2019年8月31日(土)

 

見られなかったオペラ(チキチキジョニー)

見られなかったオペラ

<相談内容>
「チケットが1枚余っているから一緒に行って、お願い!」とユカリさんから頼まれた由美さんは、アルバイトを休んでオペラを一緒に見に行くことにしました。ところが、チケットを持っているユカリさんの乗っている電車が止まって間に合わず、オペラを見ることができませんでした。「頼まれて行ったんだから、アルバイト代を補てんしてほしい」と思うのですが、アルバイト代は補てんしてもらえないのでしょうか?

見られなかったオペラ

【弁護士の見解】
<結論>補てんしてもらえません

<解説>
ユカリさんは由美さんをオペラに誘い、公演当日、会場でチケットを渡す約束をしていました。では、この約束が守られなかったことを理由に、ユカリさんに損害賠償請求をすることができるでしょうか。
約束違反である債務不履行に基づく損害賠償請求が認められるためには、債務者の「帰責事由」、つまり、ユカリさんに落ち度があって債務が履行できなかったという事情が必要です。本件の場合、ユカリさんが開演までに到着できなかったのは、電車が止まってしまったためで不可抗力によるものといえます。
つまり、ユカリさんには帰責性がないため、由美さんはユカリさんに対し、アルバイト代を払ってもらうことはできないと考えます。

小島弁護士の「一刀両断」ポイント
「不可抗力に備えた対策も」
不可抗力とは、外部から発生したトラブルで予防方法を講じても、なお防げないものをいいます。自然災害が典型例ですが、どこまで含むのか曖昧な部分もあります。最近は自然災害も多く、そのような場合の処理が注目されるようになっています。

借家に取り付けたエアコン(ザ・ぼんち)

借家に取り付けたエアコン

<相談内容>
古いワンルームのアパートに住んでいますが、もともと部屋にエアコンが設置しておらず蒸し風呂状態で過ごしていたので、たまらなくなって今年は、大家さんに許可を得て工事を実施し、エアコンを設置しました。ところが急に転勤することになりました。引っ越し先の社宅は冷暖房完備です。エアコンが不要になったので、大家さんに買い取ってもらうことはできるのでしょうか?

借家に取り付けたエアコン

【弁護士の見解】
<結論>
今回のケースでは、特約がない限り買い取ってもらえると考えます。

<解説>
建物の賃貸借のルールを定めた借地借家法には、造作買取請求権があります。
貸主の同意を得て建物に付け加えた造作がある場合、建物の借り主は賃貸借契約が期間満了や解約申し入れによって終了するときに、貸主に時価で買い取ることを請求できるというものです。造作とは、建物に取り付けられた借り主の所有物のうち、建物の価値を客観的に高めるものをいいます。
今回のケースでは、エアコンを取り付けることを想定していない建物に、大家さんの同意を得てエアコンを取り付けています。賃貸借契約を借り主からの申し入れによって解約することになりましたので、造作買取請求権を行使してエアコンを時価で買い取るよう請求することができます。
ただし、造作買取請求権は、特約で排除することができます。そのため、契約上、造作買取請求権が認められないという特約があれば、請求できないということになります。
なお、簡易裁判所の裁判例ではエアコンを造作と認めなかったものがあります。タワーマンションに3台のエアコンを取り付けた事例で、もともとエアコンを設置するためのコンセントやスリープが設けられており、室外機も容易に取り付けることが可能だったタワーマンションに3台のエアコンを取り付けた事例でした。
このように、建物の状況や契約時の事情によるところも大きいので、実際のケースでは、造作に当たるかどうかに関しても留意が必要といえるでしょう。


2019年8月24日(土)

 

裁判に負けたら払うの?(スーパーマラドーナ)

裁判に負けたら払うの?

<相談内容>
お隣の庭の松の木の枝が塀を越えて、山本さんの家の敷地に出てきているのに、頼んでも剪定をしてもらえないどころか、「文句ばかり言うクレーマー」とご近所に言いふらされて困っています。山本さんは「こうなったら裁判だ。弁護士に相談する」と妻に宣言しましたが、「もし負けたら、裁判や弁護士の費用を全部払わされるんでしょ」と妻に言われました。本当に、裁判に負けた方が、裁判に関する費用を全額払わないといけないのでしょうか?

裁判に負けたら払うの?

