2020年2月29日(土)

 

父が貸していたお金(なすなかにし)

父が貸していたお金

<相談内容>
陶芸家だった父の遺産を7年前に相続しましたが、父の作品の中から封筒が見つかり、見てみると、中には父の知人が書いた借用書が入っていました。借用日は2010年1月で、1年後に300万円を一括返済すると書かれていました。知人は「借りたのは10年以上前だし、お父さんから一度も催促されていない。もう時効だ」と言います。返してもらえないのでしょうか?

父が貸していたお金

【弁護士の見解】

<結論>
返してもらえる

<解説>

息子さんは亡くなったお父さんの相続人なので、お父さんが知人に貸していた300万円の返還請求権も相続したことになります。では、この賃金返還請求権について、消滅時効が完成しているのでしょうか。消滅時効とは、債権者が一定期間、権利を行使しないことによって債権が消滅する制度を言います。つまり、権利の上に眠る者は保護されません。
個人間の賃金債権の消滅時効の場合、民法には「権利を行使することができる時から10年」で時効が完成すると定められています。この権利を行使できる時とは、お金を貸した日ではなく、返済期のことを言います。今回、お金を借りている知人の返済期は2011年1月だったので、まだそれから10年は経過していません。したがって、消滅時効は完成しておらず、相続人の息子さんがお父さんの代わりに返してもらえるということになります。
この消滅時効に関しては、今年の4月1日から施行される改正民法にともない、「職業別短期消滅時効」が廃止されます。「職業別短期消滅時効」とは、職業別の時効期間が定められたもので、飲食料、宿泊料などが1年、弁護士の報酬が2年、医師の診療報酬が3年などとなっていました。しかし、複雑でわかりにくいので、すべて廃止になりました。また、商取引の場合に定められていた5年の商事時効についても廃止にし、職業別でバラバラだった時効期間を1つにまとめることにしました。時効期間と起算点については、これまでの「権利を行使することができる時から10年」という時効期間を維持しながら、新たに「権利を行使することができることを知った時から5年」という時効期間が追加されました。これにより、いずれか早い方の経過によって時効が完成することになります。
ただし、4月1日より前に締結した契約については、改正前の時効期間が適用されます。改正民法が適用されるのは、あくまで4月1日以降に締結した契約に限られるので、その点はご注意ください。

ウソをついたばかりに…(ザ・ぼんち)

ウソをついたばかりに…

<相談内容>
絵皿を10万円で衝動買いしてしまい、妻には「たった2000円だ」と、とっさにウソの値段を言いました。ところが、飾ってあったはずの絵皿がなくなってしまい、妻に聞くと、「引っ越したご近所さんに餞別であげたの。2000円だからいいでしょ」と言うので、本当の値段を告げると「あなたがウソをつくからでしょ。もう手遅れよ」と言われました。妻に代金を払ってもらえるのでしょうか?

ウソをついたばかりに…

【弁護士の見解】

<結論>
全額ではないが払ってもらえる

<解説>

今回のように、妻が無断で他人に絵皿をあげてしまった行為は、「不法行為」にあたります。では、夫婦間で不法行為があった場合、夫は妻に対して損害賠償請求ができるのでしょうか。
本来、夫婦の財布は1つなので、夫婦間で損害賠償を請求するのは、一般的に認められないと考えられるかもしれません。しかし、夫婦間であっても、加害者は被害者に対して損害賠償責任を負います。夫婦とはいえ、夫も妻も一個人として独立しており、一方が他方に損害を与えたときは、個人として損害賠償責任を負うというのは当然だからです。
ただし、今回は、夫がウソをついたことも一因なので、一方的に妻だけが悪いとも言えず、妻は絵皿の代金の全額は払わなくてもよいと考えます。
仮に、今回のご近所さんが夫のものと知らずに絵皿をもらっていた場合、絵皿の所有権はご近所さんが取得するので、もはや返還を求めることはできません。これを「即時取得」というので、覚えておいてください。


2020年2月22日(土)

 

壊れた塀の責任は?(テンダラー)

壊れた塀の責任は?

<相談内容>
「あなたが管理している駐車場との間にある塀が壊れているので、修理代を払ってほしい」と駐車場の隣家に言われました。近所の人に聞くと、駐車場が空いている昼間に、子どもたちがキャッチボールをして、ボールをぶつけて壊したようです。「駐車場で起きた事故には責任を負いません」という看板も設置しています。車が駐車場を壊したのならまだしも、想定していなかった原因で壊れた場合でも、修理代を払わないといけないのでしょうか?

壊れた塀の責任は?

【弁護士の見解】

<結論>
払わなくてもよい

<解説>

弁償義務を負う場合というのは、駐車場の管理に落ち度があって、隣家に対して不法行為責任が成立する場合に限られます。今回の塀が壊れた経緯は、子どもたちがキャッチボールで遊んでいるうちにボールが当たって壊れたと認められます。法律上の落ち度、過失というのは損害発生を予想することができたのに、これを回避する義務を怠ったことを言います。
ところが今回の子どもたちは、勝手に駐車場でキャッチボールをしていたので、そもそもキャッチボールで隣家の塀が壊れることを予想するのは非常に難しいと思います。そのため、予想もできない以上、これを回避する義務違反ということもなく、管理上の落ち度は認められません。したがって、塀の弁償義務はないので、塀の修理代を払う必要はありません。
仮に、子どもたちが駐車場で遊んでいたことを知っていたとしても、管理上の落ち度はないと思います。もちろん、それなりに危険なことを子どもたちがしていることを認識していた場合には、管理責任が問題となる余地はありますが、それでも入口を封鎖するなどしない限りは、子どもたちが駐車場に入ることは防ぎようがないので、駐車場の所有者の落ち度を見出すのはかなり難しいと思います。
しかし、駐車場の所有者が子どものボール遊びを認識していたのであれば、いくら責任を負うのが稀とはいえ、看板などで子どもに注意をしておくべきです。そういう努力をしておくことは、万が一、事故が起こっても責任を完全に否定する上で重要なことだと思います。

返してもらうのは誰から?(オール阪神・巨人)

返してもらうのは誰から?

<相談内容>
彼氏に「貸した10万円を返してほしい」と言うと「2年前、友達に10万円を貸しているので、その友達からもらってくれ」と言われました。友達に「私の彼氏から借りた10万円を、私に返してほしい。彼氏も同意している」と頼むと、「君の彼氏からは何も聞いていないし、お金を借りた人以外に返す気はない」と言います。友達から10万円を払ってもらえないのでしょうか?

返してもらうのは誰から?

【弁護士の見解】

<結論>
払ってもらえない

<解説>

今回、このカップルがやろうとしていることは、法律的に当てはめると「代理受領」にあたると考えられます。まず「代理受領」とは、債権者である彼女が、債務者である彼氏から、代理人として第三債務者である友達から受領する権限をもらうことを言います。
この代理受領は、債権を譲り受ける「債権譲渡」と少し似たところはありますが、債権自体は彼氏のところにありながら、彼女は受領する権限だけをもらう点で、少し異なります。そして、友達が彼女に支払った場合、彼女はこれを彼氏に対する債権に充当することで、結果として彼女自身の債権を回収することができる方法です。
しかし、代理受領というのは、債権者と債務者の取り決めだけでは意味がなく、あくまで第三債務者の承諾が必要です。したがって、第三債務者である友達が、彼女への支払いを拒んでいる以上、彼女は友達から10万円を払ってもらえません。
今回の相談では、彼氏が彼女に対して「10万円は友達からもらってくれ」という言い方だったため、代理受領と判断しました。代理受領と似ている債権譲渡との使い分けは、債権が譲渡できるものかどうかでなされることが多く、法律や特約で譲渡できないことになっている債権の場合、代理受領という形をとります。しかし、代理受領の場合、あくまで債権者は彼氏なので、もし、彼女がお金を受け取る前に、彼氏が債権を他の人に譲渡してしまったり、他の債権者から差し押えされてしまうと、彼女は彼氏からお金を受け取ることはできません。
また、代理受領と債権譲渡が異なる点として、代理受領の場合、払ってもらうためには友達の承諾が必須ですが、債権譲渡の場合は、債権の譲り渡し人の彼氏から友達に譲渡したことを通知すれば、友達は、何かきちんとした理由がない限り、返済を拒むことができない状態になります。この点も、代理受領と異なります。


2020年2月15日(土)

 

いつでもスマホで決済!(オジンオズボーン)

いつでもスマホで決済!

<相談内容>
買い物をする度に「給料が入ったら返すから立て替えておいてよ。ポイントが貯まるからいいだろ」と同僚から何かにつけて頼まれ、その度にスマートフォンでキャッシュレス決済をしました。同僚が「給料が入ったので立て替えてもらった分を返す」と言うので「全部で12万8000円だ」と言うと「キャッシュレスの還元分があるだろ。その分を差し引いてくれ」と言います。全額返してもらえないのでしょうか?

いつでもスマホで決済!

【弁護士の見解】

<結論>
全額を返してもらえる(還元分は差し引かない)

<解説>

スマートフォンで買い物の代金を立て替えるにあたって、購入額に応じたポイントをもらえることが前提になっていました。しかし、昨年10月から始まった、キャッシュレス決済の消費者還元制度の扱いについてまでは、2人のあいだで明確に取り決めていなかったことから、この消費者還元分も、もらえるのかが問題となります。
確かに、購入額に応じて付与されるポイントは1%程度のことが多いのに対し、消費者還元制度の場合、還元率が最大5%であったり、支払い額自体が値引きされたりするので、購入額に応じたポイントと消費者還元制度とのあいだに差がないわけではありません。
しかし同僚は、スマートフォンで立て替えてくれなければ、その場で代金全額を負担しないといけませんでした。それが立て替えてもらったおかげで、支払い時期を給料日まで無利息で延ばすことができたので、買い物の中に5%分のポイントや値引きがされたものがあったとしても、その利益分を相手が取得することは、必ずしも不公平ではありません。
そうだとすれば、明確な取り決めがなかった以上、2人の意思としては、購入額ごとのポイントと同様に、消費者還元制度によるポイントや値引き分も、もらえるものとする趣旨だったと考えるのが、合理的です。したがって、還元分を差し引く必要はなく、全額を払ってもらえます。

結婚後に出した学費(オール阪神・巨人)

結婚後に出した学費
<相談内容>
結婚直後に、夫が「料理人になる!」と言い出して会社を辞めたので、独身時代に貯めた貯金から料理学校の学費200万円を貸しました。その後、お店を出すとこができ、2人で生活してきましたが、仕事が忙しくすれ違いが続き離婚することになったので、「貸した200万円を返してほしい」と言うと「俺が料理人になって稼いだお金で生活してきたじゃないか。それに12年も経っているから時効だ」と言います。200万円は返してもらえるのでしょうか?
結婚後に出した学費

【弁護士の見解】

<結論>
返してもらえる

<解説>

お金を貸し付けた債権の消滅時効期間は、今年の4月から施行される改正民法では5年、現行民法では10年です。その時効期間は、今回のように返済期限を定めず貸し付けた場合には、お金を貸したときからスタートします。そのため、貸し付けてから12年も経っている今回の場合、時効で消滅するというのが、夫の考えだと思います。
しかし民法では、夫婦の一方が、他の一方に対して有する権利については、婚姻解消のときから6か月経過するまで時効は完成しないと規定されています。これは夫婦間で、露骨にお金の返済のような権利を主張してしまうと、関係が悪くなってしまいかねず、夫婦関係の継続中は、互いに権利行使をするのは、事実上難しいことから規定されたものです。そうすると、今回はまだ離婚を協議している最中にすぎず、妻の夫に対する貸付金は時効になりません。
さらに、夫は料理人になって稼いだお金で生活していたことをもって、まるで貸付金の返済になっていたかのような主張もしていますが、夫婦である以上、生活費を出すのは法律上の義務でもあるので、返済と見なすことはできません。したがって妻は夫に200万円を返してもらえます。
他に、夫婦であることで特別に認められることとして、夫婦間で契約したときは、その契約は婚姻中いつでも、夫婦の一方から取り消せるという民法の規定があります。普通は、一旦、約束したことは詐欺や錯誤など何か特別の事情がない限り、取り消せませんが、夫婦間であれば自由に契約を取り消せます。
この夫婦間の契約取消権には、いろいろな批判があり、裁判所も、この契約取消権が使える場合については、制限的に考えています。最高裁は、夫婦関係が破綻している場合には、形式的には夫婦であっても、実質的には結婚していることにならないので、契約取消権は使えないと判断します。

2020年2月8日(土)

 

GPSで離婚?(三吾・美ユル)

GPSで離婚?

<相談内容>
心配性で嫉妬深い妻に「どこへ行ったか」「誰と会ったか」など毎日聞かれています。ある時、あまりにも詳しく知っていたので問い詰めると「携帯電話をなくしたときにGPSで探す機能を使って監視していた」と言われました。無断で監視するのは、いくら夫婦とはいえプライバシーの侵害にあたるので離婚したいと思っていますが、GPSで監視されたことを理由に離婚できるのでしょうか?

GPSで離婚?

