メロウな徒然草

第293回 2018年5月21日放送分

いつもご清聴ありがとうございます。

今夜の最重要曲は、マイアの“Ready (Part III - 90's Bedroom Mix)”、そしてそのインスピレーションとなっているR・ケリーの"It Seems Like You're Ready" でした。
R・ケリーのこの曲は、ちょうど四半世紀前の1993年にリリースされた彼のモンスター・ヒット・アルバム『12 Play』に収録されていました。
シングルカットされたわけではありませんが、当時からラジオではたいへんな人気曲でした。
セールスとオンエアの合算結果であるR&B / ヒップホップチャートに、オンエアだけでランクイン、最高29位を記録したのですから大したものです。

当然その影響も大きく、今回のマイアだけでなく、いろんなアーティストがこの曲をサンプリングしたり引用したりしています。
なかでも有名なのは2014年のクリス・ブラウンとトレイ・ソングズのデュエット"Songs on 12 Play"。
タイトルの通り、自分たちに決定的な影響を与えてくれたR・ケリーと、彼の初期代表作であるアルバム『12 Play』を礼賛する曲でした。
そんなR・ケリー、そしてクリス・ブラウン。
このふたりが現在、それぞれセックス・スキャンダルの渦中にいます。
詳細はいくらでも海外サイトに載っていますので、この事件にご興味のある方は調べてみてください。歌じゃなくて実生活が問われています。
端的にいうと、女性をモノのように扱った疑いがかけられているのです。本当だとしたら、まったく笑えない話です。

R&Bは伝統的に「男の世界」とされ、スター歌手には性豪伝説がつきものとされてきたのですが、ふたりの行動は時代錯誤と言わざるを得ません。
Me Tooど真ん中の事例であると同時に、そんなこと以前のお粗末な話でもありますからね。
よく「音楽そのものに罪はない」なんて言いますけど、いっぽうで「音は人なり」とも言います。
いま彼らの音楽を聴きたくないという人が出てくることは、ちっとも不思議ではありません。
ご存じのように、ふたりの超のつくファンである私は残念な気持ちでいっぱいです。ほんと残念。
ふたりを取り巻く状況を冷静に見届けていきたいと思います。

さて、来週は5月の4回目の放送です。
レギュラープログラムの番外編「メロウな風まかせビンテージ」とまいりましょう。
内容は聴いてのお楽しみです!

以上、3作目の短編小説の入稿が何とか間に合ってホッとしている今日このごろ、松尾潔でした。


第292回 2018年5月14日放送分

いつもご清聴ありがとうございます。
ようやく私の喉も普段の調子を取り戻しまして、いつものメロ夜が戻ってまいりました。
先々週そして先週と、実にたくさんの励ましのお声を頂戴しております。
この場を借りて厚く御礼申し上げます。ありがとうございました!

さて今夜もレギュラー・プログラム「メロウな風まかせ」をお届けしました。
なかでも、ここ徒然草で語りたい話題は以下の3つ。

1, シャーデーの今昔
2, フォンジー・ソーントンという男
3, “Buttercup”とスティーヴィー・ワンダー

まず1から。UK最強のバンドのひとつであるシャーデー、実はつい最近、8年ぶりの新曲“Flower Of The Universe”をリリースしました。
ディズニーの新作ファンタジー映画『A Wrinkle In Time』のサントラに収録されています。
だったらオンエアして欲しかったなあ、というメロ夜リスナーのお声が聞こえてきそうですが、まあそこは「風まかせ」なので。いずれその「風」が吹くときもあるでしょう。
今夜オンエアした“Paradise”を含むシャーデーの1988年のアルバム『Stronger Than Pride』は、彼らの3作目。
全部で6枚あるシャーデーのオリジナルアルバムはどれもすばらしいですが、これこそ最もメロ夜的なムードに溢れた1作かと思います。
以前にご紹介した必殺チューン“Nothing Can Come Between Us”も聴きものですよ。
それにしても“Paradise”で連呼されるフレーズ“Oooh what a life”は、30年前よりいまのほうが沁みます。人生! ああ、人生!!