【弁護士の見解】
<結論>弁護士費用は払わなくてもよい

<解説>
日本の民事訴訟法では、「訴訟費用」は敗訴者が負担すると規定されています。そのため、判決では負けた方が訴訟費用を負担することも言い渡されます。ただし、ここでいう「訴訟費用」とは、訴訟を提起するときに裁判所に納める印紙や、郵券、鑑定をするときの予納金、などの費用を言い、当事者が弁護士に払う弁護士費用は、この訴訟費用には含まれていません。
ただし、不法行為責任に基づく損害賠償請求を提起する場合に限っては、少し例外があります。立証の難しさから弁護士に頼むことも当然必要であろうという考えから、判例上、一定額の弁護士費用も、不法行為と因果関係のある損害だと認められています。そのため、原告が実際に払う金額の一部となるかもしれませんが、判決で、原告の弁護士費用も、負けた被告が払うよう命じられることがあります。
しかし、これは、あくまで不法行為責任で訴えた原告側の弁護士費用の話であり、他の場合で相手が依頼した弁護士費用を、当然に負けた方が払うというような法制度は、わが国では採用されていません。
もちろん、明らかな不当訴訟を提起してしまうと、後日、相手から相手の弁護士費用を請求される余地は全くないわけではありませんが、今回のご相談に関しては明らかな不当訴訟ではありません。
したがって、仮に山本さんが負けたとしても、お隣が頼んだ弁護士費用までを払うことはありません。

まさかの臨時休業(河邑ミク)

<相談内容>
オーダーメイドで購入したパソコンの調子が悪くなったので、保証期間が切れる2日前にお店に持っていくと、「社員研修のため臨時休業」の貼り紙があり、お店は休業していました。休業明けに出直すと、「保証期間が過ぎているので有料修理になります」と言われましたが、修理は保証期間の対象にならないのでしょうか?

【弁護士の見解】
<結論>
今回のケースでは、保証の対象になります

<解説>
今回のように、当事者が決めた最終日が休日にあたる場合、民法142条に定められた「期間の満了日の特例」を使って判断されます。この民法の規定では、期間の末日が日曜日や休日にあたるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限って、期間はその休日の翌日に満了する、すなわち1日延長されるということとされています。
この規定でいう休日とは、通常は、国民の祝日に関する法律で定められた休日であったり、土曜日、それから年末や正月などを指します。しかし、今回のような社員研修でお店を閉めている日なども、一種の取引をしない慣習がある休日とも言えますので、保証期間の最終日の解釈にあたっても、先ほどの民法の規定が適用されると考えます。

したがって、今回の保証期間の最終日は、研修明けの日まで延長されますので、卓さんは無料で修理してもらえると考えます。

他人の管理費なのに…(酒井くにお・とおる)

他人の管理費なのに…

<相談内容>
若手芸人の英治君が、中古の分譲マンションを探していたところ、間取りや立地で希望通りの物件が見つかりました。ところが、前の住人が月々2万円の管理費を3年間滞納していることがわかりました。知り合いから、「購入するなら滞納分を引き継がないといけないのじゃないの?」と言われましたが、英治君は引き継いで払わなければいけないのでしょうか?

他人の管理費なのに…

【弁護士の見解】
<結論>
本件では払う必要はありません

<解説>
今回のマンションのように、区分所有法に基づいて特殊な所有権が認められている不動産については、区分所有法上、管理費のように管理規約に基づいて区分所有者が負担する債務についても、特別の扱いがなされています。
具体的には、管理費の滞納がある物件を譲渡された場合、その譲渡を受けた譲受人が、この滞納管理費の支払義務を承継することになっています。しかし、滞納管理費の承継がなされるとしても、元の所有者が滞納管理費の支払い義務を免れるわけではありません。元の所有者と譲受人、双方が、責任を負い続ける、そういう状態になるだけです。
先ほどの区分所有法の規定も、あくまで元の所有者が払ってくれない場合に、回収を確保するための規定であり、元の所有者から回収が可能であれば、何も払う必要はありません。そのため、実際の売買代金の決済においても、物件の譲受人がマンションの売買代金自体を払って、元の所有者はその代金から管理組合に滞納分を払う。そうすることで滞納管理費は精算されるのが通常です。
したがって、滞納額が売買代金の金額を超えない限りは、英治さんは、代金さえ払えばよく、別途、滞納管理費を払う必要はありません。


2019年8月17日(土)

 

余ってしまったチケット(アルミカン)

余ってしまったチケット

<相談内容>
劇場の先行発売で、苦労して人気ミュージカルのチケットを手に入れたのに、都合がわるくなって行けなくなりました。定価に手間賃として2000円の実費だけを加えて、SNSで買い手を探していますが、転売することはできないのでしょうか?

