2019年11月30日(土)

 

中学生の頃の約束?(アメリカザリガニ)

中学生の頃の約束?
<相談内容>
平井さんは、中学校時代のバレーボール部の集まりがあったときに、「30年後にボーナスの金額を比べて、一番多くもらった人が、一番少ない人に『夫婦で行くハワイ旅行』をプレゼントしよう」と、中学校卒業の時に交わした約束を思い出しました。集まった5人がボーナスの金額を比べると、平井さんが一番少なかったのですが、一番多かった友人が「未成年の時に交わした約束だし無効だ」と言います。この約束は有効なのでしょうか?
中学生の頃の約束?

【弁護士の見解】

<結論>
無効を主張することができる


<解説>
約束をしたのは中学3年生のときであり、このような、未成年のときにした約束は、本来、取り消すことができます。しかし、取消権には期間の制限があり、追認をすることができる成人になってから5年経ったとき、または行為のとき、つまり約束したときから、20年が経過したときに時効消滅します。今回は取消権を行使できる期間が過ぎてしまっていることから、取り消すことはできません。
もっとも、本件の約束は、一番稼いでいる人が一番稼ぎの少ない人にハワイ旅行をプレゼントするという贈与契約であり、かつ、書面は作成してないことから、書面によらない贈与として、履行前であれば撤回が可能です。
したがって、贈与契約を撤回することにより、ハワイ旅行をプレゼントする必要はありません。今回のケースは、中学生が30年も先のことを約束したというもので、そもそも、このような約束自体、みんな本気にしていなかったとも考えられ、無効である可能性もあるのではないのでしょうか。
今回は、約束時の有効性に疑問がある事例でしたが、一般の契約の場合、未成年者による契約というだけでは無効にできず、取り消すという意思表示が必要です。この取消権も成人してから5年で時効にかかりますので、注意してください。

別居中に売られた宝物(三吾・美ユル)

別居中に売られた宝物
<相談内容>
1年ほど前から妻と別居をし、今は実家住まいをしています。最近、別れることになり、2人で住んでいた部屋に荷物を取りに行きましたが、結婚後に小遣いで買い集めて、だいじにしていた怪獣のフィギュアがありません。妻に聞くと「調べても価値がなかったから捨てた」と言います。価値がなくても、思い出が詰まっているコレクションなので、損害分として慰謝料をもらえないのでしょうか?
別居中に売られた宝物

【弁護士の見解】

<結論>
慰謝料をもらえる可能性は低い


<解説>
このコレクションは婚姻中に小遣いで購入されたものであり、夫の所有物と評価できると考えられます。コレクションが段ボール箱に入っているなら、それごと夫に送るという方法があったのに、あえて無断で処分してしまった行為は不法行為に当たりうるでしょう。この場合、通常はその財産的価値を賠償すれば足りると言えます。
このほかに慰謝料が認められるのは、そのような精神的苦痛が存在すると社会通念上認められる事情がある場合に限られます。場面は異なりますが、相続に関連して、仏壇、位牌、及び金銭的に評価できないアルバムなどの思い出の品を無断で処分したことにつき慰謝料を認めた裁判例はあります。しかし、今回のコレクションは再度集めることが可能とも思われ、位牌やアルバムと同等に考えるべきかどうかは、評価が分かれるでしょう。
また、夫はこれを1年間も引き取らないままだったことも踏まえると、コレクションへの思い入れも判断しづらいというのが率直な印象です。
したがって、事情を踏まえると、慰謝料の支払いが認められる可能性は低いと考えます。


2019年11月23日(土)

 

倒された石灯籠(学天即)

倒された石灯籠
<相談内容>
30万円の高価な自転車で通学をしている和也さんは、大学の近くに実家がある友人に許可をもらい、庭の石灯籠にチェーンのついた鍵で自転車をくくりつけて停めていました。ところが1週間前、朝まで停めていたときに、石灯籠が壊され自転車が盗まれました。友人から、壊された石灯籠の修理代を払ってほしいと言われましたが、払わないといけないのでしょうか。
倒された石灯籠

【弁護士の見解】

<結論>
修理費用を支払う法的な責任はない


<解説>
まず、灯籠に自転車を固定することについては、友人の許可を得ています。灯籠の所有者はおそらく友人のお父さんですから、友人の許可がただちに、所有者の許可ということになりませんが、日常的に灯籠に自転車を固定していたので、所有者であるお父さんもこれを知りつつ黙認していたと思われます。つまり、所有者の許可を得て固定していたと捉えることができます。したがって、灯籠に自転車を固定していたこと自体が不法行為や債務不履行であるとは言えません。
確かに、石灯籠にチェーンをくくりつけていなければ、石灯籠を壊されることもありませんでしたが、法律的な責任を考える上では、その行為から通常、その結果が生じるといえるかどうかが重要となります。今回の相談では、自転車のチェーンをくくりつけても問題ないと双方が思っており、敷地内の石灯籠を壊してまで自転車を盗む者がいることは予想できず、防ぐことは難しかったと言えるでしょう。
したがって、とるべき責任がなく、損害賠償する義務はないと考えます。

母から借りたリフォーム費用(酒井くにお・とおる)

母から借りたリフォーム費用
<相談内容>
三兄弟の長男が3年前、同居している母から150万円を借りて家をリフォームしました。しかし先月、母が亡くなり、借りたお金がまだ返済されていないことがわかりました。返済期限は借りた時から1年後でしたが、そのままになっていたようです。次男と三男は、長男が借りた150万円を相続財産に含めて分けてほしいと思っていますが、分けてもらえるのでしょうか。
母から借りたリフォーム費用

【弁護士の見解】

<結論>
50万円ずつ払ってもらえる


<解説>
母は長男に対して、150万円の貸金返還請求権を持っていました。これは債権ですが、このような債権も相続財産になります。そして、金銭債権は、金額で分けることができるので、相続開始により、法定相続分に従って相続人が分割して相続します。
つまり、今回でいうと、150万円の貸金返還請求権は、3人の子が50万円ずつ取得することになります。したがって、次男と三男は、それぞれ長男に対し、50万円を返すよう請求することができます。
長男が相続した50万円の貸金返還請求権は、相続により、債務者である長男自身が債権者の立場を相続してしまったため、長男は債務者でもあり債権者でもあるという立場におかれます。
このように、債権者と債務者が同一になった場合、自分で自分に50万円を返すというのは無意味なため、債権・債務は消滅します。これを「混同」と言います。したがって、50万円について、長男の返済義務は消滅します。
結果として、次男と三男は、長男から50万円ずつもらえることになります。


2019年11月16日(土)

 

ひとり歩きしたキャラクター(なすなかにし)

ひとり歩きしたキャラクター
<相談内容>
学生時代に趣味で描いたキャラクターを、会社の社長が「個性的で、独創性がある!我が社のマスコットキャラクターにしよう」と言うので承諾しました。大評判になったので、社長は「グッズにして売り出そう」と言い出しましたが、「会社がグッズを売って儲けるならデザイン料をもらえないのだろうか」と思っています。デザイン料はもらえないのでしょうか?
ひとり歩きしたキャラクター