【弁護士の見解】

<結論>
直ちに離婚することはできない


<解説>
妻は、夫が毎日どうしているのか気になり、人工衛星を使って位置を把握する、夫のGPSのシステムを利用して、毎日どこにいるか調べていました。
夫婦の間でもプライバシーの権利は尊重されなければいけませんが、夫婦であるがゆえに守られるべきプライバシーのハードルが低くなる部分もあり、その加減が難しいところです。民法は、裁判で離婚が認められる場合として、不貞行為などの事実を列挙しています。その中で「婚姻を継続し難い重大な事由」も離婚の原因として規定していますが、どういう場合がこれに該当するのか明確に表現はされていません。つまり、夫婦関係が破綻して回復の見込みがない場合といえます。夫は今回のGPSによる行動監視は、プライバシーの侵害とみているようですが、それによって婚姻の継続や修復が全く不可能になったとまでは言えないと考えます。
妻も悪意でGPSを利用していたわけではなく、心配のあまりに出た行動でもあったので、夫婦間で話し合えば、何らかの解決方法は見いだせると考えます。したがって、妻が応じない限り、夫の意向だけでは、直ちに離婚は認められないと考えます。なお、夫のGPSを利用して夫の位置を確認していますが、厳密にいうと、無断で人のスマートフォンに侵入して位置情報などを取得すると犯罪になることがあるので、控えるべきです。
今回の相談では、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しないと考えましたが、裁判で認められたケースがいくつかあります。例えば、暴力や虐待がある場合は、もはや婚姻関係を修復するのは不可能だと考えられます。さらに、言葉でひどく侮辱するような言動を毎日のように繰り返す場合や、配偶者の大切にしていた思い出の品を、困らせるために廃棄や焼却する行為も離婚の理由になりえます。また、夫が妻の収入をあてにして、定職に就かず、ギャンブルなどにのめり込み、多額の借金を背負った場合などもあります。そして、一般には該当しませんが、夫婦の一方が他方の親族との不和が顕著で、他方が不和解消の努力を全くしないどころか、親族に加担するような行動を継続した場合も認められます。
その他にも、信教の自由は憲法で保障されているものの、宗教にのめり込み家庭を顧みない状況が継続し、夫婦関係が破綻した場合や、性格の不一致などのせいで、長期間会話がなく、いわゆる家庭内別居が継続していた場合などは、認められる可能性が高いです。注意すべきは、これらの事実のどれか一つに該当すれば直ちに離婚が認められるのではなく、婚姻期間、生活状況、別居した場合は別居の期間、夫婦間の協力義務が果たされていたかなどの事情を総合的に考慮して判断することになります。

知らなかった100万円(ザ・ぼんち)

知らなかった100万円

<相談内容>
同居している母親から「お父さんの知り合いが訪ねてきて、お父さんに借りていた100万円を返したいと言われたので断ったけど、どうしても返したいと100万円を置いていった」と言われました。亡くなった父親には合わせて500万円の借金があったので、母親と一緒に相続放棄しており、他に相続人はいません。父が生前に貸していた100万円を受け取ることはできるのでしょうか?

知らなかった100万円

【弁護士の見解】

<結論>
受け取ることはできない

<解説>

相続の放棄について、家庭裁判所に対して適法に手続きがされていれば、父親の相続に関しては最初から相続人にならなかったものとみなされます。父親の相続を放棄した場合、他に相続人がいないときは、相続財産は民法の規定によって法人となり、家庭裁判所で選任された相続財産管理人が財産を管理し、処理することになります。
今回の場合、お父さんからお金を借りていた知り合いに対する100万円の貸金債権も父親が有していた相続財産なので、相続放棄した以上、もはや相続取得することはできません。その場合、相続財産管理人が選任されるまでは、相続放棄をしていても財産管理義務を負い、それを選任された相続財産管理人が引き継ぐことになります。お父さんには複数の債権者があったようなので、相続財産管理人は民法の規定にしたがって100万円を父親の債権者に弁済することになり、受け取れないという結論になります。
相続放棄は、自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。被相続人の財産内容が不明な場合は、3か月の期間を延長してもらうことも可能です。また、相続人全員で行う限定承認という手続きもあるので、迷われる場合は専門家に相談してみてください。


2020年2月1日(土)

 

あと半年待って!(チキチキジョニー)

あと半年待って!

<相談内容>
「今の賃貸から引っ越ししたいが、次の部屋が見つかるまで貸してほしい」と言うので、長くても半年程度だと思い、家賃は近場より安い月額5万円で、ヨガ教室に改装予定の1階部分を貸すという口約束をしました。ところが、1年が過ぎても引っ越さず、「この夏、転勤が決まりそうだから、あと半年待ってほしい」と言い出しました。今月中には出ていってほしいのですが、部屋を明け渡してもらえないのでしょうか?

あと半年待って!

【弁護士の見解】

<結論>
強制的に明け渡しを求めることは難しい


<解説>
今回のケースでは、賃貸借契約書は作成しておらず、口約束のみとのことですが、たとえ口約束であっても、「あるものを貸すこと」と、「借りた側が賃料を支払い、契約が終了したら返す」と合意した場合は、賃貸借契約が成立します。つまり、契約書がなくても、賃貸借契約が成立していると考えられます。貸す期間が、せいぜい半年程度だろうと考え、そのあとにヨガ教室を開くつもりでしたが、友人にそのことを知らせておらず、共通認識になっていませんでした。したがって、借地借家法の原則的な規定に基づいて考えることになります。
借地借家法によれば、賃貸人が契約を解約するためには、正当な事由が必要とされます。正当な事由は、賃貸人および賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、それまでの経過、利用状況、建物の現在の状況、立ち退き料が支払われるかなどの、さまざまな事情を考慮して判断されます。
今回のケースの場合、友人から「次が見つかるまで」と言われ、気軽に貸したという経緯があるものの、期間について具体的な協議はなく、家賃も相場よりは安いとはいえ、激安というほどでもありません。
この物件をヨガ教室に使いたいという希望がありますが、友人は追い出されると、新たに住む場所を探さなければならないので、この物件を必要とする事情は友人の方がむしろ重いといえます。これらの事情からすれば、契約を解約する正当な事由が認められない可能性が高く、友人に強制的に明け渡しを求めることは難しいと考えます。

離婚したあとの年金(オール阪神・巨人)

離婚したあとの年金

<相談内容>
35年間、専業主婦として、サラリーマンの夫を支えてきた妻が、3年前に熟年離婚をしました。「そろそろ夫の厚生年金の支給が始まる。私の基礎年金とパート収入だけだと生活が苦しいから、その分が上乗せされると思うと嬉しくて」と期待をしていますが、離婚するときには、夫と何も話し合っていません。「それでも私には夫の厚生年金を分けてもらう権利がある」と言いますが、今からでも分けてもらえるのでしょうか?

離婚したあとの年金

【弁護士の見解】

<結論>
分けてもらえない

<解説>

まず、離婚したときの年金分割制度には、「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。「合意分割」は、共働きでも、会社員や公務員の妻の専業主婦でも、結婚期間全てを対象に、50%を上限に分割割合を決められる制度です。ただし、当事者のあいだで合意が必要です。
これに対し、「3号分割」は、会社員や公務員の妻の専業主婦などの第3号被保険者が、2008年4月以降の結婚期間につき、一律に50%の分割が認められる制度です。
この「3号分割」については、裁判の手続きや、当事者のあいだでの合意は不要で、第3号被保険者が年金事務所に請求すれば分割を受けられますが、2008年4月より前の結婚期間については、合意分割で分割割合を決める必要があります。
そして、「合意分割」も、「3号分割」も、原則として離婚から2年以内に年金事務所に分割を請求しなければなりません。今回の場合、離婚してからすでに3年が経過しているため、もはや年金分割を請求することはできません。


2020年1月25日(土)

 

修理代として渡したのに…(女と男)

修理代として渡したのに…

<相談内容>
友人から借りたパソコンを落として、液晶画面に傷をつけてしまい、修理代として請求された3万円を友人に払いました。ところが3か月経っても画面は修理されておらず、「そのうち新しいパソコンに買い替えることにした。修理代の3万円は、彼女の誕生日プレゼントに使わせてもらった」と言われました。修理代ではなく、別の目的で使われた3万円は返してもらえないのでしょうか?

修理代として渡したのに…

【弁護士の見解】

<結論>
返してもらえない


<解説>
過失により友人のパソコンの液晶画面を傷つけてしまったことから、友人に対して、不法行為に基づく損害賠償義務を負います。物損については、修理しても元に戻せない場合は、パソコンの時価を賠償することになります。また、修理は可能だとしても、その修理費がパソコンの時価を上回る場合は、パソコンの時価を賠償すれば良いと考えられます。「経済的には全損している」と評価されることになります。
今回のように、修理が可能であり、経済的全損にもあたらない場合は、修理費相当額を賠償するのが一般的です。ところが、今回は、修理費をもらいながら、修理をしていないことが問題視されています。いくつかの考え方がありますが、パソコンの液晶画面が傷ついたことは事実であり、このこと自体が、友人のパソコンの所有権を侵害したとものといえ、修理費相当額の損害が発生する、という考え方が主流といえると思います。
この考え方にたつと、修理をするかどうかにかかわらず、友人に対して修理費相当額を賠償する義務を負うため、3万円が修理費として相当である限りは、これを返してもらうことはできません。その結果、受けとった修理費相当額を修理に使うのか、それとも液晶画面が傷ついたまま我慢して使い続ける代わりに、別のことに使うのかは、友人が決められるということになるでしょう。
今回のように過失が明らかで、損害が発生していることが一目瞭然の場合でも、賠償額はケースバイケースとなります。修理費が高額な場合は、その全額の賠償を受けとることができるとは限りませんので、ご注意ください。

スキャンしていた遺言書(オール阪神・巨人)

スキャンしていた遺言書

<相談内容>
仲の悪い3人の息子たちがもめないように、遺言書を書いて、息子たちに見つからないように友人に預かってもらい、妻だけにはそのことを伝えていました。それから3年、妻が遺言書を引き取りに行くと、友人がどこかに失くしてしまったようで、遺言書がありません。ところが、妻は友人に遺言書を預ける前に、こっそりスキャンしてデータをパソコンに残していました。一見、本物と見分けがつかないこの遺言書は有効なのでしょうか?
 

スキャンしていた遺言書

【弁護士の見解】

<結論>
スキャンしたものは、遺言書としては無効


<解説>
遺言については、民法で方式が決められており、それどおりに作成しなければ無効となります。日付と署名を自分で書いて、押印も必要です。この方式を満たしていないと無効になります。今回の相談内容に出てくる遺言は、「自筆証書遺言」にあたります。これは本人が自書したものしか遺言書として認められず、スキャンした複製物では、遺言としての効力は認められないと考えます。
「自筆証書遺言」の原本を紛失しないために「法務局における自筆証書遺言の保管制度」という制度ができ、今年の夏から運用がはじまります。これは、一部の法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度です。遺言書を誰にも分からないように保管していると、秘密は守られますが、どこに保管していたのか分からなくなってしまったり、今回のように紛失してしまう可能性がありますが、それを防ぐことができます。また、預かる際には、遺言の方式が法律に適合しているか、などの確認をしてくれるので、方式の間違いによって無効になるのも防げます。いったん預けた後も、保管の申請を撤回することができます。遺言者が死亡するまでの間は、遺言者しか閲覧できませんので、遺言者が亡くなった後、遺族などは、自分が関わる遺言書があるかを法務局に問い合わせます。そして、遺言書があれば、その画像データを確認したり、その画像データを用いた証明書をもらうことができます。ただし、遺言者が亡くなっても、自動的に相続人に通知がくるわけではなく、相続人から法務局に問い合わせをする必要があります。なので、法務局に遺言を預けた場合は、そのことを親族や近しい人に伝えておくとよいでしょう。
他にもメリットとして、自筆証書遺言は、相続発生後に、家庭裁判所の「検認」という手続をとる必要がありますが、法務局に保管される遺言書については、それが不要になります。保管してもらうのに、手数料はかかりますが、紛失のリスクがなくなるなど、自筆証書遺言を使いやすくする制度といえるでしょう。


2020年1月18日(土)

 

橋の修理費は誰が?(幸助・福助)

橋の修理費は誰が?

<相談内容>
父親から相続した土地には、祖父が作った橋があります。畑に行くために作った橋ですが、畑の先には5世帯ほどの集落があり、町に出かけるときなど、便利なので、みんながその橋を利用していました。父親や祖父も、橋の利用を認めています。先日、橋の利用者から「橋が傷んでいて危ないので、直してもらいたい」と言われました。修理には、かなりの費用がかかります。利用者にもいくらか払ってもらえないのでしょうか?

橋の修理費は誰が?

【弁護士の見解】

<結論>
払ってもらえる


<解説>
まず、相談内容に出てきた事情だけでは判断できませんが、畑の先にある5世帯ほどの方が、おじいさんの作った橋を渡っていたことは、おじいさんの単なる好意、親切心に基づくものに過ぎず、法的な通行権とは限りません。もし、橋を通ることについて法的な通行権がない場合には、利用者に橋を通らせないこともできます。逆に、橋を通るのなら、橋の修理費を払うように要求することができます。また、橋を通ることが法的な権利だったとしても、本来は、通行の対価、すなわち通行料をいくらかもらうことができます。
しかも、橋のような工作物の所有者は、橋が原因で他人に怪我などの損害を与えた場合には、土地工作物責任という責任を負う関係上、橋を通行させる以上は、橋を安全なものにしないといけないですし、橋の利用者が修理費も負担せずに、ただで橋を通り続けるというのは不公平です。通行する方も、それによって利益を得ているのですから、橋を通るのであれば、公平の観点から、通行料もしくは橋の維持管理に必要な費用を負担しないといけません。
したがって、利用者が橋を通ることに通行権が認められない場合はもちろん、通行権が認められた場合でも、修理費をいくらか払ってもらえます。

遺言作成後の離婚(ザ・ぼんち)

遺言作成後の離婚

<相談内容>
父親が亡くなり、遺言書が見つかりました。そこには「預貯金は子どもたちに譲る。マンションは幸子に譲る」と書かれていました。ところが父は、幸子さんとは3年前に離婚しています。2年前に再婚した妻が「今の妻は私!書き直した遺言書があるはず」と言うので探しましたが見つかりません。遺言書どおり、離婚した妻はマンションをもらえるのでしょうか?