余ってしまったチケット

【弁護士の見解】
<結論>転売できません

<解説>
チケットを販売している主催者や、主催者からチケットの販売の委託を受けている大手の販売会社の規定を見てみると、多くの場合、営利目的や、もしくはチケットの券面額より高い価格で転売することを禁止しています。例えば、発券手数料とかチケットの配送料といった、実際にかかる実費、それを上乗せする場合は別ですが、手間賃のようなものを上乗せしてしまうと券面額より高い価格での転売となってしまいます。
また、特に電子チケットの場合がそうですが、チケットによっては、転売価格の安い高いに関係なく、第三者への譲渡自体を禁止している場合もありますので、各会社のチケットの規定、もしくはチケットの裏面自体をよく確認するようにしてください。

民事上では、以前から禁止されていましたが、今回、刑事罰で転売を禁止する「チケット不正転売禁止法」という法律が、今年の6月から施行されています。この法律は、最近インターネットでやたらと高いチケットの転売が横行していることを背景に制定されたものですが、「業」として、主催者の同意なくして、販売価格を超える価格で転売する行為を主に取り締まっている法律です。
今回の高橋さんのような一般人の場合、販売価格を超えたとしても、1回きりの転売として、「業として」の要件を満たさないという可能性もありますが、仮に転売が1回や2回であったとしても、今後繰り返す意思があったと評価されれば、「業」としての転売と認められ、やはり処罰の対象になります。

財産分与に期限あり?(玉田玉秀斎)

財産分与に期限あり?

<相談内容>
離婚した夫から、自宅を売った売却額の半分を分けてもらえるはずでしたが、「なかなか良い買い手が見つからないんだ」と言って、1年経っても売る気配がありません。このままだと、約束が時効になって、財産分与してもらえなくなるのではないかと心配です。財産分与にも期限があるのでしょうか?

【弁護士の見解】
<結論>期限はあるが、本件では問題ありません。

<解説>
離婚時の財産分与については、二人の間で協議が整わなければ、家庭裁判所で決めてもらうことができます。この家庭裁判所への申立は、離婚から2年以内にする必要があります。
この期間制限は、正確には「時効」ではなくて、「除斥(じょせき)期間」と呼ばれるものです。で、誤解されることが多いのですが、2年以内に相手に財産分与を請求していれば、家庭裁判所への申立が2年を過ぎてもよくなるというわけではなく、家庭裁判所への申立期限は何があっても、離婚から2年以内ですので注意が必要です。
今回のご相談の場合、家庭裁判所に決めてもらわなくても、すでに、自宅を売却して代金を折半するという内容で、協議が成立している事案です。したがって、2年という期間制限は関係ありません。もちろん、財産分与に関する約束自体が時効にかかることはありますが、その約束について時効期間がスタートするのは、自宅を売却して代金を折半できる状態になってからの話です。今回のご相談では、まだ財産分与の約束の期限がスタートしていませんので、心配する必要はありません。

強風で飛ばされたお札(シンクタンク)

強風で飛ばされたお札

<相談内容>
小高い丘の上にあるバザー会場の模擬店で、タンクさんが、2つで1000円の飲み物を注文しました。「お代はテーブルに置いてください。すぐに取りに来ますから」と言われたので、お札をテーブルに置いた瞬間、強風でお札が吹き飛ばされ、あっという間に丘の下に!この場合、代金を払ったことになるのでしょか?それとももう1回払わないといけないのでしょうか?

強風で飛ばされたお札

【弁護士の見解】
<結論>
払ったことになりますが、一定額の賠償義務があります。

<解説>
代金を払ったことになるかどうかは、テーブルにお札を置いた時点で「弁済の提供」と言えるかどうかです。この「弁済の提供」とは、債務の履行において、債権者の受領行為を必要とする場合に、債務者がなすべき行為のことをいいます。どんなことをすれば、債務者つまり、今回であれば買主がなすべきことをしたと言えるかは、売主の受領の仕方によって変わってきます。
今回のご相談の場合、お店の人が、タンクさんが座っているテーブルの上にお金を置いてくださいと指示したのですから、お店の受領行為を前提とすれば、テーブルにお金を置くことにより、弁済の提供すなわち、やるべきことをやったということになります。したがって、タンクさんは、代金自体はもう払う必要はありません。
ただし、今回はお札だったのですから、ちょっと風が吹けば飛んでしまう危険があったはずです。そうすれば、重しを置くなど、飛ばないための工夫をしなかった点で、タンクさんには過失があり、飛んでいった千円札について弁償義務が発生します。
しかし、代金の受領の仕方について、お店の指示にもかなり落ち度があったわけですから、いわゆる過失相殺により、タンクさんの弁償義務の範囲は千円全額ということにはなりません。したがってタンクさんは、いくらかは弁償しないといけないと考えます。