【弁護士の見解】

<結論>
もらえる


<解説>
今回は著作権法の問題ですが、学生時代に描いたキャラクターが著作権法により保護されるには、そのキャラクターの絵に創作性が認められることが必要です。今回の場合、独特の表現がなされているようですので、今回のキャラクターは著作物と認められると考えます。
問題は、会社のマスコットキャラクターに用いることを承諾したことで、販売用のグッズに無償で使うことまで了承したと言えるかです。会社のマスコットとして使用すると聞いてイメージするのは、おそらく会社のパンフレットや名刺のマークなどに用いる程度のことだと思います。そうすると、会社が販売して利益を得ることができるグッズに、キャラクターを使用するのは、キャラクターの使用方法に大きく開きがあり、グッズに無償で使用することまで了承していたと評価するのは難しいと思います。
著作権というのは、きちんと特許庁に登録を行う特許権に比べると、権利の存在、範囲について不明確なところがある権利です。そのためきちんと書面で、そのあたりを定めておかないと、今回の相談のようになってしまいがちです。
社長さんも、販売用グッズに無償で使用できることを明確にする契約書等を交わしていたわけではありません。よって、今回のキャラクターを販売用のグッズに使用することを拒むことができ、使用するなら一定の使用料を払うよう求めることができます。

払われない養育費(オール阪神・巨人)

払われない養育費
<相談内容>
離婚調停で、夫が妻に養育費として月々7万円を支払うことになりました。夫は最初の2~3か月は支払ってくれましたが、「振り込むのを忘れた」、「もう少し待ってくれ」と言って養育費を1年近く払ってくれません。何か事情があるのかと思い、夫の同僚に給料が下がったか聞くと、前よりも、多くもらっているはずだと言います。夫が払おうとしない養育費を払ってもらう方法はないのでしょうか?
払われない養育費

【弁護士の見解】

<結論>
払ってもらう方法はある


<解説>
今回のポイントは妻と夫との養育費の取り決めが、家庭裁判所の調停で決めたものによる点です。調停手続きで、養育費の取り決めをした場合、調停調書という書類を作ってもらえます。この調停調書の特徴として、相手が約束通り養育費を支払わない場合に、調停調書に基づいて裁判所に、相手の財産に対して差し押さえなどの強制執行を行ってもらうことが可能です。
このように、家庭裁判所での審判や、公証役場で強制執行できることの約束を付けた公正証書がある場合のほか、通常の裁判所手続きにおいて得られた判決や和解調書などがある場合も、強制執行の申し立てが可能です。
差し押さえを行う財産としては、夫の預金口座でも構いませんし、妻は夫の勤務先を把握していますので、夫の毎月の給料を差し押さえることも可能です。養育費などの扶養義務に基づく債権で、給料を差し押さえる場合は上限があり、給与の手取り額が月額66万円以下であれば、手取り額の2分の1までしか差し押さえできません。
もし勤務先や預金口座が分からない場合だと、せっかくの強制執行ができる調停調書などがあっても、実効性には若干疑問がありました。そこで、今年の5月の国会で民事執行法の改正が決まりました。
調停調書や判決をとっている債権者の申し立てにより、裁判所が相手を呼び出し、どんな財産があるかを説明させることができる「財産開示手続き」が見直されました。相手が財産開示手続きに出頭しなかった場合や、虚偽の説明をした場合には、懲役や罰金などの刑事罰を課すことが可能となりました。また、調停調書や判決だけでなく、公正証書で金銭の支払いを約束した場合にも、この財産開示手続きを利用できるようになります。判明している財産に強制執行しても、全額の弁済が得られないような状況であるときには、裁判所が、金融機関から相手の財産に関する情報を集めることが可能となりました。さらに、養育費や、生命身体の侵害に関する損害賠償請求権の場合に限られますが、市町村などを通じて、相手の給料に関する情報も集めることができるようになります。これらは、遅くとも来年の5月までには施行される予定です。
したがって、夫が払おうとしなくても、これらのように、給料を差し押さえるなどして、養育費をもらう方法があるということになります。


2019年11月9日(土)

 

昨日のお刺身(シンクタンク)

昨日のお刺身
<相談内容>
職場の控室に、紙袋に入ったお刺身が置いてありました。同僚の忘れ物だと思い、「このままではお刺身が傷んでしまう」と事務所の冷蔵庫に保管しました。次の日、「忘れて帰ったお刺身を冷蔵庫に入れておいた」と同僚に伝えると「私じゃない」と言います。それを聞いたもう一人の同僚が「持って行ったのはあなたなの?帰る間際に打ち合せをして戻ったら、紙袋がなくなっていたのよ。おかげでお刺身を2回買うことになったから弁償して!」と言います。弁償しないといけないのでしょうか。
昨日のお刺身

【弁護士の見解】

<結論>
刺身代は弁償する


<解説>
結論を分けるポイントは、刺身を冷蔵庫に入れた行為が「緊急事務管理」として、救済されるかです。
「緊急事務管理」とは、「事務管理」の1つです。この事務管理は(1)本来は他人の事柄で、(2)代わりに行う義務、権利もないのに(3)他人のために、その事柄を処理するときに成立します。要は、事務管理は勝手に行われた一種の「おせっかい」なのですが、民法は、これに一定の権利義務や効果を与えています。そして、身体、名誉又は財産に対して差し迫った危険を免れるために行った事務管理の場合を「緊急事務管理」と呼び、誤ってその人に損害を与えてしまっても、悪意または重い過失がない限り、責任を負わないようになっています。
今回の刺身を買った同僚は、しばらく置いていただけです。なので、勝手に冷蔵庫に入れた点で過失があり、緊急事務管理が成立しなければ、刺身代について賠償義務を負います。
そこで刺身が傷んでしまうなどの差し迫った危険があったかどうかが問題となりますが、今回の場合、室内で少しの時間置いていたにすぎないようですので、あわてて冷蔵庫に入れないといけないような「差し迫った危険」はありませんでした。
したがって、緊急事務管理も成立しませんので、刺身代を弁償しないといけません。

15年前の贈与(オール阪神・巨人)

15年前の贈与
<相談内容>
亡くなった母の遺産を兄妹で相続することになりました。兄は「財産は実家しかない。土地家屋の評価額は3000万円なので、売って1500万円ずつ分けよう」と言いますが、妹は「兄さんは15年前に母から1000万円を生前贈与してもらったから、その分を差し引いて」と主張します。兄の相続分から、生前贈与された分を差し引くことはできるのでしょうか。
15年前の贈与

【弁護士の見解】

<結論>
差し引くことができる


<解説>
民法では、各相続人にどれだけの割合で相続財産が配分されるかという法定相続分が定められています。しかし、生前贈与や遺言で財産を譲り受けた相続人がいる場合、単に法定相続分をあてはめるだけでは、生前贈与を受けた相続人と、そうでない相続人との間に不公平が生じます。
そこで、実際の具体的相続分の算定の際に、生前贈与分を考慮して調整する「特別受益制度」というのがあり、その調整をしないといけない生前贈与を「特別受益」といいます。亡くなった人の意向として、後で調整はしないという意思が明確に示されていれば別ですが、そうでない限りは特別受益にあたる生前贈与に対しては不公平がないよう調整が図られます。
今回の場合に当てはめると、相続人が兄と妹の2人だけなので、通常であれば、法定相続分は2分の1ずつになり、2人の取り分は土地家屋の3000万円の半分の1500万円ずつです。しかし、お兄さんが生前贈与を受けた1000万円は特別受益にあたりますので、相続分の算定をする際の遺産総額は、今ある土地家屋の3000万円だけでなく、生前贈与された1000万円も合算します。そのため、妹さんについては3000万円に加えて1000万円の、合計4000万円に対する2分の1の2000万円が、相続されるべきになります。
一方、お兄さんは総額4000万円の2分の1の2000万円から、生前贈与の1000万円が差し引かれ、結果として相続では1000万円しかもらえないということになります。