遺言作成後の離婚

【弁護士の見解】

<結論>
見解が分かれるところだが、もらえる


<解説>
今回のケースは、遺言の解釈が問題となる事案です。裁判所は、遺言書の解釈に関して、使用された文言を形式的に判断するのではなく、遺言者の真意を探求して考えるべきとしています。今回の遺言は、子どもたちには預貯金を譲り、幸子さんにはマンションを譲るという条項です。この幸子さんというのは、当時の奥さんでした。そのため、この遺言書の解釈として、亡くなった後の遺産分割の方法を指定したものであり、離婚して妻ではなくなった、すなわち相続人でなくなれば、効力を失うという考え方も一理あるとは思います。
しかし、この遺言からは、そこまで読み取れないと考えます。遺言書を作成した当時の意思とすれば、あくまで目の前にいる奥さんにマンションを譲るというもので、離婚したらマンションを譲ることをやめる、ということまでは考えていなかったはずです。
したがって、離婚後のことまで具体的に考えていなかった人が作成した遺言書なので、離婚したら譲るのをやめるという意思まで想像して解釈することには、無理があると考えます。実際、3年前に離婚して、新しい女性と再婚してから2年のあいだに遺言書を書き直せるはずですが、書き直していませんでした。
したがって、今回の遺言は、幸子さんが妻であることを前提にしたものとまでは解釈できず、幸子さんは遺言書どおり、マンションをもらえると考えます。


2020年1月11日(土)

 

モダンな祖父の宣伝写真(ギャロップ)

モダンな祖父の宣伝写真
<相談内容>
数年前、祖父は美容室から「宣伝写真のモデルになってほしい」と頼まれたので、期限を決めずに無償で引き受けました。子供や孫は、その写真が近所で噂になって恥ずかしかったので、使用をやめてもらいたいと思っていました。先日、祖父が亡くなったので、美容室のオーナーに「店の宣伝に祖父の写真を使うのをやめてほしい」と頼むと、「店が大繁盛しているのは、あの写真のおかげ。おじいさんも喜んでくれていたし、使用期限も決めていなかった。このまま使わせてほしい」と言います。写真の使用をやめてもらえないのでしょうか?
モダンな祖父の宣伝写真

【弁護士の見解】

<結論>
やめてもらえない


<解説>
今回のケースは、肖像権の問題です。もし、自らの肖像権の権利者であるおじいさんがご存命で、おじいさん自身が写真を使わないでくれと申し出れば、特に使用期間を定めていなかった今回の場合、あらかじめ一定の猶予を与えることで、写真の使用をやめてもらうことができました。
ところが権利者のおじいさんは、写真が使われるのを喜んだまま、すでに亡くなっています。そのため、肖像権が相続されるかどうかで、今回の結論が左右されることになります。
しかし、肖像権は一身専属的な権利と呼ばれ、元の権利者のみに帰属し、相続人に引き継がれません。通常の相続で想定される預金や不動産といった財産的な権利とは、この点で大きく異なります。なお、肖像権と少し似た権利として、有名人の写真や氏名に関する財産的側面に着目したパブリシティ権というのがあります。今回のケースも、パブリシティ権との関係を気にされるかもしれません。しかし、一般私人にパブリシティ権は通常認められませんし、仮に認められたとしても、パブリシティ権には人格的な側面もある以上、相続されないと考えられます。したがって、今回の遺族は、写真の使用をやめてもらえません。
もし、今回の写真が、客観的にも遺族の名誉が侵害されるような、ひどいものであれば、遺族自身の名誉棄損などの侵害を理由に、使用の中止を求めることができる場合もあると思います。

相続放棄された家!?(海原はるか・かなた)

相続放棄された家!?

<相談内容>
30年ほど前から貸している土地に、家を建てて住んでいた方が、亡くなりました。しばらくして、相続人である長男が「相続人全員で相続放棄の手続きをしたので、建てた家の処理は地主のあなたに任せたい」と言ってきました。「契約では、退去する場合は更地にする、としていたはず」と言いましたが、取り合ってもらえません。更地にしてもらうことはできないのでしょうか?

相続放棄された家!?

【弁護士の見解】

<結論>
更地にしてもらうことはできない


<解説>
今回の土地の賃貸借契約書では、契約終了時に借主が建物を収去すべきとの定めがあったようですが、もし、契約書にそのような定めがなくても、本来、賃貸借契約の本質から、契約終了時の借主というのは、自ら建物を収去して更地にしないといけないはずです。そして、そのような義務を負う借主が亡くなっても、相続というのは、亡くなった人の権利義務の一切を引き継ぐものですから、本来であれば、借主の長男らが、建物の収去義務を負うはずですが、今回のケースでは、長男をはじめ相続人の全員が、相続を放棄してしまっています。そうすると、長男らは財産を相続できないものの、借主の義務を承継しないので、今回の建物の収去義務も免れることになります。
しかし、地主が更地にすることもできません。建物が地主の所有ではないので、勝手に壊せないのです。このような場合、少し費用がかかりますが、家庭裁判所に財産管理人を選任してもらって、財産管理人と相談しながら建物の収去を行うことになります。
よって、長男らに更地にしてもらうことはできません。ただし、相続放棄した相続人であっても、相続財産管理人が遺産を管理できる準備が整うまでは、遺産を管理する責任を負い続けるので注意してください。


2020年1月4日(土)

 

道に迷った初日の出(学天即)

道に迷った初日の出

<相談内容>
撮影が趣味の雅美さんは、友人から「実家の近くが絶景スポットなので、初日の出を一緒に見ないか」と誘われ、友人の案内で初日の出を撮影しに行くことになり、大晦日はホテルに泊まりました。ところが、当日、友人が道に迷って肝心の初日の出の時間に間に合わず、初日の出を撮影することができませんでした。正月料金で高かったホテル代を、友人にいくらか払ってもらえないのでしょうか?

道に迷った初日の出

【弁護士の見解】

<結論>
払ってもらえる


<解説>
雅美さんと友人の間には、友人の案内で雅美さんが初日の出を撮影しに行くという内容の委任に準じた契約が成立しています。この契約の重要な部分は、友人が雅美さんを絶景スポットに「初日の出に間に合うように連れていく」ということに尽きます。つまり、雅美さんを誘った友人は、契約の本来の趣旨に従って道筋を間違えないように注意を払って連れていくという契約上の義務を負っているわけです。
しかし友人は、このような契約上の注意義務を怠った結果、初日の出に間に合わなかったので、無償の契約であっても債務不履行責任を負い、雅美さんに生じた損害を賠償しなければいけません。雅美さんは、初日の出を撮影する目的のためにホテルを予約していたのに、結局、宿泊の意味がなくなってしまいました。そして雅美さんに落ち度がない以上、通常、生ずべき損害として友人からホテル代に相当する額の損害賠償をしてもらえるということになります。

まだ合格していなかったの?(横山ひろし・春けいこ)

まだ合格していなかったの?

<相談内容>
会計事務所で働きながら、会計士の資格を取得するために猛勉強しています。息抜きで友達に誘われたパーティーに参加したときに知り合った女性から、「会計士さんなの?」と聞かれ、そのときは会計士の試験に合格していませんでしたが、つい「ええまぁ」と答えてしまいました。以来、意気投合した2人はそのまま付き合って婚約し、結婚式場も予約。みごと会計士の試験にも合格しました。しかし、そのことを知った女性は「私を騙していたなんて、もう信じることができない」と婚約を解消。結婚式場のキャンセル代を払ってほしいと言うと「職業を詐称していたのはそっちの責任」と言います。払ってもらうことはできないのでしょうか。

まだ合格していなかったの?

【弁護士の見解】

<結論>
払ってもらえる


<解説>
今回のポイントは婚約解消の理由が、正当理由にあたるかどうかです。
一般に、性格の不一致や婚姻について親の同意が得られないなどの理由では、婚約解消に正当な理由がないと判断されています。しかし学歴や職歴を詐称して婚約し、詐称がばれてしまったとき、信頼関係がこわれたことで、婚約を破棄する正当な理由があると判断されることがあります。その場合、詐称された人は詐称した人に対し、債務不履行や不法行為を理由に慰謝料を含む損害賠償の請求が可能となります。
今回の場合、女性は結婚相手の仕事を重視していたようですが、(1)現実に会計事務所に勤務しており、(2)積極的に虚偽の事実を述べたわけではなく、(3)婚約中に公認会計士の試験に合格している事実があり、自分の目標にむかって誠実に取り組んでいたといえます。
これらの事実は、2人が将来夫婦として生活をしていく大きな妨げになったり、2人のあいだの信頼関係が客観的に見て破壊されたとまではいえないと考えます。
そうすると、女性による婚約解消には正当理由があるとは言えず、結婚式場のキャンセル代について、婚約解消と相当な因果関係のある損害として支払ってもらえるという結論になります。


2019年12月28日(土)

 

ウサギとカメの兄弟(スーパーマラドーナ)

ウサギとカメの兄弟

<相談内容>
幼いころから何でも器用にこなす兄と、ノロマで不器用な弟。2人はまさに「ウサギとカメ」のような関係でした。それから数十年、不器用なりに努力をした弟は、会社の課長に昇進し、婚約者もできました、一方、華々しく作家デビューをした兄は、鳴かず飛ばずの状態で、体調をくずすありさまです。「お前だけが頼りなんだ」と兄が弟に経済的な支援を求めてきました。兄弟でも扶養する義務はあるのでしょうか?

ウサギとカメの兄弟

【弁護士の見解】

<結論>
兄弟にも扶養義務はある


<解説>
「扶養」とは、自分の力で生活することができない人に、経済的な援助を与えることをいいます。民法は、自分からみて、両親や祖父母、子どもや孫などの「直系血族」、そして「兄弟姉妹」について、互いに扶養する義務があると規定しています。
したがって、弟さんにはお兄さんを扶養する義務があります。扶養の程度については、夫婦間や、親と未成熟の子の間では、自分の生活と同程度の扶養が求められますが、それ以外の場合は、自分の生活を犠牲にしない程度で、困っている人が最低限度の生活ができるために扶養すれば良いと考えられています。今回は兄弟間の扶養なので、お兄さんに自分と同程度の生活をさせる義務まではありません。自分の生活を犠牲にしない範囲で、できる援助をすれば、充分に義務を果たすといえます。
 

隠し口座が離婚後に判明!(オール阪神・巨人)

隠し口座が離婚後に判明!

<相談内容>
定年退職をして田舎暮らしを望む夫と離婚することになり、財産を均等に分けました。それから3年。新居を訪ねると、駐車場にはスポーツカー、リビングには高そうな家具や家電製品がズラリ。問い詰めると「君との田舎暮らしに備えて、ネットバンクに貯金していた。それを君が断ったのだから、大目に見てくれ」と白状しました。今からでも隠し口座の財産を分けてもらえないのでしょうか?

隠し口座が離婚後に判明!

【弁護士の見解】

<結論>
財産分与としてではないが、分けてもらえる


<解説>
離婚時に、夫婦の財産を分けることを「財産分与」といいます。財産分与をした後に見つかった財産についても、当初の財産分与の対象ではなかったので、新たに請求することが可能です。
しかし、民法は、離婚の成立から2年を経過すれば、財産分与の請求ができないと定めています。この2年間という期間が定められているのは、離婚後の財産関係をできるだけ速やかに確定させようとする理由からです。
ただし、今回、夫が財産を隠していた行為は婚姻中のことであり、別れた妻の財産権を侵害したことになります。そこで、2年を経過していても、不法行為に基づく損害賠償請求や、不当利得返還請求権を行使することができます。例えば、今回の夫婦が別居をせずに離婚した際の隠し口座の財産が1000万円、現在の残高が100万円だったとします。この場合でも、1000万円が対象となりますので、妻は50万円ではなく、1000万円の半分の500万円を請求できることになります。「もう使ってしまった」は通じません。払ってもらえなければ、裁判を起こすことになります。
したがって、財産分与としての請求はできませんが、損害賠償請求をすることで、結果的に隠し口座のお金を分けてもらえるということになります。


2019年12月21日(土)

 

安心させるためのウソ(令和喜多みな実)

安心させるためのウソ

<相談内容>
「早く結婚をして孫の顔を見せてくれ」と、いつも口うるさく言う母を安心させるために、同僚の妻に彼女役をお願いし、謝礼として、高級レストランのディナー券を事前に渡しました。「結婚を前提にお付き合いしている」と彼女を紹介すると母は大喜び。ところが、母が席をはずした隙に、彼女が「こんなウソは心苦しい」と言った言葉を、母がこっそり聞いてしまい、作戦は失敗してしまいました。先に渡したディナー券は返してもらえないのでしょうか?

安心させるためのウソ

【弁護士の見解】

<結論>
返してもらえない


<解説>
今回の「母を騙して一芝居打つ」という契約を、法律的にどう考えるかが問題となります。そもそも、人を騙す内容の契約は、公序良俗に反して無効になります。しかし、今回は、息子を心配する母を安心させようと計画したものであり、ウソをついたとはいえ、完全に悪意がある行為とまでは言い切れないと思います。そうすると、倫理的にも道徳的にも、法律に反するような行為とまでは認められず、彼女を演じてもらう契約自体は無効にならないと考えます。
同僚の妻が発したひと言で、ウソがばれてしまいましたが、彼女役を演じてもらうことが今回の契約内容であり、その謝礼として事前にディナー券を渡したことで、この契約は完結しています。なので、計画が成功しようが、失敗しようが、今回の契約には影響を及ぼさないということになります。したがって、ディナー券を返してもらうことはできません。

恋より仕事!(オール阪神・巨人)

恋より仕事!

