。

松尾さん、こんばんは。番組の大ファンです。メロウな夜のお陰で浮遊感がある曲、聴かせる曲、渋い曲…様々な曲に出会う事ができて人生を豊かにしていただいています。ありがとうございます。
(lemon tree・長野・43・女性)
真っ先にくるのが、浮遊感、ですか。なるほど。メロウの定義に含まれるかもしれませんね。フロート・オン。

水曜・金曜はオフクロのデイサービス、朝8時半に迎えが来る。入浴して洗髪もしてもらいゴキゲンで帰宅なのだが、粗相をして紙オムツを借りたそう。87になってオツム・身体が思うようにいかず、悔しかろう。でも、そんなこと忘れて、買ってきたアイスクリームをパクつく。立ち直りが早い。(略)デイサービスでオフクロの似顔絵を描いて、お手紙をくれた方がいる。なのに、大事にしまったら、どこにしまったのか忘れる始末。せっかく描いて下さったから、お礼の手紙を書くよう勧めても屁のカッパ。明日は役所から係員がくる。要支援から要介護にランクアップ予定。夕食後やっと眠剤を服用し床に就いた。やれやれ。これからオレの時間。(略)Nicki Richardsオンエアの際、Frankie KnucklesをMasters At Workのと。おや?と思ったリスナーも?松尾さんからリスナーに向けてのテスト?いらんことを長々。それじゃ。
(Buck$pin・福島・56歳・男性)
まずはお母様のご健康、ご家族のご多幸を心より祈念します。
この方から届くブルージーなメッセージを楽しみに徒然草を読んでいるというリスナーも多いようですね。何年にもわたって毎週数通のメッセージをご投稿という驚異的なハイペースを維持するBuck$pinさんゆえ、ここでご紹介できるのはあくまでほんの一部ですが。
ところでメッセージにあるように、8月17日の放送で、ニッキ・リチャーズ“Summer Breeze”のリミックスを手がけた故フランキー・ナックルズを、マスターズ・アット・ワーク(MAW)の一員と誤ってご紹介したようです。ごめんなさい!
フランキー・ナックルズが、デイヴィッド・モラレス、富家哲といった面々と運営していたのはデフ・ミックス・プロダクションズ。いっぽう、MAWはケニー“ドープ”ゴンザレスとルイ・ヴェガのコンビを指します。
じつは私はかつてケニー・ドープと冨家さんとお仕事をした経験があるのです。にもかかわらず(だからこそ?)、ハウスミュージック・シーンを代表するNYのこの2大チームの名称をしょっちゅう混同しちゃうんですよね……またやっちゃいましたか。ご指摘ありがとうございます。
恥さらしついでに言えば、LAのヒップホップレーベル「デス・ロウ」と「アフターマス」、さらにファンクバンド「スターポイント」と「ミッドナイト・スター」。このあたりも極私的定番ミスですね。以後気をつけま〜す。

以上、来週のリクエスト特集はいつにもまして楽しい放送となりそうですよ、松尾潔でした。


※過去3回分を掲載しています。
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