2019年11月2日(土)

 

渡してしまったご祝儀(ミヤ蝶美・蝶子)

渡してしまったご祝儀
<相談内容>
去年の暮に友人から披露宴の招待状が届きました。すでに同居はしていますが、2人が交際を始めた日に披露宴を開くそうです。もちろん出席するので、「披露宴の足しにして」と、先にご祝儀の3万円を渡しました。しかし、直前になって「もうあんな男はうんざり。別れるために別居する!」と連絡があり、披露宴はキャンセルに。事前に渡したご祝儀は返してもらえないのでしょうか?
渡してしまったご祝儀

【弁護士の見解】

<結論>
返してもらえる可能性はある


<解説>
ご祝儀を渡すのは、法律的に「贈与」にあたります。書面によらない贈与であっても、すでに履行が済んでいれば撤回はできません。披露宴のご祝儀は、何らかの義務の対価として渡すわけではないので、披露宴をしないことを債務不履行として、贈与契約を解除するということは難しいでしょう。
しかし、贈与を撤回ができる余地が全くないわけではありません。裁判例でも、親族間の贈与について、贈与した人の責によらず、良好な関係がくずれた場合に、民法の信義誠実の原則に照らして、贈与の効果を維持することが不当と認められる場合には、贈与の撤回ができるとする場合があります。
本件では、3万円と少額なので「信義則上の不当」と言えるかどうかは微妙なところですが、披露宴に用立ててもらうためにご祝儀を渡したのに、確定的に披露宴がキャンセルになっていることからすると、贈与の撤回が認められ、返してもらえる可能性があると考えられます。
事情が変わるというのはよくあることですが、その場合、法律的には後から覆せないこともありますので、場面によってはご注意ください。

弟子が仕上げた夫婦茶碗(ザ・ぼんち)

弟子が仕上げた夫婦茶碗

<相談内容>
半年後の銀婚式に妻にプレゼントするため、知り合いの陶芸作家に夫婦茶碗を作ってもらうお願いをしました。先に代金の5万円を支払いましたが、先月、その作家さんが亡くなってしまいました。代わりに弟子でもある一人息子が茶碗を作って届けてくれたのですが、作風も程遠く、イメージしていた物と違います。返品して代金を返してもらえないのでしょうか?

弟子が仕上げた夫婦茶碗

【弁護士の見解】

<結論>
返してもらえる


<解説>
茶碗作成の債務は、依頼された作家本人のみが履行できる一身専属義務であり、亡くなったことで、履行不能となって消滅してしまいます。
一身専属義務とは、その本質上、ある特定の人に専属し、ほかの人に移転することがない義務をいいます。今回のように陶芸作品を創作するとか、画家が絵を描くといったものが典型例です。そして、一身専属の権利や義務は、相続の際に、相続人に引き継がれないと規定されています
今回のケースを民法の規定に当てはめると、履行不能となり、代金を受けとれる権利を失うため、すでに受けとった代金については、返還しなければいけないことになります。この返済義務は、相続の対象となり、相続人である息子さんに対し、不当利得返還請求として、代金の返還を請求できると考えます。
弟子である息子さんが茶碗を作ってくれましたが、あくまで陶芸作家に依頼したのであって、弟子であっても息子さんが製作したのであれば、債務の本来の目的に沿ったものとはいえないので返金しないといけない、ということになります。


2019年10月26日(土)

 

ゴリ押しされた代役(ギャロップ)

ゴリ押しされた代役

<相談内容>
洋食店も営む弘さんは、娘の運動会に行ったときに、保護者が出場する障害物競走で代役を頼まれました。ケガでもしたら大変なので断ると「万が一のことがあったら責任をとる」とゴリ押しされて出場することに。ところが、競技中にハードルに足を引っ掛けて転倒し、1週間店を休むことになりました。休業中の店の損害を賠償してもらえないのでしょうか?

ゴリ押しされた代役

【弁護士の見解】

<結論>
賠償してもらえない


<解説>
代役をお願いするときに「万が一のことがあったら責任をとる」という発言をしていますが、説得のために調子の良いことを言っているだけのようです。
法律的にも「責任をとる」という言葉だけでは、責任の中身は特定されておらず、店の営業損害をはじめとする、損害賠償義務を負うことを約束したものとは評価できないと考えます。
また無理やり出場させられたとありますが、漫才で状況を聞く限りでは、強制されたわけではなさそうですし、ケガの直接の原因は弘さんが「ハードルに足を引っ掛けて転倒」したためなので、相手に法的責任はないと考えます。
今回の状況では、店の休業補償までする義務はないと考えますが、思いつきの発言や、実現できる当てのない発言をした場合、義務として特定され、大きな責任問題になることもありえますので、注意が必要です。

大学に行っていない!?(三吾・美ユル)

大学に行っていない!?

<相談内容>
4年前、海外赴任の際に妻と離婚し、大学への進学を望む高校生の息子のために「4年間の学費も考慮して上乗せした養育費を一括で支払う」と書面で合意しました。
ところが、帰国すると、息子は大学に進学せず、寿司屋の板前として働いていました。それなら養育費を上乗せした分を返してもらえないのでしょうか?

大学に行っていない!?

【弁護士の見解】

<結論>
養育費の返還は認められない可能性が高い


<解説>
養育費は毎月払いが基本であり、子どもの状況や父母の収入に変更があった場合には、増額することも減額することもあり得ます。これに対して、養育費を一括で支払う場合、その後に起こり得る、ある程度の状況の変化も考慮されているのが一般的です。大学に行く行かないというのは、その最たる例ではないでしょうか。
そのため、本来は「大学に進学しなかった場合は、学費相当額として上乗せした分を返還する」といった合意をしておくべきですが、今回は、そのような特別な合意がありませんでした。また、もともと決めていた養育費に、具体的に学費分そのままが上乗せされて、一括払いの額が決まっていたわけでもなさそうですし、双方の公平を著しく害するような事情も伺えません。従って、一度、合意して支払った養育費を返してもらうことは難しいと考えます。
ただし、合意したあとに、当事者が予想することができないような変動があり、そのために、合意の内容をそのままに実現することが不合理であるときには、合意した内容を変更することが認められます。しかし、これを幅広く認めてしまうと、合意の効力が不安定になるので、合意の経緯などを踏まえて慎重に判断されるでしょう。
今回の相談では返してもらえない可能性が高いと考えましたが、子どもの進路や収入の増加は、ある程度予想できることなので、最初に合意するときに、息子さんが大学へ行かなかったときにどうするかを約束していれば、それにしたがって処理できたということになります。


2019年10月5日(土)

 

妻へのおしどり贈与(シンデレラエキスプレス)

妻へのおしどり贈与

<相談内容>
15歳年下の妻と結婚して30年。息子も独立したので、妻が将来も自宅に住み続けることができるよう、元気なうちに、現在、夫婦で住んでいる2000万円相当の自宅を妻に贈与したいと思っています。しかし妻は「いくら夫婦でも贈与税がかかるのでは?」と心配します。本当に税金がかかるのでしょうか?