<相談内容>
結婚しても仕事を続ける約束をした彼と交際をしており、彼には返済期日を決めずに、20万円を貸しています。ところが、彼が両親から「結婚相手には仕事を辞めて家庭に入ってもらう」と言われ、彼も「やっぱりその方がいい」と言い出しました。「約束と違うので、もう彼とは結婚できない!」と結婚は破談になりました。破談を理由に、今すぐ20万円を返してもらえないのでしょうか?

恋より仕事!

【弁護士の見解】

<結論>
すぐには返してもらえない


<解説>
今回のように、お金の貸し借りで返済期日を定めていなかった場合、貸した人が返してほしいときに、すぐに返してもらえるかが問題です。この場合、民法は、相当の期間を定めて、返還の催告をすることができると定めています。つまり、その定めた期間が経過すれば、返済を求めることができるということです。
もっとも、個別、特殊な事情があれば、すぐに返してもらえる場合もありますが、今回のように、結婚を前提に交際していた2人の間に、「破談になったらすぐにお金を返す」などの約束があったとは考えにくいと思います。したがって、すぐには返してもらえず、相当の期間を定めて返してもらうしかないということになります。
「相当の期間」といっても、民法では具体的な日数までは明記されていません。取引上、一般に必要とされる期間がそれにあたると解釈されており、具体的には金額や両者の間柄など、様々な事情を考慮して判断されます。
今回のケースで考えると、1週間から2週間くらいの期間が妥当ではないかと思います。
例えば、いつでも返せるような少額の場合や、過去において、返還請求があればすぐに返していたような事情がある場合には、返還期限を定めていない場合でも、すぐに返還を求めることができます、個別の事情により例外もあることを知っておいてください。


2019年12月14日(土)

 

修理代も払うの?(チキチキジョニー)

修理代も払うの?

<相談内容>
半年後のボーナスで返すという約束で、友人から10万円を借りました。友人から「返せないときは、君が持っているアンティークの腕時計を渡してほしい」と言われたので、20万円の価値がある時計でしたが、承諾しました。ところが、ボーナスが予定よりも少なくて、返済できなかったため、仕方なく腕時計を渡すことにしましたが、渡す直前に腕時計が壊れてしまいました。友人から「修理して渡してほしい」と言われたので調べると、修理に10万円かかります。借りたのは10万円ですが、20万円の時計をさらに10万円出して修理しないといけないのでしょうか?

修理代も払うの?

【弁護士の見解】

<結論>
修理しなくてもよい


<解説>
友人から借りた10万円を返せないとき、友人に特定された腕時計を渡す約束は、「代物弁済の予約」と考えられます。つまり、友人は10万円の賃金債権を担保するため、万が一、借金が返済されないときのためにこの約束をしたと考えられます。
そうすると、約束の10万円を返済できないときは、担保の実行として腕時計を友人に引き渡さなければいけません。ところが、古い腕時計だったため、引き渡す前に自然に壊れたようですから、壊れたことについて注意義務違反があったとまでは言えないと考えられます。
その場合、そのまま腕時計を渡せばいいのですが、担保という趣旨から、実務上は、債権額と代わりに渡す物の価値との間に、合理的な釣り合いが必要であり、代わりの物の価値が債権額を超えていた場合は、超過分を精算して債務者に返さなければならないという考え方が定着しています。
この腕時計は、そもそもの価値が20万円だったわけですから、本来なら、そのうち10万円は友人が精算しなければならないわけです。そうすると、現状のままで腕時計を引き渡し、友人が10万円を負担したとしても、差し引いた10万円の価値は取得できるわけですから、担保の実行としての目的は達することになりますので、修理する必要はないと考えます。

全額寄付するなんて…(酒井くにお・とおる)

全額寄付するなんて…

<相談内容>
先日、兄が亡くなりました。両親もすでに他界していたため、独身だった兄の相続人は弟2人だけです。遺産は一戸建ての土地家屋と、預貯金の2000万円ですが、遺言書には「財産は全て寄付する」と書かれていました。寄付する先も決めてあって、先方も了承済みです。これを知った弟が「兄弟は親族だから遺産のいくらかはもらえるはず」と言います。兄の遺産をいくらかでも、もらえないのでしょうか?

全額寄付するなんて…

【弁護士の見解】

<結論>
もらえない


<解説>
自分が有する財産は、自由に処分できるのが原則です。そして、遺言書は、遺言者の最終的な意思を尊重する制度ですから、兄が自分の有する財産の行き先を遺言で自由に決めておくことができます。一方、相続人の相続に対する期待や生活利益を確保させる意味合いから、一定の相続財産について、相続人にとどめる、つまり、遺留することが認められています。これが遺留分権といわれる権利です。
しかし、相続人であっても、民法上、遺留分権が認められていない相続人がいます。それが被相続人、つまり亡くなった人の兄弟姉妹です。その理由は、法廷相続において兄弟姉妹は、被相続人に子どもや親がいない場合に、初めて相続人になるという順位ですので、亡くなった人の関係でいえば、いわば「遠い存在」になっているからです。
このように兄弟姉妹の場合は、相続への期待や生活利益の確保としての必要性が小さいと考えられるわけです。したがって兄が自分の全財産を寄付するという遺言であれば、兄弟姉妹は財産をもらうことはできないということになります。


2019年12月7日(土)

 

10年前のガラス代(テンダラー)

10年前のガラス代

<相談内容>
10年前、高校生のときに、絵画教室の窓ガラスを不注意で割ってしまい、両親と謝りに行きました。先生から「修理代は5万円かかる。10年後、立派な社会人になって払ってほしい」と言われたので両親の前で約束しました。10年後、修理代の5万円を払いに行くと、先生は亡くなっており、遺族から「今、元通りに修理すると10万円かかる」と言われました。10万円を払わないといけないのでしょうか?

10年前のガラス代

【弁護士の見解】

<結論>
10万円を払わず、5万円を払えばよい


<解説>
不注意で絵画教室の窓ガラスを割ったわけですが、未成年者とはいえ不法行為の責任能力が認められる高校生ですので、損害賠償責任を負うことになります。そして、先生が「修理代の5万円を10年後に払ってくれ」と言った内容について、両親も同席のうえ、修理代に相当する賠償金を支払う旨の合意をしました。つまり、親権者の同意のもとで、和解契約いわゆる「示談」が有効に成立したと解されます。賠償金の支払いは10年後に猶予されたので、支払い時期は10年後になります。
ところが10年後、修理代が10万円になっていたということですが、先生との合意では、「10年後にその時点での修理に必要な金額を支払う」という内容ではなく、既に5万円という確定した金額で合意しています。
したがって、現時点において修理費が10万円になっていたとしても、約束していた確定額の5万円を支払えばよいと考えます。

乾杯で割れたグラス(アルミカン)

乾杯で割れたグラス

<相談内容>
高級レストランの特別室で、結婚祝賀パーティーを開きました。乾杯をした拍子にワイングラスが割れてしまい、レストランの店長から「2万円のワイングラス代を弁償してもらいます」と言われました。乾杯しただけで割れてしまったのに、弁償しないといけないのでしょうか?
 

乾杯で割れたグラス

【弁護士の見解】

<結論>
弁償しなければいけない、ただし減額される

<解説>

薄く作られているワイングラスは、乾杯の際にグラス同士を接触させるとしても、グラスのお腹あたりで軽く触れる程度にするのが好ましいとされています。今回、割れてしまったのは、乾杯する際に、どうやら力を入れ過ぎて薄い淵の部分を接触させたためと思われます。そうすると、一方的な不注意によってワイングラスが割れたと考えられ、不法行為責任に基づき、ワイングラス代に相当する額を賠償しなければなりません。
一方、レストラン側も、お皿やグラスは消耗品であり、破損することはある程度、織り込み済みのはずです。また、ワイングラスが高級品であったのであれば、その扱いについて、お客さんにそれなりの注意を促しておくべきでした。
したがって、損害賠償をしなければなりませんが、レストラン側のこれらの事情も勘案し、損害の公平な分担を考えると、過失相殺の法理によって相当の減額が認められるものと考えます。

店名を変えたら買い取り?(海原はるか・かなた)

店名を変えたら買い取り?

<相談内容>
勤め先の写真店の師匠が亡くなりました。遺言書には「写真店は機材を含めて譲る。ただし店名はそのままにしてほしい」と書かれていました。遺言書どおりに写真店を継ぎ、お店の家賃も毎月、師匠の家族に支払っていました。5年後、店名を変えることにすると、師匠の家族から「店名を変えたのなら父が使っていた機材は全部買い取ってほしい」と言われました。買い取らないといけないのでしょうか?

店名を変えたら買い取り?

【弁護士の見解】

<結論>
買い取らなくてよい

<解説>

遺言書によって、自分の財産を他に贈与することを遺贈と言い、その際、譲受人に一定の義務を負わせる遺贈を負担付遺贈と言います。負担付遺贈を受けた人が、負担する義務を果たさない場合、相続人は、相当の期間を定めて義務を履行するように催告し、その間に履行がなされないときは、家庭裁判所に対して負担付遺贈の遺言を取り消すように請求できます。
今回の場合は、遺言の内容を守って、支障なく写真店を運営し、賃料をきちんと払って維持しています。そして、5年間、店名を変えていなかったことを考えると、相続人が遺言の取り消しを求めるほどの重大な義務違反とは言えない可能性が高いと考えます。
ただ、いずれにしても、相続人が、撮影機材の買い取りを求めることはできません。


2019年11月30日(土)

 

10年前のガラス代(テンダラー)

中学生の頃の約束?
<相談内容>
平井さんは、中学校時代のバレーボール部の集まりがあったときに、「30年後にボーナスの金額を比べて、一番多くもらった人が、一番少ない人に『夫婦で行くハワイ旅行』をプレゼントしよう」と、中学校卒業の時に交わした約束を思い出しました。集まった5人がボーナスの金額を比べると、平井さんが一番少なかったのですが、一番多かった友人が「未成年の時に交わした約束だし無効だ」と言います。この約束は有効なのでしょうか?
中学生の頃の約束?

【弁護士の見解】

<結論>
無効を主張することができる


<解説>
約束をしたのは中学3年生のときであり、このような、未成年のときにした約束は、本来、取り消すことができます。しかし、取消権には期間の制限があり、追認をすることができる成人になってから5年経ったとき、または行為のとき、つまり約束したときから、20年が経過したときに時効消滅します。今回は取消権を行使できる期間が過ぎてしまっていることから、取り消すことはできません。
もっとも、本件の約束は、一番稼いでいる人が一番稼ぎの少ない人にハワイ旅行をプレゼントするという贈与契約であり、かつ、書面は作成してないことから、書面によらない贈与として、履行前であれば撤回が可能です。
したがって、贈与契約を撤回することにより、ハワイ旅行をプレゼントする必要はありません。今回のケースは、中学生が30年も先のことを約束したというもので、そもそも、このような約束自体、みんな本気にしていなかったとも考えられ、無効である可能性もあるのではないのでしょうか。
今回は、約束時の有効性に疑問がある事例でしたが、一般の契約の場合、未成年者による契約というだけでは無効にできず、取り消すという意思表示が必要です。この取消権も成人してから5年で時効にかかりますので、注意してください。

別居中に売られた宝物(三吾・美ユル)

別居中に売られた宝物
<相談内容>
1年ほど前から妻と別居をし、今は実家住まいをしています。最近、別れることになり、2人で住んでいた部屋に荷物を取りに行きましたが、結婚後に小遣いで買い集めて、だいじにしていた怪獣のフィギュアがありません。妻に聞くと「調べても価値がなかったから捨てた」と言います。価値がなくても、思い出が詰まっているコレクションなので、損害分として慰謝料をもらえないのでしょうか?
別居中に売られた宝物

【弁護士の見解】

<結論>
慰謝料をもらえる可能性は低い


<解説>
このコレクションは婚姻中に小遣いで購入されたものであり、夫の所有物と評価できると考えられます。コレクションが段ボール箱に入っているなら、それごと夫に送るという方法があったのに、あえて無断で処分してしまった行為は不法行為に当たりうるでしょう。この場合、通常はその財産的価値を賠償すれば足りると言えます。
このほかに慰謝料が認められるのは、そのような精神的苦痛が存在すると社会通念上認められる事情がある場合に限られます。場面は異なりますが、相続に関連して、仏壇、位牌、及び金銭的に評価できないアルバムなどの思い出の品を無断で処分したことにつき慰謝料を認めた裁判例はあります。しかし、今回のコレクションは再度集めることが可能とも思われ、位牌やアルバムと同等に考えるべきかどうかは、評価が分かれるでしょう。
また、夫はこれを1年間も引き取らないままだったことも踏まえると、コレクションへの思い入れも判断しづらいというのが率直な印象です。
したがって、事情を踏まえると、慰謝料の支払いが認められる可能性は低いと考えます。


2019年11月23日(土)

 

倒された石灯籠(学天即)

倒された石灯籠
<相談内容>
30万円の高価な自転車で通学をしている和也さんは、大学の近くに実家がある友人に許可をもらい、庭の石灯籠にチェーンのついた鍵で自転車をくくりつけて停めていました。ところが1週間前、朝まで停めていたときに、石灯籠が壊され自転車が盗まれました。友人から、壊された石灯籠の修理代を払ってほしいと言われましたが、払わないといけないのでしょうか。
倒された石灯籠