お次は2。知らない人にとっては全くと言っていいほど無名、でもその名をよく知る者にとっては神のような存在、それがフォンジー・ソーントンです。
この人がいなければ、70年代のシックも、80年代のロキシー・ミュージックも、そしてルーサー・ヴァンドロスの全キャリアもなかった、という御仁です。
そして何を隠そう、私が音楽ライター事始めの時期にインタビューしたR&Bアーティストのひとりでもあります。
裏方仕事に妙味あり。いまの気分で、ジョーンズ・ガールズの『On Target』を挙げておきましょう。

そして3。ジャクソン5のレアトラック。1973年の録音ながら、マイケル・ジャクソンの死後ようやく日の目を見た、スティーヴィー・ワンダー提供曲。
R&B好きの間では、カール・アンダーソンのレパートリーとして80年代から長らく愛されてきた曲です。そちらも機会があれば是非、というシンプルなおハナシ。
ちなみにスティーヴィーは昨日5月13日が68回目の誕生日でした。めでたし!

以上、バターカップはキンポウゲ、転じて「可憐な美少女」って意味ですよ、松尾潔でした。


第291回 2018年5月7日放送分

いつもご清聴ありがとうございます。
今夜も私の声は本調子ではありませんでした。花粉症をこじらせてしまったようです。
さぞお聞き苦しかったことでしょう。失礼いたしました。
来週こそは元気にマイクに向かいたいと思います!

今夜の選曲はブギー成分をかなり増量してみました。
まずCHEMISTRY“Heaven Only Knows”のT-Grooveリミックスと、「ゲットー・ブギーおやじ」ことアンディー・ストークスの“Right Now”をつなげてみました。
そしてBGMにマイケル・ジャクソン“Love Never Felt So Good”をはさんだところで、メロ夜初登場のヴォッテ・ホールの“Kiss On Me”と続きました。

1991年に初版が出た『U.S.ブラック・ディスク・ガイド(USBDG)』という本があります。米国黒人音楽評論の泰斗・鈴木啓志さんの責任編集。
当時大学生だった私も、鈴木さんにお声がけをいただいて執筆に参加しました。たいへん思い出深い一冊です。
私のほかにも、学生ライターとして佐々木士郎(現在はライムスター宇多丸)、坂間大介(ライムスターMummy-D)両氏が参加していましたね。
94年には増補版も発売された同書は、日本語で書かれた初めての本格的なR&Bディスクガイド。その後の日本におけるR&Bの「聴きかた」に圧倒的な影響を与えたように思います。

USBDGのなかで89年リリースのデビュー盤が紹介されたファンク・グループ、クーラー(COOL’R)のメンバーだったのが、アンディー・ストークスです。
彼はブギー界に突然現れた新星のような印象がありますが、実際にはグループ解散後の90年代から地道にソロ作品をリリースしてきたベテランなんですよ。
私も最近になって彼の経歴を知り、「あのクーラーか」と膝を打った次第。
当時の私は、クーラーの“Love Me All My Life”というメロウな曲を、好んで聴いたりラジオでかけたりしていたものです。
アンディー・ストークスの声は現在ほど野太くもなく強靭でもなくて。新しいタイプじゃないけど、うまい歌い手だなあという印象でした。
そのボーカルスタイルはいまの時代にこそフィットしている気がします。

ちなみに、COOL’Rをプロデュースしていたのはルー・アドラーでした。
何しろ、ポップミュージック史に残るキャロル・キングの大名盤『つづれおり』を手がけたことでも知られる音楽業界の大立者ですからね。
当時はアドラーの名前のほうがあまりに大きかったので、そういう意味でもいまのほうがニュートラルにアンディー・ストークスのボーカルを楽しみやすいかもしれません。
今年の年間メロウTOP20の有力候補です。記憶して損はない名前かと。

さて、来週(5/14)もレギュラー・プログラム「メロウな風まかせ」をお届けします。
どうかお楽しみに。

以上、今夜は「滋味深い&テリー・ルイス」使っちゃいました、松尾潔でした。


※過去3回分を掲載しています。
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