妻へのおしどり贈与

【弁護士の見解】

<結論>
贈与税はかからない


<解説>
婚姻生活が20年以上の夫婦間で、自宅の贈与が行われた場合、基礎控除に加えて、最高2000万円の控除を認めるという税制上の特例があります。いわゆる「おしどり贈与」とも呼ばれる特例制度です。正式には「贈与税の配偶者控除」制度とよびます。
適用される要件を補足すると、まず、夫婦の婚姻期間が20年を過ぎたあとに贈与が行われたこと。この20年の計算は、切上げをせず、20年未満では適用されませんし、あくまで婚姻届の日付で判断されますのでご注意ください。次に、配偶者から贈与された財産が、居住用不動産を所得するための金銭であることです。さらに、贈与をうけた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産、又は贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が住んでおり、その後も引き続き住む見込みがあることです。
今回のケースは、要件を満たしているので自宅を贈与しても贈与税は課せられません。
ただし、贈与税の配偶者控除を受けるためには、贈与を受けた年の翌年3月15日までに確定申告する必要があり、そのためには不動産を贈与する場合には贈与時の相続税評価額を出す必要があります。事前に税理士に相談されることをおすすめします。
もし贈与後にご主人が亡くなっても、贈与から3年以内であれば、ご主人の相続財産に加算されることはありません。つまり、贈与された財産についての相続税をその時点では払わなくても良いということになります。しかし、相続税はかからなくても、登録免許税や不動産取得税はかかりますので、そもそもご主人が相続税の心配をしないということなら、この制度を利用するのは慎重にした方がよいでしょう。仮に奥様の方が先に亡くなった場合は、贈与した居住用不動産は相続税の対象となります。また、同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか配偶者控除の適用を受けることはできませんので、知っておいてください。

姉が注文していたメガネ(ザ・ぼんち)

姉が注文していたメガネ

<相談内容>
姉が亡くなり、全財産を妹が相続しました。独身の姉は、自由気ままな贅沢三昧だったので、遺産は預貯金の300万円だけでした。ある時、姉の家で遺品整理をしていると「ご注文の品ができあがりました」とメガネ店から連絡があり、フレームに宝石が散りばめられた30万円もするメガネを頼んでいたことが発覚!「オーダーメイドなのでキャンセルはできない」と店に言われましたが、姉の代わりに代金を払わないといけないのでしょうか?

姉が注文していたメガネ

【弁護士の見解】

<結論>
払わないといけない


<解説>
亡くなったお姉さんには、夫も子供もおらず、両親や祖父母も他界しているため、妹さんが相続人になります。
民法は「相続人は亡くなった人の財産に属する一切の権利義務の全てを包括的に承継する」と定めています。したがって亡くなった人の契約上の地位も引き継ぎます。
今回の場合、お姉さんが生前にメガネ店と結んだ契約上の地位についても、相続人である妹さんが引き継ぐことになります。したがって、お姉さんの財産を相続する以上、お姉さんの債務であるメガネを引き取り、代金の30万円を払わなければいけないと考えます。
しかし、一身専属的なものは対象外になります。例えば、画家に絵をかいてもらう契約を結んで、画家が亡くなった場合、画家の相続人が絵を描くという契約上の地位を引き継ぐことはありません。このような一身専属的な場合に限り、契約上の地位は相続されませんので、知っておいてください。


2019年9月28日(土)

 

ハワイ旅行は誰のもの?(学天即)

ハワイ旅行は誰のもの?

<相談内容>
会社の同僚4人とテーマパークに行くことになった雅美さん。幹事として前売り券を買いに行くと、抽選会が行われていたのでメールで同僚に連絡しました。「どうせ当たるわけがないから任せる」と言われ、5回分のくじを引くとハワイ旅行が当選!ところが、雅美さんは同僚から「抽選は任せると言っただけ」と言われてしまいました。雅美さんは、ハワイ旅行には行けないのでしょうか?

ハワイ旅行は誰のもの?

【弁護士の見解】

<結論>
ハワイ旅行には行ける


<解説>
雅美さんが抽選のことを告げた際に、同僚たちが「任せる」と言ったことを、どう解釈するかが問題となります。「任せる」というのは、抽選する権利を雅美さんに譲るという意味であり、法律的には抽選の権利を譲った以上、それから生み出される当選の権利も放棄したと考えるべきです。そして、当選した場合のことを予め決めておかなかったことからも、抽選の権利とともに、当選の権利も譲ったと解釈できます。
また、この種のキャンペーンでは、規約上、当選した権利は当選者のみに帰属し、当選した権利を第三者に譲渡できないと定められていることが多いです。したがって、抽選する権利を持った雅美さんが当選したのですから、ハワイ旅行には当選した雅美さんが行けると考えます。

タイ料理の店じゃなかったの?(酒井くにお・とおる)

タイ料理の店じゃなかったの?

<相談内容>
大島さんは空き地を所有していますが、知人が「あそこにプレハブ小屋を建てて、小さなタイ料理の店を出したい」と何度もお願いしてきたので、その空き地を貸すことにしました。ところが、1年後に店を訪ねると、プレハブ小屋の中がたこ焼き屋になっていて、見ず知らずの人が経営していました。空き地を貸した知人から小屋を借りたというのですが、約束を破った知人との契約を解消し、たこ焼き屋をしている小池さんに出ていってもらうことはできないのでしょうか?

タイ料理の店じゃなかったの?

【弁護士の見解】

<結論>
出て行ってもらえない


<解説>
土地を借りている人が、その借地上にある自分の建物を第三者に貸した場合、借地権の転貸になるのかが問題となります。民法は、貸した人の承諾なく賃借権を譲渡したり、転貸することはできないと規定しています。これは、人によって利用方法が異なることから、勝手な譲渡や転貸を制限するためです。
今回の場合、大島さんの土地を借りている知人が、自ら所有する小屋を第三者に賃貸しても、借地権の転貸にはなりません。小屋は、小屋を建てた人の所有物ですから、自由に使用することができます。自らが使用しても、第三者の小池さんに貸しても、土地の使用方法としての問題ではなく、建物の使用方法の問題ということになります。そのため、知人との契約を解除して、小池さんに出て行ってもらうことはできません。
しかし、建物ではなく、所有者に無断で土地を貸してしまった場合は、賃貸借契約を解除することができます。また、今回の相談でも、店の営業の種類が変わることで、例えば騒音などの近隣への迷惑行為で、土地の貸し主にも影響を及ぼすような場合には、契約を解除できる場合がありますので注意してください。


2019年9月21日(土)

 

思い出の自宅を空撮!(テンダラー)

思い出の自宅を空撮!

<相談内容>
都市の郊外で、最近、住宅地として人口が増えている地域にある、築100年以上の自宅を改築するので、写真を撮って思い出に残したいと思い、自宅の敷地内でドローンを飛ばして空から撮影しようと思いました。ところが「住宅地の中にあるので、勝手にドローンを飛ばせないのでは?」と言われました。自分の土地の上空でも勝手にドローンを飛ばすことはできないのでしょうか?

思い出の自宅を空撮!