【弁護士の見解】

<結論>
修理費用を支払う法的な責任はない


<解説>
まず、灯籠に自転車を固定することについては、友人の許可を得ています。灯籠の所有者はおそらく友人のお父さんですから、友人の許可がただちに、所有者の許可ということになりませんが、日常的に灯籠に自転車を固定していたので、所有者であるお父さんもこれを知りつつ黙認していたと思われます。つまり、所有者の許可を得て固定していたと捉えることができます。したがって、灯籠に自転車を固定していたこと自体が不法行為や債務不履行であるとは言えません。
確かに、石灯籠にチェーンをくくりつけていなければ、石灯籠を壊されることもありませんでしたが、法律的な責任を考える上では、その行為から通常、その結果が生じるといえるかどうかが重要となります。今回の相談では、自転車のチェーンをくくりつけても問題ないと双方が思っており、敷地内の石灯籠を壊してまで自転車を盗む者がいることは予想できず、防ぐことは難しかったと言えるでしょう。
したがって、とるべき責任がなく、損害賠償する義務はないと考えます。

母から借りたリフォーム費用(酒井くにお・とおる)

母から借りたリフォーム費用
<相談内容>
三兄弟の長男が3年前、同居している母から150万円を借りて家をリフォームしました。しかし先月、母が亡くなり、借りたお金がまだ返済されていないことがわかりました。返済期限は借りた時から1年後でしたが、そのままになっていたようです。次男と三男は、長男が借りた150万円を相続財産に含めて分けてほしいと思っていますが、分けてもらえるのでしょうか。
母から借りたリフォーム費用

【弁護士の見解】

<結論>
50万円ずつ払ってもらえる


<解説>
母は長男に対して、150万円の貸金返還請求権を持っていました。これは債権ですが、このような債権も相続財産になります。そして、金銭債権は、金額で分けることができるので、相続開始により、法定相続分に従って相続人が分割して相続します。
つまり、今回でいうと、150万円の貸金返還請求権は、3人の子が50万円ずつ取得することになります。したがって、次男と三男は、それぞれ長男に対し、50万円を返すよう請求することができます。
長男が相続した50万円の貸金返還請求権は、相続により、債務者である長男自身が債権者の立場を相続してしまったため、長男は債務者でもあり債権者でもあるという立場におかれます。
このように、債権者と債務者が同一になった場合、自分で自分に50万円を返すというのは無意味なため、債権・債務は消滅します。これを「混同」と言います。したがって、50万円について、長男の返済義務は消滅します。
結果として、次男と三男は、長男から50万円ずつもらえることになります。


2019年11月16日(土)

 

ひとり歩きしたキャラクター(なすなかにし)

ひとり歩きしたキャラクター
<相談内容>
学生時代に趣味で描いたキャラクターを、会社の社長が「個性的で、独創性がある!我が社のマスコットキャラクターにしよう」と言うので承諾しました。大評判になったので、社長は「グッズにして売り出そう」と言い出しましたが、「会社がグッズを売って儲けるならデザイン料をもらえないのだろうか」と思っています。デザイン料はもらえないのでしょうか?
ひとり歩きしたキャラクター

【弁護士の見解】

<結論>
もらえる


<解説>
今回は著作権法の問題ですが、学生時代に描いたキャラクターが著作権法により保護されるには、そのキャラクターの絵に創作性が認められることが必要です。今回の場合、独特の表現がなされているようですので、今回のキャラクターは著作物と認められると考えます。
問題は、会社のマスコットキャラクターに用いることを承諾したことで、販売用のグッズに無償で使うことまで了承したと言えるかです。会社のマスコットとして使用すると聞いてイメージするのは、おそらく会社のパンフレットや名刺のマークなどに用いる程度のことだと思います。そうすると、会社が販売して利益を得ることができるグッズに、キャラクターを使用するのは、キャラクターの使用方法に大きく開きがあり、グッズに無償で使用することまで了承していたと評価するのは難しいと思います。
著作権というのは、きちんと特許庁に登録を行う特許権に比べると、権利の存在、範囲について不明確なところがある権利です。そのためきちんと書面で、そのあたりを定めておかないと、今回の相談のようになってしまいがちです。
社長さんも、販売用グッズに無償で使用できることを明確にする契約書等を交わしていたわけではありません。よって、今回のキャラクターを販売用のグッズに使用することを拒むことができ、使用するなら一定の使用料を払うよう求めることができます。

払われない養育費(オール阪神・巨人)

払われない養育費
<相談内容>
離婚調停で、夫が妻に養育費として月々7万円を支払うことになりました。夫は最初の2~3か月は支払ってくれましたが、「振り込むのを忘れた」、「もう少し待ってくれ」と言って養育費を1年近く払ってくれません。何か事情があるのかと思い、夫の同僚に給料が下がったか聞くと、前よりも、多くもらっているはずだと言います。夫が払おうとしない養育費を払ってもらう方法はないのでしょうか?
払われない養育費

【弁護士の見解】

<結論>
払ってもらう方法はある


<解説>
今回のポイントは妻と夫との養育費の取り決めが、家庭裁判所の調停で決めたものによる点です。調停手続きで、養育費の取り決めをした場合、調停調書という書類を作ってもらえます。この調停調書の特徴として、相手が約束通り養育費を支払わない場合に、調停調書に基づいて裁判所に、相手の財産に対して差し押さえなどの強制執行を行ってもらうことが可能です。
このように、家庭裁判所での審判や、公証役場で強制執行できることの約束を付けた公正証書がある場合のほか、通常の裁判所手続きにおいて得られた判決や和解調書などがある場合も、強制執行の申し立てが可能です。
差し押さえを行う財産としては、夫の預金口座でも構いませんし、妻は夫の勤務先を把握していますので、夫の毎月の給料を差し押さえることも可能です。養育費などの扶養義務に基づく債権で、給料を差し押さえる場合は上限があり、給与の手取り額が月額66万円以下であれば、手取り額の2分の1までしか差し押さえできません。
もし勤務先や預金口座が分からない場合だと、せっかくの強制執行ができる調停調書などがあっても、実効性には若干疑問がありました。そこで、今年の5月の国会で民事執行法の改正が決まりました。
調停調書や判決をとっている債権者の申し立てにより、裁判所が相手を呼び出し、どんな財産があるかを説明させることができる「財産開示手続き」が見直されました。相手が財産開示手続きに出頭しなかった場合や、虚偽の説明をした場合には、懲役や罰金などの刑事罰を課すことが可能となりました。また、調停調書や判決だけでなく、公正証書で金銭の支払いを約束した場合にも、この財産開示手続きを利用できるようになります。判明している財産に強制執行しても、全額の弁済が得られないような状況であるときには、裁判所が、金融機関から相手の財産に関する情報を集めることが可能となりました。さらに、養育費や、生命身体の侵害に関する損害賠償請求権の場合に限られますが、市町村などを通じて、相手の給料に関する情報も集めることができるようになります。これらは、遅くとも来年の5月までには施行される予定です。
したがって、夫が払おうとしなくても、これらのように、給料を差し押さえるなどして、養育費をもらう方法があるということになります。


2019年11月9日(土)

 

昨日のお刺身(シンクタンク)

昨日のお刺身
<相談内容>
職場の控室に、紙袋に入ったお刺身が置いてありました。同僚の忘れ物だと思い、「このままではお刺身が傷んでしまう」と事務所の冷蔵庫に保管しました。次の日、「忘れて帰ったお刺身を冷蔵庫に入れておいた」と同僚に伝えると「私じゃない」と言います。それを聞いたもう一人の同僚が「持って行ったのはあなたなの?帰る間際に打ち合せをして戻ったら、紙袋がなくなっていたのよ。おかげでお刺身を2回買うことになったから弁償して!」と言います。弁償しないといけないのでしょうか。
昨日のお刺身

【弁護士の見解】

<結論>
刺身代は弁償する


<解説>
結論を分けるポイントは、刺身を冷蔵庫に入れた行為が「緊急事務管理」として、救済されるかです。
「緊急事務管理」とは、「事務管理」の1つです。この事務管理は(1)本来は他人の事柄で、(2)代わりに行う義務、権利もないのに(3)他人のために、その事柄を処理するときに成立します。要は、事務管理は勝手に行われた一種の「おせっかい」なのですが、民法は、これに一定の権利義務や効果を与えています。そして、身体、名誉又は財産に対して差し迫った危険を免れるために行った事務管理の場合を「緊急事務管理」と呼び、誤ってその人に損害を与えてしまっても、悪意または重い過失がない限り、責任を負わないようになっています。
今回の刺身を買った同僚は、しばらく置いていただけです。なので、勝手に冷蔵庫に入れた点で過失があり、緊急事務管理が成立しなければ、刺身代について賠償義務を負います。
そこで刺身が傷んでしまうなどの差し迫った危険があったかどうかが問題となりますが、今回の場合、室内で少しの時間置いていたにすぎないようですので、あわてて冷蔵庫に入れないといけないような「差し迫った危険」はありませんでした。
したがって、緊急事務管理も成立しませんので、刺身代を弁償しないといけません。

15年前の贈与(オール阪神・巨人)

15年前の贈与
<相談内容>
亡くなった母の遺産を兄妹で相続することになりました。兄は「財産は実家しかない。土地家屋の評価額は3000万円なので、売って1500万円ずつ分けよう」と言いますが、妹は「兄さんは15年前に母から1000万円を生前贈与してもらったから、その分を差し引いて」と主張します。兄の相続分から、生前贈与された分を差し引くことはできるのでしょうか。
15年前の贈与

【弁護士の見解】

<結論>
差し引くことができる


<解説>
民法では、各相続人にどれだけの割合で相続財産が配分されるかという法定相続分が定められています。しかし、生前贈与や遺言で財産を譲り受けた相続人がいる場合、単に法定相続分をあてはめるだけでは、生前贈与を受けた相続人と、そうでない相続人との間に不公平が生じます。
そこで、実際の具体的相続分の算定の際に、生前贈与分を考慮して調整する「特別受益制度」というのがあり、その調整をしないといけない生前贈与を「特別受益」といいます。亡くなった人の意向として、後で調整はしないという意思が明確に示されていれば別ですが、そうでない限りは特別受益にあたる生前贈与に対しては不公平がないよう調整が図られます。
今回の場合に当てはめると、相続人が兄と妹の2人だけなので、通常であれば、法定相続分は2分の1ずつになり、2人の取り分は土地家屋の3000万円の半分の1500万円ずつです。しかし、お兄さんが生前贈与を受けた1000万円は特別受益にあたりますので、相続分の算定をする際の遺産総額は、今ある土地家屋の3000万円だけでなく、生前贈与された1000万円も合算します。そのため、妹さんについては3000万円に加えて1000万円の、合計4000万円に対する2分の1の2000万円が、相続されるべきになります。
一方、お兄さんは総額4000万円の2分の1の2000万円から、生前贈与の1000万円が差し引かれ、結果として相続では1000万円しかもらえないということになります。


2019年11月2日(土)

 

渡してしまったご祝儀(ミヤ蝶美・蝶子)

渡してしまったご祝儀
<相談内容>
去年の暮に友人から披露宴の招待状が届きました。すでに同居はしていますが、2人が交際を始めた日に披露宴を開くそうです。もちろん出席するので、「披露宴の足しにして」と、先にご祝儀の3万円を渡しました。しかし、直前になって「もうあんな男はうんざり。別れるために別居する!」と連絡があり、披露宴はキャンセルに。事前に渡したご祝儀は返してもらえないのでしょうか?
渡してしまったご祝儀

【弁護士の見解】

<結論>
返してもらえる可能性はある


<解説>
ご祝儀を渡すのは、法律的に「贈与」にあたります。書面によらない贈与であっても、すでに履行が済んでいれば撤回はできません。披露宴のご祝儀は、何らかの義務の対価として渡すわけではないので、披露宴をしないことを債務不履行として、贈与契約を解除するということは難しいでしょう。
しかし、贈与を撤回ができる余地が全くないわけではありません。裁判例でも、親族間の贈与について、贈与した人の責によらず、良好な関係がくずれた場合に、民法の信義誠実の原則に照らして、贈与の効果を維持することが不当と認められる場合には、贈与の撤回ができるとする場合があります。
本件では、3万円と少額なので「信義則上の不当」と言えるかどうかは微妙なところですが、披露宴に用立ててもらうためにご祝儀を渡したのに、確定的に披露宴がキャンセルになっていることからすると、贈与の撤回が認められ、返してもらえる可能性があると考えられます。
事情が変わるというのはよくあることですが、その場合、法律的には後から覆せないこともありますので、場面によってはご注意ください。

弟子が仕上げた夫婦茶碗(ザ・ぼんち)

弟子が仕上げた夫婦茶碗

<相談内容>
半年後の銀婚式に妻にプレゼントするため、知り合いの陶芸作家に夫婦茶碗を作ってもらうお願いをしました。先に代金の5万円を支払いましたが、先月、その作家さんが亡くなってしまいました。代わりに弟子でもある一人息子が茶碗を作って届けてくれたのですが、作風も程遠く、イメージしていた物と違います。返品して代金を返してもらえないのでしょうか?