2019年8月10日(土)

 

家賃を下げてほしいけど…(なすなかにし)

家賃を下げてほしいけど…

<相談内容>
登山道で土地と建物を借りて人気のカフェを経営している佐々木さん。ところが、半年前からカフェの近くでクマの目撃情報があり、お客さんが減ってカフェの売り上げが激減しました。地主さんには毎月15万円で借りていましたが、事情を説明して、しばらくの間、家賃を下げてほしいと相談すると「家賃とカフェの経営状態は関係がないから無理」と言われました。家賃は下げてもらえないのでしょうか?

家賃を下げてほしいけど…

【弁護士の見解】

<結論>
下げてもらえる可能性が高い

<解説>
契約した以上、契約内容を守ることは当然ですが、「事情変更の原則」と言って、契約の基礎としていた事情が大きく変わり、それが当事者に責任がなく、かつ予見できなかった場合、今までの契約内容で拘束することが、民法の信義誠実の原則に照らして、著しく不当と言えるとき、契約内容の変更が認められる場合があります。
そのあらわれの一つが、家賃の増額や減額の制度です。借地借家法は、土地建物にかかる租税や価格、その他の経済事情の変動や近隣の同様の建物の家賃の変動などをみて、今の賃料が不相当となったときは、特約がない限り、家主は賃料の増額を、賃借人は減額を求めることができると定めています(同法32条1項)。実際には、これらの事実のほか、今までの賃貸借の経緯や、どのようにして賃料を決めてきたのか、その賃料の推移や建物の現況など、いろいろな事情を総合的に考慮することになります。
今回のカフェと比較できる賃貸物件が近隣にない場合でも、カフェの売上高を元に賃料を決めてきた経緯があり、租税や物件価格の変動状況を見ても、賃料が高額に過ぎると言える場合には、佐々木さんの減額請求が認められる可能性が高いと考えます。

林弁護士の“もうちょっと一言”
「未解決を理由にする賃料不払いは認められません!」

賃料の増額や減額の交渉で結論が出るまでの間、賃料額が決着していないからと言って、賃料を支払わなければ、不払いを理由に、賃貸借契約を解除されることがあります。注意しましょう。

株取り引きはパソコンで(オール阪神・巨人)

株取り引きはパソコンで

<相談内容>
お父さんの預貯金500万円と株を相続した優子さん。株はパソコンで取り引きしていたようなので、パソコンを相続したお兄さんに調べておいてと頼みました。ところが、お兄さんが調べてもなかなかわからないので、詳しい人に頼んで調べてもらったところ、お父さんが亡くなった当時500万円だった株の価値が100万円に下がっています。差額をいくらかでも弁償してもらえないのでしょうか?

株取り引きはパソコンで

【弁護士の見解】

<結論>
弁償してもらえない

<解説>
今回の相談は、いわゆる「デジタル遺産」の一つであるネット証券取引の内容を知るため、優子さんがお兄さんに「パソコンの中を調べてね」と依頼したわけですが、依頼の内容をどのように評価するかが考え方のポイントとなります。
優子さんの依頼をお兄さんが了解しており、2人の間には、一種の委任契約が成立していると考えた場合、無償の依頼であっても、お兄さんには、誠実に調査すると言う善良な管理者としての注意義務があり、この義務に違反して優子さんに損害を与えれば、賠償責任を負うことになります。
しかし、2人の間で委任契約が成立していたと言えるかは問題です。兄妹の関係の中での無償の依頼であり、優子さんとお兄さんとの間で、いつまでに調査を終えるかの合意もしていなかったようです。そうすると、今回の依頼は、2人の間で単に兄妹の間の好意的な関係の間で留めるという意思があっただけで、これを法律上の契約関係にまで高めると言う意思まではなかったとも考えられます。
仮に委任契約がきちんと成立しているとしても、お兄さんはパソコン解析の専門家でもなく、調べようとしてもよくわからなかったと見受けられます。また、株価の変動についても素人には予想が難しいわけですから、お兄さんは善良な管理者としての注意義務に違反したとまでは言えないと考えます。
したがって、いずれにしても優子さんは、お兄さんに弁償、つまり損害賠償を求めることまではできないと考えます。

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