【弁護士の見解】

<結論>
人口集中地域に該当すれば勝手には飛ばせません


<解説>
重さが200グラム以上のドローンは、航空法という法律によって「無人航空機」に区分されています。現在、ドローンは撮影や測量、物資の輸送や娯楽など、幅広い利用が考えられていますが、一方で、衝突や落下の危険もあることから、航空法などによって規制が設けられています。航空法では150m以上の上空や、人または家屋が密集している地域、つまり人口が集中している地域など、一定の場所でドローンを飛行させる場合は国土交通大臣の「許可」が、また夜間の飛行や、危険物の輸送などの飛行については、国土交通大臣の「承認」が必要であると定めています。これらの許可や承認を得ずにドローンを勝手に飛行させると、50万円以下の罰金に処せられることがあります。
航空法で飛行が禁止されている人口の集中地域とは、国勢調査をもとに、市区町村の区域のうち、特に人口密度の高い地域をいいます。今回のケースでは、自宅は、人口も増えた住宅地域の中にあるということですから、この人口集中地域に該当する可能性が高いです。詳しくは、インターネットなどで、飛行させる場所が人口集中地域に該当するかどうかを調べることもできます。
今回の相談に限らず、ドローンに関しては、催し場での飛行や夜間飛行など、飛行場所や飛行方法によって、様々な制限があり、これらに加え河川法、自然公園法、電波法、条例などによる制限があります。
また、2020年東京オリンピック・パラリンピック会場などでの飛行も禁じる、改正ドローン規制法が今年の5月に成立しています。ほかにも、ドローンを使って撮影したビデオに近隣の家屋や人物が映り込んだ場合、肖像権やプライバシー権の侵害になることもあるので注意してください。不明な場合は、自分で判断せずに国土交通省および、飛行場所の管理者などに問い合わせることをお勧めします。

離婚前に売られたバッグ(オール阪神・巨人)

結婚前に売られたバッグ

<相談内容>
孝子さんはブランド品のバッグを集めるのが趣味です。ある日、友人の恵子さんから「1年前に譲ってくれると約束したバッグを渡してほしい」と言われました。そんな話に覚えがありませんでしたが、恵子さんは、「結婚式であなたたちと同席したときに、ご主人と約束して代金の5万円をご主人の口座に振り込んだ」と言います。確かにそのバッグは、元夫からのプレゼントですが、離婚して今は音信不通です。恵子さんは、夫が勝手に売ると約束したバッグを渡さないといけないのでしょうか?

結婚前に売られたバッグ

【弁護士の見解】

<結論>
渡さなくてよい


<解説>
ご相談のバッグは、孝子さんが夫からプレゼントされたものですから、あくまで孝子さんの所有に属しています。夫は当時は妻であった孝子さんに無断で、恵子さんに孝子さんのバッグを売却する約束をしたわけですが、夫は、妻ではあっても他人の権利を売買の目的としたということになります。その場合は、民法上、夫は孝子さんからバッグの所有権を譲り受け、権利を取得して恵子さんに引き渡す義務を負うわけです。夫がこの義務を果たせなかった場合は、恵子さんは売買契約を解除して、夫に対して支払った代金の返還を請求することができます。
なお、民法は夫婦の一方が「日常の家事」に関して、他人と取り引きしたような場合は、それによって生じた債務について、夫婦の他の一方も連帯して責任を負うと規定しています。しかし、ここに言う日常の家事とは、食料品の購入や光熱費の負担、医療費や教育関係費など、夫婦、家族の共同生活に必要な内容でなければならず、今回のご相談のようなバッグの売買は、およそ日常の家事に必要な行為ではありません。したがって、恵子さんは孝子さんに対してバッグの引き渡しを求めることはできず、結果として、孝子さんはバッグを渡す必要はないと言うことになります。


2019年9月14日(土)

 

コピーの財産目録(アメリカザリガニ)

コピーの財産目録

<相談内容>
三兄弟で父親の遺産を相続することになりました。父親の遺言書には「長男には、財産目録1の不動産、次男には財産目録2の預金全額、三男には財産目録3の郵便貯金全額を譲る」と書いてあり、財産目録として通帳のコピーが添付され、遺言書の日付は今年の1月15日になっていました。ところが現在の預貯金の残高を確認すると、次男の分は200万円少なく、三男の分は100万円多くなっています。次男は「遺言書に添付されていたコピー通りの金額を分けよう」と言いますが、遺言書通り分けられないのでしょうか?

コピーの財産目録

【弁護士の見解】

<結論>
見解が分かれる可能性はあると思うが、死亡時の残高で「分ける」べき


<解説>
2018年に民法の相続分野についての改正があり、今年の1月13日から、まず遺言の方式に関する改正点が施行されています。以前は、自筆証書遺言について全文を自筆で書く必要がありましたが、これを緩和して、自筆証書遺言に添付する財産目録については、自書でなくてもよいとされました。今回のケースのように通帳のコピーを付ける形も可能です。
ただし、財産目録の各ページに、署名押印することが必要です。今回のケースでは、遺言書の本体の部分は父の自書で押印もあり、財産目録としての登記事項証明書や通帳のコピーの各ページにも、父の署名・押印があれば、遺言書の全体が有効と言えるでしょう。
ただ、今回は、財産目録として添付された通帳のコピーの残高と相続発生時の残高が一致していません。このような場合、遺言した人がどのような考えであったかを突き詰めて考えていくことになります。
通帳の口座番号が印字されたページだけでなく、わざわざ残高が表示されているページのコピーを付けたことを重視するかどうかで、見解が分かれると思います。
遺言の方式を緩和する規定が施行されたばかりなので、この問題について裁判例の蓄積がありませんが、遺言書に載せた財産でも遺言者が使うことはできるため、預金残高が変わる可能性が高いと言えると思います。そのようなことを考慮すると、通帳のコピーの残高ではなく、死亡時の残高を分けることになるのではないかと考えます。

家賃を払っただけなのに…(川上じゅん)

家賃を払っただけなのに…

<相談内容>
先日、父親が亡くなり、父親が住んでいたマンションの整理をしていると、大家さんから「お父さんが家賃を3か月分滞納している。すぐに払ってほしい」と言われました。お金がないので、手続きを踏んで、父親の口座から引き出したお金で、父親が滞納した家賃を払うと考えていますが、自営業をしていた父には多額の負債がある可能性もあります。父親の預金を使ってしまうと、相続放棄できないのでしょうか?

家賃を払っただけなのに…

【弁護士の見解】

<結論>
相続放棄できない可能性が高い


<解説>
相続人は、所定の期間内に相続放棄をすることができますが、何の留保もつけずに相続を受け入れることを単純承認といいます。単純承認すると、被相続人の債務についても無限の責任を負うことになり、その後は原則として相続放棄をすることはできません。
相続を受け入れます、という積極的な意思表示がなくても「相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき」には、単純承認したとみなされてしまいます。
そして、父の預金を自分のためにではなく、父が未払いの家賃の支払いに充てる場合であっても、相続財産を処分したことになり、相続放棄が認められない可能性が高いと考えます。
なお、今回の相談であったように、現在は一定の手続きをすれば、亡くなった方の預貯金を引き出すことができるようになりました。ただし、限度額もありますので、注意が必要です。

デジタル遺産の行方は?(三吾・美ユル)

デジタル遺産の行方は?

<相談内容>
さとみさん家族は、5年前に亡くなった父親に、借金が300万円あることがわかったので、父の財産を、相続人全員が相続放棄しました。しかし最近になって、父親にデジタル遺産があることが判明!インターネット上の株式で、今売るとその価値は500万円以上になるそうですが、母親に聞くと「年に1回くらい、どこかの会社からお父さんに書類が届いていた」と言い、気にとめていませんでした。今からデジタル遺産の株を相続人で分けることはできないのでしょうか?

デジタル遺産の行方は?