弟子が仕上げた夫婦茶碗

【弁護士の見解】

<結論>
返してもらえる


<解説>
茶碗作成の債務は、依頼された作家本人のみが履行できる一身専属義務であり、亡くなったことで、履行不能となって消滅してしまいます。
一身専属義務とは、その本質上、ある特定の人に専属し、ほかの人に移転することがない義務をいいます。今回のように陶芸作品を創作するとか、画家が絵を描くといったものが典型例です。そして、一身専属の権利や義務は、相続の際に、相続人に引き継がれないと規定されています
今回のケースを民法の規定に当てはめると、履行不能となり、代金を受けとれる権利を失うため、すでに受けとった代金については、返還しなければいけないことになります。この返済義務は、相続の対象となり、相続人である息子さんに対し、不当利得返還請求として、代金の返還を請求できると考えます。
弟子である息子さんが茶碗を作ってくれましたが、あくまで陶芸作家に依頼したのであって、弟子であっても息子さんが製作したのであれば、債務の本来の目的に沿ったものとはいえないので返金しないといけない、ということになります。


2019年10月26日(土)

 

ゴリ押しされた代役(ギャロップ)

ゴリ押しされた代役

<相談内容>
洋食店も営む弘さんは、娘の運動会に行ったときに、保護者が出場する障害物競走で代役を頼まれました。ケガでもしたら大変なので断ると「万が一のことがあったら責任をとる」とゴリ押しされて出場することに。ところが、競技中にハードルに足を引っ掛けて転倒し、1週間店を休むことになりました。休業中の店の損害を賠償してもらえないのでしょうか?

ゴリ押しされた代役

【弁護士の見解】

<結論>
賠償してもらえない


<解説>
代役をお願いするときに「万が一のことがあったら責任をとる」という発言をしていますが、説得のために調子の良いことを言っているだけのようです。
法律的にも「責任をとる」という言葉だけでは、責任の中身は特定されておらず、店の営業損害をはじめとする、損害賠償義務を負うことを約束したものとは評価できないと考えます。
また無理やり出場させられたとありますが、漫才で状況を聞く限りでは、強制されたわけではなさそうですし、ケガの直接の原因は弘さんが「ハードルに足を引っ掛けて転倒」したためなので、相手に法的責任はないと考えます。
今回の状況では、店の休業補償までする義務はないと考えますが、思いつきの発言や、実現できる当てのない発言をした場合、義務として特定され、大きな責任問題になることもありえますので、注意が必要です。

大学に行っていない!?(三吾・美ユル)

大学に行っていない!?

<相談内容>
4年前、海外赴任の際に妻と離婚し、大学への進学を望む高校生の息子のために「4年間の学費も考慮して上乗せした養育費を一括で支払う」と書面で合意しました。
ところが、帰国すると、息子は大学に進学せず、寿司屋の板前として働いていました。それなら養育費を上乗せした分を返してもらえないのでしょうか?

大学に行っていない!?

【弁護士の見解】

<結論>
養育費の返還は認められない可能性が高い


<解説>
養育費は毎月払いが基本であり、子どもの状況や父母の収入に変更があった場合には、増額することも減額することもあり得ます。これに対して、養育費を一括で支払う場合、その後に起こり得る、ある程度の状況の変化も考慮されているのが一般的です。大学に行く行かないというのは、その最たる例ではないでしょうか。
そのため、本来は「大学に進学しなかった場合は、学費相当額として上乗せした分を返還する」といった合意をしておくべきですが、今回は、そのような特別な合意がありませんでした。また、もともと決めていた養育費に、具体的に学費分そのままが上乗せされて、一括払いの額が決まっていたわけでもなさそうですし、双方の公平を著しく害するような事情も伺えません。従って、一度、合意して支払った養育費を返してもらうことは難しいと考えます。
ただし、合意したあとに、当事者が予想することができないような変動があり、そのために、合意の内容をそのままに実現することが不合理であるときには、合意した内容を変更することが認められます。しかし、これを幅広く認めてしまうと、合意の効力が不安定になるので、合意の経緯などを踏まえて慎重に判断されるでしょう。
今回の相談では返してもらえない可能性が高いと考えましたが、子どもの進路や収入の増加は、ある程度予想できることなので、最初に合意するときに、息子さんが大学へ行かなかったときにどうするかを約束していれば、それにしたがって処理できたということになります。


2019年10月5日(土)

 

妻へのおしどり贈与(シンデレラエキスプレス)

妻へのおしどり贈与

<相談内容>
15歳年下の妻と結婚して30年。息子も独立したので、妻が将来も自宅に住み続けることができるよう、元気なうちに、現在、夫婦で住んでいる2000万円相当の自宅を妻に贈与したいと思っています。しかし妻は「いくら夫婦でも贈与税がかかるのでは?」と心配します。本当に税金がかかるのでしょうか?

妻へのおしどり贈与

【弁護士の見解】

<結論>
贈与税はかからない


<解説>
婚姻生活が20年以上の夫婦間で、自宅の贈与が行われた場合、基礎控除に加えて、最高2000万円の控除を認めるという税制上の特例があります。いわゆる「おしどり贈与」とも呼ばれる特例制度です。正式には「贈与税の配偶者控除」制度とよびます。
適用される要件を補足すると、まず、夫婦の婚姻期間が20年を過ぎたあとに贈与が行われたこと。この20年の計算は、切上げをせず、20年未満では適用されませんし、あくまで婚姻届の日付で判断されますのでご注意ください。次に、配偶者から贈与された財産が、居住用不動産を所得するための金銭であることです。さらに、贈与をうけた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産、又は贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が住んでおり、その後も引き続き住む見込みがあることです。
今回のケースは、要件を満たしているので自宅を贈与しても贈与税は課せられません。
ただし、贈与税の配偶者控除を受けるためには、贈与を受けた年の翌年3月15日までに確定申告する必要があり、そのためには不動産を贈与する場合には贈与時の相続税評価額を出す必要があります。事前に税理士に相談されることをおすすめします。
もし贈与後にご主人が亡くなっても、贈与から3年以内であれば、ご主人の相続財産に加算されることはありません。つまり、贈与された財産についての相続税をその時点では払わなくても良いということになります。しかし、相続税はかからなくても、登録免許税や不動産取得税はかかりますので、そもそもご主人が相続税の心配をしないということなら、この制度を利用するのは慎重にした方がよいでしょう。仮に奥様の方が先に亡くなった場合は、贈与した居住用不動産は相続税の対象となります。また、同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか配偶者控除の適用を受けることはできませんので、知っておいてください。

姉が注文していたメガネ(ザ・ぼんち)

姉が注文していたメガネ

<相談内容>
姉が亡くなり、全財産を妹が相続しました。独身の姉は、自由気ままな贅沢三昧だったので、遺産は預貯金の300万円だけでした。ある時、姉の家で遺品整理をしていると「ご注文の品ができあがりました」とメガネ店から連絡があり、フレームに宝石が散りばめられた30万円もするメガネを頼んでいたことが発覚!「オーダーメイドなのでキャンセルはできない」と店に言われましたが、姉の代わりに代金を払わないといけないのでしょうか?

姉が注文していたメガネ

【弁護士の見解】

<結論>
払わないといけない


<解説>
亡くなったお姉さんには、夫も子供もおらず、両親や祖父母も他界しているため、妹さんが相続人になります。
民法は「相続人は亡くなった人の財産に属する一切の権利義務の全てを包括的に承継する」と定めています。したがって亡くなった人の契約上の地位も引き継ぎます。
今回の場合、お姉さんが生前にメガネ店と結んだ契約上の地位についても、相続人である妹さんが引き継ぐことになります。したがって、お姉さんの財産を相続する以上、お姉さんの債務であるメガネを引き取り、代金の30万円を払わなければいけないと考えます。
しかし、一身専属的なものは対象外になります。例えば、画家に絵をかいてもらう契約を結んで、画家が亡くなった場合、画家の相続人が絵を描くという契約上の地位を引き継ぐことはありません。このような一身専属的な場合に限り、契約上の地位は相続されませんので、知っておいてください。


2019年9月28日(土)

 

ハワイ旅行は誰のもの?(学天即)

ハワイ旅行は誰のもの?

<相談内容>
会社の同僚4人とテーマパークに行くことになった雅美さん。幹事として前売り券を買いに行くと、抽選会が行われていたのでメールで同僚に連絡しました。「どうせ当たるわけがないから任せる」と言われ、5回分のくじを引くとハワイ旅行が当選!ところが、雅美さんは同僚から「抽選は任せると言っただけ」と言われてしまいました。雅美さんは、ハワイ旅行には行けないのでしょうか?

ハワイ旅行は誰のもの?

【弁護士の見解】

<結論>
ハワイ旅行には行ける


<解説>
雅美さんが抽選のことを告げた際に、同僚たちが「任せる」と言ったことを、どう解釈するかが問題となります。「任せる」というのは、抽選する権利を雅美さんに譲るという意味であり、法律的には抽選の権利を譲った以上、それから生み出される当選の権利も放棄したと考えるべきです。そして、当選した場合のことを予め決めておかなかったことからも、抽選の権利とともに、当選の権利も譲ったと解釈できます。
また、この種のキャンペーンでは、規約上、当選した権利は当選者のみに帰属し、当選した権利を第三者に譲渡できないと定められていることが多いです。したがって、抽選する権利を持った雅美さんが当選したのですから、ハワイ旅行には当選した雅美さんが行けると考えます。

タイ料理の店じゃなかったの?(酒井くにお・とおる)

タイ料理の店じゃなかったの?

<相談内容>
大島さんは空き地を所有していますが、知人が「あそこにプレハブ小屋を建てて、小さなタイ料理の店を出したい」と何度もお願いしてきたので、その空き地を貸すことにしました。ところが、1年後に店を訪ねると、プレハブ小屋の中がたこ焼き屋になっていて、見ず知らずの人が経営していました。空き地を貸した知人から小屋を借りたというのですが、約束を破った知人との契約を解消し、たこ焼き屋をしている小池さんに出ていってもらうことはできないのでしょうか?

タイ料理の店じゃなかったの?

【弁護士の見解】

<結論>
出て行ってもらえない


<解説>
土地を借りている人が、その借地上にある自分の建物を第三者に貸した場合、借地権の転貸になるのかが問題となります。民法は、貸した人の承諾なく賃借権を譲渡したり、転貸することはできないと規定しています。これは、人によって利用方法が異なることから、勝手な譲渡や転貸を制限するためです。
今回の場合、大島さんの土地を借りている知人が、自ら所有する小屋を第三者に賃貸しても、借地権の転貸にはなりません。小屋は、小屋を建てた人の所有物ですから、自由に使用することができます。自らが使用しても、第三者の小池さんに貸しても、土地の使用方法としての問題ではなく、建物の使用方法の問題ということになります。そのため、知人との契約を解除して、小池さんに出て行ってもらうことはできません。
しかし、建物ではなく、所有者に無断で土地を貸してしまった場合は、賃貸借契約を解除することができます。また、今回の相談でも、店の営業の種類が変わることで、例えば騒音などの近隣への迷惑行為で、土地の貸し主にも影響を及ぼすような場合には、契約を解除できる場合がありますので注意してください。


2019年9月21日(土)

 

思い出の自宅を空撮!(テンダラー)

思い出の自宅を空撮!

<相談内容>
都市の郊外で、最近、住宅地として人口が増えている地域にある、築100年以上の自宅を改築するので、写真を撮って思い出に残したいと思い、自宅の敷地内でドローンを飛ばして空から撮影しようと思いました。ところが「住宅地の中にあるので、勝手にドローンを飛ばせないのでは?」と言われました。自分の土地の上空でも勝手にドローンを飛ばすことはできないのでしょうか?

思い出の自宅を空撮!

【弁護士の見解】

<結論>
人口集中地域に該当すれば勝手には飛ばせません


<解説>
重さが200グラム以上のドローンは、航空法という法律によって「無人航空機」に区分されています。現在、ドローンは撮影や測量、物資の輸送や娯楽など、幅広い利用が考えられていますが、一方で、衝突や落下の危険もあることから、航空法などによって規制が設けられています。航空法では150m以上の上空や、人または家屋が密集している地域、つまり人口が集中している地域など、一定の場所でドローンを飛行させる場合は国土交通大臣の「許可」が、また夜間の飛行や、危険物の輸送などの飛行については、国土交通大臣の「承認」が必要であると定めています。これらの許可や承認を得ずにドローンを勝手に飛行させると、50万円以下の罰金に処せられることがあります。
航空法で飛行が禁止されている人口の集中地域とは、国勢調査をもとに、市区町村の区域のうち、特に人口密度の高い地域をいいます。今回のケースでは、自宅は、人口も増えた住宅地域の中にあるということですから、この人口集中地域に該当する可能性が高いです。詳しくは、インターネットなどで、飛行させる場所が人口集中地域に該当するかどうかを調べることもできます。
今回の相談に限らず、ドローンに関しては、催し場での飛行や夜間飛行など、飛行場所や飛行方法によって、様々な制限があり、これらに加え河川法、自然公園法、電波法、条例などによる制限があります。
また、2020年東京オリンピック・パラリンピック会場などでの飛行も禁じる、改正ドローン規制法が今年の5月に成立しています。ほかにも、ドローンを使って撮影したビデオに近隣の家屋や人物が映り込んだ場合、肖像権やプライバシー権の侵害になることもあるので注意してください。不明な場合は、自分で判断せずに国土交通省および、飛行場所の管理者などに問い合わせることをお勧めします。

離婚前に売られたバッグ(オール阪神・巨人)

結婚前に売られたバッグ

<相談内容>
孝子さんはブランド品のバッグを集めるのが趣味です。ある日、友人の恵子さんから「1年前に譲ってくれると約束したバッグを渡してほしい」と言われました。そんな話に覚えがありませんでしたが、恵子さんは、「結婚式であなたたちと同席したときに、ご主人と約束して代金の5万円をご主人の口座に振り込んだ」と言います。確かにそのバッグは、元夫からのプレゼントですが、離婚して今は音信不通です。恵子さんは、夫が勝手に売ると約束したバッグを渡さないといけないのでしょうか?