【弁護士の見解】

<結論>
できない可能性が高い


<解説>
さとみさん家族が相続放棄をしたのは父に負債があったからということですが、その後、多額の財産があったことが判明したという理由で、相続放棄を無効にできるでしょうか。
確かに、裁判例の中には、動機の錯誤を理由に、相続放棄を無効とするものもあります。しかし、相続放棄は原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3年以内にすればよく、この間に財産関係を調査することが可能であったと言えます。また、重大な過失があった場合には、そもそも錯誤無効の主張ができません。
今回も、1年に1回くらい株式に関する通知が来ていたようで、重過失が認められる可能性も高いと考えられます。したがって、結果として父の株式を取得することはできないと考えます。


2019年9月7日(土)

 

宿泊料はポイントで?(幸助・福助)

宿泊料はポイントで?

<相談内容>
新太郎君は、貯まったポイントを使い、友人の田中君を誘って旅行に行くことにしました。ところが、当日、田中君は怪我をして旅行をキャンセルしたので、新太郎君が一人で行くと、ホテルからキャンセル料を請求されました。キャンセル料はポイントで払うことができなかったので、田中君にキャンセル料を払ってほしいというと、「宿泊料は君のポイントで払うという約束だったのだから、キャンセル料も払ってほしい」と言われました。田中君に払ってもらうことはできないのでしょうか?

宿泊料はポイントで?

【弁護士の見解】

<結論>
払ってもらえる


<解説>
当日になって旅行に行けなくなったのは、田中さんの事情によるわけですから、当然適正なキャンセル料の支払い義務が発生します。
田中さんの宿泊費は新太郎さんが、自分が貯めたポイントで払うといっていたわけですが、宿泊をキャンセルする場合、予約サイトの規約によってポイントをキャンセル料に充当できる場合とできない場合があります。今回のケースでは、新太郎さんはポイントをキャンセル料に充当できなかったので、田中さんに負担するように求めたわけです。
新太郎さんが、宿泊費を負担すると言った以上は、キャンセル料も負担すると考えられそうですが、キャンセル料は違約したことで部屋が空いてしまったことによる損害金であり、ポイントの利用というのは宿泊の対価に相当するサービスの一環であって、両者は厳密には同じ性質のものではありません。田中さんが怪我で旅行に行けなくなり、宿泊できなくなるとは、新太郎さんも予想ができなかったことで、そのような場合に、新太郎さんがキャンセル料まで負担するという合意は2人の間でなかったはずです。
したがって、キャンセル料については、田中さんから支払ってもらうことができると考えます。信頼関係を壊さないためにも、負うべき責任の範囲を、約束するときに明確にしておくことが大切です。

桜の木がなくなった!(オール阪神・巨人)

桜の木がなくなった!

<相談内容>
中村さんは、庭に立派な桜の木がある前田さんの土地を気に入り、買うことにしました。前田さんに建物を取り壊して、更地にしてもらった上で、引き渡してもらうことになっていましたが、更地にする工事中に、桜の木が折れて抜かれてしまいました。「桜が気に入ったから庭を含めて買い取った。桜を植える金額を弁償してほしい」と前田さんに言うと、「まだ代金を受け取っていないし、引き渡すまでは庭も桜も私のものだから弁償しない」と言われました。弁償してもらうことはできないのでしょうか?

桜の木がなくなった!

【弁護士の見解】

<結論>
弁償してもらえない


<解説>
中村さんと前田さんとの土地の売買契約は、代金を払っていなくても、また、引き渡しを受けていなくても有効に成立しています。庭木は土地の定着物であって、土地の一部として扱われます。したがって原則的に土地の所有権移転と同時に桜の木の所有権も移転します。民法の建前は、不動産の売買契約締結と同時に、不動産の所有権が買い主に移転するという考え方ですが、現実は、相手がちゃんと履行してくれるのかという不安を取り除くために、不動産の引き渡しと代金の支払いとを同時引き換えにして、その時に所有権が移転して、登記手続もすると合意するのが通常です。
今回も、前田さんが建物を取り壊したうえで、土地を引き渡すという約束をしているので、所有権の移転は、後日、代金支払いと引き換えにしていたと考えられ、それまでは、不動産の所有権は、桜の木とともに前田さんに帰属していることになります。
また、今回のケースでは、売買契約にあたって、桜の木を切らずに引き渡す約束や、桜の木の代金が、売買代金の中に別個に算定されていた事情までは認められません。売り主である前田さんは、家を解体するという条件を守って土地さえ引き渡せばよく、庭の状態については、特別な約束をしていない以上、現状で引き渡せばいいということになります。したがって、前田さんに桜の木を植える代金を支払ってもらうことはできません。


2019年8月31日(土)

 

見られなかったオペラ(チキチキジョニー)

見られなかったオペラ

<相談内容>
「チケットが1枚余っているから一緒に行って、お願い!」とユカリさんから頼まれた由美さんは、アルバイトを休んでオペラを一緒に見に行くことにしました。ところが、チケットを持っているユカリさんの乗っている電車が止まって間に合わず、オペラを見ることができませんでした。「頼まれて行ったんだから、アルバイト代を補てんしてほしい」と思うのですが、アルバイト代は補てんしてもらえないのでしょうか?

見られなかったオペラ

【弁護士の見解】

<結論>
補てんしてもらえません


<解説>
ユカリさんは由美さんをオペラに誘い、公演当日、会場でチケットを渡す約束をしていました。では、この約束が守られなかったことを理由に、ユカリさんに損害賠償請求をすることができるでしょうか。
約束違反である債務不履行に基づく損害賠償請求が認められるためには、債務者の「帰責事由」、つまり、ユカリさんに落ち度があって債務が履行できなかったという事情が必要です。本件の場合、ユカリさんが開演までに到着できなかったのは、電車が止まってしまったためで不可抗力によるものといえます。
つまり、ユカリさんには帰責性がないため、由美さんはユカリさんに対し、アルバイト代を払ってもらうことはできないと考えます。

小島弁護士の「一刀両断」ポイント
「不可抗力に備えた対策も」
不可抗力とは、外部から発生したトラブルで予防方法を講じても、なお防げないものをいいます。自然災害が典型例ですが、どこまで含むのか曖昧な部分もあります。最近は自然災害も多く、そのような場合の処理が注目されるようになっています。

借家に取り付けたエアコン(ザ・ぼんち)

借家に取り付けたエアコン

<相談内容>
古いワンルームのアパートに住んでいますが、もともと部屋にエアコンが設置しておらず蒸し風呂状態で過ごしていたので、たまらなくなって今年は、大家さんに許可を得て工事を実施し、エアコンを設置しました。ところが急に転勤することになりました。引っ越し先の社宅は冷暖房完備です。エアコンが不要になったので、大家さんに買い取ってもらうことはできるのでしょうか?

借家に取り付けたエアコン

【弁護士の見解】

<結論>
今回のケースでは、特約がない限り買い取ってもらえると考えます。


<解説>
建物の賃貸借のルールを定めた借地借家法には、造作買取請求権があります。
貸主の同意を得て建物に付け加えた造作がある場合、建物の借り主は賃貸借契約が期間満了や解約申し入れによって終了するときに、貸主に時価で買い取ることを請求できるというものです。造作とは、建物に取り付けられた借り主の所有物のうち、建物の価値を客観的に高めるものをいいます。
今回のケースでは、エアコンを取り付けることを想定していない建物に、大家さんの同意を得てエアコンを取り付けています。賃貸借契約を借り主からの申し入れによって解約することになりましたので、造作買取請求権を行使してエアコンを時価で買い取るよう請求することができます。
ただし、造作買取請求権は、特約で排除することができます。そのため、契約上、造作買取請求権が認められないという特約があれば、請求できないということになります。
なお、簡易裁判所の裁判例ではエアコンを造作と認めなかったものがあります。タワーマンションに3台のエアコンを取り付けた事例で、もともとエアコンを設置するためのコンセントやスリープが設けられており、室外機も容易に取り付けることが可能だったタワーマンションに3台のエアコンを取り付けた事例でした。
このように、建物の状況や契約時の事情によるところも大きいので、実際のケースでは、造作に当たるかどうかに関しても留意が必要といえるでしょう。


2019年8月24日(土)

 

裁判に負けたら払うの?(スーパーマラドーナ)

裁判に負けたら払うの?

<相談内容>
お隣の庭の松の木の枝が塀を越えて、山本さんの家の敷地に出てきているのに、頼んでも剪定をしてもらえないどころか、「文句ばかり言うクレーマー」とご近所に言いふらされて困っています。山本さんは「こうなったら裁判だ。弁護士に相談する」と妻に宣言しましたが、「もし負けたら、裁判や弁護士の費用を全部払わされるんでしょ」と妻に言われました。本当に、裁判に負けた方が、裁判に関する費用を全額払わないといけないのでしょうか?

裁判に負けたら払うの?

【弁護士の見解】

<結論>
弁護士費用は払わなくてもよい


<解説>
日本の民事訴訟法では、「訴訟費用」は敗訴者が負担すると規定されています。そのため、判決では負けた方が訴訟費用を負担することも言い渡されます。ただし、ここでいう「訴訟費用」とは、訴訟を提起するときに裁判所に納める印紙や、郵券、鑑定をするときの予納金、などの費用を言い、当事者が弁護士に払う弁護士費用は、この訴訟費用には含まれていません。
ただし、不法行為責任に基づく損害賠償請求を提起する場合に限っては、少し例外があります。立証の難しさから弁護士に頼むことも当然必要であろうという考えから、判例上、一定額の弁護士費用も、不法行為と因果関係のある損害だと認められています。そのため、原告が実際に払う金額の一部となるかもしれませんが、判決で、原告の弁護士費用も、負けた被告が払うよう命じられることがあります。
しかし、これは、あくまで不法行為責任で訴えた原告側の弁護士費用の話であり、他の場合で相手が依頼した弁護士費用を、当然に負けた方が払うというような法制度は、わが国では採用されていません。
もちろん、明らかな不当訴訟を提起してしまうと、後日、相手から相手の弁護士費用を請求される余地は全くないわけではありませんが、今回のご相談に関しては明らかな不当訴訟ではありません。
したがって、仮に山本さんが負けたとしても、お隣が頼んだ弁護士費用までを払うことはありません。

まさかの臨時休業(河邑ミク)

<相談内容>
オーダーメイドで購入したパソコンの調子が悪くなったので、保証期間が切れる2日前にお店に持っていくと、「社員研修のため臨時休業」の貼り紙があり、お店は休業していました。休業明けに出直すと、「保証期間が過ぎているので有料修理になります」と言われましたが、修理は保証期間の対象にならないのでしょうか?

【弁護士の見解】

<結論>
今回のケースでは、保証の対象になります


<解説>
今回のように、当事者が決めた最終日が休日にあたる場合、民法142条に定められた「期間の満了日の特例」を使って判断されます。この民法の規定では、期間の末日が日曜日や休日にあたるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限って、期間はその休日の翌日に満了する、すなわち1日延長されるということとされています。
この規定でいう休日とは、通常は、国民の祝日に関する法律で定められた休日であったり、土曜日、それから年末や正月などを指します。しかし、今回のような社員研修でお店を閉めている日なども、一種の取引をしない慣習がある休日とも言えますので、保証期間の最終日の解釈にあたっても、先ほどの民法の規定が適用されると考えます。

したがって、今回の保証期間の最終日は、研修明けの日まで延長されますので、卓さんは無料で修理してもらえると考えます。

他人の管理費なのに…(酒井くにお・とおる)

他人の管理費なのに…

<相談内容>
若手芸人の英治君が、中古の分譲マンションを探していたところ、間取りや立地で希望通りの物件が見つかりました。ところが、前の住人が月々2万円の管理費を3年間滞納していることがわかりました。知り合いから、「購入するなら滞納分を引き継がないといけないのじゃないの?」と言われましたが、英治君は引き継いで払わなければいけないのでしょうか?

他人の管理費なのに…

【弁護士の見解】

<結論>
本件では払う必要はありません


<解説>
今回のマンションのように、区分所有法に基づいて特殊な所有権が認められている不動産については、区分所有法上、管理費のように管理規約に基づいて区分所有者が負担する債務についても、特別の扱いがなされています。
具体的には、管理費の滞納がある物件を譲渡された場合、その譲渡を受けた譲受人が、この滞納管理費の支払義務を承継することになっています。しかし、滞納管理費の承継がなされるとしても、元の所有者が滞納管理費の支払い義務を免れるわけではありません。元の所有者と譲受人、双方が、責任を負い続ける、そういう状態になるだけです。
先ほどの区分所有法の規定も、あくまで元の所有者が払ってくれない場合に、回収を確保するための規定であり、元の所有者から回収が可能であれば、何も払う必要はありません。そのため、実際の売買代金の決済においても、物件の譲受人がマンションの売買代金自体を払って、元の所有者はその代金から管理組合に滞納分を払う。そうすることで滞納管理費は精算されるのが通常です。
したがって、滞納額が売買代金の金額を超えない限りは、英治さんは、代金さえ払えばよく、別途、滞納管理費を払う必要はありません。


2019年8月17日(土)

 

余ってしまったチケット(アルミカン)

余ってしまったチケット

<相談内容>
劇場の先行発売で、苦労して人気ミュージカルのチケットを手に入れたのに、都合がわるくなって行けなくなりました。定価に手間賃として2000円の実費だけを加えて、SNSで買い手を探していますが、転売することはできないのでしょうか?

余ってしまったチケット

【弁護士の見解】

<結論>
転売できません


<解説>
チケットを販売している主催者や、主催者からチケットの販売の委託を受けている大手の販売会社の規定を見てみると、多くの場合、営利目的や、もしくはチケットの券面額より高い価格で転売することを禁止しています。例えば、発券手数料とかチケットの配送料といった、実際にかかる実費、それを上乗せする場合は別ですが、手間賃のようなものを上乗せしてしまうと券面額より高い価格での転売となってしまいます。
また、特に電子チケットの場合がそうですが、チケットによっては、転売価格の安い高いに関係なく、第三者への譲渡自体を禁止している場合もありますので、各会社のチケットの規定、もしくはチケットの裏面自体をよく確認するようにしてください。

民事上では、以前から禁止されていましたが、今回、刑事罰で転売を禁止する「チケット不正転売禁止法」という法律が、今年の6月から施行されています。この法律は、最近インターネットでやたらと高いチケットの転売が横行していることを背景に制定されたものですが、「業」として、主催者の同意なくして、販売価格を超える価格で転売する行為を主に取り締まっている法律です。
今回の高橋さんのような一般人の場合、販売価格を超えたとしても、1回きりの転売として、「業として」の要件を満たさないという可能性もありますが、仮に転売が1回や2回であったとしても、今後繰り返す意思があったと評価されれば、「業」としての転売と認められ、やはり処罰の対象になります。

財産分与に期限あり?(玉田玉秀斎)

財産分与に期限あり?