結婚前に売られたバッグ

【弁護士の見解】

<結論>
渡さなくてよい


<解説>
ご相談のバッグは、孝子さんが夫からプレゼントされたものですから、あくまで孝子さんの所有に属しています。夫は当時は妻であった孝子さんに無断で、恵子さんに孝子さんのバッグを売却する約束をしたわけですが、夫は、妻ではあっても他人の権利を売買の目的としたということになります。その場合は、民法上、夫は孝子さんからバッグの所有権を譲り受け、権利を取得して恵子さんに引き渡す義務を負うわけです。夫がこの義務を果たせなかった場合は、恵子さんは売買契約を解除して、夫に対して支払った代金の返還を請求することができます。
なお、民法は夫婦の一方が「日常の家事」に関して、他人と取り引きしたような場合は、それによって生じた債務について、夫婦の他の一方も連帯して責任を負うと規定しています。しかし、ここに言う日常の家事とは、食料品の購入や光熱費の負担、医療費や教育関係費など、夫婦、家族の共同生活に必要な内容でなければならず、今回のご相談のようなバッグの売買は、およそ日常の家事に必要な行為ではありません。したがって、恵子さんは孝子さんに対してバッグの引き渡しを求めることはできず、結果として、孝子さんはバッグを渡す必要はないと言うことになります。


2019年9月14日(土)

 

コピーの財産目録(アメリカザリガニ)

コピーの財産目録

<相談内容>
三兄弟で父親の遺産を相続することになりました。父親の遺言書には「長男には、財産目録1の不動産、次男には財産目録2の預金全額、三男には財産目録3の郵便貯金全額を譲る」と書いてあり、財産目録として通帳のコピーが添付され、遺言書の日付は今年の1月15日になっていました。ところが現在の預貯金の残高を確認すると、次男の分は200万円少なく、三男の分は100万円多くなっています。次男は「遺言書に添付されていたコピー通りの金額を分けよう」と言いますが、遺言書通り分けられないのでしょうか?

コピーの財産目録

【弁護士の見解】

<結論>
見解が分かれる可能性はあると思うが、死亡時の残高で「分ける」べき


<解説>
2018年に民法の相続分野についての改正があり、今年の1月13日から、まず遺言の方式に関する改正点が施行されています。以前は、自筆証書遺言について全文を自筆で書く必要がありましたが、これを緩和して、自筆証書遺言に添付する財産目録については、自書でなくてもよいとされました。今回のケースのように通帳のコピーを付ける形も可能です。
ただし、財産目録の各ページに、署名押印することが必要です。今回のケースでは、遺言書の本体の部分は父の自書で押印もあり、財産目録としての登記事項証明書や通帳のコピーの各ページにも、父の署名・押印があれば、遺言書の全体が有効と言えるでしょう。
ただ、今回は、財産目録として添付された通帳のコピーの残高と相続発生時の残高が一致していません。このような場合、遺言した人がどのような考えであったかを突き詰めて考えていくことになります。
通帳の口座番号が印字されたページだけでなく、わざわざ残高が表示されているページのコピーを付けたことを重視するかどうかで、見解が分かれると思います。
遺言の方式を緩和する規定が施行されたばかりなので、この問題について裁判例の蓄積がありませんが、遺言書に載せた財産でも遺言者が使うことはできるため、預金残高が変わる可能性が高いと言えると思います。そのようなことを考慮すると、通帳のコピーの残高ではなく、死亡時の残高を分けることになるのではないかと考えます。

家賃を払っただけなのに…(川上じゅん)

家賃を払っただけなのに…

<相談内容>
先日、父親が亡くなり、父親が住んでいたマンションの整理をしていると、大家さんから「お父さんが家賃を3か月分滞納している。すぐに払ってほしい」と言われました。お金がないので、手続きを踏んで、父親の口座から引き出したお金で、父親が滞納した家賃を払うと考えていますが、自営業をしていた父には多額の負債がある可能性もあります。父親の預金を使ってしまうと、相続放棄できないのでしょうか?

家賃を払っただけなのに…

【弁護士の見解】

<結論>
相続放棄できない可能性が高い


<解説>
相続人は、所定の期間内に相続放棄をすることができますが、何の留保もつけずに相続を受け入れることを単純承認といいます。単純承認すると、被相続人の債務についても無限の責任を負うことになり、その後は原則として相続放棄をすることはできません。
相続を受け入れます、という積極的な意思表示がなくても「相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき」には、単純承認したとみなされてしまいます。
そして、父の預金を自分のためにではなく、父が未払いの家賃の支払いに充てる場合であっても、相続財産を処分したことになり、相続放棄が認められない可能性が高いと考えます。
なお、今回の相談であったように、現在は一定の手続きをすれば、亡くなった方の預貯金を引き出すことができるようになりました。ただし、限度額もありますので、注意が必要です。

デジタル遺産の行方は?(三吾・美ユル)

デジタル遺産の行方は?

<相談内容>
さとみさん家族は、5年前に亡くなった父親に、借金が300万円あることがわかったので、父の財産を、相続人全員が相続放棄しました。しかし最近になって、父親にデジタル遺産があることが判明!インターネット上の株式で、今売るとその価値は500万円以上になるそうですが、母親に聞くと「年に1回くらい、どこかの会社からお父さんに書類が届いていた」と言い、気にとめていませんでした。今からデジタル遺産の株を相続人で分けることはできないのでしょうか?

デジタル遺産の行方は?

【弁護士の見解】

<結論>
できない可能性が高い


<解説>
さとみさん家族が相続放棄をしたのは父に負債があったからということですが、その後、多額の財産があったことが判明したという理由で、相続放棄を無効にできるでしょうか。
確かに、裁判例の中には、動機の錯誤を理由に、相続放棄を無効とするものもあります。しかし、相続放棄は原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3年以内にすればよく、この間に財産関係を調査することが可能であったと言えます。また、重大な過失があった場合には、そもそも錯誤無効の主張ができません。
今回も、1年に1回くらい株式に関する通知が来ていたようで、重過失が認められる可能性も高いと考えられます。したがって、結果として父の株式を取得することはできないと考えます。


2019年9月7日(土)

 

宿泊料はポイントで?(幸助・福助)

宿泊料はポイントで?

<相談内容>
新太郎君は、貯まったポイントを使い、友人の田中君を誘って旅行に行くことにしました。ところが、当日、田中君は怪我をして旅行をキャンセルしたので、新太郎君が一人で行くと、ホテルからキャンセル料を請求されました。キャンセル料はポイントで払うことができなかったので、田中君にキャンセル料を払ってほしいというと、「宿泊料は君のポイントで払うという約束だったのだから、キャンセル料も払ってほしい」と言われました。田中君に払ってもらうことはできないのでしょうか?

宿泊料はポイントで?

【弁護士の見解】

<結論>
払ってもらえる


<解説>
当日になって旅行に行けなくなったのは、田中さんの事情によるわけですから、当然適正なキャンセル料の支払い義務が発生します。
田中さんの宿泊費は新太郎さんが、自分が貯めたポイントで払うといっていたわけですが、宿泊をキャンセルする場合、予約サイトの規約によってポイントをキャンセル料に充当できる場合とできない場合があります。今回のケースでは、新太郎さんはポイントをキャンセル料に充当できなかったので、田中さんに負担するように求めたわけです。
新太郎さんが、宿泊費を負担すると言った以上は、キャンセル料も負担すると考えられそうですが、キャンセル料は違約したことで部屋が空いてしまったことによる損害金であり、ポイントの利用というのは宿泊の対価に相当するサービスの一環であって、両者は厳密には同じ性質のものではありません。田中さんが怪我で旅行に行けなくなり、宿泊できなくなるとは、新太郎さんも予想ができなかったことで、そのような場合に、新太郎さんがキャンセル料まで負担するという合意は2人の間でなかったはずです。
したがって、キャンセル料については、田中さんから支払ってもらうことができると考えます。信頼関係を壊さないためにも、負うべき責任の範囲を、約束するときに明確にしておくことが大切です。

桜の木がなくなった!(オール阪神・巨人)

桜の木がなくなった!

<相談内容>
中村さんは、庭に立派な桜の木がある前田さんの土地を気に入り、買うことにしました。前田さんに建物を取り壊して、更地にしてもらった上で、引き渡してもらうことになっていましたが、更地にする工事中に、桜の木が折れて抜かれてしまいました。「桜が気に入ったから庭を含めて買い取った。桜を植える金額を弁償してほしい」と前田さんに言うと、「まだ代金を受け取っていないし、引き渡すまでは庭も桜も私のものだから弁償しない」と言われました。弁償してもらうことはできないのでしょうか?

桜の木がなくなった!

【弁護士の見解】

<結論>
弁償してもらえない


<解説>
中村さんと前田さんとの土地の売買契約は、代金を払っていなくても、また、引き渡しを受けていなくても有効に成立しています。庭木は土地の定着物であって、土地の一部として扱われます。したがって原則的に土地の所有権移転と同時に桜の木の所有権も移転します。民法の建前は、不動産の売買契約締結と同時に、不動産の所有権が買い主に移転するという考え方ですが、現実は、相手がちゃんと履行してくれるのかという不安を取り除くために、不動産の引き渡しと代金の支払いとを同時引き換えにして、その時に所有権が移転して、登記手続もすると合意するのが通常です。
今回も、前田さんが建物を取り壊したうえで、土地を引き渡すという約束をしているので、所有権の移転は、後日、代金支払いと引き換えにしていたと考えられ、それまでは、不動産の所有権は、桜の木とともに前田さんに帰属していることになります。
また、今回のケースでは、売買契約にあたって、桜の木を切らずに引き渡す約束や、桜の木の代金が、売買代金の中に別個に算定されていた事情までは認められません。売り主である前田さんは、家を解体するという条件を守って土地さえ引き渡せばよく、庭の状態については、特別な約束をしていない以上、現状で引き渡せばいいということになります。したがって、前田さんに桜の木を植える代金を支払ってもらうことはできません。


2019年8月31日(土)

 

見られなかったオペラ(チキチキジョニー)

見られなかったオペラ

<相談内容>
「チケットが1枚余っているから一緒に行って、お願い!」とユカリさんから頼まれた由美さんは、アルバイトを休んでオペラを一緒に見に行くことにしました。ところが、チケットを持っているユカリさんの乗っている電車が止まって間に合わず、オペラを見ることができませんでした。「頼まれて行ったんだから、アルバイト代を補てんしてほしい」と思うのですが、アルバイト代は補てんしてもらえないのでしょうか?

見られなかったオペラ

【弁護士の見解】

<結論>
補てんしてもらえません


<解説>
ユカリさんは由美さんをオペラに誘い、公演当日、会場でチケットを渡す約束をしていました。では、この約束が守られなかったことを理由に、ユカリさんに損害賠償請求をすることができるでしょうか。
約束違反である債務不履行に基づく損害賠償請求が認められるためには、債務者の「帰責事由」、つまり、ユカリさんに落ち度があって債務が履行できなかったという事情が必要です。本件の場合、ユカリさんが開演までに到着できなかったのは、電車が止まってしまったためで不可抗力によるものといえます。
つまり、ユカリさんには帰責性がないため、由美さんはユカリさんに対し、アルバイト代を払ってもらうことはできないと考えます。

小島弁護士の「一刀両断」ポイント
「不可抗力に備えた対策も」
不可抗力とは、外部から発生したトラブルで予防方法を講じても、なお防げないものをいいます。自然災害が典型例ですが、どこまで含むのか曖昧な部分もあります。最近は自然災害も多く、そのような場合の処理が注目されるようになっています。

借家に取り付けたエアコン(ザ・ぼんち)

借家に取り付けたエアコン

<相談内容>
古いワンルームのアパートに住んでいますが、もともと部屋にエアコンが設置しておらず蒸し風呂状態で過ごしていたので、たまらなくなって今年は、大家さんに許可を得て工事を実施し、エアコンを設置しました。ところが急に転勤することになりました。引っ越し先の社宅は冷暖房完備です。エアコンが不要になったので、大家さんに買い取ってもらうことはできるのでしょうか?

借家に取り付けたエアコン

【弁護士の見解】

<結論>
今回のケースでは、特約がない限り買い取ってもらえると考えます。


<解説>
建物の賃貸借のルールを定めた借地借家法には、造作買取請求権があります。
貸主の同意を得て建物に付け加えた造作がある場合、建物の借り主は賃貸借契約が期間満了や解約申し入れによって終了するときに、貸主に時価で買い取ることを請求できるというものです。造作とは、建物に取り付けられた借り主の所有物のうち、建物の価値を客観的に高めるものをいいます。
今回のケースでは、エアコンを取り付けることを想定していない建物に、大家さんの同意を得てエアコンを取り付けています。賃貸借契約を借り主からの申し入れによって解約することになりましたので、造作買取請求権を行使してエアコンを時価で買い取るよう請求することができます。
ただし、造作買取請求権は、特約で排除することができます。そのため、契約上、造作買取請求権が認められないという特約があれば、請求できないということになります。
なお、簡易裁判所の裁判例ではエアコンを造作と認めなかったものがあります。タワーマンションに3台のエアコンを取り付けた事例で、もともとエアコンを設置するためのコンセントやスリープが設けられており、室外機も容易に取り付けることが可能だったタワーマンションに3台のエアコンを取り付けた事例でした。
このように、建物の状況や契約時の事情によるところも大きいので、実際のケースでは、造作に当たるかどうかに関しても留意が必要といえるでしょう。


2019年8月24日(土)

 

裁判に負けたら払うの?(スーパーマラドーナ)

裁判に負けたら払うの?

<相談内容>
お隣の庭の松の木の枝が塀を越えて、山本さんの家の敷地に出てきているのに、頼んでも剪定をしてもらえないどころか、「文句ばかり言うクレーマー」とご近所に言いふらされて困っています。山本さんは「こうなったら裁判だ。弁護士に相談する」と妻に宣言しましたが、「もし負けたら、裁判や弁護士の費用を全部払わされるんでしょ」と妻に言われました。本当に、裁判に負けた方が、裁判に関する費用を全額払わないといけないのでしょうか?