<相談内容>
離婚した夫から、自宅を売った売却額の半分を分けてもらえるはずでしたが、「なかなか良い買い手が見つからないんだ」と言って、1年経っても売る気配がありません。このままだと、約束が時効になって、財産分与してもらえなくなるのではないかと心配です。財産分与にも期限があるのでしょうか?

【弁護士の見解】

<結論>
期限はあるが、本件では問題ありません。


<解説>
離婚時の財産分与については、二人の間で協議が整わなければ、家庭裁判所で決めてもらうことができます。この家庭裁判所への申立は、離婚から2年以内にする必要があります。
この期間制限は、正確には「時効」ではなくて、「除斥(じょせき)期間」と呼ばれるものです。で、誤解されることが多いのですが、2年以内に相手に財産分与を請求していれば、家庭裁判所への申立が2年を過ぎてもよくなるというわけではなく、家庭裁判所への申立期限は何があっても、離婚から2年以内ですので注意が必要です。
今回のご相談の場合、家庭裁判所に決めてもらわなくても、すでに、自宅を売却して代金を折半するという内容で、協議が成立している事案です。したがって、2年という期間制限は関係ありません。もちろん、財産分与に関する約束自体が時効にかかることはありますが、その約束について時効期間がスタートするのは、自宅を売却して代金を折半できる状態になってからの話です。今回のご相談では、まだ財産分与の約束の期限がスタートしていませんので、心配する必要はありません。

強風で飛ばされたお札(シンクタンク)

強風で飛ばされたお札

<相談内容>
小高い丘の上にあるバザー会場の模擬店で、タンクさんが、2つで1000円の飲み物を注文しました。「お代はテーブルに置いてください。すぐに取りに来ますから」と言われたので、お札をテーブルに置いた瞬間、強風でお札が吹き飛ばされ、あっという間に丘の下に!この場合、代金を払ったことになるのでしょか?それとももう1回払わないといけないのでしょうか?

強風で飛ばされたお札

【弁護士の見解】

<結論>
払ったことになりますが、一定額の賠償義務があります。


<解説>
代金を払ったことになるかどうかは、テーブルにお札を置いた時点で「弁済の提供」と言えるかどうかです。この「弁済の提供」とは、債務の履行において、債権者の受領行為を必要とする場合に、債務者がなすべき行為のことをいいます。どんなことをすれば、債務者つまり、今回であれば買主がなすべきことをしたと言えるかは、売主の受領の仕方によって変わってきます。
今回のご相談の場合、お店の人が、タンクさんが座っているテーブルの上にお金を置いてくださいと指示したのですから、お店の受領行為を前提とすれば、テーブルにお金を置くことにより、弁済の提供すなわち、やるべきことをやったということになります。したがって、タンクさんは、代金自体はもう払う必要はありません。
ただし、今回はお札だったのですから、ちょっと風が吹けば飛んでしまう危険があったはずです。そうすれば、重しを置くなど、飛ばないための工夫をしなかった点で、タンクさんには過失があり、飛んでいった千円札について弁償義務が発生します。
しかし、代金の受領の仕方について、お店の指示にもかなり落ち度があったわけですから、いわゆる過失相殺により、タンクさんの弁償義務の範囲は千円全額ということにはなりません。したがってタンクさんは、いくらかは弁償しないといけないと考えます。


2019年8月10日(土)

 

家賃を下げてほしいけど…(なすなかにし)

家賃を下げてほしいけど…

<相談内容>
登山道で土地と建物を借りて人気のカフェを経営している佐々木さん。ところが、半年前からカフェの近くでクマの目撃情報があり、お客さんが減ってカフェの売り上げが激減しました。地主さんには毎月15万円で借りていましたが、事情を説明して、しばらくの間、家賃を下げてほしいと相談すると「家賃とカフェの経営状態は関係がないから無理」と言われました。家賃は下げてもらえないのでしょうか?

家賃を下げてほしいけど…

【弁護士の見解】

<結論>
下げてもらえる可能性が高い

<解説>
契約した以上、契約内容を守ることは当然ですが、「事情変更の原則」と言って、契約の基礎としていた事情が大きく変わり、それが当事者に責任がなく、かつ予見できなかった場合、今までの契約内容で拘束することが、民法の信義誠実の原則に照らして、著しく不当と言えるとき、契約内容の変更が認められる場合があります。
そのあらわれの一つが、家賃の増額や減額の制度です。借地借家法は、土地建物にかかる租税や価格、その他の経済事情の変動や近隣の同様の建物の家賃の変動などをみて、今の賃料が不相当となったときは、特約がない限り、家主は賃料の増額を、賃借人は減額を求めることができると定めています(同法32条1項)。実際には、これらの事実のほか、今までの賃貸借の経緯や、どのようにして賃料を決めてきたのか、その賃料の推移や建物の現況など、いろいろな事情を総合的に考慮することになります。
今回のカフェと比較できる賃貸物件が近隣にない場合でも、カフェの売上高を元に賃料を決めてきた経緯があり、租税や物件価格の変動状況を見ても、賃料が高額に過ぎると言える場合には、佐々木さんの減額請求が認められる可能性が高いと考えます。

林弁護士の“もうちょっと一言”
「未解決を理由にする賃料不払いは認められません!」

賃料の増額や減額の交渉で結論が出るまでの間、賃料額が決着していないからと言って、賃料を支払わなければ、不払いを理由に、賃貸借契約を解除されることがあります。注意しましょう。

株取り引きはパソコンで(オール阪神・巨人)

株取り引きはパソコンで

<相談内容>
お父さんの預貯金500万円と株を相続した優子さん。株はパソコンで取り引きしていたようなので、パソコンを相続したお兄さんに調べておいてと頼みました。ところが、お兄さんが調べてもなかなかわからないので、詳しい人に頼んで調べてもらったところ、お父さんが亡くなった当時500万円だった株の価値が100万円に下がっています。差額をいくらかでも弁償してもらえないのでしょうか?

株取り引きはパソコンで

【弁護士の見解】

<結論>
弁償してもらえない

<解説>
今回の相談は、いわゆる「デジタル遺産」の一つであるネット証券取引の内容を知るため、優子さんがお兄さんに「パソコンの中を調べてね」と依頼したわけですが、依頼の内容をどのように評価するかが考え方のポイントとなります。
優子さんの依頼をお兄さんが了解しており、2人の間には、一種の委任契約が成立していると考えた場合、無償の依頼であっても、お兄さんには、誠実に調査すると言う善良な管理者としての注意義務があり、この義務に違反して優子さんに損害を与えれば、賠償責任を負うことになります。
しかし、2人の間で委任契約が成立していたと言えるかは問題です。兄妹の関係の中での無償の依頼であり、優子さんとお兄さんとの間で、いつまでに調査を終えるかの合意もしていなかったようです。そうすると、今回の依頼は、2人の間で単に兄妹の間の好意的な関係の間で留めるという意思があっただけで、これを法律上の契約関係にまで高めると言う意思まではなかったとも考えられます。
仮に委任契約がきちんと成立しているとしても、お兄さんはパソコン解析の専門家でもなく、調べようとしてもよくわからなかったと見受けられます。また、株価の変動についても素人には予想が難しいわけですから、お兄さんは善良な管理者としての注意義務に違反したとまでは言えないと考えます。
したがって、いずれにしても優子さんは、お兄さんに弁償、つまり損害賠償を求めることまではできないと考えます。

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