裁判に負けたら払うの?

【弁護士の見解】

<結論>
弁護士費用は払わなくてもよい


<解説>
日本の民事訴訟法では、「訴訟費用」は敗訴者が負担すると規定されています。そのため、判決では負けた方が訴訟費用を負担することも言い渡されます。ただし、ここでいう「訴訟費用」とは、訴訟を提起するときに裁判所に納める印紙や、郵券、鑑定をするときの予納金、などの費用を言い、当事者が弁護士に払う弁護士費用は、この訴訟費用には含まれていません。
ただし、不法行為責任に基づく損害賠償請求を提起する場合に限っては、少し例外があります。立証の難しさから弁護士に頼むことも当然必要であろうという考えから、判例上、一定額の弁護士費用も、不法行為と因果関係のある損害だと認められています。そのため、原告が実際に払う金額の一部となるかもしれませんが、判決で、原告の弁護士費用も、負けた被告が払うよう命じられることがあります。
しかし、これは、あくまで不法行為責任で訴えた原告側の弁護士費用の話であり、他の場合で相手が依頼した弁護士費用を、当然に負けた方が払うというような法制度は、わが国では採用されていません。
もちろん、明らかな不当訴訟を提起してしまうと、後日、相手から相手の弁護士費用を請求される余地は全くないわけではありませんが、今回のご相談に関しては明らかな不当訴訟ではありません。
したがって、仮に山本さんが負けたとしても、お隣が頼んだ弁護士費用までを払うことはありません。

まさかの臨時休業(河邑ミク)

<相談内容>
オーダーメイドで購入したパソコンの調子が悪くなったので、保証期間が切れる2日前にお店に持っていくと、「社員研修のため臨時休業」の貼り紙があり、お店は休業していました。休業明けに出直すと、「保証期間が過ぎているので有料修理になります」と言われましたが、修理は保証期間の対象にならないのでしょうか?

【弁護士の見解】

<結論>
今回のケースでは、保証の対象になります


<解説>
今回のように、当事者が決めた最終日が休日にあたる場合、民法142条に定められた「期間の満了日の特例」を使って判断されます。この民法の規定では、期間の末日が日曜日や休日にあたるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限って、期間はその休日の翌日に満了する、すなわち1日延長されるということとされています。
この規定でいう休日とは、通常は、国民の祝日に関する法律で定められた休日であったり、土曜日、それから年末や正月などを指します。しかし、今回のような社員研修でお店を閉めている日なども、一種の取引をしない慣習がある休日とも言えますので、保証期間の最終日の解釈にあたっても、先ほどの民法の規定が適用されると考えます。

したがって、今回の保証期間の最終日は、研修明けの日まで延長されますので、卓さんは無料で修理してもらえると考えます。

他人の管理費なのに…(酒井くにお・とおる)

他人の管理費なのに…

<相談内容>
若手芸人の英治君が、中古の分譲マンションを探していたところ、間取りや立地で希望通りの物件が見つかりました。ところが、前の住人が月々2万円の管理費を3年間滞納していることがわかりました。知り合いから、「購入するなら滞納分を引き継がないといけないのじゃないの?」と言われましたが、英治君は引き継いで払わなければいけないのでしょうか?

他人の管理費なのに…

【弁護士の見解】

<結論>
本件では払う必要はありません


<解説>
今回のマンションのように、区分所有法に基づいて特殊な所有権が認められている不動産については、区分所有法上、管理費のように管理規約に基づいて区分所有者が負担する債務についても、特別の扱いがなされています。
具体的には、管理費の滞納がある物件を譲渡された場合、その譲渡を受けた譲受人が、この滞納管理費の支払義務を承継することになっています。しかし、滞納管理費の承継がなされるとしても、元の所有者が滞納管理費の支払い義務を免れるわけではありません。元の所有者と譲受人、双方が、責任を負い続ける、そういう状態になるだけです。
先ほどの区分所有法の規定も、あくまで元の所有者が払ってくれない場合に、回収を確保するための規定であり、元の所有者から回収が可能であれば、何も払う必要はありません。そのため、実際の売買代金の決済においても、物件の譲受人がマンションの売買代金自体を払って、元の所有者はその代金から管理組合に滞納分を払う。そうすることで滞納管理費は精算されるのが通常です。
したがって、滞納額が売買代金の金額を超えない限りは、英治さんは、代金さえ払えばよく、別途、滞納管理費を払う必要はありません。


2019年8月17日(土)

 

余ってしまったチケット(アルミカン)

余ってしまったチケット

<相談内容>
劇場の先行発売で、苦労して人気ミュージカルのチケットを手に入れたのに、都合がわるくなって行けなくなりました。定価に手間賃として2000円の実費だけを加えて、SNSで買い手を探していますが、転売することはできないのでしょうか?

余ってしまったチケット

【弁護士の見解】

<結論>
転売できません


<解説>
チケットを販売している主催者や、主催者からチケットの販売の委託を受けている大手の販売会社の規定を見てみると、多くの場合、営利目的や、もしくはチケットの券面額より高い価格で転売することを禁止しています。例えば、発券手数料とかチケットの配送料といった、実際にかかる実費、それを上乗せする場合は別ですが、手間賃のようなものを上乗せしてしまうと券面額より高い価格での転売となってしまいます。
また、特に電子チケットの場合がそうですが、チケットによっては、転売価格の安い高いに関係なく、第三者への譲渡自体を禁止している場合もありますので、各会社のチケットの規定、もしくはチケットの裏面自体をよく確認するようにしてください。

民事上では、以前から禁止されていましたが、今回、刑事罰で転売を禁止する「チケット不正転売禁止法」という法律が、今年の6月から施行されています。この法律は、最近インターネットでやたらと高いチケットの転売が横行していることを背景に制定されたものですが、「業」として、主催者の同意なくして、販売価格を超える価格で転売する行為を主に取り締まっている法律です。
今回の高橋さんのような一般人の場合、販売価格を超えたとしても、1回きりの転売として、「業として」の要件を満たさないという可能性もありますが、仮に転売が1回や2回であったとしても、今後繰り返す意思があったと評価されれば、「業」としての転売と認められ、やはり処罰の対象になります。

財産分与に期限あり?(玉田玉秀斎)

財産分与に期限あり?

<相談内容>
離婚した夫から、自宅を売った売却額の半分を分けてもらえるはずでしたが、「なかなか良い買い手が見つからないんだ」と言って、1年経っても売る気配がありません。このままだと、約束が時効になって、財産分与してもらえなくなるのではないかと心配です。財産分与にも期限があるのでしょうか?

【弁護士の見解】

<結論>
期限はあるが、本件では問題ありません。


<解説>
離婚時の財産分与については、二人の間で協議が整わなければ、家庭裁判所で決めてもらうことができます。この家庭裁判所への申立は、離婚から2年以内にする必要があります。
この期間制限は、正確には「時効」ではなくて、「除斥(じょせき)期間」と呼ばれるものです。で、誤解されることが多いのですが、2年以内に相手に財産分与を請求していれば、家庭裁判所への申立が2年を過ぎてもよくなるというわけではなく、家庭裁判所への申立期限は何があっても、離婚から2年以内ですので注意が必要です。
今回のご相談の場合、家庭裁判所に決めてもらわなくても、すでに、自宅を売却して代金を折半するという内容で、協議が成立している事案です。したがって、2年という期間制限は関係ありません。もちろん、財産分与に関する約束自体が時効にかかることはありますが、その約束について時効期間がスタートするのは、自宅を売却して代金を折半できる状態になってからの話です。今回のご相談では、まだ財産分与の約束の期限がスタートしていませんので、心配する必要はありません。

強風で飛ばされたお札(シンクタンク)

強風で飛ばされたお札

<相談内容>
小高い丘の上にあるバザー会場の模擬店で、タンクさんが、2つで1000円の飲み物を注文しました。「お代はテーブルに置いてください。すぐに取りに来ますから」と言われたので、お札をテーブルに置いた瞬間、強風でお札が吹き飛ばされ、あっという間に丘の下に!この場合、代金を払ったことになるのでしょか?それとももう1回払わないといけないのでしょうか?

強風で飛ばされたお札

【弁護士の見解】

<結論>
払ったことになりますが、一定額の賠償義務があります。


<解説>
代金を払ったことになるかどうかは、テーブルにお札を置いた時点で「弁済の提供」と言えるかどうかです。この「弁済の提供」とは、債務の履行において、債権者の受領行為を必要とする場合に、債務者がなすべき行為のことをいいます。どんなことをすれば、債務者つまり、今回であれば買主がなすべきことをしたと言えるかは、売主の受領の仕方によって変わってきます。
今回のご相談の場合、お店の人が、タンクさんが座っているテーブルの上にお金を置いてくださいと指示したのですから、お店の受領行為を前提とすれば、テーブルにお金を置くことにより、弁済の提供すなわち、やるべきことをやったということになります。したがって、タンクさんは、代金自体はもう払う必要はありません。
ただし、今回はお札だったのですから、ちょっと風が吹けば飛んでしまう危険があったはずです。そうすれば、重しを置くなど、飛ばないための工夫をしなかった点で、タンクさんには過失があり、飛んでいった千円札について弁償義務が発生します。
しかし、代金の受領の仕方について、お店の指示にもかなり落ち度があったわけですから、いわゆる過失相殺により、タンクさんの弁償義務の範囲は千円全額ということにはなりません。したがってタンクさんは、いくらかは弁償しないといけないと考えます。


2019年8月10日(土)

 

家賃を下げてほしいけど…(なすなかにし)

家賃を下げてほしいけど…

<相談内容>
登山道で土地と建物を借りて人気のカフェを経営している佐々木さん。ところが、半年前からカフェの近くでクマの目撃情報があり、お客さんが減ってカフェの売り上げが激減しました。地主さんには毎月15万円で借りていましたが、事情を説明して、しばらくの間、家賃を下げてほしいと相談すると「家賃とカフェの経営状態は関係がないから無理」と言われました。家賃は下げてもらえないのでしょうか?

家賃を下げてほしいけど…

【弁護士の見解】

<結論>
下げてもらえる可能性が高い

<解説>
契約した以上、契約内容を守ることは当然ですが、「事情変更の原則」と言って、契約の基礎としていた事情が大きく変わり、それが当事者に責任がなく、かつ予見できなかった場合、今までの契約内容で拘束することが、民法の信義誠実の原則に照らして、著しく不当と言えるとき、契約内容の変更が認められる場合があります。
そのあらわれの一つが、家賃の増額や減額の制度です。借地借家法は、土地建物にかかる租税や価格、その他の経済事情の変動や近隣の同様の建物の家賃の変動などをみて、今の賃料が不相当となったときは、特約がない限り、家主は賃料の増額を、賃借人は減額を求めることができると定めています(同法32条1項)。実際には、これらの事実のほか、今までの賃貸借の経緯や、どのようにして賃料を決めてきたのか、その賃料の推移や建物の現況など、いろいろな事情を総合的に考慮することになります。
今回のカフェと比較できる賃貸物件が近隣にない場合でも、カフェの売上高を元に賃料を決めてきた経緯があり、租税や物件価格の変動状況を見ても、賃料が高額に過ぎると言える場合には、佐々木さんの減額請求が認められる可能性が高いと考えます。

林弁護士の“もうちょっと一言”
「未解決を理由にする賃料不払いは認められません!」

賃料の増額や減額の交渉で結論が出るまでの間、賃料額が決着していないからと言って、賃料を支払わなければ、不払いを理由に、賃貸借契約を解除されることがあります。注意しましょう。

株取り引きはパソコンで(オール阪神・巨人)

株取り引きはパソコンで

<相談内容>
お父さんの預貯金500万円と株を相続した優子さん。株はパソコンで取り引きしていたようなので、パソコンを相続したお兄さんに調べておいてと頼みました。ところが、お兄さんが調べてもなかなかわからないので、詳しい人に頼んで調べてもらったところ、お父さんが亡くなった当時500万円だった株の価値が100万円に下がっています。差額をいくらかでも弁償してもらえないのでしょうか?

株取り引きはパソコンで

【弁護士の見解】

<結論>
弁償してもらえない

<解説>
今回の相談は、いわゆる「デジタル遺産」の一つであるネット証券取引の内容を知るため、優子さんがお兄さんに「パソコンの中を調べてね」と依頼したわけですが、依頼の内容をどのように評価するかが考え方のポイントとなります。
優子さんの依頼をお兄さんが了解しており、2人の間には、一種の委任契約が成立していると考えた場合、無償の依頼であっても、お兄さんには、誠実に調査すると言う善良な管理者としての注意義務があり、この義務に違反して優子さんに損害を与えれば、賠償責任を負うことになります。
しかし、2人の間で委任契約が成立していたと言えるかは問題です。兄妹の関係の中での無償の依頼であり、優子さんとお兄さんとの間で、いつまでに調査を終えるかの合意もしていなかったようです。そうすると、今回の依頼は、2人の間で単に兄妹の間の好意的な関係の間で留めるという意思があっただけで、これを法律上の契約関係にまで高めると言う意思まではなかったとも考えられます。
仮に委任契約がきちんと成立しているとしても、お兄さんはパソコン解析の専門家でもなく、調べようとしてもよくわからなかったと見受けられます。また、株価の変動についても素人には予想が難しいわけですから、お兄さんは善良な管理者としての注意義務に違反したとまでは言えないと考えます。
したがって、いずれにしても優子さんは、お兄さんに弁償、つまり損害賠償を求めることまではできないと考えます。

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